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令和元年司法試験民事系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した74項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和元年司法試験の商法・会社法の問題を,少数株主の手続,買収防衛策,総会決議と取締役責任という三つの柱から検討する。

第1 この記事の対象と結論

令和元年司法試験の民事系科目第2問(商法・会社法)を対象とし,法務省の出題の趣旨・採点実感から独自に抽出した74項目と5段階の重み,完成版模範解答を示す。重み5は19項目である。これは法務省の公式採点基準,公式配点,又は合格可能性の推計ではない。

本問の中心は,少数株主の自主招集と株主提案の比較,買収防衛策の差止め,総会決議を遵守した取締役の責任である。答案では,差別的無償割当ての差止めを認め,定款変更を有効とした上で,事情変更後の株主意思確認を怠ったAの責任を認める構成を採る。別の構成が許される事項は,評価表の適用条件と枠外解説で区別する。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一項目には一つの判定対象を置き,必須,高評価,負例(誤りの回避),許容分岐を区別した。条件付きの構成を全答案への累積要求としない。「記載なし」は該当する公式資料の関連範囲を読んだ結果,「間接」は関連記述からの推論である。表の頁は各PDFの物理頁で,法的根拠・重み・原子化はいずれも記事の独自分析である。公式資料の文言は要約している。

2 5段階の重み付けの基準

重み5=採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格そのもの。重み4=出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項。重み3=一方が明示する中核の理由付け。重み2=一方が触れる補強又は典型的な誤り。重み1=一方が控えめに触れるだけの事項。本記事の重み4は「高く評価された事項」に限定しない。件数の割当てや旧3段階からの機械換算はしていない。

第3 本問の概要

甲社は上場する公開会社・監査役会設置会社である。乙社は投資ファンドで,議決権を平成29年5月の4%から平成30年1月の15%,3月末の20%へ買い増した。P倉庫等の遊休資産を売却して増配することを求める。設問1は1月時点で自主招集と6月定時総会での提案を比較する。振替法の手続は検討対象外である。

設問2では,甲社の取締役会が総会承認を条件に,乙社だけが行使できず取得対価も1円となる新株予約権無償割当てを決定した。乙社が買増しをしないと確約すれば全予約権を無償取得できる条項がある。6月25日総会は議決権90%が出席し,出席議決権の67%が承認した。翌日の乙社の差止め手段・主張・当否が問われ,総会手続は適法とされる。

設問3は決議結果を反転させ,財産処分を総会でも決められる定款変更とP倉庫売却を可決した前提である。地震でQ倉庫が倒壊しP倉庫が必要になった。売却すれば50億円以上の損害が予測され,留保しても資産価値は維持され違約金もないのに,Aが売却を提案・実行した。定款変更の効力とAの会社に対する責任を接続して検討する。

