第1 司法試験委員会とは
司法試験委員会は,司法試験法12条1項に基づいて法務省に置かれ,司法試験と司法試験予備試験の実施等を担当する委員会である。
委員は7人であり,問題の作成・採点・合格者の判定を担当する司法試験考査委員及び司法試験予備試験考査委員とは区別される。
この記事は,令和8年10月17日に確認した司法試験法の現行条文と法務省の公表資料に基づき,組織,名簿,考査委員との違い及び資料の探し方を整理する。
委員の氏名・職名は,法務省が令和8年10月1日現在として掲載する名簿による。
司法試験の受験資格,試験科目及び合格後の流れは,「司法試験とは」で扱っている。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/08/29/shihoushiken-shikaku-kikan-goukaku/
第2 仕事内容と権限
1 司法試験と予備試験の実施を担当する
司法試験法12条2項は,委員会の仕事として,①司法試験及び予備試験の実施,②法務大臣の諮問に応じた試験実施の重要事項の調査審議,③重要事項に関する法務大臣への意見,④その他法律により権限に属させられた事項の処理を定めている。
法務省の委員会概要では,設置年月日は平成16年1月1日,庶務担当部局課は法務省大臣官房人事課とされている。
委員会の法令上の権限と,窓口・公表資料の作成等を担当する事務部局の仕事は,分けて理解するとよい。
2 合格者は誰が決めるのか
司法試験法8条によれば,司法試験の合格者は司法試験考査委員の合議による判定に基づき,予備試験の合格者は司法試験予備試験考査委員の合議による判定に基づき,それぞれ司法試験委員会が決定する。
考査委員による「判定」と,委員会による「決定」は,同じ手続を別の言葉で表したものではなく,法律上書き分けられている。
合格点,科目別の最低ライン及び成績通知の詳しい読み方は,次の記事を参照されたい。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/08/29/shihoushiken-goukakuten-saiten-seisekitsuuchi/
合格者を決めることと,結果を報道機関へ発表するための決裁も区別する必要がある。
平成29年の開示文書から分かる報道発表資料の作成手順は,次の記事で説明している。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/17/shihoushiken-goukaku-happyou-houdou-shiryou/
第3 メンバーと委員長
1 司法試験委員会のメンバーは誰か
法務省の令和8年10月1日現在の名簿には,次の7人が掲載されている。
職名も同名簿の基準日によるものであり,後の異動を反映した現在の職名と一致するとは限らない。
| 氏名 | 名簿に掲載された職名等 |
|---|---|
| 太田秀哉 | 弁護士 |
| 川出敏裕 | 東京大学大学院法学政治学研究科教授 |
| 神作裕之(委員長) | 学習院大学法学部教授 |
| 古賀由紀子 | 東京高等検察庁公判部長 |
| 高橋美保 | 東京大学大学院教育学研究科教授 |
| 富所浩介 | 株式会社読売新聞東京本社論説副委員長 |
| 細田啓介 | 東京高等裁判所部総括判事 |
名簿の出典は,法務省「司法試験委員会-司法試験委員会会議」の「名簿」である。
法務省の表示では◎が委員長を示し,氏名は50音順に掲載されている。
https://www.moj.go.jp/shingi1/iinkai_shihoshiken.html
2 委員の任命・任期と委員長の選び方
司法試験法13条によれば,委員は,裁判官,検察官,弁護士及び学識経験を有する者のうちから法務大臣が任命する。
任期は2年であり,補欠委員は前任者の残任期間とされ,再任も可能である。
委員は非常勤である。
委員長は,委員の互選に基づいて法務大臣が任命する。
委員長は委員会の会務を総理し,委員会を代表する(同法14条)。
令和8年10月1日現在の掲載名簿では,神作裕之氏が委員長である。
第4 司法試験考査委員との違い
1 司法試験考査委員とは何か
司法試験考査委員は,司法試験における問題の作成,採点及び合格者の判定を担当する者である。
司法試験法15条は,予備試験についても,その問題の作成,採点及び合格者の判定を担当する司法試験予備試験考査委員を置くと定めている。
考査委員は,司法試験委員会の推薦に基づき,必要な学識経験を有する者のうちから法務大臣が試験ごとに任命する。
考査委員も非常勤であるが,7人の委員について定められた2年の任期と,考査委員の試験ごとの任命を混同してはならない。
