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司法修習生の罷免・修習停止等に対する不服申立方法(AIリライト)

第1 この記事の対象と結論

1 この記事の対象

本記事は,司法修習生に対する罷免,修習の停止及び戒告並びに司法修習生考試(二回試験)の不合格を対象として,不服を申し立てる方法を令和8年8月28日現在の法令及び公開資料に基づき整理するものである。
司法修習生は国家公務員ではないものの,国家公務員に準じた身分として取り扱われるため,公務員の懲戒処分に関する裁判例は直接の先例ではなく,司法審査の考え方を検討するための参考資料となる。

2 結論

① 司法修習生に対する罷免,修習の停止及び戒告は,裁判所法68条に定められた措置である。
これらを争う基本的な方法は,行政不服審査法に基づく審査請求ではなく,国を被告とする取消訴訟である。

② 審査請求を先にする必要はない。
むしろ,取消訴訟には「処分があったことを知った日から6か月」及び「処分の日から1年」という出訴期間があるため,対象外の審査請求や任意の再考申入れだけを続けて出訴期間を経過させないことが重要である。

③ 取消訴訟を提起しても,処分の効力は自動的には停止しない。
修習の継続又は再開を急ぐ場合は執行停止を,処分前の段階で緊急の阻止を求める場合は差止めの訴え及び仮の差止めを検討する必要がある。

④ 二回試験の不合格については,採点内容の当否そのものと,手続違反又は考慮すべきでない事情の考慮とを分ける必要がある。
前者は司法審査になじみにくいが,後者まで常に裁判の対象外となるわけではない。

3 直接の裁判例を確認できなかったこと

裁判所ウェブサイトの裁判例検索で令和8年8月28日までに公開された裁判例を検索した限りでは,司法修習生の罷免取消しを直接判断した判決は確認できなかった。
ただし,同サイトには全ての裁判例が掲載されているわけではないため,直接の裁判例が存在しないことを意味しない。

第2 対象となる措置

1 罷免,修習の停止及び戒告

裁判所法68条1項は,最高裁判所が,成績不良,心身の故障その他の修習継続が困難な事由がある司法修習生を罷免できる旨を定めている。
同条2項は,品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由がある場合に,罷免,修習の停止又は戒告ができる旨を定めている。

2 二回試験の不合格

裁判所法67条1項によれば,司法修習生は,少なくとも1年間修習をした後,試験に合格したときに司法修習を終える。
したがって,二回試験の不合格は,罷免等とは根拠及び性質が異なるものの,司法修習の終了及び法曹資格の取得に直結する。

3 厳重注意その他の事実上の措置

厳重注意,注意その他の名称でされる措置は,裁判所法68条の罷免,修習の停止又は戒告と同じとは限らない。
取消訴訟の対象となる「処分」に当たるかは,名称だけでなく,根拠,手続及び法的効果を個別に確認する必要がある。

第3 行政不服審査法による審査請求

1 研修目的の処分は適用除外であること

行政不服審査法7条1項8号は,研修所等において研修目的を達成するために研修生に対してされる処分について,同法2条及び3条を適用しないと定めている。
司法修習生に対する罷免等はこの適用除外に当たると解されており,昭和56年12月21日の衆議院法務委員会における最高裁判所事務総局人事局長の答弁も,行政不服審査法による手続に乗せることはできず,行政事件訴訟法による訴訟で救済するとの見解を示している。

2 二回試験の結果も適用除外であること

行政不服審査法7条1項11号は,専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分にも,同法2条及び3条を適用しないと定めている。
したがって,二回試験の不合格についても,行政不服審査法に基づく審査請求を通常の不服申立方法とすることはできない。

3 最高裁判所行政不服審査委員会との関係

最高裁判所行政不服審査委員会は,行政不服審査法に基づく審査請求について調査審議する機関である。
委員会が設置されていること自体によって,行政不服審査法7条で適用を除外された司法修習生の罷免等が審査請求の対象になるわけではない。

4 行政手続法との関係

行政手続法3条1項7号も,研修所等において研修目的を達成するために研修生に対してされる処分について,同法第2章から第4章の2までを適用しないと定めている。
もっとも,平成18年1月24日の司法修習委員会第10回議事録では,罷免事由の適用に当たり,事前調査並びに本人からの事情及び意見の聴取等を慎重に行うとの説明がされている。
これは当時の運用説明であり,現在の全ての事案に同一の手続が保障されていることを示すものではないが,処分前後の意見聴取及び記録保存の重要性を示す資料である。