第4 評価項目と重み

1 設問1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1【必須】公開・取締役会設置会社として招集・提案の規律を選ぶ。4間接:PDF9頁・設問1。会社法第297条等PDF7頁・設問1。甲社は公開会社である
2【必須】招集請求には総議決権3%以上の6か月継続保有を要すると示す。5間接:PDF9頁・設問1。会社法第297条等PDF7頁・設問1。100分の3以上
3【必須】取締役に議題及び招集理由を示して招集請求すると説明する。4間接:PDF9頁・設問1。少数株主による株主総会の招集の手続PDF7頁・設問1。招集の理由を示して
4【必須】請求後遅滞なく手続がされない場合の裁判所許可を説明する。4間接:PDF9頁・設問1。少数株主による株主総会の招集の手続PDF7頁・設問1。遅滞なく招集の手続が行われない場合
5【必須】請求日から8週間以内の総会を招集する通知が出ない場合の許可を説明する。4間接:PDF9頁・設問1。少数株主による株主総会の招集の手続PDF7頁・設問1。8週間以内の日を株主総会の日とする
6【必須】平成29年5月の4%保有から招集請求の継続保有要件充足を当てはめる。4間接:PDF9頁・設問1。少数株主による株主総会の招集の手続PDF7頁・設問1。同15%を保有しており
7【必須】自己招集では乙が日時・場所・議題等の招集事項を決定し手続を行う。4PDF10頁・設問1。少数株主は株主総会の招集等の手続を行うPDF8頁・設問1。少数株主が株主総会の招集等の手続
8【負例】自己招集にも303条・305条の提案請求を必要とする誤りを避ける。2記載なしPDF8頁・設問1。議案要領通知請求権(同法第305条)が適用されると誤解
9【必須】議題提案には1%以上又は300個以上の議決権の6か月継続保有を示す。5間接:PDF9頁・設問1。議題提案権(同法第303条)PDF7頁・設問1。100分の1以上の議決権又は300個以上
10【必須】議題提案は総会の権限内で乙が議決権を行使できる事項を対象にする。4間接:PDF9頁・設問1。議題提案権(同法第303条)PDF7頁・設問1。株主総会の決議事項でなければならない
11【必須】議題提案は総会の日の8週間前までに取締役へ請求すると示す。4間接:PDF9頁・設問1。議題提案権(同法第303条)PDF7頁・設問1。株主総会の日の8週間前までに請求
12【必須】議案要領通知請求を議題提案と別の権利として説明する。5間接:PDF9頁・設問1。議案要領通知請求権(同法第305条)PDF8頁・設問1。議案要領通知請求権の行使の手続について説明していない
13【必須】議案要領通知請求の1%又は300個・6か月・8週間前の要件を示す。4間接:PDF9頁・設問1。議案要領通知請求権(同法第305条)PDF8頁・設問1。同項ただし書
14【必須】議案が法令・定款違反である場合の拒絶事由を説明する。3記載なしPDF8頁・設問1。拒絶事由に該当しないこと
15【必須】10%未満の支持で否決された同一議案の3年制限を説明する。3記載なしPDF8頁・設問1。拒絶事由に該当しないこと
16【必須】乙が議題提案・議案要領通知の議決権保有要件を満たすと当てはめる。4間接:PDF9頁・設問1。議題提案権及び議案要領通知請求権PDF8頁・設問1。上記①及び⑥を満たす
17【負例】議題提案・当日議案提案・議案要領通知を区別する。2記載なしPDF8頁・設問1。区別して理解することができていない
18【負例】適法な請求に取締役が応ずる義務を示し裁量拒絶としない。2記載なしPDF8頁・設問1。その裁量により
19【負例】6か月は請求日から遡り議決権基準日から遡るものではないと区別する。2記載なしPDF8頁・設問1。当該基準日から遡って満6か月
20【必須】議事運営への乙の意向反映を二経路で具体的に比較する。5PDF10頁・設問1。議事運営の主導権PDF8頁・設問1。議事運営に少数株主の意向を反映することに支障
21【必須】自主招集では乙が招集・開催の費用を負担し定時総会利用では甲が負担すると比較する。5PDF10頁・設問1。費用及び労力を負担することPDF9頁・設問1。費用及び労力を負担すること
22【必須】自主招集の招集・開催労力と会社側実施の労力負担を比較する。4PDF10頁・設問1。費用及び労力を負担することPDF9頁・設問1。少数株主が自ら株主総会の招集等の手続
23【必須】臨時総会を早期に開けることと6月定時総会を待つことを比較する。4PDF10頁・設問1。時期の選択PDF9頁・設問1。定時株主総会が開催されるのを待たなければならない
24【高評価】会社から決議事項外又は拒絶事由を理由に拒絶される可能性を比較に反映する。(適用条件:発展的比較を行う場合)3記載なしPDF9頁・設問1。拒絶される可能性があること
25【高評価】招集通知・参考書類の作成者又は議長選任の違いを具体的有利不利に結び付ける。(適用条件:発展的比較を行う場合)3記載なしPDF9頁・設問1。議長の選任方法の差異
26【負例】要件差の抽象的比較だけで終わらず乙の具体的選択を説明する。2記載なしPDF9頁・設問1。抽象的な比較検討をしているにとどまる

