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仮差押えの被保全債権と本案請求が異なる場合―請求の基礎の同一性と最高裁平成24年2月23日判決(AI作成)

仮差押命令に表示した被保全債権と,本案で認容された債権の法的構成が異なる場合,仮差押えの効力は維持されるのか。最高裁平成24年2月23日第一小法廷判決を基に,「請求の基礎の同一性」と申立て・本案・配当段階の実務を整理する。

第1 問題の所在

仮差押命令では,被保全権利と保全の必要性を疎明しなければならない(民事保全法13条・20条)。その後の本案訴訟で,仮差押命令に記載した債権とは異なる法的構成の金銭債権が認容されたとき,債権名が異なるという理由だけで先行する仮差押えの効力を失わせるのは相当かが問題となる。

最高裁平成24年2月23日第一小法廷判決(平成23年(受)第268号・民集66巻3号1163頁)は,厳格な債権の同一性ではなく,「請求の基礎を同一にするか」を基準とした。

第2 最高裁平成24年2月23日判決

1 事案

債権者は,根抵当権が設定された建物が無断で取り壊され,根抵当権を侵害されたことによる共同不法行為の損害賠償請求権4000万円の内金2000万円を被保全債権として,債務者の明渡料支払請求権について債権仮差押命令を得た。

債務者が2000万円の仮差押解放金を供託したため,仮差押執行の効力は供託金取戻請求権へ移行した。その後の本案訴訟では,主位的な不法行為に基づく損害賠償請求は棄却されたが,予備的に請求した貸金債権4000万円は認容され,判決が確定した。

供託金取戻請求権について他の債権者の差押えと競合し,配当表が作成された。仮差押債権者は,他の差押債権者の債権が架空であると主張して配当異議訴訟を提起した。

2 原審の判断

原審は,仮差押命令に表示された損害賠償請求権について請求棄却判決が確定し,認容された貸金債権は訴訟物を異にするとして,仮差押債権者には配当を受ける地位がなく,配当異議の訴えの利益もないと判断した。

3 最高裁の規範と当てはめ

最高裁は,保全命令が緊急かつ必要な限度で発令され,被保全権利を疎明する資料にも制約があることを理由として,仮差押命令は,表示された被保全債権と異なる債権についても,その債権が被保全債権と請求の基礎を同一にするなら,その実現を保全する効力を有するとした。

本件では,損害賠償請求権は,無断で担保物件が取り壊され,貸金債権の回収が困難になったことによる損害を理由とする。そのため,貸金債権の発生原因事実は損害賠償請求権の発生原因事実に包含されており,両請求は請求の基礎を同一にすると判断された。

最高裁は,仮差押債権者には配当を受領し得る地位があり,配当異議の訴えの利益があるとして原判決を破棄し,第1審判決を取り消して,本案を審理させるため第1審へ差し戻した。裁判所の事件情報上の結果は「破棄自判」であるが,主文には第1審への差戻しも含まれる。

第3 「請求の基礎を同一にする」の検討方法

1 債権名の一致・不一致だけでは決まらない

不法行為,債務不履行,不当利得又は貸金という法的構成の名称が異なるだけで,同一性を直ちに否定するべきではない。他方,同じ「損害賠償」という名称であっても,取引,行為,時期及び損害が別なら,同一性が当然に認められるものでもない。

2 発生原因事実の包含関係を調べる

まず,被保全債権と本案債権について,契約,金銭交付,違法行為,債務不履行,損害及び因果関係を要素に分解する。本件では,貸金債権が存在することが,担保侵害による損害賠償請求の前提に含まれていた。この包含関係が請求の基礎の同一性を支えた。

3 証拠の共通性と防御上の不利益を見る

同一の契約書,送金記録,担保設定資料,交渉記録又は当事者関係が両請求に用いられるかを確認する。相手方が,先行する保全手続及び本案訴訟を通じて,どの事実について防御する必要があると理解できたかも重要である。

4 民事訴訟法143条との関係を意識する

最高裁の事件情報は,参照法条として民事保全法20条と民事訴訟法143条1項を掲げる。もっとも,仮差押えの保全範囲を判断する場面と,訴えの変更の可否を判断する場面を機械的に同一視せず,保全制度の緊急性と疎明資料の制約を踏まえて検討する必要がある。

第4 債権者側の実務

1 申立時に予備的構成を把握する

申立書では,主位的な法的構成だけでなく,同じ取引・行為から成立し得る予備的な債権を検討する。被保全債権の発生原因事実を過度に狭く記載すると,後の本案債権との共通基盤を説明しにくくなる。他方,抽象的又は過大な記載で疎明不足を補うことはできない。

