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国税庁が例示した非上場株式の評価額圧縮スキーム8類型――会社規模の操作,配当還元株主の作出及びオペレーティング・リース(AI作成)

第1 国税庁が例示した評価額圧縮スキーム8類型とは――この記事の対象と時点

1 結論

国税庁は,令和8年7月3日の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」第4回会議の資料の別添2に,取引相場のない株式(非上場株式)の相続税・贈与税の評価額を圧縮するスキームの事例を8類型掲げた(第4回資料32頁~39頁)。
その中身は,会社規模や評価会社の区分を人為的に動かすもの,配当還元方式で評価される株主を作り出すもの,オペレーティング・リース等で利益や純資産を一時的に下げるもの,債務や評価差額を膨らませるもの,通達上の期間の経過を待つものに分けられ,資料が示す圧縮額は評価額で最大100億円,割合で最大約98%である。
国税庁は,こうした事例への対応を,財産評価基本通達6項による個別の課税処分から,評価方法そのものの見直しへ移そうとしている。

2 記事の性質と基準日

この記事は,令和8年9月19日現在で国税庁が公表している第1回から第6回までの会議資料,第5回までの議事要旨及び第5回の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」に基づく。
第6回会議(令和8年9月16日)の議事要旨は,この記事の作成時点で公表されていない。

この記事は節税方法の解説ではない。
各事例の仕組みは,国税庁がどのような行為を問題視しているかを理解するのに必要な範囲でだけ紹介する。
別添2の事例は,資料自身が「事例を簡略化したもの」と題しているとおり(第4回資料31頁),制度の見直しを検討するために当局が示した例示である。
ここに挙げられた行為が当然に違法となるわけではなく,当然に財産評価基本通達6項の対象となるわけでもない。

また,後記第5の見直し案は,いずれも国税庁事務局が有識者会議に示したたたき台であり,決定したものではない。
骨子自身が「見直し内容のほか,評価水準・税負担の在り方等も含め,最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。
会議全体の経緯は,親記事の取引相場のない株式の評価に関する有識者会議にまとめている。

第2 評価額圧縮スキーム8類型の一覧

1 8類型の一覧表

第4回資料別添2の8事例を,資料の記載どおりにまとめると次のとおりである。

事例(第4回資料の頁)仕組みの要点資料が示す圧縮額又は割合
①子会社の会社規模操作(32頁)上場株式を現物出資して設立した会社の傘下の子会社に,買収した会社の従業員を転籍させて中会社から大会社(類似業種比準方式)へ変え,その子会社へ上場株式を寄附する評価額▲100億円,税額▲55億円
②配当還元方式を利用できる株主の作出(33頁)持株会社化の際に無議決権株式を大量に発行し,議決権を後継者に集約した上で,孫を「中心的な同族株主以外の同族株主」として配当還元価額で贈与する評価額▲19億円,税額▲10億円(原則的評価方式の2.2%の額)
③会社規模操作(純資産価額方式から類似業種比準方式へ)(34頁)事業会社は海外子会社からの配当による資金の吸上げで,持株会社は事業会社からの借入れで,それぞれ株式等保有特定会社の判定を外し,持株会社は吸収分割で管理部門と従業員を承継して小会社から大会社へ変わる評価額▲20億円,税額▲10億円
④循環貸付と評価差額の作出(35頁)純資産価額方式で評価される持株会社と子会社との間で現金の寄附と借入れを循環させて持株会社の債務を膨らませ,さらに孫会社への債権の寄附で評価差額を作り出す評価額▲65億円,税額▲35億円
⑤オペレーティング・リース(36頁)借入れで中古航空機を取得してリースし,翌期の多額の減価償却で利益と純資産が減った時点で株式を贈与し,リース終了後の売却益で回復させる評価額▲10億円,税額▲5億円
⑥株主構成の操作(37頁)資産管理会社の株主を創業家と上場会社の元役員等に分散させ,どのグループも議決権の15%以上を持たない会社にして,全株式を配当還元方式で評価させる評価額約98%減(原則的評価方式の2%程度)
⑦第三者の一時的な介在(38頁)同族関係にない第三者に株式の6割を配当還元価額で売却し,残りを子へ贈与した後,会社が第三者の株式を配当還元価額で自己株式として取得する評価額約60%減(贈与の評価額が200株分の80株分)
⑧貸付用不動産の3年経過(39頁)持株会社が借入れで約10億円の貸付用不動産を購入し,取得後3年以内の取引価額評価の期間を過ぎた4年6か月後に株式を子へ贈与する評価額▲5.4億円,税額▲3.0億円