2 設問2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
27【負例】277条無償割当てと募集新株予約権の無償発行・株主割当てを混同しない。2記載なしPDF10頁・設問2。同法第238条第1項第2号
28【必須】247条を無償割当てへ直接適用できない理由を対象の違いから示す。4PDF10頁・設問2。会社法第247条が類推適用されるか否かPDF10頁・設問2。直接適用することができない
29【必須】差別的条件による株主地位の実質的変動から247条類推を根拠付ける。5PDF10頁・設問2。会社法第247条が類推適用されるPDF10頁・設問2。株主の地位に実質的変動を及ぼす場合
30【負例】210条や360条へ直行して247条の適合性を落とさない。2記載なしPDF10頁・設問2。同法第360条
31【必須】247条1号の法令・定款違反と平等原則の主張を接続する。(適用条件:平等原則ルート採用時)5PDF10頁・設問2。同法第247条第1号PDF10頁・設問2。同法第247条第1号
32【許容分岐】247条2号の著しく不公正な方法と支配権維持目的を接続する。(適用条件:不公正ルート採用時)4PDF10頁・設問2。会社法第247条第2号PDF10頁・設問2。会社法第247条第2号
33【必須】持株比率低下等を株主の不利益のおそれに当てはめる。4間接:PDF10頁・設問2。乙社を差別的に取り扱うPDF10頁・設問2。株主の地位に実質的変動
34【必須】株主資格に基づく割当てと278条2項から109条1項の趣旨が及ぶと理由付ける。(適用条件:平等原則ルート採用時)5PDF10頁・設問2。株主平等の原則PDF11頁・設問2。株主としての資格に基づいて
35【負例】行使後に株主になるという理由で平等原則を適用する誤りを避ける。2記載なしPDF11頁・設問2。新株予約権を行使すると,株主
36【必須】同数割当てでも行使条件・取得対価に実質的差別があると示す。(適用条件:平等原則ルート採用時)4PDF10頁・設問2。新株予約権者の差別的な取扱いPDF10頁・設問2。新株予約権者の差別的な取扱い
37【必須】企業価値・株主共同利益の侵害を防ぐ必要性の枠組みを示す。(適用条件:平等原則ルート採用時)4PDF10頁・設問2。会社の企業価値ひいては株主の共同の利益PDF10頁・設問2。株主の共同の利益が害される
38【高評価】株主自身の必要性判断は正当性を失わせる重大な瑕疵がなければ尊重すると示す。(適用条件:平等原則ルート採用時)5PDF9頁・設問2。株主総会の決議PDF10頁・設問2。重大な瑕疵が存在しない限り
39【高評価】定款の総会権限追加がないため承認は勧告的決議であることを評価する。5PDF10頁・設問2。いわゆる勧告的決議PDF11頁・設問2。いわゆる勧告的決議
40【高評価】賛成議決権の割合を株主判断の正当性の評価に使用する。(適用条件:株主判断尊重を採る場合)3記載なしPDF13頁・設問2。行使された議決権の割合
41【負例】株主判断尊重の立場で投資手法等から裁判所が必要性を直接決めない。(適用条件:株主判断尊重を採る場合)2記載なしPDF11頁・設問2。事実関係自体は
42【必須】必要性と差別的取扱いの相当性を分離し総会可決だけで相当性を肯定しない。(適用条件:平等原則ルート採用時)5PDF10頁・設問2。その主張の当否に関してPDF13頁・設問2。相当性の要件を満たすとするもの
43【高評価】1円の取得対価が乙に経済的損害を与えることを検討する。5PDF10頁・設問2。乙社に経済的損害を与える性質PDF13頁・設問2。非適格者については1円
44【必須】買増し不実行の確約により全予約権を無償取得できる撤退の仕組みを正確に示す。4PDF10頁・設問2。新株予約権の全部を無償で取得PDF11頁・設問2。新株予約権の全部を無償で取得
45【高評価】撤退可能性が相当性を支える反論を認識し影響又は影響しない理由を論ずる。(適用条件:平等原則ルート採用時)5PDF10頁・設問2。乙社に撤退可能性が保障されているPDF13頁・設問2。あるいは影響しないか
46【負例】行使払込金1円と乙への取得対価1円を混同して適正補償としない。2記載なしPDF13頁・設問2。適正な金額であると論ずるもの
47【負例】乙も予約権の割当てを受けることと行使できないことを区別する。2記載なしPDF13頁・設問2。割当てを受けることができないと誤解
48【許容分岐】不公正ルートでは支配権維持・確保を主要目的とする原則を示す。(適用条件:不公正ルート採用時)4PDF11頁・設問2。主要目的ルールPDF12頁・設問2。主要目的ルール
49【許容分岐】株主全体利益を守る特段事情及び防衛の必要性・相当性を例外として検討する。(適用条件:不公正ルート採用時)4PDF11頁・設問2。特段の事情があるかどうかPDF12頁・設問2。対抗手段として必要性や相当性
50【許容分岐】高値買取りを迫る目的の買収という例外類型を検討する。(適用条件:高裁の四類型に基づく例外を採る場合)3PDF11頁・設問2。四つの具体例PDF12頁・設問2。いわゆるグリーンメーラー
51【許容分岐】知財・顧客等を買収者側へ移す焦土化経営という例外類型を検討する。(適用条件:高裁の四類型に基づく例外を採る場合)3PDF11頁・設問2。四つの具体例PDF12頁・設問2。いわゆる焦土化経営
52【許容分岐】会社資産を買収者側の債務の担保・弁済へ流用する例外類型を検討する。(適用条件:高裁の四類型に基づく例外を採る場合)3PDF11頁・設問2。四つの具体例PDF12頁・設問2。債務の担保や弁済原資として流用
53【許容分岐】遊休資産処分・一時的高配当・高価売抜けの例外類型と本件投資目的を比較する。(適用条件:不公正ルート採用時)4間接:PDF11頁・設問2。四つの具体例PDF12頁・設問2。一時的高配当による株価の急上昇
54【負例】敵対的買収者であることだけで濫用的買収者としない。2記載なしPDF12頁・設問2。敵対的買収者であることをもって直ちに濫用的買収者
55【高評価】勧告的総会決議の存在を考慮して主要目的ルールから結論へ進む接続を論証する。(適用条件:不公正ルート採用時)5PDF11頁・設問2。株主総会の決議の意義PDF12頁・設問2。直ちには,主要目的ルールによって結論を導き出す
56【負例】無償割当てを資金調達目的又は募集の有利発行として処理しない。2記載なしPDF13頁・設問2。本来的な目的が資金調達

