第1 本記事の対象と結論
1 扱う問い
「学習に使わない」と書いてあっても―AIサービス規約の派生データ条項(ログ・分類結果・利用統計・フィードバック)の読み方と弁護士の守秘義務では,海外の主要なAIサービス5社の規約を取り上げ,入力と出力を学習に使わないとする条項(以下「学習条項」という。)と,入力から生じるデータや入力そのものを提供者が学習以外の目的に使えるかを定める条項(以下「派生データ条項」という。)が別に定められていることを確認した。
本記事は,同じ観点から,国内のリーガルテックのサービスと,国産の大規模言語モデル(LLM)又は国内のAI基盤を使ったサービスの公開されている規約を比較する。
法律事務所が契約書審査,リサーチ又は文書作成にこれらのサービスを使うとき,依頼者の情報がどう扱われるかを判断する材料とすることが目的である。
基準日は令和8年9月20日であり,各社の規約・公式資料はこの日に確認したものである。
本記事は規約・公式資料の文言から読み取れる範囲の整理であり,各社の実際の運用を確認したものではなく,各社のサービスの優劣を評価するものでもない。
規約は変更されることがあるため,導入や更新のときは改めて原文を確認する必要がある。
規約本文に条番号の表示がない文書については,条番号を示さずに文言で特定した。
2 結論の要旨
国内のサービスでも,学習条項で「学習に使わない」と約束した上で,派生データ条項で入力データの分析,サービス改善,新サービスの開発,マーケティング又は第三者への許諾を認める規約が少なくない。
学習条項だけを見て依頼者の情報を入力してよいと判断することはできない。
他方,①アップロードした文書そのものは学習にも統計化にも使わず,利用ログだけを匿名化・統計化して使うと切り分けるもの,②入力情報を利用せず第三者にも提供しないと一律に定めるもの,③有償プランと無償プランで扱いを分けるものなど,範囲を絞った書き方もある。
また,よくある質問(FAQ)の説明と規約本文が一致していない例,同じサービスで古い版の規約が別の場所に残っている例,国産を名乗るサービスでも契約の相手方や準拠法が外国である例があるため,規約本文を,実際に契約する版と相手方まで確かめる必要がある。
第2 比較の視点
各社の規約を,次の4点で見た。
①学習条項=入力と出力をAIモデルの学習に使うか。使わない旨の約束か,利用者が申し出て止める方式(オプトアウト)か,利用者の同意があるときだけ使う方式(オプトイン)か
②派生データ条項=学習とは別に,入力データ,利用状況のデータ,統計情報を提供者自身の目的(サービス改善,新サービス開発,マーケティング,第三者提供等)に使えるか。使えるとして,匿名化・統計化の限定や目的の限定があるか
③フィードバック等=利用者の評価や意見をどう扱うか
④相手方・保存場所・準拠法=背後で使う基盤モデルの提供者,データの保存場所,日本法が準拠法か
第3 国内のリーガルテック
1 Hubble
契約書管理サービスのHubbleの利用規約(令和8年8月5日改訂)19条は,アップロードした情報と本サービス上で作成した情報(ユーザーデータ等)について,「学習用データセット又はモデルの生成、当社AIを含む本サービスの改善や品質向上、新規サービスの開発や統計情報の生成といった目的に基づく二次的な利用は行わない」と定めている。
他方,同じ条の次の項は,利用情報,使用状況,アクセスログ等(利用情報等)について,特定のユーザー又は個人を識別できないよう抽象化,匿名化又は統計化した上で,新規サービスの開発その他同社の事業活動のために,第三者への開示又は公開を含めて利用できるとしている。
文書本体とログを分け,文書本体は二次利用をしないと明記し,ログだけを匿名化・統計化の条件付きで使うという書き方である。
同規約のAI機能に関する特約は,基盤モデル(Azure OpenAI Service及びVertex AI)での入力データの処理地域を日本国内に限定し(3条),基盤モデルの提供企業に不正監視の目的でも入力データを保持させないとしている(4条)。
2 LEGAL BRAIN(弁護士ドットコム)