2 表の読み方

圧縮額は資料の記載であり,①から⑤及び⑧は評価額と税額の減少額で,⑥と⑦は割合で示されている。
⑦の約60%減は,甲が保有する200株のうち子へ贈与するのが80株となるため,贈与の評価額がスキーム前の5分の2(80株/200株)になることによる(第4回資料38頁)。
⑧の5.4億円は,貸付用不動産の取得価額約10億円と相続税評価額約4.6億円の差額であり,資料は持株会社の株式を「評価額0円として子へ贈与」すると記載している(同資料39頁)。
第4回議事要旨10頁~11頁は,事務局がこれらの事例を順に紹介したことを記録している。

第3 5つの型に分けた現行通達上の仕組み

1 本記事の分類

ここでは,8事例を,現行の財産評価基本通達のどの定めを利用しているかという観点から,次の5つの型に分ける。
この分類は本記事によるものであり,資料が示した分類ではない。
一つの事例が複数の型にまたがることがある。

該当する事例利用される主な通達
会社規模・評価会社区分の操作①,③178,179,189
配当還元方式の対象の作出②,⑥,⑦188,188-2
比準要素の引下げ180,183
純資産・評価差額の人為的変動185,186-2
評価時点の数値を下げる行為⑧(⑤,⑦も時点を利用)185

2 会社規模・評価会社区分の操作

財産評価基本通達178は,評価会社を,従業員数,総資産価額(帳簿価額)及び直前期末以前1年間の取引金額によって大会社・中会社・小会社に区分し,従業員数が70人以上の会社は大会社とする。
同通達179は,大会社の株式は類似業種比準価額,中会社の株式は類似業種比準価額と純資産価額の併用,小会社の株式は純資産価額(納税義務者の選択によりLを0.50とする併用)で評価すると定める。
第1回資料10頁は,評価会社の規模が大きくなるほど純資産価額に対する申告評価額の割合の中央値が低くなっているとし,「こうした評価方式間の評価額のかい離が誘因となり,純資産価額方式の適用を回避しようとするスキームが存在」すると述べている。
事例①は子会社への従業員の転籍により,事例③は吸収分割による管理部門と従業員の承継により,いずれも会社規模を大会社へ変えて類似業種比準方式の適用を受けるものである。

事例③は,これに加えて,同通達189の(2)の株式等保有特定会社(株式等の価額の合計額の割合が50%以上の会社)の判定を外している。
もっとも,同通達189は,課税時期前に合理的な理由もなく資産構成に変動があり,その変動が株式等保有特定会社又は土地保有特定会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは,その変動はなかったものとして判定すると定めている。
現行通達にも区分の判定を外す行為への手当てが一部あるということであり,事例③の個別の行為がこれに当たるかどうかは資料からは判断できない。

事例①は,グループ法人税制の下で課税されない現物寄附を組み合わせている点にも特徴がある(第4回資料32頁)。
資料は,類似業種比準方式で評価される子会社は上場株式の寄附を受けても「A社株式の価値は適切に反映されない」と説明している。

3 配当還元方式の対象の作出

同通達188は,配当還元方式で評価される「同族株主以外の株主等が取得した株式」を4つの場合に分けて定める。
事例②は同通達188の(2),すなわち中心的な同族株主のいる会社で,中心的な同族株主以外の同族株主が取得し,取得後の議決権の数が議決権総数の5%未満で,役員でない者の株式を利用している。
無議決権株式は議決権の数に算入されないから,孫が無議決権株式だけを取得すれば議決権割合は5%未満となる。
第1回資料13頁は,同じ問題を「種類株式(無議決権株式)を用いた配当還元方式の濫用」として図示し,「将来的に普通株式への転換も否定できない」と付記している。