3 設問3

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
57【必須】定款で総会決議事項を追加できる295条2項の文言を出発点にする。5PDF11頁・設問3。会社法第295条第2項PDF14頁・設問3。何ら制約していない
58【許容分岐】業務執行事項の追加を認める立場を文言・株主意思に基づき理由付ける。(適用条件:有効説採用時)4PDF11頁・設問3。取締役の業務執行権限に属する事項であってもPDF14頁・設問3。株主が定款で株主総会の決議
59【高評価】専門的経営者への判断委託や最適判断阻害から総会権限追加を制約する反対論を示す。(適用条件:両説比較を行う場合)3記載なしPDF15頁・設問3。裁量事項を定款で制約すると
60【高評価】本件定款は取締役会の決定権限を剥奪しないことを評価する。3記載なしPDF15頁・設問3。取締役会の決定権限をはく奪する内容ではない
61【高評価】上場会社で総会へ業務執行事項を加える場合の不都合を具体的に考察する。(適用条件:権限配分の発展的比較を行う場合)3記載なしPDF15頁・設問3。甲社のような上場会社
62【必須】決議1の効力から決議2の効力へ接続する。5PDF11頁・設問3。本件決議1に基づく本件決議2の効力PDF14頁・設問3。本件決議1に基づく本件決議2の効力
63【負例】手続適法だけから内容の有効性を結論しない。2記載なしPDF16頁・設問3。株主総会の手続が適法であったことのみ
64【必須】有効な総会決議の遵守義務を355条で示す。(適用条件:有効説採用時)5PDF11頁・設問3。会社法第355条PDF14頁・設問3。同法第355条
65【必須】地震後のP倉庫の必要性・50億円以上の損害予測を義務判断に使う。4PDF11頁・設問3。50億円を下らない損害PDF14頁・設問3。50億円を下らない損害
66【必須】売却留保による価値下落・違約金等の負担がない点を評価する。4間接:PDF11頁・設問3。不動産価格が下落する兆候PDF14頁・設問3。不動産価格が下落する兆候
67【許容分岐】重大な事情変化後の再度の株主意思確認を怠った任務懈怠を論証する。(適用条件:再決議義務構成採用時)5PDF11頁・設問3。改めて株主の意思を確認PDF14頁・設問3。改めて株主の意思を確認
68【許容分岐】会社利益に反する決議は遵守すべきでない構成を理由付ける。(適用条件:直接不遵守義務構成を採る場合)4PDF11頁・設問3。本件決議2を遵守してはならなかったPDF14頁・設問3。本件決議2を遵守してはならなかった
69【許容分岐】事情変化下でも遵守義務を優先して責任を否定する構成は理由付けて閉じる。(適用条件:遵守優先説採用時)4PDF11頁・設問3。その任務を怠ったとは認められないPDF14頁・設問3。その任務を怠ったとは認められない
70【許容分岐】遊休資産売却という決議趣旨から非遊休資産は対象外とする解釈を理由付ける。(適用条件:決議の限定解釈構成採用時)3記載なしPDF15頁・設問3。遊休資産でなくなった資産
71【許容分岐】無効説では株主意向の尊重の必要性及び誤った遵守義務認識の過失を検討する。(適用条件:決議1無効説採用時)4PDF11頁・設問3。なお株主の意向を示すものとしてPDF15頁・設問3。Aに過失がなかったかどうか
72【負例】経営判断原則の典型場面と即断せず使用するなら趣旨・適用範囲を検討する。(適用条件:常時。適用しない答案に過剰な明示要求をしない)4PDF11頁・設問3。経営判断原則の適用が問題となる典型的な場面ではないPDF15頁・設問3。経営判断原則の適用が問題となる典型的な場面ではない
73【負例】取締役会で諸意見を聴いたことだけでAの責任を否定しない。2記載なしPDF16頁・設問3。様々な意見が述べられたこと
74【必須】決議の効力・遵守義務・事情変化を任務懈怠と過失の判断へ一貫して接続する。5PDF11頁・設問3。会社法第423条第1項PDF15頁・設問3。任務懈怠や過失がなかったかどうか

4 答案全体

一般的な指摘として,設問の立場・前提・配点比30:50:20を守り,条文の文言から制度趣旨・事実評価・効果へ進むこと,判読可能で論理的に記述することが挙げられる。これらの一般的な指摘と,判例原文だけにある補足理由を重み付き74行へ混ぜていない。

5 重みの分布

重み1:0項目,重み2:15項目,重み3:12項目,重み4:28項目,重み5:19項目。総項目数N=74,重み合計W=273である。これは各行から数えた分布であり,公式得点や科目の難易度を示すものではない。

