第1 特許保証の条項で何を約束しているか
製造委託契約には,納入品が第三者の知的財産権を侵害しないことを受注者に保証させ,紛争が起きた場合の解決と費用負担も受注者に求める条項が置かれることがある。
審査では,非侵害の保証,事前調査,紛争への対応及び最終的な金銭負担を分け,仕様を決めた者とリスクを負担する者の関係を確認する必要がある。
本記事は令和8年9月10日現在の公表資料に基づく。
中心となる資料は,公正取引委員会・中小企業庁・特許庁が令和8年6月24日に公表した知財取引指針であり,特に同指針57頁~61頁の知財訴訟等のリスク転嫁を扱う。
指針は裁判の判決ではなく,独占禁止法等に関する行政上の考え方と,望ましい取引・契約上の対応を示した資料である。
第2 設計・仕様の決定に誰が関与したかを確認する
1 発注者の指示だから受注者が全て負担するとはいえない
指針は,発注者の指示に基づく業務について,責任の所在を考慮しないまま,第三者との知財紛争の責任・負担を受注者へ一方的に転嫁することを問題としている。
発注者だけに帰責事由がある場合と,受注者にも帰責事由がある場合を区別し,後者では双方の帰責事由の内容や得た利益等に応じた分担を示している(知財取引指針57頁~59頁)。
したがって,受注者が加工・製造を行ったという事実だけで,全ての知財責任を負担させてよいとはいえない。
反対に,発注者が仕様書を交付したというだけで,受注者独自の設計変更や技術の採用に関する責任まで当然に発注者へ移るわけでもない。
2 責任分担の協議に使う整理表
| 仕様等の決まり方 | 確認する資料 | 協議すべき事項 |
|---|---|---|
| 発注者が具体的な構造・技術を指定 | 図面,仕様書,指定理由,変更履歴 | 指定部分の調査・許諾取得・紛争費用 |
| 受注者が独自の構造・技術を提案 | 提案書,採否の経緯,技術資料 | 提案部分についての調査範囲と保証条件 |
| 双方が設計・改良に関与 | 会議記録,設計分担,承認記録 | 各寄与と責任原因に応じた分担 |
| 納入後に発注者等が改変・組合せ | 変更後の仕様,組合せ,使用方法 | 当初の合意範囲との相違と追加の調査 |
| 他社の技術・部品を使うことが指定 | 指定書,ライセンス条件,提供元の説明 | 許諾の取得者,対価,利用範囲の確認 |
この表は責任を機械的に割り振るものではなく,本記事が提案する事実確認の枠組みである。
最終的な負担は,指示内容だけでなく,危険の認識,調査の合意,対価その他の事情を踏まえて定める。
第3 非侵害保証と調査義務を分ける
1 調査したことと非侵害の保証は同じではない
一定の調査を実施する約束と,権利侵害が一切ないという結果を保証する約束は異なる。
契約には,対象とする製品・技術,対象国,権利の種類,調査時点,調査の担当者及び費用を記載する方法が考えられる。
輸出先や用途が後から変わる場合には,調査範囲・費用を見直す手続も必要である。
受注者の技術知識,調査能力及び対価を検討せず,世界中の全ての権利について無制限の保証を求めることは,負担の実態を把握しない契約につながる。
指針は,非侵害の保証と調査費用を,仕様決定における双方の役割等を踏まえて協議すること,特許保証を行わない前提で他の条件を定めることも選択肢となることを示している(同指針58頁、60頁)。
2 調査条件を具体化する交渉文案
例えば,「非侵害調査の対象製品,対象国,対象権利,基準日及び費用負担は,別紙に定める。仕様,使用方法又は販売地域を変更する場合は,追加調査の要否及び費用を別途協議する」と定める方法がある。
これは本記事の交渉用文案であり,公取委の契約書ひな形の逐語引用ではない。
既に権利侵害の疑いを認識している場合には,単に保証条項を狭めるだけで対応を終えない。
該当する権利,対象技術,利用態様及び設計回避・許諾取得の可能性を個別に検討する必要がある。
第4 紛争対応は通知・協力・費用・和解に分ける
