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役員報酬を0円にして非課税世帯になれるか―内部留保、役員貸付金、社会保険、給付制度の区別(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

本記事は、会社の代表者又は役員が役員報酬を0円とし、会社に利益を残したり、会社から生活資金の貸付けを受けたりする場合に、住民税非課税世帯、社会保険及び各種給付がどのように関係するかを説明するものである。

結論として、役員報酬を0円にすれば、すべての制度で「所得0円」として扱われ、社会保険料を負担せず、各種給付を受けられるというものではない。

①法人と役員個人、②税法上の所得、③社会保険上の使用関係及び報酬、④各給付制度の所得・資産要件を分けて確認する必要がある。会社の内部留保は直ちに個人所得にはならない一方、会社が個人の生活費を負担したり、貸付金を返済させずに放置又は免除したりすれば、給与又は経済的利益として扱われることがある。

本記事の基準日は令和8年9月22日である。税額、保険料及び給付要件は改正されるため、実際の申告・申請時点の法令、自治体の案内及び個別制度を確認する必要がある。

第2 会社の財産と役員個人の所得・資産は別である

株式会社その他の法人は、株主又は役員とは別の権利義務主体である。会社の預金、売掛金、不動産及び有価証券は、原則として会社の財産であり、代表者が一人株主であっても、その全額を自由に個人の生活費として使えるわけではない。

したがって、会社に利益剰余金又は預金があることだけから、同額が役員個人の給与所得になるわけではない。他方、役員は自社株式を個人資産として保有しており、会社の純資産、収益力、配当可能性、換価可能性などが株式価値や現実の支払能力の評価に影響することはある。

「会社のお金は個人所得ではない」という命題と、「会社の経済力は個人に全く関係しない」という命題は同じではない。税、社会保障、婚姻費用、相続、強制執行その他の場面ごとに、何を判定対象としているかを確認する必要がある。

第3 住民税非課税世帯の判定

1 前年の個人所得で判定する

一般に「住民税非課税世帯」とは、その世帯に属する全員について個人住民税の均等割が課されていない世帯をいう。判定の中心は各世帯員の前年の合計所得金額等であり、会社の法人所得そのものではない。

ただし、役員給与、配当、会社から受けた経済的利益その他の個人所得があれば、その所得区分に応じて住民税の判定へ反映される。世帯の範囲、扶養親族の人数、障害者・未成年者・寡婦・ひとり親への特則及び生活扶助受給の有無も確認する必要がある。

2 大阪市の令和8年度課税分以降の基準

大阪市では、同一生計配偶者及び扶養親族がいない人について、令和8年度課税分以降、前年の合計所得金額が45万円以下であれば、市民税・府民税の均等割及び所得割並びに森林環境税が非課税となる。給与所得だけの場合の給与収入の目安は110万円以下である。

同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合は、35万円に本人・同一生計配偶者・扶養親族の人数を乗じ、21万円及び10万円を加えた額が非課税限度額となる。自治体及び年度によって案内を確認すべきであり、給与収入額と合計所得金額を混同してはならない。

3 会社の内部留保と自社株式

未配当の会社利益が直ちに株主個人の配当所得になるわけではない。会社が利益を留保したまま正当に事業へ使用している場合、法人所得と株主個人の所得は区別される。

しかし、会社の口座から役員の家賃、食費、教育費又は私的なカード利用代金を支払っている場合、名目が「経費」「仮払金」「貸付金」であっても、その実態に応じて給与、配当、貸付け又は債務免除として扱われ得る。決算書の役員貸付金、仮払金及び未収入金だけでなく、総勘定元帳、領収書、返済実績及び資金使途を確認する必要がある。

第4 会社から個人へ利益を移す主な方法

1 役員給与

役員給与は役員個人の給与所得となる。法人側で損金算入するためには、原則として定期同額給与、事前確定届出給与又は一定の業績連動給与の要件を満たす必要がある。期中に都合よく増減した給与は、法人側で損金不算入となることがある。

2 配当及び役員退職給与

会社が株主へ剰余金を配当すれば、株主個人の配当所得等となる。役員退職給与は、退職の事実、職務内容、勤続年数、支給額の相当性及び決議手続を確認する必要がある。報酬0円であっても、配当又は退職給与を受ければ、個人側の所得が常に0円となるわけではない。

3 会社による私的費用の負担

国税庁は、会社による役員の個人的費用の負担、役員に対する債務免除、資産の低額譲渡、住宅の無償又は低額提供などを、実質的に給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらす「経済的利益」の例としている。

金銭の役員報酬を0円としても、会社が役員の生活費を継続的に負担していれば、給与課税等の問題は残る。会計科目の名称ではなく、誰のための支出であるか、返済義務があるか、実際に返済されているかによって判断する。

4 会社から役員への貸付け

会社から役員への貸付けは、貸付契約、金額、利率、返済期日、返済方法、担保、資金使途及び承認手続を明確にし、実際に契約どおり返済する必要がある。返済能力及び返済実績を欠く貸付けは、実質的な利益供与又は回収不能債権として問題になり得る。

国税庁は、令和8年中に会社の自己資金を役員へ貸し付ける場合の利息相当額を原則年1.3%としている。会社の借入金を原資とする場合はその借入利率を用い、平均調達金利等の合理的な利率による場合などには例外がある。無利息又は低利であれば、原則として基準利息と実際の利息との差額が給与として課税される。