弁護士ドットコムのLEGAL BRAINの利用規約(agent.legalbrain.comに掲載。令和8年7月30日改定)3条は,利用者の明示的な同意がない限り,入力個人情報等及び生成文章等を「大規模言語モデル等の生成AIの学習のために利用しません」と定めている(オプトイン方式)。
他方,同じ3条は,利用者が入力した質問と生成文章(生成文章等)について,利用者が同社に対し,同社サービスの提供,維持,開発,改善等のために「複製、改変、加工、分析、第三者への許諾その他のあらゆる利用を含みます」とする利用を許諾し,著作者人格権を行使しないことを承諾すると定めている。
学習の除外は「生成AIの学習」に限られており,それ以外の開発・改善・分析・第三者への許諾は,この許諾の範囲に含まれる。
同規約9条は,登録された情報を個人又は法人が特定できないよう処理した上で統計的に分析し利用すること,及び個人又は法人が特定されない形式に情報を加工した上で,同社の出版,情報配信,マーケティングその他のサービスに活用するため,提供情報を利用する場合があることも定めている。
外部連携サービス等の一覧には,Amazon Bedrock,Claude(Anthropic),Gemini(Google)等が掲げられている。
なお,基準日に同サービスのもう一つの場所(research.legalbrain.com)に掲載されている利用規約は,令和7年5月23日制定・施行とされた版で,利用者が入力した質問について「当該利用者は当社に対して当該権利を全て譲渡するものとします」と定め,学習に使わない旨の条項を置いていない。
同じサービスについて内容の違う版が並んで掲載されている状態であるから,どちらの版が自らの契約に適用されるかを確認しておく必要がある。
3 LAWGUE(FRAIM)
文書作成支援サービスのLAWGUEの利用規約(令和7年8月1日改定)8条は,ユーザーによる利用状況その他本サービスの利用に関して同社が受領する情報(取得情報)を,本サービスの提供,維持及び改善並びに同社における新製品の企画開発の目的で,分析,解析その他の方法により利用できるとし,個人を特定できない形での統計的な情報を同社の裁量で利用及び公開できるとしている。
同規約17条は,ユーザーが提供した情報(本情報等)の著作権を同社が取得しないとしつつ,本サービスの提供・維持・改善に必要な範囲等において,「本契約終了の前後を問わず、本情報等を無期限に利用することができる」と定めている。
学習条項は,基準日に確認した範囲では見当たらなかった。
4 Legalscape
法律文献のリサーチサービスのLegalscapeの利用規約(令和6年7月1日改定)19条の2は,本サービスの提供・改善,新サービスの開発,利用状況のモニタリング等のため,利用状況に関するデータ(利用データ)を収集し利用するとしている。
この条には,匿名化や統計化の限定はない。
学習条項は,基準日に確認した範囲では利用規約に見当たらなかった。
5 LegalOn(LegalOn Technologies)
契約書審査サービスのLegalOnについては,製品の利用規約本文は公開されていない。
同社のFAQは,アップロードした契約書データが学習に使われるかという問いに対し,外部のAIモデル提供事業者へ送信するデータが各事業者のAIモデル学習に利用されることはないとした上で,「お客様からお預かりしたデータは、厳重な管理の下、サービス提供、機能改善、AIの精度向上等の目的でLegalOnが利用する場合があります」と説明している。
外部事業者での学習は否定されているが,同社自身がAIの精度向上等に使うことは除かれていない。
6 OLGA(GVA TECH)
GVA TECHのOLGA(旧GVA assist)については,利用規約本文は公開されていない。
同社のプライバシーポリシー(令和8年5月26日制定)は,個人情報の利用目的として,特定の個人又は団体を識別できない形式に加工した統計データを作成すること,及び「市場分析、マーケティングの目的で統計データを第三者に提供するため」を挙げている。
これは個人情報についての定めであり,契約書等の入力データ全般の扱いを定めたものではない。
7 第一法規の生成AIサービス
第一法規の「生成AIサービス利用規約」(令和7年8月25日施行,令和8年8月5日改正施行)は,D-Books research PLUS等の同社の生成AIサービスに適用される。
