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予備試験廃止と受験資格制限の撤廃は同じか―2019年の司法試験法改正案(AI作成)

第1 「予備試験廃止」だけでは制度の方向は分からない

予備試験を廃止するという提案を評価するときは,廃止後に誰が司法試験を受けられるのかを確認する必要がある。
予備試験という入口をなくすことと,司法試験を受けるための資格制限そのものをなくすことでは,志望者への影響が異なる。

この違いを具体的に示す資料が,2019年の第198回国会に提出された衆法第5号「司法試験法等の一部を改正する等の法律案」である。
本記事は,この法案に書かれた制度案を解説する。
施行された法律の説明ではない。

衆議院の審議経過情報によると,同法案は2019年4月17日に提出され,同年5月10日に衆議院で否決された。

第2 2019年の法案は何を削除しようとしたか

衆議院が公開する法案本文の第1条には,当時の司法試験法第4条と第5条を削除する規定がある。
受験資格を定める規定と,予備試験を定める規定を併せてなくす構成である。

法案の提出理由は,司法試験を広く受験しやすいものとするとともに,法曹の資質の維持向上を図るため,司法試験の受験者を法科大学院修了者及び司法試験予備試験合格者に限定する制度を廃止することを掲げている。

したがって,この法案の予備試験廃止を,法科大学院を経ない人の挑戦を排除する提案と読むのは正確でない。
本試験を受ける資格の制限をなくす案であるため,その前段階の資格取得試験もなくすという組合せになっている。

第3 試験や合格後の養成までなくす案ではない

1 本試験の選抜は残す

法案は,司法試験自体をなくすものではない。
短答式,論文式及び口述によって選抜する構成を提案していた。

短答式は憲法,行政法,民法,商法,民事訴訟法,刑法及び刑事訴訟法の7科目とし,論文式にはこれらの科目と法律実務基礎科目を置く。
さらに,筆記試験の合格者を対象に口述試験を行う内容だった。
法科大学院修了者には,申請によって法律実務基礎科目の論文式試験を免除する仕組みも置いていた。

受験の入口を広げることと,試験で必要な能力を確認することを,別の段階に置く設計だと整理できる。
受験資格制限の撤廃だけを取り上げて,能力確認まで廃止する法案だったと説明することはできない。

2 合格後の養成も変更する

法案第2条は,裁判所法に定める司法修習の期間を1年間から1年2月間へ改める内容である。
第3条には,弁護士会が法科大学院等と連携し,所属弁護士の資質の維持向上に資する研修機会を提供するよう努めること等についての規定もある。

法案第4条では法科大学院連携法を廃止するが,法科大学院そのものを廃止する規定とは区別しなければならない。
法案中には,法科大学院修了者の試験科目免除や,法科大学院等と連携する研修の規定が置かれている。

第4 廃止後の入口を比べる

「予備試験をなくす」という説明に接したときは,少なくとも次の二つを分けて考えるとよい。

第一は,本試験の受験資格制限を残したまま,予備試験による資格取得経路をなくす制度案である。
その場合には,別の代替経路を設けるのか,法科大学院を経ることが事実上必要になるのかが問題になる。

第二は,本試験の受験資格制限をなくすことに伴い,予備試験もなくす制度案である。
2019年の衆法第5号は,法案本文と提出理由から,こちらの構成として理解できる。

この比較は,二つの制度案を分析するための整理であり,現在そのいずれかの変更が決まっていることを意味しない。
名称だけで賛否を決めず,受験資格,選抜の内容,合格後の養成及び移行措置を確認することが必要である。

第5 法案の説明と政策評価を分ける

この法案から確認できるのは,受験資格制限を外し,試験と合格後の養成によって質の確保を図るという制度案が提出されたことである。

他方,この制度案なら志望者の負担が必ず減る,合格者が増える,法曹の質が必ず向上するといった結果まで,条文だけで実証されたわけではない。
受験者数,試験運営,学習支援,修習の実施体制などを別に検討する必要がある。

受験資格制限の撤廃を求める論評と,法案に盛り込まれた試験科目・口述・修習等の具体的な設計も,同一のものとして扱うべきではない。
開放性を重視する立場であっても,個々の制度設計には別の評価があり得る。

第6 受験準備に使う場合の注意と関連記事

本記事の法案に書かれた科目や修習期間を,実際の受験準備の基準として使ってはいけない。
出願時には,当該年度に適用される法律,施行規則及び司法試験委員会の案内を確認する必要がある。

受験制度の案内は,予備試験とは及び司法試験とはで整理している。
制度の変遷については,司法試験制度の改正経緯を参照されたい。

新旧移行期における別の立場の要求は,2004年の法科大学院協会の要望で検討している。

第7 出典

中心資料は,衆議院「第198回国会・衆法第5号 司法試験法等の一部を改正する等の法律案」の法案本文及び提出理由である。
否決の結果は,同院の議案審議経過情報による。
確認日は令和8年11月1日である。