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建築訴訟の統計(令和6年)―審理期間,終局区分,瑕疵の種別,鑑定率及び付調停率(AI作成)

第1 この記事の対象と資料

1 使用する資料

本記事は,最高裁判所の建築関係訴訟委員会のページに掲載されている「建築関係訴訟に関する統計」4本を基に,建築訴訟の件数,審理期間,終局区分,瑕疵の主張の有無と種別,鑑定率及び付調停率を整理するものである。
統計は第21回建築関係訴訟委員会(令和6年12月19日)の掲載分であり,平成24年から令和6年までの数値を載せている(令和8年9月20日に取得)。
令和6年の数値は,9月までの速報値である。

統計の注によれば,建築関係訴訟は統計上,次の2つの類型に分けられている。
①建築請負代金等(建物建築に関する請負代金,工事代金,設計料,報酬金等を請求する事件)
②建築瑕疵損害賠償(建物建築に関する設計,監理,施工等の建築瑕疵を理由とする損害に関する事件)

基礎となる事件数は,地方裁判所の民事第一審のものである。
資料には未済件数の欄がなく,平均審理期間を瑕疵の主張の有無で分けた表もない。
資料にない割合を示すときは「本記事の計算」と明記する。

建築訴訟で鑑定人や専門家がどう選ばれるかは,建築訴訟の鑑定人と専門家はどう選ばれるかで扱っている。

第2 新受件数,既済件数及び平均審理期間

1 建築請負代金等

新受既済平均審理期間
平成24年1774件1772件14.3月
平成25年1594件1610件15.2月
平成26年1534件1495件15.7月
平成27年1459件1518件16.3月
平成28年1500件1498件16.5月
平成29年1535件1453件16.1月
平成30年1430件1398件16.5月
令和元年1565件1416件16.6月
令和2年1532件1278件17.3月
令和3年1482件1565件18.7月
令和4年1341件1522件19.4月
令和5年1375件1474件19.6月
令和6年1061件994件18.1月

2 建築瑕疵損害賠償

新受既済平均審理期間
平成24年447件450件25.5月
平成25年442件443件26.2月
平成26年464件422件25.2月
平成27年515件446件24.8月
平成28年467件533件25.2月
平成29年441件456件25.5月
平成30年486件439件24.6月
令和元年488件449件26.1月
令和2年436件378件27.6月
令和3年499件489件29.3月
令和4年483件517件27.0月
令和5年455件485件26.8月
令和6年304件331件28.1月

3 読み方

建築瑕疵損害賠償の平均審理期間は,平成24年以降,24.6月から29.3月の間で推移しており,第一審だけで2年を超えるのが通常である。
建築請負代金等の平均審理期間は,平成24年の14.3月から令和5年の19.6月へと,5か月以上長くなっている。
令和6年は9月までの速報値であり,年間の数値ではない点に注意が要る。

依頼者には,瑕疵の損害賠償請求であれば第一審だけで2年余り,請負代金の請求でも1年半程度を目安として説明するのが適切である。
請負代金の請求でも,後で見るとおり3件に1件程度は瑕疵が主張されるので,瑕疵が争われれば審理はさらに長くなりうる。

第3 終局区分

1 建築請負代金等

判決和解取下げ既済合計
平成24年674件(38.0%)726件(41.0%)291件(16.4%)1772件
平成25年658件(40.9%)646件(40.1%)249件(15.5%)1610件
平成26年564件(37.7%)618件(41.3%)250件(16.7%)1495件
平成27年493件(32.5%)694件(45.7%)267件(17.6%)1518件
平成28年522件(34.8%)651件(43.5%)264件(17.6%)1498件
平成29年493件(33.9%)633件(43.6%)260件(17.9%)1453件
平成30年457件(32.7%)623件(44.6%)266件(19.0%)1398件
令和元年531件(37.5%)591件(41.7%)238件(16.8%)1416件
令和2年452件(35.4%)515件(40.3%)248件(19.4%)1278件
令和3年543件(34.7%)631件(40.3%)322件(20.6%)1565件
令和4年551件(36.2%)508件(33.4%)399件(26.2%)1522件
令和5年543件(36.8%)597件(40.5%)284件(19.3%)1474件
令和6年392件(39.4%)392件(39.4%)169件(17.0%)994件

2 建築瑕疵損害賠償

判決和解取下げ既済合計
平成24年139件(30.9%)163件(36.2%)128件(28.4%)450件
平成25年172件(38.8%)149件(33.6%)102件(23.0%)443件
平成26年142件(33.6%)144件(34.1%)121件(28.7%)422件
平成27年136件(30.5%)162件(36.3%)131件(29.4%)446件
平成28年159件(29.8%)184件(34.5%)176件(33.0%)533件
平成29年135件(29.6%)152件(33.3%)149件(32.7%)456件
平成30年122件(27.8%)145件(33.0%)157件(35.8%)439件
令和元年126件(28.1%)174件(38.8%)140件(31.2%)449件
令和2年105件(27.8%)145件(38.4%)116件(30.7%)378件
令和3年161件(32.9%)163件(33.3%)150件(30.7%)489件
令和4年144件(27.9%)151件(29.2%)205件(39.7%)517件
令和5年163件(33.6%)177件(36.5%)131件(27.0%)485件
令和6年113件(34.1%)108件(32.6%)97件(29.3%)331件

