第1 控訴理由書で最初に示す事項
1 結論を変える判断点を特定する
民事控訴審は続審であるが,控訴理由書では第一審の主張を単に再掲するのでは足りない。原判決の主文を支える主要な判断を分解し,どの判断が変われば結論が変わるのかを先に示す必要がある。
原判決の認定事実,証拠評価,法令解釈及び当てはめを区別し,各項目について原判決の該当頁を特定すると,裁判体が争点を追いやすい。
2 不服の範囲を主文と対応させる
控訴の趣旨,控訴状及び控訴理由書の結論は一致させる。請求の一部だけを争う場合は,第一審判決のどの部分について変更を求めるかを明示する。
被控訴人が自己に不利益な変更を求める場合は,単なる答弁ではなく附帯控訴が必要となることがある。
第2 事実認定の誤りの書き方
1 証拠と認定事実を一対一で対応させる
「証拠の評価が不当である」とだけ書くのではなく,①原判決が認定した事実,②根拠とした証拠,③見落とした反対証拠,④経験則又は論理則上の問題,⑤正しく認定すべき事実,⑥結論への影響を順に記載する。
供述証拠については,変遷,客観証拠との整合性,利害関係及び知覚・記憶の条件を具体的に示す。
2 新証拠の役割を説明する
新証拠を提出する場合は,証拠の内容だけでなく,どの争点のどの認定を動かすのか,第一審で提出できなかった事情及び立証趣旨を説明する。
控訴審の期日が短期間で終結する場合もあるため,提出予定の証拠は理由書と同時又はできる限り早期に整理する。
第3 法令適用の誤りと文章構成
1 規範・要件・事実・結論を分ける
法令適用の誤りは,適用条文,解釈上の規範,要件事実,原判決の認定及び正しい当てはめを分けて書く。判例を引用する場合は,結論だけでなく事案との共通点と相違点を示す。
2 推奨する並び順
実務上は,①控訴の趣旨,②結論を左右する要点,③原判決の判断構造,④争点ごとの誤り,⑤新証拠,⑥求める結論の順で構成すると読みやすい。
提出期限の考え方は,控訴理由書・上告理由書の提出期限を参照されたい。
第4 提出前チェック
1 形式面
①事件番号,当事者及び提出先が正しいか,②控訴の趣旨と理由が対応しているか,③引用した原判決の頁が正しいか,④証拠番号と立証趣旨が一致するか,⑤訴えの変更又は附帯控訴を含んでいないかを確認する。
2 内容面
各控訴理由について,「その誤りがなければ主文が変わる」ことまで説明できているかを確認する。周辺的な誤記の指摘だけでは,原判決変更の理由にならない。
第5 根拠資料及び関連記事
民事訴訟法(e-Gov法令検索)及び民事訴訟規則(e-Gov法令検索)を確認した。
民事控訴審全体の案内は,控訴審の手続と主要論点を参照されたい。
本記事は一般的な整理であり,個別事件では控訴の範囲,記録及び提出先裁判所の運用を確認する必要がある。