事業用自動車の事故では、警察への届出、保険会社への連絡、社内の事故記録、運輸支局等への自動車事故報告書及び重大事故の速報を区別する必要がある。本記事では、自動車運送事業者が事故発生後に確認すべき行政上の報告と記録を中心に整理する。
第1 事故後に区別すべき手続
事故直後には、負傷者の救護、危険防止及び警察への報告を最優先に行う。その上で、次の手続を並行して確認する必要がある。
- 警察への交通事故の報告
- 任意保険又は共済の窓口への事故連絡
- 社内の事故記録の作成
- 自動車事故報告規則に基づく事故報告書の提出
- 速報対象事故についての電話等による速報
- 労働災害に該当する場合の労働基準監督署への報告
警察へ届け出て交通事故証明書を取得できる状態にしても、運輸支局等への報告義務を果たしたことにはならない。また、保険会社への連絡も行政上の報告とは別の手続である。
第2 自動車事故報告書の提出
自動車事故報告規則の対象となる事故が発生した場合、事業者は、原則として事故があった日から30日以内に、自動車事故報告書を当該自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸支局長等へ提出する。
報告対象は、転覆、転落、火災、踏切事故、死傷事故、車両故障、運転者の疾病により運転を継続できなくなった事故その他規則所定の事故である。事故の外見だけで判断せず、最新の規則、報告書様式及び国土交通省の案内で対象性を確認する必要がある。
提出期限の起算点は事故日である。社内調査や示談の終了を待つ制度ではないため、判明している事実を整理し、必要に応じて管轄窓口へ記載方法を確認するのが安全である。
第3 重大事故の速報
事故報告書とは別に、重大な事故については速報が必要となる。国土交通省は、速報対象事故について、事故発生から24時間以内にできる限り速やかに、電話等で運輸支局等へ連絡するよう案内している。
速報では、事故の発生日時・場所、事業者名、自動車の登録番号、死傷者数、事故概要等、速報時点で判明している事項を伝える。24時間以内という基準は、30日以内の事故報告書に置き換わるものではなく、速報後にも正式な事故報告書の提出が必要である。
第4 事故記録の作成と3年間の保存
旅客自動車運送事業運輸規則及び貨物自動車運送事業輸送安全規則は、事業用自動車に事故が発生した場合の事故記録を作成し、3年間保存することを求めている。
事故記録には、事故の発生日時・場所、当事者、概要、原因及び再発防止対策等を、関係資料と整合する形で残す必要がある。単に事故報告書の写しを保管するだけでなく、社内調査、運転者からの聴取、運行記録計のデータ、点呼記録等と結び付けておくと、監査や再発防止教育にも利用できる。
第5 初動で保存すべき資料
事故原因や損害額を後から正確に検討するため、少なくとも次の資料を早期に確保することが重要である。
- 車両、道路、信号、標識、積荷及び損傷箇所の写真・動画
- ドライブレコーダー、デジタルタコグラフ及び運行記録計のデータ
- 点呼記録、乗務記録、運行指示書、日常点検表及び整備記録
- 運転者・同乗者・目撃者からの聴取記録
- 警察の受理番号、交通事故証明書、診断書及び修理見積書
- 荷主、旅客、被害者、保険会社及び行政機関との連絡履歴
記録の上書きや自動消去があり得るデータは、保存期間を確認して直ちに複製する。推測と確認済みの事実を分け、後日訂正した場合には訂正経過も残すべきである。
第6 事故報告書と法的責任の関係
事故報告書の提出は行政上の義務であり、民事上の損害賠償責任、刑事責任又は労災認定を直接決めるものではない。しかし、記載内容は後の監査、行政処分、保険対応及び訴訟で参照される可能性があるため、客観資料との整合性が重要である。
期限を守るために未確認事項を断定することも、責任を避けるために確認済み事実を曖昧にすることも適切ではない。事実、当時の認識、調査中の事項及び再発防止策を区別して記載するのが基本である。