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令和8年成年後見制度改正後の権利擁護支援―第23回専門家会議資料が示す補助の4つの利用パターン,必要性の継続確認及び家庭裁判所との連携(AI作成)

第1 資料の位置付け

1 第23回成年後見制度利用促進専門家会議の資料1

厚生労働省は,令和8年10月13日に第23回成年後見制度利用促進専門家会議を開催し,議題を「次期基本計画に係る意見交換」とした(同会議の議事次第)。
配布資料は,資料1「成年後見制度の見直し等を踏まえた適切な権利擁護支援の実施」,資料2「成年後見制度の見直しの趣旨・内容等を踏まえた適切な権利擁護支援の浸透」及び資料3「ワーキング・グループの議論を踏まえた論点整理」である。
本記事は,このうち資料1(表紙及び目次を除き1頁から11頁まで。以下,頁は資料の各頁上部に印字された番号による。)を対象とし,資料2及び資料3は必要な限度で触れるにとどめる。

資料1は,各項目を「現状と課題」と「対応案(施策)」に分けている。
対応案の多くは「~してはどうか」という形で示されており,次期基本計画の内容又は確定した運用として決まったものではない。
本記事は,資料の記載,法令・公的資料で確認した事項及び本記事の評価を区別して書く。
基準日は令和8年10月17日である。

2 前提となる民法等改正法

法務省によれば,令和8年6月17日,「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号。以下「民法等改正法」という。)及びその整備法(令和8年法律第46号)が成立し,同月24日に公布された。
成年後見制度に関する部分は,公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日に施行される。

資料1は,民法等改正法の内容を,包括的な代理権・取消権を有する後見の制度等を廃止し,本人に必要な事項について代理権・取消権を付与する補助の制度に一元化し,利用の必要がなくなったときに制度利用を終了することが可能となるものと説明している(2頁)。
その上で,本人が亡くなるまで包括的な権限を有する後見人による財産管理等が行われる事案がほとんどであったこれまでの利用方法が「大きく変わることが想定される。」としている(2頁)。
改正法の全体像は,令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備で整理している。

3 社会福祉法等改正との関係

資料1がいう「地域権利擁護相談支援センター」(資料では単に「センター」という。)は,社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)により,市町村が設置できるものとされた機関である。
同法の公布通知(令和8年6月25日付け社援発0625第10号ほか)は,市町村が地域における成年後見制度等の適切な利用の支援の中核的な役割を担う機関として,地域権利擁護相談支援センターを設置することができるものとしたと説明している(改正後の社会福祉法106条の16関係)。
同通知によれば,この事項は改正法の原則的な施行日である令和9年4月1日から施行される。

また,同通知は,福祉サービス利用援助事業の対象者を見直し,福祉サービスの利用の援助に加えて,保健医療サービス又は葬祭その他の生計困難者が死亡した場合に必要なサービスの利用の援助を行う事業に改めるとしている(改正後の社会福祉法2条3項12号関係)。
この事項は,公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。
資料1は,見直し後の事業を「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」と呼び,見直し前の「福祉サービス利用援助事業(日常生活自立支援事業)」と区別している(3頁~4頁)。
社会福祉法等改正の概要は,令和8年社会福祉法等改正―身寄りのない高齢者支援,有料老人ホーム登録及びケアマネ更新制廃止で扱っている。

第2 補助の制度の利用方法の多様化

1 資料1が示す四つの利用パターン

資料1は,これまでの典型的な利用方法として,①法定後見制度のみを利用し続ける事案と,②福祉サービス利用援助事業(日常生活自立支援事業)等の支援から法定後見制度に移行する事案を挙げる(3頁)。
その上で,民法等改正法の施行後は,これらに加えて③及び④の事案も生じるとしている(3頁)。

パターン資料1の説明制度利用の終わり方
①法定後見制度のみを利用し続ける従来は別の支援への移行が基本的に想定されていなかった
②福祉サービス利用援助事業等の支援から法定後見制度に移行する従来は別の支援への移行が基本的に想定されていなかった
③日常生活は地域福祉の支援を受けながら,足りない部分につき補助人に必要な権限を付与する遺産分割等が終了したら補助の利用を終了する
④補助を利用して福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業等の支援体制を整える体制を整えた上で補助の利用を終了し,地域福祉の支援に移行する

資料1の参考図は,これまでは成年後見制度を利用した後に別の支援に移行することは基本的に想定されなかったのに対し,法改正後は,補助の制度と他の支援との併用や,補助の制度の利用後に別の支援に移行することも想定されると説明している(4頁)。
同じ図には,法改正後も旧制度の利用を継続できる旨の注記がある(4頁)。

2 補助以外の支援が必要となる事案の増加

資料1は,補助の制度の利用場面が制度利用の「必要性」が認められる範囲に限定されることから,補助の制度以外の支援が必要となる事案が多くなり,地域における支援策の充実が今後ますます重要になると想定している(3頁)。
支援策の例として,任意後見制度,福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業,見守り契約等の地域独自サービス,補助の制度及び民間による事業が挙げられている(6頁)。