知財紛争が発生した場合に,受注者が全ての訴訟対応を引き受ける旨だけを定めると,必要な設計資料を発注者が持っているのに受注者だけが対応しなければならないなど,実務上も不合理な結果を招く。
指針は,発注者の指示内容等の開示,紛争解決への協力及び受注者に帰責事由がない場合の補償についても示している(同指針58頁~59頁)。
| 手続 | 契約で具体化する内容 |
|---|---|
| 通知 | 警告書・訴状等を受けた場合の連絡先,通知期限,添付資料 |
| 初動 | 応訴期限等の確認,設計・製造資料の保全,外部専門家への相談 |
| 資料提供 | 図面,仕様決定の経緯,指示内容,ライセンス資料の相互提供 |
| 対応方針 | 訴訟の当事者,弁護士の選任,防御方針,製造・販売継続の判断 |
| 費用 | 暫定負担,証憑,専門家費用,原因調査後の精算 |
| 和解 | 責任を認める内容,金銭負担,利用制限等を伴う合意の事前協議 |
和解については,「相手方に金銭負担その他の義務を生じさせる和解をする場合には,その相手方と事前に協議する」といった条項が考えられる。
ただし,訴訟当事者自身の期限対応や必要な防御措置まで,相手方の承諾待ちで失わせる内容にはしない。
事前協議できない緊急時の連絡・事後報告も設計する必要がある。
1 非侵害保証と紛争対応を扱った一審・控訴審
中心となる裁判例は,売買基本契約の非侵害保証条項及び紛争対応条項が問題となった,知的財産高等裁判所平成27年12月24日判決・平成27年(ネ)第10069号である。
その一審は,東京地方裁判所平成27年3月27日判決・平成24年(ワ)第21128号である。
両判決は裁判所ウェブサイトの本文で確認した。
| 比較点 | 一審 | 控訴審 |
|---|---|---|
| 特許侵害そのもの | 非侵害保証違反に基づく請求が当然に成立するとはしなかった。 | 納入品が特許権を侵害することの具体的な立証を認めなかった。 |
| 紛争対応義務 | 対応義務違反と,支払ったライセンス料との因果関係を別に判断した。 | 技術分析と資料提示,合理的なライセンス料を検討する資料の収集・提供という具体的義務を認めた。 |
| 支払った2億円 | 対応義務違反とライセンス料の支払との相当因果関係を認めなかった。 | 相当因果関係を認めた上で,買主側の拙速な対応等を考慮した。 |
| 結論に影響した割合 | 買主の相殺を認めなかった。 | 買主7割・売主3割とし,6000万円の限度で相殺を認めた。 |
一審の因果関係に関する判断はPDF実頁140頁~141頁,控訴審の特許侵害の立証に関する判断はPDF実頁30頁~31頁,対応義務は51頁~53頁,損害及び過失相殺は59頁~70頁を参照されたい。
控訴審の「3割」は当該事案の過失相殺の結果であり,知財補償の一般的な上限や標準負担割合ではない。
2 侵害が立証されなくても対応義務違反が残る
控訴審は,基本契約の紛争対応条項を,第三者の知的財産権侵害が問題になった場合に売主がとるべき包括的な義務を定めるものと解した。
具体的な義務の内容は,第三者の主張の態様・内容や当事者間の協議等によって定まるとし,当該事案では,特許の有効性・侵害の有無に関する技術分析と裏付け資料,合理的なライセンス料の検討に必要な資料の提供を求めた。
他方で,売主自身がライセンス契約を締結して支払う義務まで当然に認めたわけではない(PDF実頁51頁~53頁)。
この判決から,非侵害保証だけを削除すれば知財紛争の負担をなくせるという結論は導けない。
「自己の費用と責任で解決する」「一切迷惑をかけない」「協力する」という条項が別に残れば,その内容に応じた義務違反が問題となる。
本記事では,義務の有無だけでなく,実施すべき作業,資料の範囲,期限,費用負担及び不履行時の責任上限まで具体化することを提案する。
3 和解・ライセンス契約の締結権限を明示する
控訴審は,売主側に紛争解決権が留保されていたとの主張を認めなかった。
一方で,買主が十分な技術的検討やライセンス料の算定根拠の追及を行わず,売主側からの協議要請等を顧慮せずに契約を締結した事情を,買主側の過失として考慮した(PDF実頁51頁,68頁~70頁)。