同規約4条2項は,ユーザーがプロンプトについて,同社に対し,AIサービスの機能及び使用感の向上・改善,新商品の開発その他同社の事業活動に必要な目的での利用(「第三者への提供及び再利用許諾を含みます。」)を無償・無期限で許諾し,この許諾はサービスの利用を終えた後も継続すると定めている。
「学習」の語はこの規約に見当たらない。
他方,同規約は,事案を特定できる情報,個人情報及び機密情報の入力を禁じている。
8 規約本文が公開されていないサービス
契約書管理サービスのMNTSQについては,利用規約やAIのデータ利用に関する方針は公開されておらず,プライバシーポリシーが個人情報の利用目的に本サービスの開発又は改善を挙げているにとどまる。
判例秘書(LIC)については,利用規約本文は公開されておらず,改定の告知によれば,令和8年9月7日の改定で会員がデータをAIモデルの学習等に使うことを禁じる規定が加えられたが,提供者側が入力データをどう扱うかは公開資料では分からない。
これらのサービスでは,導入時に個別の契約書面で確認するほかない。
第4 国産LLM・国内のAI基盤
1 さくらのAI Engine(さくらインターネット)
さくらインターネットの「さくらのAI Engine」の約款(令和7年9月24日制定)10条2項は,「当社は入力情報を利用せず、また第三者(モデル提供者を含みますが、これに限りません。)に提供しません。」と定め,入力情報が同社又はモデル提供者においてAIの学習に利用されることもないとしている。
同条1項は,入力情報と出力情報を原則として保存せず,保守や障害対応のために一定期間暗号化して保存した後に削除するとしている。
今回確認した中で,入力情報の利用を最も明確に否定した書き方である。
なお,このサービスでは国内外の複数のモデルを選べ,NECのcotomiもその一つとして提供されている。
2 PLaMo(Preferred Networks)
Preferred NetworksのPLaMoのAPI・チャット・翻訳サービスの利用規約は,有償のサービスに関するコンテンツについて,同社は本サービス,新サービス又はAIモデルの開発若しくは改善の目的で閲覧又は利用することはないとする一方,無償のサービスに関するコンテンツについては,これらの目的で閲覧又は利用する場合があるとしている。
同社の料金プランの説明でも,入力データを学習に利用しないこと及び入力データを保持しないこと(ZDR)は,有償プランの項目とされている。
利用者からのフィードバック(意見・要望)は,同社が制限や対価なく使用できるとされている。
準拠法は日本法である。
3 tsuzumi(NTT)
NTTのtsuzumiのうち,Microsoft Azureのマーケットプレイスで提供される版のライセンス規約6条2項は,tsuzumiが各ユーザーの専用環境に置かれるため,提供者が「ユーザが入力した情報を取得することはなく」,ユーザーの入力した情報が他のユーザーのtsuzumiの学習に用いられることもないとしている。
提供者に入力が渡らない構造であり,派生データ条項に当たる定めは見当たらない。
ただし,NTTデータの利用ガイドは,Azureでの最初の提供形態(MaaS)の提供リージョンを米国東部2に限るとし,tsuzumi 2についても,本番で使う場合は国外へのデータ通信を考慮するよう求めている。
この形態では,データの扱いは実質的にMicrosoftとの契約に委ねられる。
NTTデータは,商用の導入では同社のプライベート環境の利用を前提とすると説明しており,NTT西日本はクラウドを介さずローカルネットワーク上で稼働させる構成を発表している。
4 Takane(富士通)
富士通の「Fujitsu クラウドサービス Generative AI Platform」のサービス仕様書(令和7年10月1日)は,同社は入力データを本サービスで提供するLLMの学習及びファインチューニングに利用しないと定めている。
他方,同じ仕様書は,契約者から開示されたアイデア,ノウハウ,コンセプト,提案,フィードバック等を,同社等の技術の改善やビジネスへの活用を含む「いかなる目的のためにも」,対価の支払いなく,地域や期間の制限なく自由に利用できるとしている。