事例⑥は同通達188の(3),すなわち同族株主のいない会社で,株主の1人及びその同族関係者の議決権の合計が15%未満である株主の株式を利用している。
資料の株主構成では,創業家3名の小計が議決権の12.5%,上場会社の役員・元役員7名がそれぞれ12.5%であり,議決権の30%以上を持つグループも15%以上を持つグループも存在しない(第4回資料37頁)。
その結果,全株主の株式が配当還元方式で評価される。

事例⑦は,同族関係にない第三者が同通達188の(1)の「同族株主以外の株主」に当たることを利用し,第三者への売却と,その後の発行会社による自己株式の取得をいずれも配当還元方式による価額で行っている(第4回資料38頁)。
配当還元方式は,同通達188-2により,1株当たりの年配当金額(2円50銭未満又は無配の場合は2円50銭)を基に計算され,第4回資料2頁は会計検査院の指摘として還元率(10%)が社会経済状況の変化を反映していない可能性を挙げている。

配当還元方式の現行の判定基準と還元率,見直し案の全体は,配当還元方式の見直し案で扱う。
無議決権株式の評価そのものは,種類株式の相続税評価で扱っている。

4 比準要素の引下げ

類似業種比準価額は,同通達180により,評価会社の1株当たりの配当金額,利益金額及び純資産価額(帳簿価額)を類似業種のそれと比べて計算する。
事例⑤は,中古航空機の耐用年数が簡便法により4年となり,定率法によることで取得後に多額の減価償却費を計上できることを利用し,利益と純資産を大幅に減らした時点で株式を移転するものである(第4回資料36頁)。
資料は,これを「類似業種比準方式の比準要素を大幅に減少」させるものと説明し,匿名組合への出資による場合も「概ね同様の効果」と付記している。

同通達183の(2)は,1株当たりの利益金額を,法人税の課税所得金額から「固定資産売却益,保険差益等の非経常的な利益の金額を除く」ものとしている。
国税庁の取引相場のない株式(出資)の評価明細書の記載方法等(令和8年4月1日以降用)9頁は,この非経常的な利益の金額を「非経常的な損失の金額を控除した金額(負数の場合は0)」とする。
そのため,非経常的な損失が非経常的な利益を上回る部分は,利益金額に加え戻されない。
第5回議事要旨10頁によれば,委員から,航空機リースを用いたスキームはこの扱いが原因であり,そこを変えることで現行通達の中でもスキームを防止することは可能だとの意見が出されている。

5 純資産・評価差額の人為的変動

同通達185は,1株当たりの純資産価額を,各資産の相続税評価額の合計から各負債の合計と評価差額に対する法人税額等相当額を控除して計算すると定め,同通達186-2はその割合を38%としている。
事例④では,純資産価額方式で評価される持株会社が,子会社への現金の寄附と子会社からの借入れを循環させることで債務を大きく膨らませる(第4回資料35頁)。
資料は,子会社の側では併用方式により持株会社への債権額が株価に適正に反映されないと説明している。
さらに,子会社が孫会社へ債権を寄附すると,法人税法上,持株会社は子会社株式の帳簿価額を減額する必要があるため,簿価と時価の差が生じ,評価差額に対する法人税相当額(資料の表記では「38%分」)の株価圧縮が可能になるとしている。

6 評価時点の数値を下げる行為

同通達185の括弧書きは,評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等及び家屋等の価額を,課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価すると定める。
事例⑧は,取得から3年を過ぎれば貸付用不動産が相続税評価額で評価されることを前提に,4年6か月後に株式を移転するものである(第4回資料39頁)。
事例⑤が利益と純資産が最も落ち込んだ期の直後に株式を贈与し,事例⑦が子への贈与の一定期間後に自己株式の取得を行う点も,評価の時点を選んで数値を下げるという意味で同じ性質を持つと考えられる。

この3年は財産評価基本通達上の期間であり,小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等に関する3年の要件とは別の制度である。
後者については,小規模宅地等の特例-貸付事業用宅地等の三年要件と例外で扱っている。

第4 財産評価基本通達6項(総則6項)との関係

1 総則6項の適用件数

財産評価基本通達6は,「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は,国税庁長官の指示を受けて評価する」と定める。
第1回資料15頁は,恣意的な会社規模の変化による評価額圧縮スキームや,利益操作,資本移転による純資産の圧縮及び株主構成等の操作による租税回避スキームに対し,同項に基づく課税処分などにより「個別に対応せざるを得ない状況」にあるとして,次の適用件数を示している。