したがって,受注者側の条項案としては,①第三者の請求を受けた後の通知,②請求書・警告書・訴訟資料の共有,③防御を主導する者,④弁護士・弁理士の選任,⑤和解及びライセンス契約の事前承諾,⑥緊急時の例外,⑦相手方が承諾を不合理に拒む場合の処理を定める必要がある。
「受注者の同意がなければ支出は一切補償しない」という一文だけでは,緊急の差止め対応や受注者の協力拒否がある場合に紛争が残る。
4 紛争対応で準備する資料
①対象となる国・権利・請求項・製品型番・製造方法・使用方法を特定した表である。
特許番号の列挙だけでなく,どの請求項のどの構成を充足すると主張されているかを整理する。
②設計・仕様・材料・用途の決定履歴と,その決定主体を示す資料である。
最終図面だけでなく,変更指示,メール,承認条件及び発注者が第三者から受けた指示も,負担分担の判断に関係する。
③技術的な非侵害・無効の検討資料,上流供給者への照会と回答,合理的なライセンス料の検討資料である。
上流供給者が単に「問題ない」と回答したことだけで,契約上要求される具体的な調査・資料提供を尽くしたとは扱わない。
④警告への回答,交渉経緯,訴訟提起や差止めの現実的な危険,和解案を比較した記録である。
これらは,後に支出の必要性・相当性及び相手方の対応義務違反との因果関係を説明するためにも重要である。
第5 賠償範囲と上限を契約全体で確認する
1 一般賠償条項との関係を明示する
知財補償条項に「一切の損害を補償する」と書かれている一方,一般賠償条項に上限がある場合には,両者の適用関係を明確にする。
差止めに伴う生産停止,代替品の調達,ライセンス料,弁護士費用及び和解金をどこまで含めるかも確認する。
契約が負担させる損害と,民法415条・416条に基づく損害賠償の要件・範囲を区別することが重要である。
上限については,1件ごとか期間中の総額か,複数の注文にまたがる紛争をどう扱うかを定める。
同じ損害を補償,代金減額,回収費用等の複数名目で重ねて請求しないことも確認する。
ただし,当事者間の上限合意だけで,第三者である権利者からの請求を制限できるわけではない。
2 上限がないことと違法性を直結させない
知財取引指針は,業務内容,コスト,対価等に応じた賠償額の制限を選択肢として示している。
法令が全ての知財条項について一定の上限額を義務付けているわけではなく,上限がないことだけで直ちに違法とはいえない。
他方,正当な理由なく責任の有無・割合を考慮せず受注者だけにリスクを負担させ,受注者が取引への影響を懸念して受け入れざるを得ない場合には,優越的地位の濫用等の問題となり得る。
取適法が適用される取引では,不当な経済上の利益の提供要請も検討する(同指針60頁~61頁,取適法5条2項2号)。
優越的地位の判断と契約の効力の区別は,不公正な取引方法に関する実務メモを参照されたい。
第6 帰属・図面の引渡しと紛争責任を混同しない
製品や図面を納入すること,成果に関する権利を譲渡・許諾すること,第三者の権利を侵害しないと保証することは,それぞれ別の約束である。
成果の権利を発注者に移転する契約でも,既存技術やノウハウまで含むか,第三者への開示・再委託を認めるかは別に決める必要がある。
著作権の譲渡に当たっては,著作権法27条・28条の権利を特掲しない場合の留保推定と,著作者人格権が譲渡できないことも区別する(著作権法59条・61条)。
ただし,全ての図面やデータが当然に著作物となるわけではなく,対象情報の性質に応じた検討が必要である。
型と図面の引渡しについては,金型・治具の無償保管を解消する実務で説明する。
第7 公的モデル契約を条文ごとに比較する
1 比較対象と法的な位置付け
比較対象は,公正取引委員会・中小企業庁・特許庁が令和8年6月24日に公表した「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」及び「契約書ひな形」のうち,契約書ひな形集である。