また,同仕様書の別紙として付されたTakaneの使用許諾契約の相手方はカナダのCohere社であり,米国外の顧客についてはカナダ・オンタリオ州法が準拠法とされ,同社が電子的に保管された顧客の秘密情報を保持できる旨の条項もある。
5 ELYZA Works with KDDI
KDDIが提供する「ELYZA Works with KDDI」の利用規約(令和8年6月1日改正実施)は,ELYZAが,適用法令上認められる範囲において,入力データ及び出力データ(個人情報を除く。)を,「ELYZAの提供するサービスの改良・拡張等並びにELYZAの新規サービス開発等(人工知能の研究開発を含みます。)のために利用」することができると定め,入力データが他の企業に共有されることは禁止するとしている。
他方,KDDIのサービス紹介ページのFAQは,デフォルトで顧客のデータがAIの学習に利用されない設定であると説明しているが,規約本文にはこれに対応する学習条項が見当たらない。
同規約には,契約者の側の守秘義務の定めはあるが,提供者の側が顧客データの秘密を守る旨の定めは見当たらなかった。
FAQによれば,背後ではGemini及びClaudeが使われている。
6 Rakuten AI for Business(楽天モバイル)
楽天モバイルの「Rakuten AI for Business 利用契約約款」(令和8年4月30日改定)17条は,顧客は,本サービスの維持,改善(生成AIモデルの訓練を除く。)の目的で,楽天グループ及び楽天グループが指定する第三者がコンテンツを使用する「永久かつ撤回不可能な権利を無償で許諾します。」と定めている。
同約款29条は,楽天側が,契約約款の履行状況を確認する必要がある場合に,顧客が入力したインプット又は生成されたアウトプットを「閲覧・謄写その他の処分をすることができる」としている。
学習は除かれているが,改善目的の利用は期間の限定も撤回の余地もなく,指定された第三者にも及ぶ書き方である。
基盤にはOpenAI,Google及びAnthropicのモデルが使われている。
7 KDDI Conata Data Agent
KDDIの「KDDI Conata Data Agent」の利用規約(令和8年8月1日改正実施)は,学習について定めていない。
同規約は,同社又は同社に使用許諾を行っている第三者が,利用状況,利用頻度等に関する統計数値を「利用又は解析し、二次加工して活用することができる」としており,対象は統計数値に限られるが,目的の限定はない。
8 Sakana AI
Sakana AIのAPIプラットフォーム利用規約(令和8年7月21日制定)は,同社が機械学習モデルの学習・改良その他の情報解析にコンテンツを利用するとした上で,利用者が画面上の設定で学習目的利用の停止を申請できる(オプトアウト)としている。
初期設定で学習に使われる方式であり,同規約は,品質改善・機能開発・マーケティングを目的とした評価・分析や,人による確認があり得ることも定めている。
同規約は,個人情報の入力を禁止事項としている。
9 規約本文が公開されていないサービス
NECのcotomiとSB Intuitions(ソフトバンク)のSarashinaについては,顧客向けの利用規約は公開されていない。
Sarashinaについては,ソフトバンクのサービス紹介ページが,入力データや応答結果はAIの再学習には利用されないと説明しているが,規約の条項として確認することはできない。
cotomiには,顧客専用の機器として提供される形態や,外部ネットワークに接続しない環境で使う製品もある。
第5 比較表
以下は,令和8年9月20日時点の公開資料による。
| サービス | 学習条項 | 派生データ条項 | 目立つ点 |
|---|---|---|---|
| Hubble | 学習・改善・新サービス・統計化に使わない | ログ等のみ匿名化・統計化して事業に利用 | 文書とログを分ける |
| LEGAL BRAIN | 同意がない限り生成AIの学習に使わない | 入力した質問等を開発・改善・分析・第三者への許諾を含め利用 | 別の場所に旧版が掲載 |
