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胸腹部臓器の後遺障害等級―呼吸器・循環器・腹部臓器・泌尿器・生殖器の認定基準と検査(AI作成)

第1 胸腹部臓器の後遺障害を検討する順序

1 本記事の対象と基準日

(1) 対象とする読者と範囲

本記事は,交通事故で肺,心臓,消化管,肝臓・ひ臓・すい臓,腎臓・膀胱又は生殖器を損傷した人が,自賠責保険の後遺障害等級がどのような基準で認定されるかを確認するための記事である。
令和8年10月9日現在の自動車損害賠償保障法施行令と,厚生労働省が公表している労災保険の胸腹部臓器の障害等級認定基準を確認した。
腹部の傷あと,脊髄損傷による麻痺及び逸失利益の計算は,それぞれの関連記事に譲る。

(2) 臓器ごとに基準が異なる

胸腹部臓器の障害は,等級表の上では「胸腹部臓器の機能に障害を残す」という共通の文言で定められているが,認定基準は,呼吸器,循環器,腹部臓器,泌尿器及び生殖器に分けて,臓器ごとの検査値や症状によって等級を定めている。
したがって,「内臓を損傷した」という傷病名だけでは等級を判断できず,損傷した臓器と残った機能障害を特定することが出発点となる。

2 等級表の全体像

(1) 胸腹部臓器に関する号

自動車損害賠償保障法施行令の別表第一と別表第二は,胸腹部臓器の障害について次の号を定めている。

等級等級表の文言保険金額
別表第一第1級2号「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」4000万円
別表第一第2級2号「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」3000万円
別表第二第3級4号「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」2219万円
別表第二第5級3号「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」1574万円
別表第二第7級5号「胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」1051万円
別表第二第7級13号「両側の睾丸を失つたもの」1051万円
別表第二第9級11号「胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」616万円
別表第二第9級17号「生殖器に著しい障害を残すもの」616万円
別表第二第11級10号「胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」331万円
別表第二第13級11号「胸腹部臓器の機能に障害を残すもの」139万円

(2) 最初に確認する順序

等級表の文言は労務への支障の程度で書かれているが,実際の認定では,認定基準が臓器ごとに定める検査値や症状に当てはめて等級を判断する。
そこで,①損傷した臓器と行われた手術,②症状固定時の検査値と症状,③療養を続ける必要がない状態に至っているか,④他の臓器や他の部位の障害との関係の順に確認すると整理しやすい。

第2 等級認定の基本的な仕組み

1 労災の認定基準と平成18年の改正

(1) 支払基準と認定基準

自賠責保険の支払基準は,後遺障害の等級の認定を,原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行うとしている。
胸腹部臓器については,厚生労働省労働基準局長が平成18年1月25日基発第0125002号で定めた「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準」が具体的な基準である。
この通達は,昭和50年以降一部を除き改正されず,医学的知見の進展に適合しない部分が見られたことなどから,専門検討会の検討結果を踏まえて改正したものと説明されている。
認定基準は労災保険の号数(例えば第9級の7の3,第11級の9)で書かれているので,自賠責の号数への読み替えは後遺障害等級の号数の読み方で確認されたい。

(2) ひ臓・一側の腎臓の等級の見直し

国土交通省は,平成18年3月27日の報道発表で,ひ臓又は一側の腎臓の亡失を第8級から新設の第13級に見直し,胸腹部臓器について第13級を新設する自動車損害賠償保障法施行令の改正を公表した。
改正政令(平成18年政令第139号)の附則は,同年4月1日から施行し,改正後の規定は同日以後に発生した自動車の運行による事故について適用すると定めている。
したがって,平成18年3月31日以前の事故では,古い等級表が適用されることに注意が必要である。

2 単一の障害と複数の障害

(1) 単一の障害は臓器ごとの基準による

認定基準は,胸腹部臓器(生殖器を含む。)の障害が単一である場合は,第2以下に定める臓器ごとの基準により認定し,複数認められる場合は,併合の方法を用いて準用等級を定めるとしている。
例えば,心機能の低下による軽度の運動耐容能の低下(第11級),ペースメーカの植込み(第9級)及び食道の狭さくによる通過障害(第9級)がある場合は,準用第8級とする例が示されている。