「秘密保持契約書」「共同開発契約書」「知的財産権等の取扱いに関する契約書(開発委託契約)」「知的財産権等の取扱いに関する契約書(製造委託契約)」の4種類を比較した。
ひな形はそのまま法令上の強行的な契約内容になるものではなく,取引類型に応じて調整するための資料である。
2 保証・責任負担・上限の違い
| ひな形・条項 | 内容の要約 | 契約審査上の意味 |
|---|---|---|
| 秘密保持・5条3項 | 開示情報について,正確性等とともに第三者の権利侵害がないことを保証しない。 | 情報開示の段階の不保証であり,量産品の供給責任を一律に定める条項ではない。 |
| 秘密保持・7条 | 契約違反による損害賠償を定め,弁護士費用も含めている。 | 5条の不保証と,秘密保持違反等の責任がなくなることは同義ではない。一般的な金額上限は置かれていない。 |
| 共同開発・12条1項 | 開示技術・実施許諾する知財等の第三者権利非侵害を相互に保証しない。 | 共同開発の不確実性を踏まえた設計であり,非侵害保証を当然の前提としていない。 |
| 共同開発・12条2項,15条 | 第三者との紛争を通知し,相互協力して解決する。契約違反の損害賠償には弁護士費用を含む。 | 協力義務違反の問題は残る。15条に一般的な金額上限はないため,必要なら追加する。 |
| 開発委託・5条2項 | 成果の非侵害を保証し,この保証違反に係る賠償額は原契約の報酬額を上限とする。 | 「保証あり・報酬額上限」という選択肢である。上限は文言上,この保証違反についてのものとなる。 |
| 開発委託・5条3項 | 発注者が指定した仕様その他の指示内容が権利を侵害する場合,前項の責任を負わない。 | 仕様指定による例外を置く。ただし,他の義務違反まで無条件に免責するという文言ではない。 |
| 製造委託・8条1項 | 目的物又は組込み先製品に関する知財紛争を相互に通知する。 | 部品単体に限定せず,組込み先との関係も通知対象に含めている。 |
| 製造委託・8条2項 | 各当事者が,知財侵害に係る自らの責任の範囲で紛争解決の負担を負う。 | 一方当事者への全面転嫁を前提としない。非侵害の包括保証や,報酬額を基準とする金銭上限はこの条項にはない。 |
該当箇所は,秘密保持がPDF実頁3頁~4頁,共同開発が9頁,開発委託が16頁,製造委託が20頁である。
特に,「公的モデルはすべて非保証である」「公的モデルはすべて代金額を上限としている」という説明はいずれも正確ではない。
3 知財帰属・情報開示・優先関係・存続条項
| 論点 | 主な条項 | 実務上の確認事項 |
|---|---|---|
| 既存知財の留保 | 開発委託2条3項~5項 | 既存の知財と今回の開発成果を区別し,必要な利用許諾を別途整理する。 |
| 発注者の秘密情報に基づく成果 | 開発委託5条1項 | 定められた成果の権利移転は,原契約の報酬・費用等の全支払と結び付けられている。既存知財全部の移転とは読まない。 |
| 受注者固有の知財 | 製造委託5条,6条3項 | 独自に創出した知財の帰属を定め,固有知財の開示・提供は対価を含め別途協議する。 |
| 秘密情報の開示義務 | 開発委託6条2項,製造委託6条2項~3項 | 基本契約や原契約を根拠に,ノウハウを無制限に開示させる構成を避ける。 |
| 他の契約との抵触 | 共同開発13条3項,開発委託2条2項,製造委託2条2項 | 補充合意を追加する際は,基本契約・品質保証協定等の全面保証とどちらが優先するかを明示する。 |
| 契約終了後の対応 | 製造委託9条2項 | 知財紛争対応を定める8条は終了後も存続する。終了しただけで対応義務が消える構造ではない。 |
開発委託8条2項の存続条項には5条が列挙されていない。
しかし,そのことだけで,終了前に発生した保証違反に基づく請求権まで当然に消滅するとはいえない。
長期供給や終了後の販売を予定する場合には,保証の対象期間,通知期間,既発生の請求権及び紛争対応義務の存続を個別に明記することを提案する。