| 区分 | 法律上の主な担当 | 任命等の基本 |
|---|---|---|
| 司法試験委員会の委員 | 試験の実施,重要事項の調査審議等。合格者の決定は委員会が行う | 委員7人,任期2年を基本とする |
| 司法試験考査委員 | 司法試験の問題作成,採点,合格者の判定 | 委員会の推薦に基づき法務大臣が試験ごとに任命する |
| 司法試験予備試験考査委員 | 予備試験の問題作成,採点,合格者の判定 | 委員会の推薦に基づき法務大臣が試験ごとに任命する |
2 考査委員名簿は委員7人の名簿とは別である
法務省は,「司法試験委員会-司法試験考査委員会議」のページに考査委員名簿を掲載している。
令和8年10月17日に確認した掲載名簿の表示は,「令和8年司法試験考査委員名簿(令和8年9月14日現在)」であった。
委員会のメンバーを知りたい場合は前記第3の名簿を,司法試験の考査委員を調べたい場合はこちらのページを確認する。
https://www.moj.go.jp/iinkai_shinshiho.html
作問・採点の経験談と公表された制度資料の関係,採点方針の共有,教育活動と守秘・公正については,次の記事で整理している。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/04/shihoushiken-sakumon-saiten-kyouiku/
第5 議事録・決定・名簿の探し方
1 会議資料と決定等の一覧を使い分ける
司法試験委員会の会議について調べるときは,前記第3の法務省ページから,対象となる回の会議ページへ進む。
名簿の基準日と会議の開催日は別であるため,過去の会議の出席者や当時の職名は,その回の公表資料で確認する必要がある。
試験の方式,出題に係る法令,出題の趣旨の公表及び成績の本人通知等の資料を探すときは,法務省「司法試験の実施に関する司法試験委員会決定等」の一覧が入口になる。
同じ一覧には,考査委員体制,推薦の留意事項,問題作成又は採点に関わる考査委員の遵守事項等へのリンクも掲載されている。
https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00284.html
一覧に資料名が載っていることと,その資料が自分の受験年度へ適用されることは別である。
資料を利用するときは,本文に記された決定日,改正日,適用対象及び対象年度の案内を併せて確認することが必要である。
2 年度別の実施・結果資料を調べる
受験案内,試験日程,試験問題,出題の趣旨,採点実感及び試験結果は,調べたい試験・年度・資料の種類をそろえて探す。
司法試験と予備試験の年度別ページの所在は,次の記事に一覧にしている。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/26/moj-shihoushiken-yobishiken-shiryou-shozai/
第6 問い合わせ先と,質問に応じた確認先
法務省の委員会概要に掲載された庶務担当部局課は「法務省大臣官房人事課」,電話番号は「03-3580-4111」である。
出願や受験上の手続について問い合わせるときは,対象が司法試験か予備試験か,何年度のどの手続かを整理し,その年度の受験案内等に記載された担当・方法も確認することになる。
委員名簿を探す場合は第3,考査委員名簿を探す場合は第4,決定資料や年度別資料を探す場合は第5が入口になる。
受験期間や受験回数の疑問は前記「司法試験とは」の第3及び第9の2,合格年齢の記録は次の記事で扱っている。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/02/shihoushiken-sainenshou-goukaku/
第7 出典と確認範囲
①司法試験法8条及び12条~15条。
e-Gov法令検索で令和4年10月1日施行・現在施行と表示された版を,令和8年10月17日に確認した。
https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000140
②法務省「司法試験委員会-司法試験委員会会議」の概要及び令和8年10月1日現在の名簿(前記第3掲載URL)。
③法務省「司法試験委員会-司法試験考査委員会議」の概要及び名簿の掲載表示(前記第4掲載URL)。
④法務省「司法試験の実施に関する司法試験委員会決定等」の掲載一覧(前記第5掲載URL)。
本記事は,委員会と考査委員の法的な役割,公表名簿及び公式資料への入口を説明するものである。
考査委員全員の氏名・担当の再集計,各問題の非公開の採点基準又は個々の委員の内部での活動を示すものではない。