(2) 総合評価による等級

多数の臓器に障害が残り,それらが複合的に作用して介護が必要な程度に重度の障害となる場合のように,併合の方法で得られた等級が総合評価による等級を明らかに下回るときは,介護の程度と労務への支障の程度を総合的に判断して等級を認定するとされている。
総合評価の区分は,次のとおりである。

状態等級
労務に服することができず,生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常時介護を要するもの第1級
労務に服することができず,生命維持に必要な身のまわり処理の動作について随時介護を要するもの第2級
労務に服することはできないが,生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるもの第3級
極めて軽易な労務にしか服することができないもの第5級
軽易な労務にしか服することができないもの第7級
通常の労務に服することはできるが,就労可能な職種が相当程度に制約されるもの第9級
通常の労務に服することはできるが,機能の障害の存在が明確であって労務に支障を来すもの第11級

(3) 他の部位の障害から派生する場合

胸腹部臓器の障害と系列を異にする障害が通常派生する関係にある場合は,併合せずに,いずれか上位の等級により認定するとされている。
認定基準は,外傷によりろく骨の著しい変形(第12級)が生じ,それを原因として呼吸機能の障害(第11級)を残した場合は,上位の第11級に認定する例を示している。

第3 呼吸器と循環器

1 呼吸器の障害

(1) 三つの判定方法

呼吸機能の障害は,原因となった傷病や臓器を区別せず,①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果,②スパイロメトリーの結果と呼吸困難の程度,③運動負荷試験の結果により判定する。
原則として①で判定し,その等級が②又は③による等級より低い場合は②又は③の等級により認定するが,①で第3級以上に該当する場合は②③の判定を要せず,スパイロメトリーを適切に行うことができない場合は②による判定を行わないとされている。

(2) 血液ガスによる判定

①の判定では,動脈血炭酸ガス分圧の限界値範囲を37Torr以上43Torr以下とした上で,次のとおり区分されている。
①動脈血酸素分圧が50Torr以下のものは,常時介護が必要なら第1級,随時介護が必要なら第2級,それ以外は第3級
②50Torrを超え60Torr以下のものは,炭酸ガス分圧が限界値範囲にないときは介護の要否により第1級から第3級,限界値範囲にあるときは第5級
③60Torrを超え70Torr以下のものは,炭酸ガス分圧が限界値範囲にないときは第7級,あるときは第9級
④70Torrを超えるものは,炭酸ガス分圧が限界値範囲にないときは第11級

(3) スパイロメトリーと運動負荷試験による判定

②の判定では,%1秒量が35以下又は%肺活量が40以下で高度の呼吸困難があるものを介護の要否により第1級から第3級,中等度の呼吸困難があるものを第7級,軽度の呼吸困難があるものを第11級とし,%1秒量が35を超え55以下又は%肺活量が40を超え60以下のものは,高度又は中等度の呼吸困難で第7級,軽度で第11級,%1秒量が55を超え70以下又は%肺活量が60を超え80以下のものは,呼吸困難があれば第11級とされている。
高度の呼吸困難は連続しておおむね100m以上歩けないもの,中等度は平地でも健常者と同様には歩けないが自分のペースなら1km程度歩けるもの,軽度は健常者と同様には階段を昇降できないものと定義されている。
①②で等級に該当しなくても,呼吸困難があり運動負荷試験の結果から明らかに呼吸機能の障害が認められるものは第11級とされ,その判断には主治医の意見等を徴した上で呼吸器専門医の意見を求める必要があるとされている。

2 循環器の障害

(1) 心機能の低下

心筋梗塞,狭心症,心臓外傷等の後遺症状により心機能が低下したものは,運動耐容能の低下の程度により認定する。
おおむね6METsを超える強度の身体活動が制限されるもの(平地を急いで歩く,健康な人と同じ速度で階段を上る等が制限されるもの)は第9級,おおむね8METsを超える強度の身体活動が制限されるものは第11級とされている。
認定基準の別添は,心筋梗塞では左室駆出率がおおむね40%以上であることを一つの目安として治ゆを判断するとしており,心機能の低下が軽度にとどまらない場合等は,通常,療養を要するとされている。