第4 取消訴訟の基本事項

1 被告及び国の代表者

司法修習生に対する罷免等の取消訴訟では,行政事件訴訟法11条により,処分をした最高裁判所ではなく国を被告とする。
国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律1条により,訴訟において国を代表する者は法務大臣である。
実際に罷免された70期司法修習生に交付された平成29年1月18日付け通知にも,国を被告として取消訴訟を提起でき,国の代表者は法務大臣である旨の教示が記載されている。

2 管轄裁判所

行政事件訴訟法12条によれば,取消訴訟は,被告の普通裁判籍又は処分行政庁の所在地を管轄する裁判所に提起できる。
国を被告とする取消訴訟については,原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所という特定管轄裁判所にも提起できるため,個別事案では住所地等を踏まえて確認する必要がある。

3 出訴期間

行政事件訴訟法14条によれば,取消訴訟は,原則として処分があったことを知った日から6か月以内に提起しなければならず,処分の日から1年を経過したときも提起できない。
いずれにも正当な理由がある場合の例外はあるが,例外に頼らず,通知を受けた日及び処分日を直ちに記録する必要がある。
法定の審査請求ではない任意の再考申入れをしても,それだけで出訴期間が止まるとは限らない。

4 処分性及び訴えの利益

取消訴訟の対象となるには,争う措置が行政事件訴訟法3条2項の「処分」に当たり,原告に同法9条の法律上の利益がなければならない。
罷免は司法修習生の身分を失わせるため,処分性及び訴えの利益を基礎付ける法的効果が明確である。
修習の停止及び戒告並びに停止期間経過後の訴えの利益については,第7で述べるとおり,具体的な法的効果を確認する必要がある。

第5 緊急時の仮の救済

1 処分後の執行停止

行政事件訴訟法25条1項により,取消訴訟を提起しても,処分の効力,処分の執行又は手続の続行は自動的には止まらない。
処分により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは,取消訴訟を提起した上で,執行停止を申し立てることができる。
執行停止には,本案について理由がないとみえる場合又は公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある場合には認められないという制限がある。

2 処分前の差止め及び仮の差止め

罷免等がまだされていない段階では,行政事件訴訟法3条7項及び37条の4に基づく差止めの訴えが問題となる。
さらに,償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり,かつ,本案について理由があるとみえるときは,同法37条の52項に基づく仮の差止めを申し立てることができる。
いずれも要件は厳格であり,単なる処分のおそれでは足りないため,処分手続の進行状況及び具体的損害を早期に整理する必要がある。

第6 罷免等に対する司法審査

1 確認すべき違法事由

罷免等を争う場合は,①処分の基礎となる事実が存在するか,②適用された罷免等の事由に該当するか,③本人の説明及び有利な事情が適切に考慮されたか,④目的外又は無関係な事情が考慮されていないか,⑤選択された措置が著しく重すぎないか,⑥手続又は理由提示に固有の違法がないかを区別して検討する必要がある。
事実認定の誤りと,事実を前提とした裁量判断の違法とを分けると,主張及び証拠の対応が明確になる。

2 公務員の懲戒処分に関する裁判例の位置付け

最高裁昭和52年12月20日判決及び最高裁平成24年1月16日判決は,公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者に広い裁量を認めつつ,社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した場合に違法となるとの枠組みを示している。
最高裁令和4年6月14日判決も,地方公共団体職員に対する停職処分を対象として,懲戒権者の裁量を前提とした審査を行っている。
これらは司法修習生に対する罷免等を直接判断した裁判例ではないため,事案の性質,根拠法令及び処分の効果の相違を踏まえて参照すべきである。

3 証拠の整理

処分通知,理由書,事情聴取の記録,提出した意見書,成績資料,指導記録,メール及び時系列表を保存し,どの事実をどの資料が裏付けるかを整理する必要がある。
処分理由が抽象的である場合は,対象となる日時,行為,評価及び適用条項を書面で確認し,本人に有利な事情を含む意見書を期限内に提出することが重要である。

第7 措置別の訴えの利益

1 罷免

罷免は司法修習生の身分を失わせ,修習の継続及び二回試験の受験に直接影響するため,取消しを求める実益を一律に否定することはできない。
罷免取消判決だけで修習日程,給付又は二回試験の機会が直ちに全て回復するとは限らないが,そのことは罷免の法的効果を除く必要性とは別の問題である。

2 修習の停止

最高裁判所の修習給付金案内によれば,基本給付金及び住居給付金は修習停止期間を含む給付期間について日割計算となる。
修習の停止は,修習を受けられないことに加え,このような給付上の法的効果を伴うため,取消訴訟の実益がないと一律に扱うことはできない。