3 担い手の役割の変化

資料1は,制度の担い手の役割が,成年後見人としての包括的な権限行使がほとんどであった従来の役割から,個別の法的課題の解決という役割に変わることを想定している(3頁)。
市民後見人については,役割が限定的になるとの懸念も生じ得るとしつつ,意思決定支援を含む地域の権利擁護支援において幅広く活躍することが期待されるとして,市民後見人養成研修修了者の役割は今後ますます重要になるとしている(3頁)。

第3 市町村・センターの支援プロセス

1 支援ニーズの精査と支援方針の検討

資料1は,本人が抱える具体的な課題を把握・整理した上で,専門職の助言を受けながら,多様な主体が参加する支援チームで支援方針を検討し,成年後見制度の利用が必要な場合は同制度に,他の支援が望ましい場合は他の支援に円滑につなぐことが望ましいとする(5頁)。
補助の制度に一元化され,必要なときに必要な範囲に限り利用する制度となることを踏まえ,これまで以上に支援ニーズを精査し,補助の制度の利用に限らない支援方針を検討することが重要になるとしている(5頁)。

2 補助を利用する場合の留意点

資料1は,補助の制度を利用する場合に,制度の見直しの趣旨に沿った利用となるよう,次の点に留意する必要があるとしている(5頁~6頁)。
①制度利用終了後も見据えた支援方針の検討
②本人の同意の適切な確保
③本人が抱える具体的な法的課題を踏まえた必要な権限の選択
④本人の意見を踏まえた受任調整
⑤制度利用の「必要性」が消滅していないかどうかの継続的な確認

3 支援方針の見直しと一次相談窓口

資料1は,必要な支援の実施後も,本人や本人を取り巻く状況の変化により支援方針を変更する必要が生じる場合を想定し,支援方針の見直しが適切に行われる環境整備が重要であるとする(5頁)。
支援プロセス全体のイメージ図は,本人その他の身近な支援者からの相談や,一次相談窓口によるアウトリーチが支援の契機となることを想定している(6頁)。

4 対応案

資料1の対応案は,次のとおりである(7頁)。
①厚生労働省が,法務省や最高裁判所と連携して標準的な申立事務の在り方等を整理し,制度利用の「必要性」の有無や必要な権限の選択についての具体的手法を新制度の施行までに示す。
②一次相談窓口が必要な情報を整理してセンターにつなぐことの重要性を踏まえ,一次相談窓口の機能向上の取組を検討する。
③市町村・センター・一次相談窓口は,本人等から改めて相談があった場合に相談支援等を行い,必要に応じてアウトリーチの支援を行うことを検討する。
④市町村・センターが関与していない親族後見人への支援方法を検討し,センターの運営マニュアル等で示す。

また,資料1は,制度運用の標準的な手続が各家庭裁判所から順次示されることも踏まえながら,都道府県・市町村のそれぞれで必要となる対応や考え方を,新制度の施行までに順次マニュアルや通知等で示していくことを対応案としている(3頁)。

第4 制度利用の「必要性」の継続的な確認

1 支援チームによる確認

資料1は,これまでも,後見人等を含む支援チームが会議を必要に応じて開いて方針を再調整し,市町村・センターが後見人等の交代や権限変更などの検討を含めてバックアップすることとされてきたと整理する(8頁)。
その上で,民法等改正法の施行後は,制度利用の「必要性」が消滅しているにもかかわらず制度利用が終了しない事案が生じないよう,補助人を含む支援チームにおいて継続的に「必要性」を確認する必要があるとしている(8頁)。

2 終了に向けた支援と情報共有

資料1の対応案は,市町村・センターが地域資源を把握し,補助の制度以外の支援を行う関係機関の協力を得ながら,制度利用中から利用終了後の地域生活を見据えた支援準備の調整を進めるなど,必要に応じて制度利用の終了に向けた支援チームへの支援を行うことが重要ではないかとする(9頁)。
厚生労働省は,市町村・センターの事務負担に配慮しつつ,その手法等をセンター運営マニュアル等で示すことが提案されている(9頁)。

情報共有については,補助人の交代や補助の制度の終了が家庭裁判所の判断事項であることを前提に,本人情報シートの本来的な位置付けや見直し後の運用実態を踏まえ,どのような方策が望ましいかを整理することが対応案とされている(9頁)。
本記事の基準日において,この点の具体的な方策は資料1からは読み取れない。

第5 任意後見制度の位置付け

資料1は,任意後見制度を,本人が支援を受ける相手や支援内容を自ら決定できるものであり,本人の自己決定の尊重を具体化する重要な権利擁護支援の仕組みと位置付ける(10頁)。
民法等改正法により,任意後見監督人の選任を要しない場合が設けられ,補助の制度との併用が可能となったことから,任意後見制度と補助の制度を組み合わせるなどの柔軟な活用が可能になるとしている(10頁)。