取締役と株式会社との取引は、会社法上の利益相反取引に該当し得る。取締役会設置会社か否か、取引主体、承認機関及び事後報告の要否を確認し、議事録を残す必要がある。

第5 役員報酬を0円にする場合の会社法・法人税

役員報酬を0円とすること自体が常に違法というわけではない。しかし、株式会社の取締役報酬は、定款に定めがないときは株主総会決議で定めるのが原則であり、実際の報酬額又は算定方法を適切な機関で決定し、議事録その他の記録を残す必要がある。

法人税では、役員給与を後から自由に増減し、利益の出た年度だけ支給することを抑制する規律がある。国税庁の案内によれば、定期同額給与の通常改定は、原則として事業年度開始から3か月以内の改定等に限られ、臨時改定事由又は業績悪化改定事由にも要件がある。

したがって、年初に報酬0円としながら、生活費が不足した月だけ会社から金銭を受け取る運用は、役員貸付金、臨時給与又は経済的利益の問題を生じさせる。報酬、貸付け、立替経費及び配当を区別し、各取引に対応する決議、契約、証憑及び会計処理をそろえる必要がある。

第6 社会保険は報酬0円だけで決まらない

法人事業所は原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となり、役員についても、法人の経営へ参画する経常的な労務の提供と、その対価として法人から経常的に受ける報酬があるかなどにより、被保険者資格が判断される。

日本年金機構の疑義照会回答は、役員報酬が低額であることだけから一律に資格を失わせるのは妥当でなく、報酬決定の経過、業務内容、他職との兼務、実費弁償かどうかなどにより、実態に基づき総合判断するとしている。逆に、役員報酬が形式上あるだけで、経営への参画又は労務提供の実態がなければ、当然に被保険者資格が認められるわけでもない。

報酬0円への変更、資格喪失届又は被扶養者認定を行う場合は、年金事務所又は保険者へ事実関係を示して確認すべきであり、「報酬を0円にすれば自動的に社会保険から外れる」と考えるべきではない。

第7 給付制度ごとに所得要件と資産要件を確認する

1 住民税非課税を参照する給付

給付金、保険料軽減、高額療養費の区分、就学支援その他の制度には、住民税非課税世帯であること又は住民税額を参照するものがある。しかし、対象年度、基準日、世帯の定義、扶養関係、申請の要否及び資産要件は制度ごとに異なる。

「非課税世帯になれば、すべての給付を受けられる」という横断的な制度はない。制度名を特定せずに受給可能性を論じることはできない。

2 生活保護

生活保護は住民税非課税世帯であることだけを要件とする制度ではない。厚生労働省は、世帯員全員が利用し得る資産、能力その他あらゆるものを最低生活の維持に活用することを前提とし、預貯金及び生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等して生活費に充てるとしている。

会社の財産と個人の財産は別であるものの、一人会社の株式、会社への貸付金、役員が会社から受ける利益、会社財産の私的利用及び会社から資金を得られる現実的可能性は、個別の資産・収入・能力調査で問題となり得る。法人格を形式的に介在させただけで、実際に利用できる資源が審査対象から外れるとは限らない。

3 介護保険の補足給付その他の制度

低所得者向け制度の中にも、預貯金、有価証券その他の資産上限を設けるものがある。例えば、介護保険施設等における食費・居住費の負担軽減である補足給付は、所得だけでなく預貯金等の額も確認する。

他方、住民税の非課税判定それ自体は、通常、個人の保有資産額を直接の要件としていない。同じ「低所得者向け」という説明がされる制度でも、所得のみをみる制度、課税状況をみる制度、資産をみる制度、世帯全体をみる制度がある。

第8 婚姻費用・養育費との関係

婚姻費用又は養育費の算定は、住民税非課税世帯又は社会保障給付の判定とは目的と基準が異なる。一人会社に内部留保があるだけで、その全額を役員個人の年収とみなすことはできないが、過去の役員報酬・配当、会社と個人間の貸付金・仮払金、会社負担の私的支出及び報酬を自ら決定できる立場などから、現実の収入又は潜在的稼働能力が争われることがある。

この点は「給与収入が低くても金融資産が多い場合の婚姻費用・養育費-配当・売却益・含み益・元本の扱い(AI作成)」で詳しく説明している。

第9 弁護士が確認する資料

  • 定款、株主名簿、役員構成及び議決権割合
  • 株主総会・取締役会の役員報酬及び貸付承認の議事録
  • 直近3年程度の法人税申告書、決算書、勘定科目内訳明細書及び総勘定元帳
  • 役員貸付金、仮払金、立替金、未収入金及び役員借入金の明細
  • 金銭消費貸借契約書、返済予定表、利息計算及び実際の返済記録
  • 会社及び個人の預金通帳、クレジットカード明細、領収書及び資金使途
  • 所得税・住民税の申告書、課税証明書及び非課税証明書
  • 健康保険・厚生年金保険の資格記録及び報酬月額変更の資料
  • 利用しようとする給付制度の名称、基準日、世帯範囲、所得要件及び資産要件

第10 まとめ

役員報酬0円、会社への内部留保及び会社からの貸付けは、それぞれ別の法律関係である。税負担、社会保険料又は給付だけを目的として名目を付け替えても、会社から個人への経済的利益、返済実態、会社法上の手続及び各制度の資産・所得要件によって再評価される。

実務では、まず利用を検討する制度を特定し、次に会社から個人へ移転した価値をすべて洗い出し、最後に決議、契約、会計処理及び実際の資金移動が一致しているかを確認する必要がある。

第11 出典・参考資料