第1 過去問を使う前に受験区分を決める
裁判所事務官の受験準備は,受験する試験区分の最新の科目表を確認し,その区分の公式問題を時間を測って解き,誤答の理由を分けて復習する順序で進めると整理しやすい。
一般職の大卒程度・高卒者区分と総合職では,準備する種目が異なる。
本記事は,令和8年10月10日に確認した裁判所の受験案内と公式の試験問題一覧を基に,公式資料の探し方と学習の進め方を説明する。
科目・時間・配点等の制度説明と,学習方法の提案を区別し,個々の問題の正解解説や公式の採点基準を示すものではない。
受験資格,日程及び採用までの制度は,裁判所職員採用試験とはを参照されたい。
第2 公式の問題と正答はどこで確認できるか
1 問題一覧の試験名とPDFの表紙を照合する
裁判所「試験問題」には,総合職・一般職,職種,科目ごとの問題と,多肢選択式の正答番号へのリンクがある。
問題と正答は別に掲載されるため,同じ年度・試験・科目を対応させる必要がある。
| 受験する区分 | 一覧で確認する資料 |
|---|---|
| 一般職・事務官,大卒程度 | 第1次の基礎能力・専門の多肢選択式問題と正答,第2次の論文試験(小論文) |
| 一般職・事務官,高卒者 | 基礎能力の多肢選択式問題と正答,作文試験 |
| 総合職・事務官 | 共通する多肢選択式に加え,政策論文と専門記述式。院卒者区分の訴訟法の有無も確認 |
一般職大卒程度の第1次の問題は,一覧では総合職事務官と共通であると案内されている。
問題が共通でも,総合職の専門記述式や政策論文まで一般職の必須種目になるわけではない。
一覧の表示とリンク先を対応させ,PDFの表紙で年度・試験区分・種目を確認する。
令和8年度高卒者区分の正答への項目は,一覧上では「総合職試験」と表示されているが,リンク先の正答PDFは,一般職試験の裁判所事務官・高卒者区分を対象とすることを明記している。
リンクの見出しだけで対象を決めず,PDF本体を確認すべきである。
2 一般職の主な問題・正答への直接リンク
次の表は,確認時点で公式一覧に掲載されている一般職の主な資料への案内である。
年度が異なる問題と正答を組み合わせず,PDFの試験名と科目も確認して利用されたい。
論文・作文については,公式一覧に多肢選択式のような正答番号は掲げられていない。
| 区分・科目 | 問題PDF | 正答PDF |
|---|---|---|
| 大卒程度・基礎能力 | 令和8年度 | 令和8年度 |
| 大卒程度・専門 | 令和8年度 | 令和8年度 |
| 大卒程度・小論文 | 令和8年度 | 正答番号の掲載対象ではない |
| 高卒者・基礎能力 | 令和7年度 | 令和7年度 |
| 高卒者・作文 | 令和7年度 | 正答番号の掲載対象ではない |
| 高卒者・基礎能力(令和8年度) | 確認時点の一覧には問題を未掲載 | 令和8年度 |
専門試験の正答PDFには選択科目を含む全50題の番号が並ぶが,一般職大卒程度で解答するのは,憲法・民法の必須20題と,選択1科目の10題である。
正答表の項目数を,自分が解答すべき問題数と混同してはならない。
解答範囲と選んだ科目の問題番号を,受験案内と問題冊子で照合する必要がある。
3 掲載年度と省略された問題文に注意する
(1) 掲載年度と正答の公開を分けて確認する
確認時点の一覧は,大学卒業程度の基礎能力・専門等に令和8・7年度の問題を,高卒者区分の基礎能力・作文には令和7・6年度の問題を掲載している。
高卒者区分では令和8年度の基礎能力の正答番号が別途掲載されている。
正答が公開されたことと,その年度の全問題が一覧に掲載されたことは同じではない。
(2) 引用部分が省略された問題の扱い
基礎能力の問題には,著作権の関係で引用部分を掲載していないものがあると公式に注記されている。
文章が欠けた問題を,手元の推測で補って解いたことにはできない。
解答に必要な本文がない場合は,その問題を採点対象から除いたことを記録し,完全な問題で行う通し演習と区別する。
本記事では問題本文を転載せず,公式の一覧へ案内する。
資料の掲載は更新され得るため,利用時点の掲載状況を確認されたい。
第3 一般職・大卒程度の科目と学習の配分
1 筆記だけでなく論文と人物試験も準備する
令和8年度の裁判所事務官受験案内5頁は,一般職大卒程度の種目を次のように定める。
| 種目 | 出題・時間 | 配点比率 |
|---|---|---|
| 基礎能力 | 知能24題・知識6題,計30題。2時間20分 | 5/20 |
| 専門・多肢選択式 | 憲法10題・民法10題,行政法・刑法・経済理論から1科目10題。計30題。1時間30分 | 5/20 |
| 論文・小論文 | 記述式1題。1時間 | 2/20 |
| 人物試験 | 個別面接 | 8/20 |
論文は第2次の種目であるが,第1次試験日に実施される。
人物試験の配点も含まれるため,多肢選択式だけを反復して他の準備を全て後回しにする計画は見直す必要がある。
高卒者区分はこの科目表を使わず,専用の受験案内で確認する。
2 選択科目は,現在の理解と他試験との関係で考える