番号2:招集請求には総議決権3%以上の6か月継続保有を要すると示す。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号9:議題提案には1%以上又は300個以上の議決権の6か月継続保有を示す。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号12:議案要領通知請求を議題提案と別の権利として説明する。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号20:議事運営への乙の意向反映を二経路で具体的に比較する。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号21:自主招集では乙が招集・開催の費用を負担し定時総会利用では甲が負担すると比較する。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号29:差別的条件による株主地位の実質的変動から247条類推を根拠付ける。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号31:247条1号の法令・定款違反と平等原則の主張を接続する。適用条件:平等原則ルート採用時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号34:株主資格に基づく割当てと278条2項から109条1項の趣旨が及ぶと理由付ける。適用条件:平等原則ルート採用時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号38:株主自身の必要性判断は正当性を失わせる重大な瑕疵がなければ尊重すると示す。適用条件:平等原則ルート採用時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号39:定款の総会権限追加がないため承認は勧告的決議であることを評価する。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号42:必要性と差別的取扱いの相当性を分離し総会可決だけで相当性を肯定しない。適用条件:平等原則ルート採用時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号43:1円の取得対価が乙に経済的損害を与えることを検討する。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号45:撤退可能性が相当性を支える反論を認識し影響又は影響しない理由を論ずる。適用条件:平等原則ルート採用時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号55:勧告的総会決議の存在を考慮して主要目的ルールから結論へ進む接続を論証する。適用条件:不公正ルート採用時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号57:定款で総会決議事項を追加できる295条2項の文言を出発点にする。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号62:決議1の効力から決議2の効力へ接続する。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号64:有効な総会決議の遵守義務を355条で示す。適用条件:有効説採用時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号67:重大な事情変化後の再度の株主意思確認を怠った任務懈怠を論証する。適用条件:再決議義務構成採用時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

番号74:決議の効力・遵守義務・事情変化を任務懈怠と過失の判断へ一貫して接続する。適用条件:常時。骨格又は評価の分かれ目となるため重み5とした。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

令和元年5月16日の試験実施時の法令・判例を基準とする。会社法はe-Govの改正履歴で確認した平成29年6月2日施行版を使用し,後年の株主提案制限・買収対応指針を遡及させていない。答案本文は空白・改行を除いて5709字である。問題提起,規範,当てはめ,反論,効果・結論の順に論じる。設問3の主構成は再度の株主意思確認義務である。

2 答案

1 設問1

(1)乙社が臨時株主総会を自ら招集する手続

甲社は公開会社である取締役会設置会社であるから,通常は取締役が,取締役会で定めた招集事項に従って株主総会を招集する(会社法296条3項,298条4項。以下,条数のみを示す。)。乙社が直ちに自己の判断だけで臨時総会を招集することはできない。

乙社は,まず,総株主の議決権の3%以上を6か月前から引き続き有する株主として,取締役に対し,総会の目的である事項及び招集の理由を示して招集を請求する必要がある(297条1項)。目的事項は乙社が議決権を行使でき,株主総会の権限に属する事項でなければならない。乙社は平成29年5月の時点で4%を保有し,その後も買い増しているから,平成30年1月には3%以上の6か月継続保有要件を満たす。

請求後,遅滞なく招集手続が行われない場合,又は請求の日から8週間以内の日を総会の日とする招集通知が発せられない場合,乙社は裁判所の許可を得て自ら招集できる(同条4項)。裁判所は甲社の本店所在地を管轄する地方裁判所である(868条1項)。単に8週間が経過するまで待つ必要はなく,遅滞なく手続がされないことも独立の許可事由になる。

許可を得た乙社は,自ら日時,場所及び目的事項等を定め(298条1項),総会の日の2週間前までに株主に書面の招集通知を発し,招集事項を記載する(299条1項,2項2号,4項)。取締役会による招集事項の決定は不要である(298条4項)。これにより,自ら提案する事項を扱う臨時総会の開催を実現できる。

(2)定時株主総会での株主提案

乙社は,取締役に対し,一定の事項を総会の目的とするよう請求できる(303条2項)。公開会社である甲社では,総株主の議決権の1%以上又は300個以上の議決権を6か月前から引き続き有し,総会の日の8週間前までに請求する必要がある。乙社は1%以上の継続保有要件を満たすので,議決権個数の確認によらず請求できる。

これと併せ,提出する議案の要領を招集通知に記載するよう請求できる(305条1項)。この請求も,同じ持株・保有期間要件及び8週間前の期限に服する。いずれも保有期間は請求日から遡って計算し,3月31日の議決権基準日から遡るものではない。法定要件を満たす請求には取締役は応じなければならず,経営上好ましくないとの裁量だけで拒めない。法令・定款違反の議案や,実質的に同一の議案が総議決権の10%以上の賛成を得られず否決されてから3年を経過していない場合は,通知請求が認められない(同条4項)。

さらに,乙社は総会の席上,目的事項について議案を提出できる(304条)。これは事前の議題追加・議案要領通知請求とは異なり,単独株主権である。ただし,甲社では通知された目的事項以外の事項を決議できず(309条5項),当日に新たな議題を持ち出すだけでは足りない。304条ただし書の制限にも服する。

(3)比較

自主招集では,乙社が招集事項・日時・招集通知等を決めて手続を行い,議事運営に自らの意向を反映しやすく,定時総会より早期に開催できる。他方,乙社自身が招集・開催の費用及び労力を負担し,不対応時には裁判所の許可も必要になる。株主提案では甲社が招集・開催の費用及び労力を負担するため乙社の負担は小さいが,6月まで待つ必要があり,招集通知・参考書類等の作成及び開催・運営は会社側が担い,定款上Aが議長となるので,乙社の意向を議事運営に反映する上では支障があり得る。また,決議事項に属しないことや議案の拒絶事由を理由に会社から拒絶される可能性にも注意すべきである。