| LAWGUE | 見当たらない | 取得情報を新製品の企画開発に分析・利用 | 提供情報を無期限に利用 |
| Legalscape | 見当たらない | 利用データを新サービス開発等に利用 | 匿名化の限定なし |
| LegalOn | 規約非公開(FAQ:外部事業者で学習しない) | FAQ:AIの精度向上等に自社で利用 | 自社利用は除外されていない |
| 第一法規 | 「学習」の語なし | プロンプトを第三者提供・再許諾を含め無償・無期限で利用 | 事案特定情報の入力は禁止 |
| さくらのAI Engine | 学習に使わない | 入力情報を利用せず第三者に提供しない | 原則保存しない |
| PLaMo | 有償は学習に使わない | 有償は開発・改善に使わない,無償は使う場合あり | 有償と無償で分ける |
| tsuzumi(Azure版) | 他ユーザーの学習に使わない | 提供者は入力を取得しない | 国外での処理に注意 |
| Takane | 学習・ファインチューニングに使わない | 開示されたノウハウ・フィードバック等をいかなる目的にも利用 | 使用許諾はカナダ法 |
| ELYZA Works with KDDI | 規約本文に見当たらない(FAQは学習しないと説明) | 入出力(個人情報を除く)を改良・新規開発・AI研究開発に利用 | FAQと規約がずれる |
| Rakuten AI for Business | 生成AIモデルの訓練を除外 | 維持・改善目的で永久・撤回不可能に利用(指定第三者を含む) | 閲覧・謄写の定め |
| KDDI Conata Data Agent | 定めなし | 統計数値を二次加工して活用 | 目的の限定なし |
| Sakana AI | 初期設定で学習(オプトアウト) | 評価・分析・マーケティング | 個人情報の入力は禁止 |
第6 規約の書き方の型と弁護士実務への示唆
1 範囲を絞った書き方
範囲を絞った書き方には,次の型がある。
①文書本体とログを分け,文書本体は学習にも統計化にも使わず,ログだけを匿名化・統計化して使う(Hubble)
②入力情報を利用せず,第三者にも提供しないと一律に定める(さくらのAI Engine)
③有償プランと無償プランで扱いを分け,有償プランでは開発・改善に使わない(PLaMo)
④提供者が入力を取得しない構造にする(tsuzumiのAzure版,閉域・自社環境で動かす形態)
依頼者の情報を扱う用途を検討するなら,まずこれらの型に当たるかを確かめることが考えられる。
ただし,④のうちクラウド上の形態は,処理場所や基盤の提供者との契約も確認する必要がある。
2 守秘義務との関係で慎重な検討を要する書き方
弁護士法23条は弁護士に職務上知り得た秘密の保持義務を課し,弁護士職務基本規程23条は依頼者について職務上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし,又は利用することを禁じている。
この観点からは,次のような条項がある規約について,依頼者の情報を入力することには慎重な検討を要する。
①入力データの利用を,永久・撤回不可能として許諾させる条項
②第三者への提供や再利用許諾を含めて利用を許諾させる条項
③契約終了の前後を問わず無期限に利用できるとする条項
④新サービスの開発やマーケティングに使えるとし,匿名化・統計化の限定がない条項
⑤初期設定で学習に使い,利用者の申出で止める方式
派生データ条項が弁護士の守秘義務や個人情報保護法とどう関係するかは,「学習に使わない」と書いてあっても―AIサービス規約の派生データ条項(ログ・分類結果・利用統計・フィードバック)の読み方と弁護士の守秘義務で整理している。
3 読み落としやすい点
規約を読むときは,次の点に注意する必要がある。
①FAQやサービス紹介の「学習に使わない」が規約本文にあるとは限らない(ELYZA Works with KDDI)
②同じサービスでも,場所によって内容の違う版の規約が掲載されていることがある(LEGAL BRAIN)
③国産を名乗るサービスでも,契約の相手方や準拠法が外国であることがある(Takane)