専門の選択科目は,試験当日に問題を見た上で選べると案内される。
しかし,当日の選択が可能であることから,3科目を同じ深さまで学習しなければならないとはいえない。
学習段階では,既に学んだ科目,公式問題を解いた結果,併願する試験の科目,利用できる勉強時間を比較して,主に準備する科目を決める方法が考えられる。
「誰でも刑法が最も得点しやすい」等の一律の判断は避ける。
科目を変える場合も,数問の出来だけで決めず,別の年度で理解と時間配分を確かめるとよい。
第4 過去問の復習は正誤の理由を残す
1 最初の演習で,知識不足と時間不足を分ける
最初に時間を測って解くことで,何問解けたかだけでなく,どの分野で時間を使ったか,知識がなく答えられなかったのか,理解していても時間が足りなかったのかを確認できる。
正答番号を確認する前に,選んだ答えと理由を短く記録すると,正答を見た後の思い込みを避けやすい。
これは学習のための記録方法の提案である。
解答に必要な文章が省略された問題を除いた場合は,その分を含む公表の問題数と,自分が採点した問題数を区別する。
| 誤答等の原因 | 復習する内容 |
|---|---|
| 知識・ルールを知らない | 基本的な説明に戻り,根拠と適用条件を確認する |
| 条件・例外の読み違い | 問題の条件と,自分が想定した条件の違いを記録する |
| 計算・推論の手順 | どの段階で誤ったかを分け,同種の問題で手順を確認する |
| 時間不足 | 問題ごとの所要時間,着手順,後に回す判断を見直す |
| 正答したが理由が曖昧 | 偶然の正解と理解した正解を分け,選択肢の理由を確認する |
2 法律科目では条文・判例の根拠を確認する
(1) 正答の根拠となる条文・判例を確認する
法律科目は,正答の番号だけを覚えるのではなく,どの条文・判例のどの条件が問われているかを確かめることが有用である。
民法であれば,誰が誰に何を求める関係か,事実の条件と法律効果を分けて整理する。
憲法・行政法・刑法でも,原則と例外や要件を区別して説明できるかを確認する。
(2) 古い問題と現在の法令を区別する
古い問題を利用する場合は,出題当時の法令による正答と,現在の法令を前提とした理解を分ける。
法改正で結論が変わり得る箇所を,昔の正答番号だけで現在も正しいと判断してはならない。
他方,旧問題の正答を現在の法令で採点し直した値を,裁判所の公表正答として示すこともできない。
3 反復するときは,説明できるかと所要時間を確認する
同じ問題を再度解くときは,答えを覚えていることを踏まえ,誤った選択肢がなぜ違うか,条件が変われば結論がどう変わるかを説明する方法がある。
次に未着手の年度の問題で,時間内にその理解を使えるかを確かめる。
演習日,年度・科目,解答数,正答数,所要時間,誤答理由,復習日を残せば,自分に必要な復習が分かりやすい。
全員に共通する必要勉強時間や,正答率だけから合格可能性を示すものではない。
第5 論文・作文と面接を並行して準備する
論文・作文は,公式の過去の課題を確認した上で,問いが求める内容,結論,理由,具体例,まとめを整理し,指定時間内に文章を書く練習をする。
長く書くことだけを目的にせず,問いと答えの対応,段落ごとの役割,理由と具体例のつながりを点検するとよい。
公式の採点基準を再現した練習方法という意味ではない。
一般職大卒程度の小論文と,高卒者区分の作文は,試験の名称と時間が異なる。
総合職の政策論文・専門記述式を受ける場合も,該当する受験案内と問題一覧を使って準備する必要がある。
人物試験のためには,勉強と並行して職種紹介や説明会を確認し,事務官の仕事,自分の経験,志望動機を整理する。
法律知識を身に付けることと,組織で正確に事務を行い,利用者や他職種と連携できることを説明する準備は別である。
裁判所事務官の面接対策には,面接カードと口頭の説明を対応させる準備をまとめている。
第6 合格最低点と自分の正答数を混同しない
公式の合格最低点や標準点と,多肢選択式の正答数は同じ数字ではない。
配点比率,標準化,種目ごとの下限,人物試験等の条件を含む判定であるため,過去の最低点を自分の正答数へそのまま置き換えて「あと何問で必ず合格する」と判断することはできない。
倍率についても,年度・試験区分・高裁管内をそろえ,申込者数,有効受験者数,最終合格者数,採用者数を分けて読む必要がある。
数字の意味と原資料は,裁判所職員採用試験の倍率・合格最低点・採用者数を参照されたい。
学習計画は,自分の受験資格と試験区分を確認し,公式問題で現在の理解を把握した上で,弱点の復習,時間内の演習,論文・作文,面接準備を組み合わせて調整する。
仕事内容・給与・勤務地も含む進路の確認は,裁判所事務官とはを参照されたい。
第7 出典・関連資料
① 裁判所「試験問題」
② 令和8年度裁判所事務官受験案内・総合職及び一般職大卒程度(1頁,3頁~5頁)
③ 令和8年度一般職試験・高卒者区分受験案内(1頁~2頁)
④ 裁判所「採用Q&A」
⑤ 裁判所「試験の概要」(区分別の合格者決定方法への案内)
⑥ 裁判所職員の記事一覧