事務年度適用件数うち不動産うち株式
平成27
平成28
平成29
平成30
令和元
令和2
令和3
令和4
令和511
令和6
271314

令和5事務年度の11件(うち株式6件)が突出している。
第1回資料16頁は,評価通達6項による評価に係る訴訟等が増加傾向にあり,納税者の予見可能性の観点から批判等があるとした上で,「今般の見直しにおいては,恣意的に評価額を圧縮するスキームについても評価制度の中で対応する必要がある」としている。
同頁は,最高裁令和4年4月19日判決の調査官解説(法曹時報75巻12号178頁)の「このようなかい離は,本来,評価通達の見直し等によって解消されるべきものといえよう」という一節も引用している。

2 経済産業省・中小企業庁の意見書がいう「14件」

経済産業省・中小企業庁ほかの「『取引相場のない株式の評価』見直しに係る意見」(令和8年9月16日)は,「国税庁において恣意的な会社規模の変更による評価額圧縮等の租税回避スキームを過去10年間で14件確認したとされていること」への対処としても,まず現行の評価方式の枠内でとりうる対応策から検討する余地があると述べている(同意見書1頁)。

この「14件」は,別添2の8類型とは数が一致しない。
別添2は「事例を簡略化したもの」であり,把握した件数を示す資料ではない。
他方,前記1の表の株式の適用件数は,平成27事務年度から令和6事務年度までの10事務年度で14件であり,期間と件数は意見書の記載と一致する。
また,この表を載せた第1回資料15頁は,「恣意的な会社規模の変化による評価額圧縮スキームが確認されている」という記述を同じ頁に置いており,意見書の言い回しはこれに近い。
もっとも,意見書は「14件」の出典を示しておらず,また第1回資料の表は総則6項の適用件数であってスキームの確認件数として示されたものではないから,両者が同じ数字を指すかどうかは公表資料からは確認できない。

3 判断の枠組みと近時の例

最高裁令和4年4月19日判決(令和2年(行ヒ)第283号,民集76巻4号411頁)は,財産の価額について通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には,通達評価額を上回る価額によることは平等原則に違反しないとした。
株式については,国税不服審判所令和6年3月25日裁決(裁決事例集134集121頁)が,相続開始直前の配当と決算期の変更により比準要素数1の会社の判定を免れた事案で総則6項の適用を是認し,東京高裁令和6年8月28日判決(令和6年(行コ)第36号)が相続開始前から株式売却の交渉が進行していた事案で国側を敗訴させ,東京高裁令和7年6月19日判決(令和7年(行コ)第51号,訟務月報72巻2号79頁)が配当と新株発行により比準要素数1の会社及び株式等保有特定会社の判定を外した事案で国側を勝訴させている(東京高裁の2判決はいずれも裁判所ホームページ未掲載であり,判例秘書で全文を確認した)。
判断の枠組みと各事案の詳細は,財産評価基本通達6項(総則6項)の適用で扱っている。

第5 見直し案での対応

1 類型ごとの対応案

第5回資料6頁~7頁は,評価額圧縮スキームへの対応の方向性を4つに分けて示し,第6回資料と骨子がその一部を具体化している。
事例と対応案の関係をまとめると,次のとおりである。

事例見直し案資料
①,③(会社規模の操作)規模に関わらず単一の評価方式とし,規模区分自体をなくす(原則的評価方式を残余利益方式に一本化)第5回資料6頁,骨子1頁,第6回資料11頁
②,⑥,⑦(配当還元方式の濫用)配当還元方式の趣旨を貫徹するよう適用する株主の範囲を整理し,固定価格株式の取扱いも見直す第5回資料7頁,骨子10頁
⑤(オペレーティング・リース)課税時期現在で存在するオペレーティング・リースがなかったものとした状態に損益と純資産を引き直す第6回資料13頁,骨子5頁
(役員退職金等)非経常的な損失として正常利益の計算上除外する第6回資料14頁
(親族役員の役員報酬)一定割合を本来の利益とみなす案を示すが,資料自身が「慎重な検討が必要」とする第6回資料14頁
④(グループ法人税制の活用)完全支配関係にある子会社の株式を簿価によらず適正な価額に修正して親会社の評価額に反映する第5回資料7頁,第6回資料15頁
資産管理会社を使う事例資産管理会社は純資産価額方式で評価する第4回資料16頁,第6回資料19頁~20頁
⑧(3年以内取得の不動産)「法人が3年以内に取得した不動産の取扱い」を第7回会議以降の想定論点とする第6回資料1頁