定時総会の議決権基準日は3月31日であるため,乙社は買増しによる議決権を増やすなら同日までの取得を考慮すべきである。1月時点の15%は提案権要件を十分満たすが,単独で可決できる数ではない。したがって,早急な意思決定を望むなら招集請求,6月開催で足り,他の株主へ提案を周知して支持を集めるなら議題追加と議案要領通知の請求を併用することが適する。

2 設問2

(1)差止めの根拠

本件は,新たな払込みをさせず株主に新株予約権を割り当てる277条の無償割当てである。247条は募集新株予約権の発行を対象とするため,直接適用はできない。しかし,差別的な行使条件・取得条項により株主の持株比率を大幅に低下させ得る点で,違法又は著しく不公正な募集新株予約権の発行と保護の必要が共通する。そこで同条を類推適用し,乙社は甲社に対し,法令又は定款違反若しくは著しく不公正な方法による割当てで,不利益を受けるおそれがあるとして差止めを請求できる。7月25日の効力発生前に,必要に応じ仮処分による差止めを求める。

乙社は割当てを受けても行使できず,他の株主が行使し又は取得対価として株式を得れば,議決権比率が低下する。取得対価も乙社だけ1円である。したがって,不利益のおそれがある。

(2)株主平等原則の趣旨に反するとの主張

ア 109条1項は株式の内容及び数に応じた株主の平等を定める。予約権の行使条件は株式の内容自体ではないから,差異があるだけで直ちに同項違反とはいえない。しかし,株主資格に基づき予約権を割り当てること,278条2項が持株数に応じた割当てを要求することから,無償割当てにも株主平等原則の趣旨が及ぶ。

本件では,1株につき2個という割当数が同じでも,乙社のみ行使できず,取得対価も他の株主の普通株式1株に対し1円である。内容の差が株主の地位に及ぼす効果からみれば,乙社を実質的に差別する。

もっとも,個々の株主の利益は会社の存立・発展を基礎とする。特定株主による支配権取得が企業価値を毀損し,株主共同の利益を害することを防ぐ必要があり,差別的取扱いが衡平の理念に反せず相当性を欠かないなら,直ちに平等原則の趣旨に反するものではない。

イ 防衛の必要性について,甲社は,乙社の従前の短期売買・財産切売り,Bの事業への否定的発言,買増しの経過に照らし,共同利益の侵害を予測したと主張できる。その判断は,会社利益の帰属主体である株主により最終的にされるべきであり,適正な手続を経た総会判断は,前提事実の不存在・虚偽等の重大な瑕疵がなければ尊重すべきである。

本件の招集・議事は適法で,総議決権の90%が出席し,出席議決権の67%が賛成した。乙社は,現在の甲社の切売り計画が示されず,遊休資産売却・増配の提案や役員交代が直ちに共同利益侵害とはいえないと反論できる。過去の手法やSNS発言だけで本件の侵害を確定することはできないが,総会判断の前提事実が虚偽等であるとの事情も示されていないため,必要性について株主判断を尊重する余地は大きい。

なお,定款に別段の定めがない甲社では,無償割当ての決定権限は取締役会にある(278条3項,295条2項)。総会の承認だけで決定権限が移転したとはいえない。本件総会決議は,決定権限を移転する効力を持たない勧告的決議である。しかし,取締役会自身がその承認を条件として決定している。共同利益が害されるかを株主が判断するという観点では,総会に法的な決定権限がないことだけで株主意思の尊重を否定すべきではない。

ウ 他方,相当性は必要性の判断とは別に審査すべきである。他の株主には株式を交付するのに乙社には1円しか交付せず,予約権の価値に見合う補償が保障されていない。譲渡にも取締役会の承認を要し,乙社が売却により自由に価値を回収できるわけでもない。

甲社は,乙社が買増しをしない旨を確約すれば,全予約権を無償取得して希釈化を解消する撤退可能性が設けられていると反論できる。確約だけで株式の売却を要求されず,既存株式を維持できる点は,経済的損害を回避する実質的選択肢として相当性を支える。もっとも,乙社は従前の持株数に応じた権利を維持するために,将来の適法な買増しを放棄させられる。しかも,無償取得は取締役会が行うことができるとされるにとどまる。撤退の仕組みに一定の合理性はあるが,価値相当の金銭補償がなく,乙社の選択と不利益解消の確実性にこのような制約がある以上,本件の強い差別を正当化するには足りないと解する。

よって,乙社の平等原則の趣旨違反の主張は認められ,247条1号の類推適用による差止めが認められると解する。

(3)著しく不公正な方法であるとの主張

乙社は,取締役会が,乙社の持株比率を下げて支配権取得を阻止することを主要な目的として割当てを決定したから,247条2号の著しく不公正な方法に当たると主張できる。会社の支配権を争う場面で,取締役会が現経営陣又はこれを支持する株主の支配権維持・確保を主要目的として新株予約権を発行することは,原則として不公正である。取締役は株主が選任する執行機関であり,自らを選ぶ株主構成を操作して支配権の帰属を決めることは,機関権限分配に反するからである。