(2) 植込み型機器・弁置換・大動脈解離

除細動器を植え込んだものは第7級,ペースメーカを植え込んだものは第9級とされ,これらと心機能の低下が併存する場合は併合の方法を用いて準用等級を定める。
房室弁又は大動脈弁を置換したものは,継続的に抗凝血薬療法を行う場合は第9級,それ以外は第11級とされている。
大動脈に偽腔開存型の解離を残すものは第11級であるが,解離した部位をすべて人工血管に置換した場合や,偽腔閉塞型で解離部の線維化が完成した場合は,障害等級に該当する程度の障害を残すことはないとされている。

(3) 検査結果による裏付け

アディーレ法律事務所編『申請事例からみる交通事故後遺障害の等級認定』(中央経済社,令和4年)は,METs値は後遺障害診断書に記載があれば足りるのではなく,運動負荷心電図等の検査結果による裏付けが必要であると指摘している(465頁)。
同書は,ろく骨・胸骨の骨折に伴って肺を損傷し,呼吸器に後遺障害が残ることがあるとも説明している(461頁)。

第4 腹部臓器の障害

1 食道と胃

(1) 食道の狭さく

食道の狭さくによる通過障害を残すものは第9級とされ,通過障害の自覚症状があり,かつ,消化管造影検査で食道の狭さくによる造影剤のうっ滞が認められることが要件である。
流動食以外は通過できない症状が手術によっても残る場合は,高カロリー輸液等が必要となるため療養の対象となり,治ゆとはされない。

(2) 胃の切除

胃の障害は,胃の切除によって生じる消化吸収障害,ダンピング症候群及び胃切除術後逆流性食道炎の有無により認定する。
三つすべてが認められるものは第7級,消化吸収障害とダンピング症候群又は消化吸収障害と逆流性食道炎が認められるものは第9級,いずれか一つが認められるものは第11級,噴門部又は幽門部を含む胃の一部を亡失したもの(第9級・第11級に当たるものを除く。)は第13級である。
消化吸収障害は,胃の全部を亡失したこと,又は噴門部若しくは幽門部を含む胃の一部を亡失しBMIが20以下(被災前から20以下の場合は体重が10%以上減少)であることをいい,ダンピング症候群は食後の症状,逆流性食道炎は自覚症状と内視鏡所見によって判断するとされている。

2 小腸と大腸

(1) 小腸

小腸を大量に切除したものは,残存する空腸と回腸の長さが100cm以下なら第9級,100cmを超え300cm未満で消化吸収障害(低体重等)が認められるなら第11級である。
人工肛門を造設したものは,小腸内容が漏出してストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ,パウチ等の装着ができないものが第5級,それ以外が第7級である。
小腸皮膚瘻は,漏出する小腸内容の量とパウチ等による維持管理の困難性により第5級から第11級に区分され,小腸の狭さく(1か月に1回程度の腹痛等の症状と,単純エックス線像のケルクリングひだ像)は第11級とされている。

(2) 大腸

結腸のすべてを切除するなど大腸のほとんどを切除したものは第11級,人工肛門と大腸皮膚瘻は小腸と同様の区分,大腸の狭さくは第11級である。
便秘は,排便反射を支配する神経の損傷がMRI・CT等で確認でき,排便回数が週2回以下で恒常的に硬便であるものをいい,用手摘便を要するものは第9級,それ以外は第11級とされている。
便失禁は,完全便失禁が第7級,常時おむつの装着が必要なものが第9級,常時おむつは必要ないが明らかに便失禁があるものが第11級である。

3 肝臓・胆のう・すい臓・ひ臓・ヘルニア

(1) 肝臓と胆のう

肝硬変は第9級,慢性肝炎は第11級とされているが,いずれもウイルスの持続感染が認められ,かつ,AST・ALTが持続的に低値であるものに限られる。
抗ウイルス剤等の持続的な投与によって検査値が正常に保たれている場合は,治ゆと判断できないとされている。
胆のうを失ったものは第13級である。

(2) すい臓とひ臓

すい臓の外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるものは第9級,いずれかが認められるものは第11級とされ,それぞれの障害は症状と所定の検査結果により判断する。
内分泌機能に障害があるためにインスリン投与を必要とする場合は療養を要するものとされ,軽微なすい液瘻のために皮膚に疼痛等を生じるものは,局部の神経症状として扱われる。
ひ臓を失ったものは第13級である。