3 戒告及び停止期間経過後

行政事件訴訟法9条1項は,処分の効果が期間の経過等によりなくなった後も,取消しによって回復すべき法律上の利益があれば取消訴訟を提起できると定めている。
最高裁昭和58年4月5日判決も,弁護士の業務停止期間が経過した後に残る被選挙権上の法的不利益を理由として,訴えの利益を認めた。
したがって,戒告又は停止期間経過後の訴えの利益は,記録上の扱い,将来の法的効果,給付及び修習終了への影響等を確認して判断すべきであり,事実上の評判だけで直ちに認められるものでも,期間経過だけで当然に失われるものでもない。

第8 二回試験の不合格を争う場合

1 採点内容そのものの審査

最高裁昭和41年2月8日判決は,技術上の知識,能力等の優劣又は当否の判断を内容とする国家試験の合否は,試験実施機関の最終判断に委ねられ,その判断の当否は法律上の争訟として裁判所が審査できるものではないとした。
二回試験の答案評価又は点数の当否そのものを裁判所に再判定させる主張には,この判例による大きな制約がある。

2 手続違反等の審査

東京地裁平成29年1月17日判決は,社会保険労務士試験の不合格処分について,合格基準の策定過程の違法又は資格に必要な知識及び能力と無関係な事情の考慮が主張された事案を法律上の争訟に当たるとした上で,実体的には裁量権の逸脱又は濫用を認めず,取消請求を棄却した。
この裁判例によれば,採点内容そのものではなく,合格基準の決定手続,適用の一貫性,答案の取り違え,集計誤り又は無関係な事情の考慮を問題とする主張まで,一律に裁判の対象外とすることはできない。
ただし,同判決は二回試験を対象としたものではなく,裁量審査を経ても請求を棄却しているため,違法を裏付ける具体的資料が必要である。

3 早期に確認すべき資料

結果通知,成績通知,受験案内,採点方針,答案の提出及び管理に関する記録並びに異常の発生を示す資料を保存する必要がある。
二回試験の不合格について取消訴訟その他の救済を検討する場合も,処分性,出訴期間及び求める判決の内容を早期に検討すべきである。

第9 実務上の初動

1 通知を受けた直後

① 通知を受けた日時,交付方法及び処分日を記録する。
② 通知書,添付資料,事情聴取記録及び提出済み書面を原状のまま保存する。
③ 処分の根拠条項,対象事実,判断理由及び今後の日程を確認する。
④ 修習日程,給付,住居,二回試験その他の具体的影響を時系列で整理する。

2 処分前に意見を求められた場合

事実関係に誤りがあるときは,客観資料と対応させて訂正し,本人に有利な事情も具体的に示す必要がある。
回答期限が短い場合でも,提出資料の写しを保存し,追加提出の必要性及び処分前の差止めを検討できるようにする。

3 専門家への相談

取消訴訟,執行停止及び仮の差止めは,対象となる措置,処分時期及び求める救済によって申立ての組合せが変わる。
本記事は一般的な制度説明であるため,個別事案では,処分通知及び関係資料を持参して行政事件を扱う弁護士へ早期に相談する必要がある。

第10 関連記事及び出典

1 関連記事

罷免の事由,報告及び弁明の手続については,司法修習生の罷免を参照されたい。

① 司法修習生に対する戒告及び修習の停止
② 二回試験不合格者の取扱い
③ 司法修習生の罷免事由別の人数
④ 司法修習生の罷免理由等の不開示―答申と開示制度(AI作成)

2 法令及び公的資料

① e-Gov法令検索・裁判所法
② e-Gov法令検索・行政不服審査法
③ e-Gov法令検索・行政手続法
④ e-Gov法令検索・行政事件訴訟法
⑤ 昭和56年12月21日衆議院法務委員会会議録
⑥ 司法修習委員会第10回議事録
⑦ 司法修習生の身分に関する裁判所の説明

3 裁判例

① 最高裁昭和41年2月8日判決・昭和39年(行ツ)第61号
② 最高裁昭和52年12月20日判決・昭和47年(行ツ)第52号
③ 最高裁昭和58年4月5日判決・昭和56年(行ツ)第171号
④ 最高裁平成24年1月16日判決・平成23年(行ツ)第263号等
⑤ 東京地裁平成29年1月17日判決・平成28年(行ウ)第85号
⑥ 最高裁令和4年6月14日判決・令和3年(行ヒ)第164号