第1 株主総会とは何か
株主総会は,株式会社の株主が議決権を行使し,会社法又は定款により株主総会の権限とされた事項を決める機関である。
取締役会を置かない会社では,株主総会は会社法に規定する事項のほか,会社の組織,運営,管理その他会社に関する一切の事項を決議できる。
取締役会設置会社では,会社法に規定する事項と定款で定めた事項に限って決議できるため,株主総会がすべての業務執行事項を決めるわけではない(会社法295条)。
株主総会には,毎事業年度の終了後一定の時期に招集する定時株主総会と,必要がある場合に招集する臨時株主総会がある(会社法296条1項・2項)。
会社ごとの開催日,出席資格,議案及び議決権行使方法は,その会社の定款,株主名簿,招集通知及び株主総会参考書類で確認する必要がある。
第2 株主総会はいつ,年に何回開くか
1 定時株主総会は事業年度ごとに開く
会社法296条1項は,定時株主総会を「毎事業年度の終了後一定の時期」に招集しなければならないと定めている。
したがって,通常は事業年度ごとに1回の定時株主総会があり,必要があれば臨時株主総会を追加して開く。
「株主総会は年1回」とだけ説明すると臨時株主総会を見落とすため,定時総会は事業年度ごと,臨時総会は必要に応じて,と区別するのが正確である。
2 事業年度終了後3か月以内という絶対的な期限ではない
法務省「定時株主総会の開催時期について」は,会社法上,事業年度の終了後3か月以内に必ず定時株主総会を招集しなければならないわけではないと説明している。
もっとも,議決権行使の基準日を定める場合,基準日株主が行使できる権利は基準日から3か月以内に行使するものに限られる(会社法124条2項)。
定款の基準日から3か月を超えて開催する場合は,新たな基準日の設定と公告の要否を検討する。
3 6月開催が多い理由と2026年の日程
3月末を事業年度末とする上場会社が多く,決算,監査,招集通知等の準備と基準日の有効期間を踏まえて6月に定時株主総会を開く会社が多い。
しかし,すべての会社が6月に開催するわけではなく,会社ごとに事業年度と開催日が異なる。
東京証券取引所の2026年6月5日公表資料によれば,2026年3月期決算の東証上場内国会社のうち集計対象2142社では,6月26日が最多で,656社,30.6%が同日に開催を予定していた。
この数値は予定日の集計であり,個別会社の日程は変更されることがある。
最新の日程は,会社のIRページ,招集通知,適時開示資料及び東証上場会社情報サービスで確認する。
第3 株主総会に出席できる人
1 基準日と議決権を確認する
出席して議決権を行使できるかは,株式を買った日だけでなく,基準日,株主名簿への記載又は記録,保有株式の内容,単元株式数及び議案ごとの議決権の有無によって決まる。
会社は基準日を定め,その日に株主名簿に記載又は記録された株主を権利行使者と定めることができる(会社法124条)。
総会直前に株式を取得しても,その総会の基準日株主でなければ議決権を行使できないことがある。
2 100株あれば必ず出席できるとは限らない
東京証券取引所などの内国株式の売買単位は,2018年10月1日に100株へ統一された。
上場会社が単元株式数を100株と定めている場合,100株が1単元となり,原則として1個の議決権を有する(会社法308条1項)。
単元未満株式には原則として議決権がない(会社法189条1項)。
もっとも,「100株」は取引所の売買単位と会社の単元株式制度に関する説明であり,すべての株式会社に共通する出席資格の数字ではない。
また,100株を買うために必要な金額は「1株の株価×100株」に売買手数料等を加えた額であり,会社によって異なる。
保有株数だけで判断せず,招集通知と議決権行使書に記載された議決権数を確認する。
3 代理人,家族及び弁護士
株主は代理人によって議決権を行使できるが,株主又は代理人は代理権を証明する書面を会社へ提出しなければならず,代理権は株主総会ごとに授与する(会社法310条1項・2項)。
代理人を株主に限る定款の有効性や,法人株主の従業員,家族又は弁護士を代理人とする場合の扱いは,定款,判例及び具体的事情によって検討する。