(3) 腹壁瘢痕ヘルニア等

腹壁瘢痕ヘルニア,腹壁ヘルニア,鼠径ヘルニア又は内ヘルニアは,常時又は立位をしたときにヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるものが第9級,重激な業務に従事した場合等腹圧が強くかかるときに脱出・膨隆が認められるものが第11級である。
認定基準の別添は,ヘルニアは手術で修復するのが通常であり,修復術を試みたが完治を期待できない場合や手術の適応とならない場合に限り,障害を残したまま治ゆとなるとしている。

第5 泌尿器と生殖器の障害

1 腎臓の障害

(1) GFRと腎臓の亡失による区分

腎臓の障害は,腎臓を失ったかどうかと,糸球体濾過値(GFR)による腎機能の低下の程度により,次のとおり認定する。

GFR(ml/分)腎臓を失っていないもの一側の腎臓を失ったもの
30を超え50以下第9級第7級
50を超え70以下第11級第9級
70を超え90以下第13級第11級
上記のいずれにも該当しないもの等級の定めなし第13級

GFRが30ml/分以下に低下したものや定期的に透析療法が必要なものは,療養の対象とされている。

(2) 腎臓を摘出した場合の資料

前掲書は,尿管損傷のために左腎臓を摘出し,症状固定日のGFRが75ml/分であったことから第11級10号が認定された事例を紹介している(483頁)。
同書は,腎臓を摘出した場合は症状固定日にGFRを測定して後遺障害診断書に記載すべきであり,この事例では診断書にGFRの記載がなかったものの,添付された検査の時系列情報にGFRが記載されていたことを指摘している(483頁)。

2 尿管・膀胱・尿道の障害

(1) 尿路変向術と排尿障害

尿路変向術を行ったものは,術式とパッド等による維持管理の困難性により第5級から第11級に区分されている。
膀胱の機能の障害による排尿障害は,残尿が100ml以上のものが第9級,50ml以上100ml未満のものが第11級であり,尿道狭さくによるものは,糸状ブジーを必要とするものが第11級,シャリエ式尿道ブジー第20番が辛うじて通り時々拡張術を行う必要があるものが第14級に準ずるとされている。

(2) 尿失禁と頻尿

持続性尿失禁は第7級,切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁は,終日パッド等を装着しパッドをしばしば交換しなければならないものが第7級,常時パッド等を装着しなければならないがパッドの交換までは要しないものが第9級,常時パッド等の装着は要しないが下着が少しぬれるものが第11級である。
頻尿は,器質的病変による膀胱容量の減少又は膀胱・尿道の支配神経の損傷が認められ,日中8回以上の排尿があり,多飲等の他の原因が認められないものが第11級とされている。

(3) 脊髄損傷との関係と受診の遅れ

前掲書は,脊髄損傷によって排尿障害が生じることがあり,その場合は脊髄損傷による等級と排尿障害の等級のいずれか上位の等級により認定されると説明している(478頁)。
また,腰椎捻挫や腰椎椎間板ヘルニアで通院している被害者は排尿障害を事故と結び付けて認識しにくく,整形外科医への報告と泌尿器科の受診が遅れることがあり,その場合に事故との因果関係が否定されることがあると指摘している(478頁)。

3 生殖器の障害

(1) 生殖機能の完全喪失と著しい障害

両側の睾丸を失ったものは第7級13号であり,常態として精液中に精子が存在しないもの,両側の卵巣を失ったもの及び常態として卵子が形成されないものは,第7級に相当するものとして扱われる。
陰茎の大部分の欠損(陰茎を膣に挿入できないと認められるものに限る。),勃起障害,射精障害,膣口狭さく(陰茎を膣に挿入できないと認められるものに限る。),両側の卵管の閉塞・癒着,頸管の閉塞及び子宮の亡失(画像所見により認められるものに限る。)は,第9級17号とされている。
勃起障害は,夜間陰茎勃起検査により夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことが証明され,かつ,神経系検査又は血管系検査で支配神経の損傷等の原因となり得る所見が認められることが要件である。

(2) 一定以上の障害と軽微な障害

狭骨盤又は比較的狭骨盤(産科的真結合線が10.5cm未満又は入口部横径が11.5cm未満のもの)は,第11級に相当する。
一側の睾丸を失ったもの(これに準ずる程度の萎縮を含む。)と一側の卵巣を失ったものは,第13級に相当する。