根拠はひな形集PDF実頁9頁,14頁~16頁,18頁~20頁である。
4 知財取引指針と裁判例の関係
知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針は,設計や仕様の決定に関する役割,指示,当事者の責任等を踏まえて知財紛争の負担を整理する考え方を示す。
発注者の指示は正式な図面に限られず,実際の指示・決定の経緯が問題となる。
また,責任の分担,負担の上限,調査費用等を協議することや,不当に不利益を与える責任転嫁と独占禁止法・取適法との関係を説明している(冊子57頁~61頁,PDF実頁62頁~66頁)。
この行政上の評価と,平成27年の知財高裁判決による契約解釈は,法的根拠も対象時点も異なる。
令和8年のガイドラインが公表されたことだけで,過去の契約条項の効力や既判決の意味が自動的に変更されるわけではない。
また,責任上限を設けていないという一点だけで,あらゆる契約が直ちに取適法違反になるという説明も避けるべきである。
5 製造委託向けの補充条項案
【対象及び分担】
第三者の知的財産権に関する保証及び補償の対象となる製品,製法,用途,権利及び国は別紙で特定する。
紛争解決に要する負担は,設計,仕様,指示,製造その他の事情について,各当事者の責任に応じて分担する。
発注者が指定した仕様その他の指示内容に起因する侵害について,受注者は当該指定等に起因する限度で責任を負わない。
ただし,受注者が問題を知りながら必要な警告をしなかった場合等の責任は別途判断する。
【紛争対応】
当事者は第三者の請求を受けたとき,請求内容と関係資料を速やかに相手方に通知する。
両当事者は,保有する資料及び合理的に入手できる資料に基づき,侵害の有無,権利の有効性,代替設計及び合理的な解決費用を検討するために協力する。
追加の技術調査・専門家費用の範囲と負担は事前に協議するものとし,この協議によって緊急の期限対応を妨げない。
【和解及び上限】
相手方に負担させる和解又はライセンス契約は,原則として相手方の事前の書面承諾を要し,相手方は合理的な理由なく承諾を拒み,又は遅延しない。
緊急時又は相手方が必要な対応を拒否する場合の手続は別紙で定める。
本条に基づく保証違反,対応義務違反,調査費用,合理的な防御費用及び補償の総額は〔合意額又は算定式〕を上限とし,一般の損害賠償条項との合算関係及び故意・重大な過失等の取扱いは〔該当条項〕に従う。
上記は公的モデルの逐語転載ではなく,裁判例とモデルの違いを踏まえた補充案である。
保証そのものを引き受けるか,合理的調査義務にとどめるかは,設計への関与と対価に応じて選択する必要がある。
第8 修正協議に持参する資料
受注者は,問題となる条項に加え,仕様決定の経緯,自社が変更できない部分,既存技術,調査可能な範囲,対価及び想定費用を整理するとよい。
修正案は,免責の要求だけで終わらせず,調査の分担,資料提供,迅速な初動及び原因に応じた費用精算を一組として提案する。
公取委が公表した契約書ひな形も参照できる。
ひな形を使う場合には,製造委託か開発委託かを確認し,自社の基本契約・個別注文書・品質保証協定との優先関係を整える必要がある。
契約全体の確認順序は,受注者側の取引基本契約審査を参照されたい。
第9 出典
① 公正取引委員会・中小企業庁・特許庁「知財取引指針」及び契約書ひな形の公表(令和8年6月24日)。
② 知財取引指針本文第2の3⑵,57頁~61頁。
③ 取適法(e-Gov)5条2項2号。
④ 独占禁止法(e-Gov)2条9項5号,19条。
⑤ 民法(e-Gov)415条,416条。
⑥ 著作権法(e-Gov)59条,61条。
⑦ 東京地方裁判所平成27年3月27日判決・平成24年(ワ)第21128号,PDF実頁140頁~141頁。
⑧ 知的財産高等裁判所平成27年12月24日判決・平成27年(ネ)第10069号,PDF実頁30頁~31頁,51頁~53頁,59頁~70頁。
⑨ 公正取引委員会・中小企業庁・特許庁の契約書ひな形集,PDF実頁1頁~21頁。