詳しくは,株主総会の議決権代理行使―代理人を株主に限る定款,法人株主の従業員,弁護士と委任状(AI作成)で説明している。
第4 株主総会で決める主な事項
株主総会の決議事項には,取締役・監査役等の選任又は解任,役員報酬等,計算書類の承認,剰余金の配当,定款変更,募集株式の有利発行,事業譲渡,合併その他の組織再編などがある。
ただし,機関設計,定款の定め及び個別条文によって,株主総会で決めるか,取締役会その他の機関で決めるかが異なる。
招集通知の「株主総会の目的である事項」と株主総会参考書類を読み,報告事項と決議事項も区別する。
取締役会設置会社では,原則として招集時に定めた目的事項以外を決議できない(会社法309条5項)。
株主から特定の事項について説明を求められた取締役等には,目的事項との関係や正当な拒否理由の有無を踏まえた説明義務がある(会社法314条)。
第5 普通決議と特別決議
会社法309条は,決議事項に応じて異なる決議要件を定めている。
定款による変更,議決権を行使できない株主・株式,自己株式その他の例外があるため,次の表は基本形である。
| 決議の種類 | 基本的な定足数 | 基本的な可決要件 | 代表的な事項 |
|---|---|---|---|
| 普通決議 | 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席 | 出席株主の議決権の過半数 | 取締役等の選任,計算書類の承認など |
| 特別決議 | 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席。定款で3分の1以上まで引下げ可 | 出席株主の議決権の3分の2以上。定款で加重要件可 | 定款変更,組織再編,事業譲渡の承認など |
役員選任決議には定足数を議決権の3分の1未満へ下げられない特則があり,累積投票その他の特則もある。
また,会社法309条3項・4項には株主の頭数も要件とする決議がある。
実際の議案では,根拠条文と定款を確認し,定足数,賛成割合及び除外する議決権を議案ごとに計算する。
第6 招集から議事録までの手続
1 日時,場所及び議題を決める
取締役は,株主総会の日時,場所,目的事項,書面又は電磁的方法による議決権行使を認める場合の事項その他法務省令で定める事項を決定する(会社法298条)。
取締役会設置会社では,原則として取締役会の決議によってこれらを決める。
2 招集通知と電子提供措置
会社法299条は,原則として総会日の2週間前までに株主へ招集通知を発することを定め,非公開会社については一定の例外を置いている。
招集通知の方法,記載事項,株主総会参考書類,議決権行使書面及び電子提供措置は,会社の類型と採用した議決権行使方法に応じて確認する。
電子提供制度を利用する場合も,ウェブ掲載だけで一連の招集手続が終わるわけではない(会社法325条の2以下)。
3 当日の運営と議事録
当日は,本人・代理人の確認,議決権数の集計,議長による議事整理,株主質問への説明,採決及び結果の宣言を行う。
決議方法に法令又は定款違反があると,株主総会決議取消しの訴えが問題となることがある。
株主総会の議事については議事録を作成し,本店で10年間備え置く(会社法318条1項・2項)。
第7 株主総会を開かない場合と書面決議
定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
会社法296条1項に違反して定時株主総会を招集しなかったときは,関係する取締役等について100万円以下の過料の対象となり得る(会社法976条1項18号)。
未開催のまま架空の議事録を作成することは,適法な対応にならず,決議の不存在,登記,役員責任その他の問題を拡大させる。
一方,取締役又は株主が目的事項を提案し,その事項について議決権を行使できる株主全員が書面又は電磁的記録で同意した場合は,その提案を可決する株主総会決議があったものとみなされる(会社法319条1項)。
これは無条件に総会を省略できる制度ではなく,対象株主全員の同意,記録,議事録及び備置き等を確認する必要がある。
詳しくは,株主総会の書面決議(会社法319条)―株主全員の同意,議事録・登記,連絡の取れない株主と改正案(AI作成)で説明している。
第8 オンライン参加とバーチャルオンリー株主総会