ただし,株主全体の利益を守る特段の事情があり,防衛手段として必要性・相当性がある場合は許され得る。具体的には,高値買取りを迫る目的の買収,知財・顧客等を買収者側へ移す焦土化経営,会社資産を買収者側の債務の担保・弁済に流用する計画,遊休資産の切売りと一時的高配当・高価売抜けによって会社を食い物にする目的などが問題となる。敵対的買収であることと,このような濫用目的があることは異なる。

もっとも,本件は勧告的ではあるが総会承認を条件とするので,取締役会限りで株主構成を操作する場合の規範から直ちに差止めを導けない。乙社は,勧告的決議には法的決定権限がなく,取締役会の主要目的を正当化しないと主張できる。これに対し,甲社は,承認を条件に自ら決定したので株主による支配権選択を無視したものではないと反論できる。総会意思は共同利益の必要性判断では尊重し得るが,承認だけで差別の内容まで適法になるわけではない。

乙社の過去の短期売買・切売り,Bの発言は,特に上記の一時的高配当・高価売抜け目的を疑わせる。しかし,本件で求めているのは未使用のP倉庫の適正価格での売却と増配であり,事業に必要な財産の流出や自己の債務への流用,甲社を食い物にする現在の計画まで示されていない。経営陣の入替えの可能性だけでも特段事情は確定しない。加えて,1円での取得等の差別は前記のとおり相当性を欠く。よって,総会意思を考慮しても本件設計を正当化するには足りず,247条2号の類推適用による差止めも認めるべきである。

3 設問3

(1)本件決議1の効力

甲社は取締役会設置会社であり,株主総会は法律及び定款で定めた事項に限り決議できる(295条2項)。したがって,業務執行の決定に係る事項でも,定款により総会の権限に加えることが原則として可能である。

重要な財産の処分は取締役会が決定すべき事項である(362条2項1号,4項1号)。しかし,同条4項は重要事項を取締役個人に委任できないと定めるものであり,株主総会による決定を禁止するものではない。会社利益の帰属主体たる株主が定款により自らの決定権限を拡張することは,295条2項の文言・趣旨にも整合する。確かに,上場会社では多数の株主が個別の業務執行に介入すれば,専門的経営者による迅速・最適な判断が妨げられるおそれがある。しかし,295条2項は定款による追加事項に一般的な制限を置いておらず,株主が特に意思決定を望む事項を定款で加える余地を認めるべきである。しかも,本件の追加条項は総会「によっても」処分を決定できるとするため,取締役会の権限を全面的に奪うものでもない。

定款変更は466条,309条2項11号の特別決議による。本問では決議1が可決され,招集・議事も適法という前提であるから,定款変更は有効である。これに基づく本件決議2も甲社の株主総会の権限内の適法な業務執行決定となる。

(2)Aの任務懈怠

取締役は,適法な株主総会の決議を遵守し,会社のため忠実に職務を行う義務を負う(355条)。また,会社との委任関係に基づく善管注意義務を負う(330条,民法644条)。決議への賛否や経営判断の好みだけでその履行を拒むことは許されない。

もっとも,決議遵守は会社利益を実現するための義務である。決議後の予見し難い事情変化により,決議の履行が会社に重大な損害を生じさせることが明らかとなった場合まで,機械的履行を義務付ける趣旨ではない。取締役は,履行を留保して事情を株主に説明し,決議の変更を求めるなど,会社利益と株主の意思決定を両立させる措置を採るべきである。

本件では,決議時に遊休資産であったP倉庫が,Q倉庫の地震による倒壊後は海外貨物の保管に不可欠となった。その売却による損害は50億円を下らないと予測され,他方,売却を中止しても資産価値は維持され,違約金等の負担もない。15億円の売却を直ちに実行することは,この重大な損害を伴う事情の下では合理的でない。

本件は,総会決議の効力と遵守義務が直接問題となる場面であり,単に経営判断原則を適用して判断過程が不合理でないとして免責すべき場面ではない。Aは,決議2をそのまま実行するのでなく,売却を留保し,臨時総会等で新事情を説明して変更を求めるべきであった。それにもかかわらず,取締役会に売却議案を提案し,自ら賛成して実行したから,善管注意義務・忠実義務に違反する。取締役会の多数決や,事情変化前の総会決議があったことは免責理由にならない。

(3)その他の責任要件

Aは取締役会で損害発生及び中止時の負担の不存在を指摘されており,少なくとも過失がある。売却の結果,保管・物流機能を失って顧客を奪われ,甲社に多大な損害が発生したので,任務懈怠と損害との因果関係も認められる。売却代金15億円自体を損害としたり,地震そのものの損失を全てAに帰属させたりせず,売却を留保していれば回避できた営業損失等を損害として把握すべきである。

