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行政事件訴訟の特定管轄裁判所とは―高裁支部所在地の扱い・取消訴訟の提訴先・移送(AI作成)

第1 特定管轄裁判所とは何か

1 国等を被告とする取消訴訟の提訴先を追加する制度

特定管轄裁判所とは,行政事件訴訟法12条4項が定める,原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所である。
国,同項にいう独立行政法人又は別表に掲げる法人を被告とする取消訴訟は,この地裁にも提起できる。
原告が居住する地域のすべての地裁・支部へ自由に提起できるという制度ではない。

同項の高等裁判所の所在地には,高裁支部の所在地は含まれない。
ただし,支部所在地の地裁が同項による追加の提訴先ではないことと,同条1項~3項等の別の管轄原因によってその地裁に提起できることとは別である。

本記事は令和8年10月9日に確認した現行条文及び改正時の国会答弁に基づき,取消訴訟の提訴先と移送を整理する。
高裁支部の組織・一覧・担当区域は,高等裁判所支部で説明する。

2 裁判所の組織と訴訟法上の管轄を分ける

高裁支部が近くにあることは,控訴事件等をその地域で扱う仕組みがあることを示す。
それだけで,国を被告とする取消訴訟の第一審を同じ地域の地裁で起こせることにはならない。
支部の担当区域,第一審の土地管轄,地裁本庁・支部間の事務分配は,順に別の根拠を確認する必要がある。

第2 取消訴訟の管轄を定める四つの規定

1 行政事件訴訟法12条1項~4項の比較

根拠提起できる裁判所の基準確認する事項
12条1項被告の普通裁判籍又は処分・裁決をした行政庁の所在地被告と処分庁・裁決庁を区別する
12条2項所定の不動産又は特定の場所の所在地処分・裁決と場所との関係を確認する
12条3項事案の処理に当たった下級行政機関の所在地その機関が当該処分・裁決の事案処理に当たったかを確認する
12条4項原告の普通裁判籍を管轄する高裁の所在地を管轄する地裁被告が国等の同項の対象か,高裁本庁の所在地はどこかを確認する

2項~4項は,1項の管轄に加えて提起できる裁判所を定める。
特定管轄裁判所を使わなければならないという一律の専属管轄ではない。
例えば原告の住所地だけでなく,処分庁の所在地や,事案処理に当たった下級行政機関の所在地により,別の裁判所が候補になることがある。

2 原告の普通裁判籍と被告の範囲

4項は「原告の普通裁判籍の所在地」を基準とする。
自然人の住所を考える場面でも,普通裁判籍の具体的な認定を確認する必要があり,法人では個人の住所の説明をそのまま当てはめることはできない。

また,同項は地方公共団体を被告とするすべての取消訴訟に当然に適用されるわけではない。
被告が国,同項にいう独立行政法人又は別表法人であるかを,処分庁の名前だけでなく行政事件訴訟法11条及び12条4項に照らして確認する必要がある。

第3 高裁支部所在地が含まれないことの意味

1 平成16年改正時の答弁

平成16年5月12日の衆議院法務委員会答弁(発言74)は,高裁支部所在地の地裁は含まれないと説明した。
続く発言76では,裁判所の専門性を確保するための集中と,当事者の便宜との調和を理由として挙げている。

これは改正時の立法上の説明であり,高裁支部の担当区域を廃止する意味ではない。
また,特定管轄の対象を限定する説明を,その地裁における他の管轄原因まで排除する説明に広げてはならない。

2 沖縄に普通裁判籍がある場合の考え方

福岡高裁那覇支部が沖縄の事件を担当することから,那覇地裁が当然に12条4項の特定管轄裁判所になるわけではない。
同項で基準になるのは福岡高裁本庁の所在地であり,同項による追加の提訴先は福岡地裁となる。

しかし,処分庁又は事案処理に当たった下級行政機関の所在地等によって那覇地裁に管轄がある場合は,その別の根拠による提訴を検討できる。
「沖縄の原告は必ず福岡で訴えなければならない」という結論にはならない。
行政事件を地裁のどの庁で扱うかは,土地管轄を確認した後,その地裁の事務分配・提出案内で確認する。