④国内の事業者のサービスでも,背後で海外の基盤モデルが使われていることが多く,その提供者の規約や処理場所も関係する(LEGAL BRAIN,ELYZA Works with KDDI,Rakuten AI for Business等)
⑤学習条項の「学習」の範囲が「生成AIの学習」「LLMの学習及びファインチューニング」等に限られ,それ以外の改善・分析は別の条項で認められていることがある
4 規約本文が公開されていないサービス
LegalOn,MNTSQ,判例秘書,cotomi及びSarashinaのように規約本文が公開されていないサービスでは,導入の際に,学習条項だけでなく派生データ条項,フィードバックの扱い,保存期間,基盤モデルの提供者及び準拠法を,個別の契約書面で確認することになる。
FAQやサービス紹介の説明は,契約の内容そのものとは限らないからである。
第7 関連記事
①「学習に使わない」と書いてあっても―AIサービス規約の派生データ条項(ログ・分類結果・利用統計・フィードバック)の読み方と弁護士の守秘義務
②学習オフの生成AIに秘密情報を入力することは第三者開示に当たるか
③法律事務所の生成AI利用ガイドラインの作り方-許可サービス,入力情報,出力確認,委託先及び事故対応
④中国製AIの利用は弁護士の守秘義務に違反するか―DeepSeekと利用形態別の判断
⑤令和8年改正個人情報保護法と委託契約-クラウド・生成AI利用で見直す事項(第30条の3・第58条の2)
第8 出典
1 法令等
①弁護士法23条(令和8年9月19日にe-Gov法令検索で現行条文を確認)
②日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」23条
2 リーガルテックの規約・公式資料
①Hubble「利用規約」(令和8年8月5日改訂)19条,AI機能に関する特約3条・4条
②弁護士ドットコム「LEGAL BRAIN 利用規約」(令和8年7月30日改定)3条・9条
③弁護士ドットコム「LEGAL BRAIN 利用規約」(令和7年5月23日制定・施行とされた版)
④弁護士ドットコム「外部連携サービス等一覧」
⑤FRAIM「LAWGUE 利用規約」(令和7年8月1日改定)8条・17条
⑥Legalscape「利用規約」(令和6年7月1日改定)19条の2
⑦LegalOn Technologies「LegalOn よくある質問」
⑧GVA TECH「OLGA プライバシーポリシー」(令和8年5月26日制定)
⑨第一法規「生成AIサービス利用規約」(令和8年8月5日改正施行)4条
⑩MNTSQ「プライバシーポリシー」
⑪LIC「判例秘書 利用規約改定のお知らせ」
3 国産LLM・国内AI基盤の規約・公式資料
①さくらインターネット「さくらのAI Engine」及び同サービスの約款(令和7年9月24日制定)10条
②Preferred Networks「PLaMo 利用規約」及び「PLaMo」の料金プランの説明
③NTTデータ「tsuzumi on Azure MaaS ユーザーガイド」,「tsuzumi 2 ライセンス規約(Azure Marketplace)」6条,「tsuzumi 2 on Azure ユーザーガイド」
④NTTデータ「お知らせ(令和8年5月20日)」,NTT西日本「報道発表(令和8年8月26日)」
⑤富士通「Fujitsu クラウドサービス Generative AI Platform サービス仕様書」(令和7年10月1日)
⑥KDDI「ELYZA Works with KDDI 利用規約」(令和8年6月1日改正実施),「ELYZA Works with KDDI」(サービス紹介・FAQ)
⑦楽天モバイル「Rakuten AI for Business 利用契約約款」(令和8年4月30日改定)17条・29条
⑧KDDI「KDDI Conata Data Agent サービスご利用規約」(令和8年8月1日改正実施)
⑨Sakana AI「Sakana AI API プラットフォーム 利用規約」(令和8年7月21日制定)
⑩ソフトバンク「Cloud PF Type A 生成AI」
⑪NEC「NEC Generative AI Appliance Server」,「報道発表(令和7年1月28日)」