したがって,Aは甲社に対し,423条1項に基づき,任務懈怠によって生じた損害を賠償する責任を負う。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

設問1の手続・比較は番号1~26,設問2の差止めは27~56,設問3の定款・義務・責任は57~74に対応する。設問2の主要目的ルールの機関権限分配という詳細な根拠は東京高裁原文に基づく補足であり,公式に直接ある評価項目として重み付き集計に加えていない。

(2) 自主招集と株主提案

番号20~23では,議決権要件の数字だけでなく,議事運営,費用・労力の負担者,時期を具体的に比較する。保有期間は請求日から遡り,定時総会の基準日とは別である。303条・304条・305条は,議題,席上の議案,事前通知という異なる役割である。

(3) 必要性,相当性,勧告的決議

番号38~45の中心は,必要性について株主の判断を尊重することと,相当性について差別の内容を別に審査することである。取締役会の決定を総会が承認しても,定款上の総会権限が追加されていなければ勧告的決議である。撤退可能性は相当性を支える事実であるが,結論を自動的に決めない。本答案は,保有株式を維持できる選択肢という長所を認めた上で,買増し放棄・任意取得・補償欠如から相当性を否定する。相当性を肯定する答案も,この反対評価と対峙した理由付けが必要である。

(4) 主要目的ルールと総会の意思

番号48~55は,不公正ルートを採る場合の条件付き事項である。主要目的ルールは,現経営陣の保身だけに限られない。株主全体の利益を守る例外,敵対的買収と濫用的買収の区別,勧告的総会決議の位置付けを経由して結論を出す。平等原則ルートを採る全答案へ,高裁の四類型を累積して要求する表ではない。

(5) 総会決議の遵守と取締役責任

番号63~68の骨格は,決議1の効力,決議2の効力,355条の遵守義務,地震後の新事情,具体的な任務懈怠という連鎖である。適法な決議を遵守したという一事で免責せず,再度の意思確認をしなかったことを論じる。公式は,直接の不遵守義務,遵守優先による責任否定,決議の限定解釈,定款変更無効説を前提とする株主意向の尊重・過失なども,理由付けに応じて検討対象としている。番号69~71はこれら別構成であり,本答案が全てを採用したとはしない。

(6) 答案の弱点と扱わなかった事項

本答案の差止め結論及び定款変更有効・責任肯定は,公式が指定した唯一の結論ではない。総会の判断を尊重しつつ,補償と撤退可能性をどう評価するかには議論の余地がある。7月基準日の実際の乙社の持株比率,損害の確定額は与件にない。3月末20%を後の比率と同一視せず,50億円の予測だけで賠償額を確定しない。振替法手続,設問2の招集・議事の瑕疵,第三者への429条責任は本答案の対象外である。

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これらの後年の関連制度・実務記事は補助的な閲覧先であり,本問当時の答案の法的根拠ではない。

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

法務省・令和元年司法試験論文式試験問題(民事系科目)
法務省・令和元年司法試験論文式試験問題出題の趣旨
法務省・令和元年司法試験の採点実感(民事系科目)

問題は物理頁5~8,出題趣旨は第2問の物理頁9~12(12頁は第3問見出し前),採点実感は第2問の物理頁7~17を実読した。第2問の総論及び末尾の教育に関する記載を含む。全頁の抽出文字数を測り,文字数0の頁はなかった。同じPDF内の別問題の内容は評価根拠に用いていない。

2 法令

e-Gov・会社法(平成29年6月2日施行版)

297条,298条,299条,303~305条,124条,247条,277~279条,109条,295条,355条,362条,423条等の原文を確認した。歴史版の取得・改正履歴を照合し,試験翌日以降の改正は本件法状態の根拠に用いていない。

e-Gov・民法(平成31年1月13日施行版)

善管注意義務の補足法源として644条を原文確認した。これは公式資料から抽出した評価項目を追加する根拠ではない。

3 裁判例

最高裁第二小法廷平成19年8月7日決定・平成19年(許)30号
東京地裁平成19年6月28日決定・平成19年(ヨ)20081号
東京高裁平成17年3月23日決定・平成17年(ラ)429号

最高裁決定は全11頁を読み,法廷意見の株主判断尊重,相当性及び不公正の命題を確認した。地裁決定は物理頁15~19の類推適用・平等原則の理由,高裁決定は物理頁12~17の主要目的ルール・例外類型・目的認定を確認した。高裁決定は旧商法下の募集発行事案であり,本件の無償割当て・総会承認との違いを踏まえて参照している。高裁原文は前半1~9頁も読んだが,本問の主要目的ルートの根拠として用いた範囲は12~17頁である。

4 確認状態

Confirmed=一次資料の実読範囲。Source statement=公式資料が述べる評価内容。Inference=本件への当てはめ,評価項目の切り分け,重み及び採用構成。Unknown=与件にない基準日持株比率・確定損害額,未利用データベースでの検索結果。原文の部分確認を全文確認に,未検索を不存在に置き換えていない。