対応案は,①厚生労働省及び法務省による市町村・センター・福祉関係者等への周知,②市町村及びセンターが本人や家族に任意後見制度を含む様々な選択肢を適切に提示できるようにするための相談支援の在り方や先進的な取組事例の共有,③法務省及び厚生労働省による制度改正後の利用状況の把握と課題の整理である(10頁)。
任意後見契約の要否と改正後の変化は,独身の高齢者に任意後見契約が必要な理由―申立人の不在,受任者の選び方及び令和8年改正で検討している。

第6 家庭裁判所の運用・監督と市町村との連携

資料1は,成年後見制度が家庭裁判所による審判及び監督の下で運用される司法制度であることを確認した上で,制度利用開始時だけでなく,利用継続中及び利用終了時を含めた適切な制度運用及び監督が家庭裁判所に期待されるとする(11頁)。
特に,制度利用の「必要性」の判断,制度利用終了に向けた審判の在り方及び経過措置の運用等について,実務上の運用を十分に整理していくことが求められるとしている(11頁)。

補助の制度の利用終了後も地域の支援が必要な人を地域の支援につなぐ観点から,家庭裁判所と市町村・センターとの連携がこれまで以上に重要になるとされる(11頁)。
対応案は,厚生労働省が,社会保障審議会福祉部会報告書の整理も踏まえ,最高裁判所の協力を得て,家事事件手続法に基づく照会への対応や,家庭裁判所と市町村・センターとの双方向の情報共有に資する取組の在り方をセンター運営マニュアル等で示すことなどである(11頁)。

第7 弁護士実務への示唆

1 申立て段階では必要性と権限を行為単位で示す

資料1が補助を利用する場合の留意点として挙げる本人の同意,必要な権限の選択及び終了を見据えた支援方針(第3の2)は,改正後の申立てで家庭裁判所に示す事項と重なると考えられる。
本記事では,申立てを受任する弁護士は,遺産分割・不動産売却・施設契約等の具体的な法的課題ごとに,補助以外の支援で足りない理由と必要な権限を記録しておくことが有用と考える。
具体的な記録の方法は,令和8年成年後見制度改正の施行準備―権限・必要性台帳,年次見直し及び旧後見・旧保佐から新補助への移行で整理している。

2 受任中は終了後の受け皿を早めに確認する

資料1のパターン③及び④は,補助人の職務が終わる時点で,本人の生活支援を担う別の支援がそろっていることを前提にしている。
そのため,補助人を受任した弁護士は,権限を使い終えた時点で直ちに終了を求めるのではなく,福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業,見守り契約,任意後見等の受け皿を市町村・センターと確認しながら終了の時期を検討することになると考えられる。
親族や支援者に対しては,法定後見制度を終えることと,本人への生活支援を終えることは同じではないと説明する必要がある。

3 担い手の役割と報酬への影響

資料1が想定する「個別の法的課題の解決」という役割の変化は,弁護士が担う事件の性質と期間にも影響し得る。
改正が弁護士の後見業務の採算に与える影響は,令和8年成年後見制度改正で弁護士の後見業務は採算が悪化するかで検討している。

4 資料の限界

資料1は,次期基本計画に向けた意見交換のための資料であり,対応案はいずれも検討段階のものである。
標準的な申立事務の在り方,センター運営マニュアル,家庭裁判所の審理運用及び情報共有の方策は,資料1の時点では今後示すものとされているにとどまる。
個別の申立てや受任中の事件では,施行政令,最高裁判所規則,各家庭裁判所の運用及び厚生労働省の通知等を,その都度確認する必要がある。
なお,本記事は裁判例を根拠とする記載を含まないため,判例秘書の検索は行っていない。

第8 関連記事

1 改正法の内容と施行準備

令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備は,補助への一元化,特定補助及び経過措置を説明している。
令和8年成年後見制度改正の施行準備―権限・必要性台帳,年次見直し及び旧後見・旧保佐から新補助への移行は,受任中の事件で今から準備できる事項を扱っている。
令和8年成年後見制度改正と金融機関の権限確認―代理権・同意権・特定補助及び経過措置は,金融機関との関係を扱っている。

2 地域の権利擁護支援

令和8年社会福祉法等改正―身寄りのない高齢者支援,有料老人ホーム登録及びケアマネ更新制廃止は,地域権利擁護相談支援センターの創設を扱っている。
成年後見人等の身上保護事務とチーム支援―ケース会議への参加,役割分担,苦情への対応と家庭裁判所の評価は,現行制度での支援チームとの関わり方を扱っている。
成年後見制度利用支援事業とは―後見人報酬・申立費用の自治体助成を比較するは,市町村による費用助成を扱っている。

第9 出典

1 厚生労働省資料

厚生労働省「第23回成年後見制度利用促進専門家会議の資料を掲載しました」
第23回成年後見制度利用促進専門家会議 議事次第(令和8年10月13日)
同会議 資料1「成年後見制度の見直し等を踏まえた適切な権利擁護支援の実施」
同会議 資料3「ワーキング・グループの議論を踏まえた論点整理」
同会議 参考資料5「第二期成年後見制度利用促進基本計画」(令和4年3月25日閣議決定)
厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(通知)」(令和8年6月25日)

2 法務省資料

法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」