3 読み方

統計の終局区分には,判決,和解,請求の放棄,請求の認諾,取下げ及びその他の欄があり,「調停成立」の欄はない。
民事調停法20条2項は,受訴裁判所が事件を調停に付した場合に調停が成立したときは,訴えの取下げがあったものとみなすと定めている。
建築瑕疵損害賠償の取下げの割合が23%から40%と高いのは,付調停の後に調停が成立した事件が取下げとして数えられているためと考えられる。

そうすると,建築瑕疵損害賠償で判決まで進むのはおおむね3割前後であり,和解と調停成立を合わせた合意による解決が6割から7割程度とみるのが実態に近い。
東京地方裁判所は,第16回建築関係訴訟委員会(平成27年3月23日)で,和解と調停成立による取下げの擬制を合わせて7割から8割程度と報告している。

第4 瑕疵の主張の有無と種別

1 建築請負代金等で瑕疵が主張された割合

統計(瑕疵主張別・瑕疵種別内訳)は,平成26年以降の数値を載せている。
請負代金等の事件のうち瑕疵が主張された件数と割合は,次のとおりである(割合は本記事の計算)。

瑕疵主張なし瑕疵主張あり主張ありの割合
平成26年1029件466件31.2%
平成27年970件548件36.1%
平成28年977件521件34.8%
平成29年984件469件32.3%
平成30年940件458件32.8%
令和元年966件450件31.8%
令和2年923件355件27.8%
令和3年1066件499件31.9%
令和4年989件533件35.0%
令和5年995件479件32.5%
令和6年712件282件28.4%

請負代金を請求する事件の3割前後で,被告から瑕疵が主張されている。
請負代金の請求を受任するときは,瑕疵の抗弁や反訴が出ることを想定して,工事の記録や写真を早めに集めておく必要がある。

2 建築瑕疵損害賠償の瑕疵の種別

設計監理施工その他合計
平成26年45件13件344件20件422件
平成27年64件16件350件16件446件
平成28年71件20件424件18件533件
平成29年47件13件363件33件456件
平成30年53件17件348件21件439件
令和元年42件11件367件29件449件
令和2年39件11件308件20件378件
令和3年65件14件366件44件489件
令和4年46件23件426件22件517件
令和5年62件11件384件28件485件
令和6年43件8件264件16件331件

瑕疵の種別では施工の瑕疵が大半を占め,令和5年では485件中384件(79.2%)である(本記事の計算)。
設計の瑕疵は1割程度,監理の瑕疵は数%にとどまる。
表の合計は各年の既済件数と一致するので,この表は既済事件を基礎とし,1件ごとに主な瑕疵の種別で分類していると考えられる。

第5 鑑定率と付調停率

統計(鑑定率等・付調停率等の推移)による数値は,次のとおりである。
鑑定は平成24年から令和5年まで,付調停は平成25年から令和5年までの数値が示されている。

鑑定実施件数鑑定率付調停件数付調停率
平成24年53件2.4%
平成25年39件1.9%337件16.4%
平成26年24件1.3%334件17.4%
平成27年29件1.5%382件19.5%
平成28年18件0.9%458件22.6%
平成29年26件1.4%425件22.3%
平成30年14件0.8%454件24.7%
令和元年15件0.8%405件21.7%
令和2年8件0.5%382件23.1%
令和3年9件0.4%558件27.2%
令和4年9件0.4%703件34.5%
令和5年14件0.7%489件25.0%

資料は率の分母を明示していないが,請負代金等と瑕疵損害賠償の既済件数の合計で割ると,各年の率と一致する(本記事の計算)。
鑑定は平成24年の2.4%から令和5年の0.7%まで減り,年10件前後にとどまっている。
他方,付調停率は平成25年の16.4%から上がり,令和4年には34.5%に達した。

建築訴訟では,専門的な知見は鑑定よりも,建築の専門家が調停委員として加わる調停と専門委員によって取り入れられているといえる。
民事調停法20条1項ただし書は,争点及び証拠の整理が完了した後は,当事者の合意がなければ事件を調停に付することができないと定めているので,調停を使うなら早い段階で申し出る必要がある。
なお,表題は「鑑定率等」であるが,専門委員の関与率は公表されていない。

第6 依頼者に説明するときの注意

依頼者への見通しの説明に統計を使うときは,次の点に注意する。
①平均審理期間は既に終わった事件の平均であり,係属中の事件がいつ終わるかを示すものではない。
②令和6年の数値は9月までの速報値である。
③終局区分の取下げには,付調停の後の調停成立が含まれていると考えられる。
④鑑定率と付調停率の分母は,両類型の既済件数の合計と一致する。
⑤統計は地方裁判所の第一審であり,簡易裁判所の事件や控訴審は含まれない。

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第8 出典

1 法令

民事調停法(昭和26年法律第222号)20条(e-Gov法令検索)

2 統計・資料

最高裁判所・建築関係訴訟委員会「建築関係訴訟事件の処理状況及び平均審理期間」(平成24年~令和6年)
同「建築関係訴訟事件の終局区分別既済件数及びその割合」
同「建築関係訴訟事件の瑕疵主張別・瑕疵種別内訳」(平成26年~令和6年)
同「建築関係訴訟事件における鑑定率等・付調停率等の推移」
最高裁判所「建築関係訴訟委員会」(議事要旨の一覧。第16回議事要旨を使用)
* 本記事は特定の裁判例を根拠としていないため,判例秘書による判例本文の確認は行っていない。