(3) 精巣損傷と検査

前掲書は,左精巣を摘出し,残った右精巣にも血腫が見られ,2回の検査でも無精子であったことから,生殖機能を完全に喪失したものとして第7級相当が認定された事例を紹介している(493頁~494頁)。
同書は,下腹部を強打して陰嚢の腫脹が見られる場合は精巣損傷を疑って泌尿器科で検査すべきであり,精巣の外傷が重い場合は精液検査と内分泌学的検査を併せて行うべきであると指摘している(481頁~482頁,493頁)。

第6 症状固定と認定資料

1 療養を要する状態との区別

(1) 後遺障害の前提となる治ゆ

認定基準の別添は,臓器ごとに,どのような状態であれば治ゆ(症状固定)と判断でき,どのような状態は療養を要するかを示している。
例えば,GFRが30ml/分以下の腎機能低下や定期的な透析,経口的な栄養管理ができない小腸の大量切除,インスリン投与を必要とするすい臓の内分泌機能障害は,療養を要するものとされている。
これらに当たる場合は,後遺障害の等級を検討する前に,療養を続けるべき状態かどうかを主治医に確認する必要がある。

(2) 経過観察が必要な病態

大動脈の偽腔開存型の解離は症状が安定しないものが多いため,急性期経過後少なくとも5年間にわたって大動脈径がほとんど拡大しないことを確認するなど,経過を慎重に見極める必要があるとされている。
狭心症についても,原則として症状が日常生活や通常の身体活動に支障がない程度に改善しなければ治ゆと判断できないとされている。

2 後遺障害診断書と検査資料

(1) 診断書の胸腹部臓器の欄

前掲書が掲載する自賠責保険の後遺障害診断書の様式には,胸腹部臓器・生殖器・泌尿器の障害について,各臓器の機能低下の程度と具体的症状を記入し,生化学検査・血液学的検査などの成績を簡記するか検査表を添付する欄がある(484頁)。
認定基準が臓器ごとに検査値を基準としている以上,その検査値と測定日が診断書又は添付資料から読み取れることが重要である。
診断書の作成時期と提出前の確認は,交通事故の後遺障害診断書で説明している。

(2) 臓器の基準に当たらない痛み

前掲書は,腸間膜の損傷と腹腔内出血の手術後に腹部痛が残った事例で,腹部痛が小腸の障害の類型から派生するものではないとして局部の神経症状の第14級9号が認定され,排便困難は,医療照会で用手摘便が不要とされ内服で自己調整していたことから非該当とされた例を紹介している(509頁~510頁)。
臓器の基準に当たらない痛みは局部の神経症状として,臓器の基準に当たる症状はその基準の要件に沿った検査と記録として,分けて資料を整える必要がある。

3 損害額と認定結果への対応

(1) 逸失利益と慰謝料

認定された等級は後遺障害慰謝料と逸失利益の検討の出発点となるが,労働能力への影響は臓器や職業によって異なる。
逸失利益の立証と計算は,交通事故の後遺障害逸失利益で説明している。

(2) 認定結果に不服がある場合

非該当又は予想より低い等級となった場合は,否定されたのが臓器の損傷との因果関係なのか,検査値なのか,療養継続中との判断なのかを認定理由から分けて読む必要がある。
異議申立て等の手続は非該当・低い等級への異議申立てと必要資料で,等級認定の全体の流れは交通事故の後遺障害の総合案内で,事故直後から症状固定までの受診と検査は交通事故治療の流れで説明している。

第7 出典・参考資料

1 法令・告示

①e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法施行令」別表第一第1級2号・第2級2号,別表第二第3級4号・第5級3号・第7級5号・第7級13号・第9級11号・第9級17号・第11級10号・第13級11号及び同別表の備考,附則(平成18年政令第139号)(令和8年10月9日確認)
②金融庁・国土交通省「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」第3(損害保険料率算出機構掲載)

2 所管行政機関の認定基準・資料

①厚生労働省労働基準局長「胸腹部臓器の障害に関する障害等級認定基準について」(平成18年1月25日基発第0125002号)別紙及び別添「胸腹部臓器の障害に関する医学的事項等」
②国土交通省「自動車損害賠償保障法施行令の一部を改正する政令について」(平成18年3月27日)

3 文献

①アディーレ法律事務所編『申請事例からみる交通事故後遺障害の等級認定』(中央経済社,令和4年)461頁,465頁,478頁,481頁~484頁,493頁~494頁,509頁~510頁