第4 管轄があっても移送される場合がある

1 12条5項の特則

12条5項は,4項によって特定管轄裁判所に取消訴訟が提起され,他の裁判所に事実上・法律上同一の原因に基づく処分・裁決に係る抗告訴訟が係属している場合の移送を定める。
当事者・証人の所在地,争点・証拠の共通性等を考慮し,相当と認めるときは,申立て又は職権により,全部又は一部を所定の裁判所へ移送できる。

特定管轄裁判所に適法に提起できることと,その裁判所で最後まで審理されることは同じではない。
関連する他の抗告訴訟の有無と,移送先として法律が定める裁判所を確認する必要がある。

2 関連請求と一般の移送規定

行政事件訴訟法13条は,取消訴訟と所定の関連請求が別の裁判所に係属する場合の移送を定め,いずれかの係属裁判所が高裁である場合を除外する。
これと12条5項の要件は同一ではない。

同法7条による民事訴訟法の適用関係も踏まえ,管轄違いの移送(民事訴訟法16条)や,著しい遅滞を避け又は当事者間の衡平を図る移送(同法17条)との関係を区別して検討する必要がある。
具体的な移送の適否は,訴訟類型,係属事件,主張された事情及び各規定の要件によって異なる。

3 情報公開訴訟の移送特例

行政機関の保有する情報の公開に関する法律21条は,12条4項により特定管轄裁判所に情報公開訴訟が提起された場合,他の裁判所に同一又は同種若しくは類似の行政文書に係る所定の抗告訴訟が係属していることを要件とする移送特例を定める。
同条は行政事件訴訟法12条5項にかかわらず適用される特例であり,取消訴訟以外の抗告訴訟や,関連事件の範囲も条文に即して確認する必要がある。

同条があることは,高裁支部所在地の地裁を新たな特定管轄裁判所に加えることとは別である。
情報公開請求に関する訴訟では,提訴先の選択と移送の特例を分けて読む必要がある。

第5 提訴前に確認する事項と具体例

1 確認する順序

① 処分・裁決,訴訟類型及び被告を特定する。
② 12条1項~3項による管轄を確認する。
③ 4項の対象である場合は,原告の普通裁判籍を管轄する高裁本庁と,その所在地の地裁を確認する。
④ 関連事件と移送規定を確認し,地裁本庁・支部間の提出先を最新の公式案内で照合する。
⑤ 出訴期間,訴状の記載事項,手数料及び提出方法を別に確認する。

特定管轄に関する説明だけでは,処分が取消訴訟の対象となるか,原告適格があるか,出訴期間内かという問題は判断できない。
行政事件訴訟法38条による取消訴訟以外の抗告訴訟への準用についても,対象となる規定と個別の要件を確認する必要がある。

2 労災保険と司法修習生の不服申立て

労災保険の審査請求及び再審査請求は,労災の不支給決定等に対する不服申立てと取消訴訟を説明する。
労働基準監督署長の所在地等による管轄と,特定管轄裁判所を区別して検討する具体例である。

司法修習生の罷免・修習停止等に対する不服申立方法にも,取消訴訟の被告,管轄及び出訴期間の説明がある。
共通する管轄の仕組みと,各制度固有の不服申立ての条件を分けて読む必要がある。

地方自治法上の国の関与の取消し,不作為違法確認及び代執行の命令請求は,高裁が第一審として扱う別の制度である。
委員会への審査申出,高裁の専属管轄及び期間の特則は,国地方係争処理と代執行訴訟を参照されたい。

第6 関連記事及び出典

① 高等裁判所支部
② 裁判所の本庁と支部の回付―移送との違い・合意管轄条項・不服申立て
③ 全国の地方裁判所支部における本庁集約と開廷頻度

① 行政事件訴訟法7条,11条~13条,38条
② 民事訴訟法16条,17条
③ 行政機関の保有する情報の公開に関する法律21条
④ 第159回国会衆議院法務委員会第24号(平成16年5月12日),発言74及び76(本文の発言別リンク参照)