第1 最初に「何の期限か」「申請済みか」を確かめる
在留期限を過ぎたことに気付いたときは,在留期間の満了日,在留カードの有効期間,更新・変更申請の有無を分けて確認する必要がある。
期限内に申請して審査を待っている場合と,申請をしないまま在留期間が満了した場合では,法律上の扱いが異なる。
本記事は,令和8年11月1日に確認した入管法等に基づき,本人・家族が相談までに整理する事項を説明する。
まず,旅券,在留カード,許可に関する書類,申請の受付資料,入管から届いた通知を集める。
カードの見た目だけで判断せず,現在の在留資格,在留期間の満了日,申請の種類・受付日,処分の有無を一つずつ確かめる。
第2 期限内の申請に伴う特例期間は「更新忘れの猶予」ではない
入管法20条6項は,在留期間の満了日までに在留資格変更許可を申請し,満了日までに処分がされない場合の在留について特例を定めている。
この規定は,同法21条4項によって在留期間更新許可の申請にも準用される。
在留期間が30日以下の場合は,この特例の対象から除かれる。
特例によって従前の在留資格で在留できるのは,申請に対する処分がされる時と,もとの在留期間の満了の日から2か月を経過する日が終了する時の,いずれか早い時までである。
「申請したから処分が出るまで何か月でも大丈夫」「不許可でも満了日から2か月間は同じ状態が続く」という理解は正確でない。
申請しないまま満了した人には,この規定は適用されず,2か月の猶予は生じない。
また,窓口への相談,予約,申請書の作成だけでは,申請が受け付けられたことの確認にならない。
期限内に申請したか不明な場合は,受付記録を確かめることが先である。
審査中の就労と会社側の確認事項は,在留期間の更新申請中も働けるか―特例期間と会社の確認事項(AI作成)を参照されたい。
第3 申請しないまま在留期間が満了した場合
入管法24条4号ロは,在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して残留する者を,退去強制事由の一つとして定める。
「忘れていた」という説明だけで在留資格が延びるものではなく,期限後に書類を出せば通常の更新として必ず扱われるともいえない。
一方,期限を過ぎたという情報だけで,個別事件の手続や許否を決めつけることもできない。
本人の在留履歴,期限を過ぎた経緯,家族関係,生活基盤,健康状態,帰国先での危険,現在の退去強制手続の段階を調べ,入管実務に詳しい弁護士に相談する必要がある。
就労の可否も,従前と同じ仕事だから続けられると判断せず,現在の法的な在留状態と許可の内容から確認する。
相談時には,いつ満了したか,いつ気付いたか,それまでにどの申請・相談をしたかを,資料で確認できる事実と記憶に基づく説明に分けて伝えるとよい。
申請日や事情を事実と異なる内容に直すことは避けなければならない。
第4 在留特別許可は,通常の更新と区別して検討する
退去強制事由に該当する場合でも,入管法50条に基づく在留特別許可が問題となることがある。
同条1項は,法務大臣が特別に在留を許可できる場合を定め,同項ただし書による制限も設けている。
許可が必ず得られる制度ではない。
申請の時期にも注意を要する。
同条2項は,原則として,「収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人」からの申請を定め,同条3項は,退去強制令書が発付されている者は申請できないと定める。
ただし,刑事手続と並行して同法63条1項による退去強制手続を行う場合には,50条2項の対象者が読み替えられるため,収容等を受けるまで申請できないと一律に扱わない。
期限切れに気付いた人が,通常の更新申請と同じ感覚で,いつでもこの申請を出せるという制度ではない。
家族・生活・人道上の事情を整理することは重要であるが,準備する間に手続が進む可能性もある。
退去強制令書や出頭・審査に関する通知がある場合は,その文書と日付を優先して相談先に伝える必要がある。
第5 「難民」という説明だけで在留資格を判断しない
本人が「難民である」と説明していても,既に難民認定を受けた人,認定を申請している人,自分は難民に当たると主張している人を分けて確認する必要がある。
認定通知等と,現在の在留資格・在留期間を示す資料の両方を確かめる。
入管法50条1項4号は,難民又は補完的保護対象者の認定を受けていることを,在留特別許可の判断に関する場合の一つとして明記している。
ただし,認定を受けているから更新が不要になる,又は期限を過ぎても当然に在留が適法になるという意味ではない。
同法61条の2の2には,在留資格を取得していない人について難民認定等をする際の在留資格に関する規定がある。
過去に認定を受けた後,在留期間を経過した人の資格が,この規定によって自動的に復活すると説明することはできない。
帰国先で迫害や拷問等の危険がある場合は,その危険と,申請・収容・送還に関する現在の手続を併せて検討する。
詳しくは,難民事件の初動―難民・補完的保護の主張立証と再申請時の送還リスク(AI作成)を参照されたい。
第6 相談先には,手続の段階と必要な支援を伝える
在留の可否や退去強制手続への対応については,入管事件を扱う弁護士に相談する。
弁護士会の相談窓口等に問い合わせる際には,期限を過ぎていること,認定・申請歴,収容・監理措置の有無,通知された期限や送還予定,必要な通訳の言語を伝えると,対応できる窓口につながりやすい。
これは相談準備のための提案である。
難民に関する相談先には,難民支援協会の相談案内がある。
法律事件の受任,生活相談,通訳その他の支援は役割が異なるため,どの支援が必要かを伝え,受付対象・予約方法・対応言語を各窓口の現行案内で確認する。
支援団体への連絡だけで,入管への更新・変更申請を期限内に済ませたことにはならない。
費用面で援助が必要な場合は,在留状況と事件の種類を伝え,利用できる援助制度を弁護士会等で確認する。
在留資格がない人について,通常の民事法律扶助が当然に利用できるという説明や,逆に法律援助が一切ないという説明は避ける必要がある。
第7 相談前にそろえる資料
次の資料は,手続の見落としを減らすための整理例である。
不足資料があることだけを理由に,期限のある相談を先送りしないことが大切である。
① 旅券,在留カード,許可・更新に関する書類。
② 申請書の控え,受付番号・受付完了メール,処分通知。
③ 満了日,申請日,処分日,期限切れに気付いた日の時系列。
④ 家族関係,住居,仕事,収入,健康状態を確認できる資料。
⑤ 難民認定等の通知書,従前の申請・不認定等の記録。
⑥ 収容・監理措置・退去強制・送還に関する文書。
刑事事件が関係する場合は,不起訴と在留手続を分けて対応する必要がある。
外国人が不起訴になった後も入管手続は続くか―収容・監理措置・退去強制の確認事項(AI作成)を参照されたい。
第8 根拠・参考資料
① 出入国管理及び難民認定法(e-Gov)20条6項,21条4項,24条4号ロ,50条,61条の2の2,63条1項。
② 法テラス日本弁護士連合会委託援助業務及び法テラスについての民事法律扶助に関する説明。
③ 難民支援協会の上記相談案内。