会場を設けた上で株主がオンラインでも参加又は出席する方式と,物理的な会場を置かない「場所の定めのない株主総会」は区別する。
経済産業省は,産業競争力強化法による会社法の特例として,上場会社が所定の要件を満たす場合にバーチャルオンリー株主総会を開催できる制度を案内している。
同制度には両大臣の確認,定款変更,通信方法,事前相談その他の準備が関係し,経済産業省の案内では,事前相談から確認書交付までおおむね2か月から3か月程度を要するとしている。
オンライン方式を採用する場合は,通信障害時の対応,本人確認,質問の取扱い,議決権行使,録画・ログ及び招集通知の記載も事前に設計する。
第9 よくある質問
1 株主総会に出られる人は誰か
原則として,対象となる株主総会で議決権を行使できる株主本人又は適法な代理人である。
基準日,株主名簿,単元株式数,議決権制限,定款の代理人資格及び招集通知を確認する。
2 2026年の株主総会の日程はいつか
全国一律の日はない。
2026年3月期決算の東証上場内国会社では6月26日が最多であったが,個別会社の日程は招集通知,会社IR及び東証上場会社情報サービスで確認する。
3 株主総会は年に何回あるか
定時株主総会は事業年度ごとに招集し,必要があれば臨時株主総会を追加して開く。
したがって,通常の説明は「定時総会は事業年度ごとに1回,臨時総会は必要に応じて」である。
4 株主総会はなぜ6月が多いのか
3月末決算の上場会社が多く,決算・監査・招集準備を経た後,基準日から3か月以内に議決権を行使する日程が6月に重なるためである。
6月開催は会社法が一律に指定した日程ではない。
5 株主総会を開かないとどうなるか
定時株主総会の招集義務に違反すると過料の対象となり得るほか,役員選任,計算書類,登記及び決議の存否をめぐる問題が生じる。
会社法319条の要件を満たす書面決議を利用できる場合はあるが,単なる未開催とは異なる。
6 100株はいくらか
「1株の株価×100株」に売買手数料等を加えた額であり,銘柄と時点によって変わる。
100株を保有すれば常に総会で議決権を行使できるとは限らないため,基準日と議決権行使書も確認する。
第10 会社側と株主側の確認事項
| 確認する人 | 総会前に確認する事項 |
|---|---|
| 会社側 | 事業年度と基準日,招集権限,日時・場所・目的事項,招集通知,電子提供措置,出席者・代理人,議決権集計,説明担当,議事録,登記・開示 |
| 株主側 | 基準日時点の地位,議決権数,招集通知と参考書類,賛否と質問,代理出席の可否,委任状,事前行使の期限,総会後に確認する決議結果 |
総会手続に問題がある場合は,開催前の補正・再招集,招集手続の省略,書面決議,開催後の決議取消し・無効・不存在など,問題が生じた時点と瑕疵の程度に応じて手段が異なる。
出席拒否,通知漏れ又は議決権集計の争いがある場合は,招集通知,定款,株主名簿,委任状,受付記録,集計原票,録音及び議事録を保存する。
第11 出典と関連記事
1 公開一次資料
e-Gov法令検索「会社法」(124条,189条,295条,296条,298条から300条,308条から310条,314条,318条,319条,325条の2以下,976条)。
法務省「定時株主総会の開催時期について」。
日本取引所グループ「売買単位の統一」。
日本取引所グループ「2026年3月期決算会社の定時株主総会開催日の集計結果について」。
経済産業省「場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度」。
法令及び公表資料は令和8年10月15日現在で確認した。
2 山中弁護士ブログの関連記事
株主総会の議題・議案の通知漏れ―取締役会決定と招集通知,全員出席総会を分けて確認する(AI作成)。
株主総会決議の不存在―招集通知の欠缺,招集権限のない者の招集,後続決議への連鎖,全員出席総会及び追認(AI作成)。
株主総会決議の取消しの訴えは誰が起こせるか―株主等,決議で地位を失った株主・役員(会社法831条1項後段),提訴期間及び訴えの利益(AI作成)。
裁判所の許可を得て株主が招集する株主総会―監査役の差止め,利益供与及び決議取消し(AI作成)。