2 会社規模の操作と配当還元方式

規模区分をなくす案では,会社規模を動かして類似業種比準方式の適用を受けるという事例①・③の前提そのものがなくなる。
第5回資料6頁は,大会社と小会社の相対的な不公平を解消するとともに,会社規模等の操作による評価額圧縮スキームへ対応すると説明している。
類似業種比準方式の扱いは類似業種比準方式は廃止されるのか,残余利益方式の算式は残余利益方式とはで扱う。

配当還元方式については,第5回資料7頁が,現行でも株主構成や議決権割合の操作により「評価額を90%以上圧縮するスキームも可能」とし,株主構成の操作では「企業価値の総額から最大で約98%もの評価額圧縮を行う事例も存在」するとしている。
骨子10頁は,同族関係者の判定に用いる親族の範囲を配偶者,直系血族,兄弟姉妹及び1親等の姻族に狭めること,議決権保有割合による判定を議決権保有割合と株式保有割合を用いる判定(いずれかの割合が3%未満)に変えること,一時的所有を目的として取得した者を適用対象から除くことを課題として挙げている。
無議決権株式を使う事例②は株式保有割合の導入に,第三者を一時的に介在させる事例⑦は一時的所有目的の者の除外に,それぞれ対応する内容と読める。
第5回議事要旨10頁によれば,委員から,議決権割合のみで判定することとした平成15年の通達改正を元に戻せばよいとの意見が出ている。
第6回資料1頁では,配当還元方式の適用株主の範囲は第7回会議以降の想定論点とされている。

3 利益操作とグループ法人

オペレーティング・リースについて,第6回資料13頁は,法人税では契約全期間の課税利益は売却益と減価償却費で相殺されて変わらない一方,一時点の価値を評価する相続税では契約の有無で税負担に大きな乖離が生じると説明し,損益だけでなく純資産もオペレーティング・リースがなかったものとして修正する案を示している。
第5回議事要旨11頁では,オペレーティング・リースは何らか対処すべきとの意見がある一方,役員報酬・役員退職金については,法人税法上の損金不算入規定で不相当に高額な部分は調整済みであり,被相続人に支払われた分は現預金として相続財産を構成しているとして,評価上加算することに反対する意見が出ている。

子会社株式については,第6回資料15頁が,持分法適用会社,連結財務諸表の作成対象の子会社及び完全支配関係にある子会社の3つの範囲を比較した上で,完全支配関係にある子会社の株式に限って修正する案を示している。
これに対し,第5回議事要旨10頁~12頁では,完全支配関係は株式を少しでも外部に出せば簡単に外せるとの指摘や,連結ベース(連結財務諸表のない中小企業では持分法による代替)で評価すべきとの意見が出ている。

4 資産管理会社と3年以内取得の不動産

第6回資料19頁~20頁は,資産管理会社を残余利益方式によらず純資産価額方式で評価する「特定の評価会社」とし,その判定を,事業承継税制の対象から除かれる資産保有型会社及び資産運用型会社を参考とした形式基準により,帳簿価額で行う案を示している。
資産管理会社の判定基準の詳細は,資産管理会社の株式評価の見直し案で扱う。

事例⑧は,純資産価額方式で評価される持株会社の中で,3年の経過により不動産の評価が下がることを利用するものであるから,資産管理会社を純資産価額方式で評価するだけでは対応しきれない。
第6回資料1頁は,「法人が3年以内に取得した不動産の取扱い」を純資産価額方式の論点の一つとして第7回会議以降に回しており,第5回資料4頁も「法人が取得した貸付用不動産の評価をどのようにすべきか」を今後の検討事項に掲げている。
令和8年9月19日現在,この点についての具体案は示されていない。