2 本案の請求設計と保全記録を連動させる

本案訴状には,仮差押命令の申立書,疎明資料,決定書,被保全債権の表示及び執行対象を照合した上で,主位的請求と予備的請求の事実上の共通部分を明示する。請求変更又は予備的追加をする場合は,時効,訴えの変更の要件及び相手方の防御上の不利益も確認する。

3 配当段階まで証拠をつなぐ

仮差押えをしただけでは回収は終わらない。本案の債務名義,執行文,送達証明,仮差押命令及び両債権の請求の基礎が同一であることを示す資料を整理し,競合する差押え,配当要求及び配当異議の期限に備える。

第5 債務者・競合債権者側の実務

1 被保全債権の棄却だけで効力消滅を断定しない

仮差押命令に記載された債権について請求棄却判決が確定しても,本案で認容された別債権が請求の基礎を同一にするなら,仮差押えの効力が維持される可能性がある。本案判決の主文だけでなく,主位的・予備的請求の原因事実を確認する。

2 同一性を争うときは相違点を具体化する

取引の時期,当事者,契約,給付,違法行為,損害及び証拠を比較し,単に訴訟物が異なるというだけでなく,事実上の基盤が別であること,包含関係がないこと又は新たな防御を要することを具体的に示す。

3 保全取消しと配当異議は別に管理する

被保全権利の不存在,事情変更又は起訴命令後の対応は,保全異議・保全取消しの問題となる。他方,競合執行の配当表に対する異議は,異議申出と出訴期間を別に管理する。利用する手続,期限及び立証対象を混同しない。

第6 関連する仮差押えの論点

1 同一債権について別財産を追加仮差押えする場合

被保全債権が同一でも,別の目的物について追加の仮差押えを申し立てる場面では,各目的物との関係で保全の必要性を検討する。詳しくは,同一の被保全債権について別の財産を追加仮差押えできるか―最高裁平成15年1月31日決定(AI作成)で説明している。

2 債務名義取得後の仮差押え

債務名義があっても,直ちに本執行へ進めない具体的事情があり,強制執行不能又は著しい困難のおそれがある場合は仮差押えの必要性が問題となる。詳しくは,債務名義があっても仮差押えはできるか―保全の必要性と東京高裁平成24年11月29日決定(AI作成)を参照されたい。

3 仮差押解放金

債務者が解放金を供託すると,仮差押執行は取り消され,執行の効力は供託金取戻請求権の上に移行する。本件もこの場面であった。解放金の金額,執行取消し及び供託金からの回収については,仮差押解放金とは―金額の決まり方,供託による執行の取消し及び債権者の回収方法(AI作成)で説明している。

第7 実務チェックリスト

① 仮差押命令の被保全債権を,契約,行為,時期,金額及び相手方ごとに特定したか。
② 本案の主位的・予備的請求について,発生原因事実の共通部分と相違部分を表にしたか。
③ 別債権の発生原因事実が,被保全債権の発生原因事実に包含されるか。
④ 共通して用いる証拠と,新たに必要となる証拠を分けたか。
⑤ 相手方に不意打ちとなる新たな攻撃防御が必要か。
⑥ 保全異議,起訴命令,事情変更による取消し,本案,執行及び配当異議の期限を別々に管理したか。
⑦ 仮差押解放金が供託された場合,執行の効力が移行する取戻請求権を追跡したか。
⑧ 債権名又は訴訟物の異同だけで結論を出していないか。

第8 資料の確認状態

最高裁平成24年2月23日第一小法廷判決は,裁判所公式の事件情報及び判決全文で,事件番号,裁判年月日,主文,事実関係,規範及び当てはめを確認した。武藤貴明・岡田幸人「最高裁民事破棄判決等の実情―平成二四年度」(判例時報2188・2189・2191号)は,年度内における本判決の位置付けを確認する二次資料として用いた。

今回,判例秘書の認証済み本文には到達していない。したがって,「判例秘書本文確認済み」又は「判例秘書に収録なし」とは表示しない。

第9 参考資料

① 裁判所・最高裁平成24年2月23日第一小法廷判決の事件情報
② 同判決全文
③ 民事保全法
④ 民事訴訟法
⑤ 武藤貴明・岡田幸人「最高裁民事破棄判決等の実情―平成二四年度」判例時報2188・2189・2191号(二次資料)
⑥ 平成24年度の最高裁民事破棄判決等の実情―処理統計・主要判例・実務チェック(AI作成)

(本記事はAIが作成した一般的な解説であり,個別事件に対する法的助言ではない。具体的事件では,保全・本案・執行記録と最新の法令・判例を確認する必要がある。)