第6 実務上の注意

以下は,公表資料を踏まえた本記事の評価であり,資料の記載ではない。

1 既に実行したスキームの見直し

取引相場のない株式は,相続又は贈与の時点の通達によって評価されるから,過去に組んだ資本構成や株主構成であっても,将来の相続又は贈与の時点で見直し後の通達が適用されれば,想定した評価額にならない可能性がある。
見直し後の通達がいつの課税時期から適用されるのか,経過措置が設けられるのかは,令和8年9月19日現在の資料では示されていない。
第4回資料25頁は,通達改正の遡及適用が争われた名古屋高等裁判所平成4年2月27日判決(税務訴訟資料188号455頁,裁判所ホームページ未掲載)を引用し,「合理的な取扱いであっても,時代の流れにそぐわなくなった場合には,その取扱いを改正することができる」と整理するとともに,従前の通達もその時点では合理的であったが時代の流れにそぐわなくなったにすぎない場合は遡及適用を否定すべきとした部分を挙げている。
もっとも,同資料は今回の見直しの適用時期そのものには触れていない。
別添2に類似する構造を既に持っている会社は,見直しの進行に合わせて,その構造を維持する事業上の理由があるかどうかを改めて確認しておくことが考えられる。

2 総則6項のリスク

見直しが実現するまでの間は,現行通達と総則6項による個別対応が続く。
別添2は,国税庁がこれらの類型を具体的な資本関係図と影響額を付して把握していることを示しており,同種の行為について課税庁が租税負担の軽減の意図や軽減の程度を調査する可能性を意識しておく必要があると考えられる。
もっとも,総則6項の適用が認められるかどうかは,最高裁令和4年4月19日判決の枠組みの下で個別の事情によって判断され,前記第4の3のとおり国側が敗訴した例もある。

3 事業承継税制との関係

見直し案のうち資産管理会社の判定は,事業承継税制の資産保有型会社・資産運用型会社の考え方を参考にしている(第6回資料20頁)。
他方,経済産業省・中小企業庁の意見書は,事業承継税制は中堅企業が対象外であり,中小企業でも活用できる者は限られているとしている(同意見書3頁)。
事業承継税制の特例措置の期限は,法人版事業承継税制の特例措置の期限で扱っている。

第7 関連記事

現行の評価方式の全体像は遺産相続における非上場株式の評価方法,総則6項の判断枠組みは財産評価基本通達6項(総則6項)の適用で扱っている。
見直し案の各論は,残余利益方式とは類似業種比準方式は廃止されるのか資産管理会社の株式評価の見直し案及び配当還元方式の見直し案を参照されたい。
会議全体の経緯は,親記事の取引相場のない株式の評価に関する有識者会議にまとめている。

第8 出典

1 通達

①財産評価基本通達6(国税庁
②財産評価基本通達178・179(国税庁
③財産評価基本通達180・183(国税庁
④財産評価基本通達185・186-2・188・188-2(国税庁
⑤財産評価基本通達189(国税庁
⑥国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書の記載方法等(令和8年4月1日以降用)」9頁(国税庁

2 有識者会議の資料

①国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)資料」令和8年4月20日(国税庁
②国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第4回)資料」令和8年7月3日(国税庁
③国税庁「第4回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 議事要旨」(国税庁
④国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)資料」令和8年8月20日(国税庁
⑤国税庁「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」第5回当日机上配付資料(国税庁
⑥国税庁「第5回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 議事要旨」(国税庁
⑦国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第6回)資料」令和8年9月16日(国税庁

3 行政機関の意見書

①経済産業省・中小企業庁・経済産業政策局・イノベーション・環境局「『取引相場のない株式の評価』見直しに係る意見」令和8年9月16日(中小企業庁

4 裁判例・裁決

①最高裁判所第三小法廷令和4年4月19日判決(令和2年(行ヒ)第283号,民集76巻4号411頁,裁判所ウェブサイト
②東京高等裁判所令和6年8月28日判決(令和6年(行コ)第36号,裁判所ホームページ未掲載)
③東京高等裁判所令和7年6月19日判決(令和7年(行コ)第51号,訟務月報72巻2号79頁,裁判所ホームページ未掲載)
④国税不服審判所令和6年3月25日裁決(裁決事例集134集121頁,国税不服審判所
⑤名古屋高等裁判所平成4年2月27日判決(税務訴訟資料188号455頁,裁判所ホームページ未掲載)