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裁判のディスカバリーとは―日本の文書提出命令・早期開示構想との違い(AI作成)

第1 ディスカバリーと日本の証拠収集を比べる視点

1 本記事で扱う範囲

ディスカバリーとは,訴訟で必要となる情報を相手方等から取得するための手続をいう。
本記事は,米国の連邦民事訴訟規則に基づく制度を取り上げ,日本の文書提出命令及び日弁連の早期開示命令構想との違いを整理する。
確認の基準日は2026年11月3日である。

米国の州裁判所の手続や国際仲裁には,それぞれ別の規律がある。
海外の裁判では資料を全部出さなければならないという説明を,日本の訴訟やすべての外国手続へそのまま当てはめることはできない。

2 情報を知ることと裁判所に証拠を出すこと

比較の出発点は,当事者が相手方の資料を調べる段階と,裁判所へ証拠を提出する段階を分けることである。
資料の内容を知った結果,主張を修正し,和解の条件を検討し,又は証拠として提出する資料を選ぶこともある。

この違いを踏まえると,情報取得の対象範囲,資料の指定方法,秘密の保護及び不履行への対応を比べやすくなる。
早期開示による和解促進等は制度設計上期待される効果であり,個別事件で必ず実現する結果ではない。

第2 米国の連邦民事訴訟におけるディスカバリー

1 関連性と比例性による範囲の限定

連邦民事訴訟規則26条b項1号は,特権により保護されない事項について,請求又は防御との関連性と,事件の必要性に見合った範囲であることを求めている。
比例性は,争点の重要性,請求額,関連情報への当事者の相対的なアクセス,当事者の資力,争点の解決における当該ディスカバリーの重要性,及び提案されたディスカバリーの負担又は費用が見込まれる利益を上回るかを考慮して判断される。

取得対象の情報について,それ自体が審理で証拠として採用できることは必要とされていない。
もっとも,関連していればどれだけ広い請求でも許されるわけではなく,比例性も満たす必要がある。

2 文書・電子情報を指定する方法

規則34条は,相手当事者の占有・保管・管理下にある文書や電子情報等について,閲覧・複写等を求める仕組みを定めている。
対象は個別項目又はカテゴリーとして指定できるが,合理的な具体性を備えて記載する必要がある。

例えば,問題となる取引,対象期間,担当部署及び資料の種類を組み合わせて範囲を示す方法が考えられる。
これは指定方法を説明するための例であり,その指定だけで開示請求の適法性が確定するわけではない。

3 裁判所への提出と秘密の保護

規則5条d項1号Aによれば,文書提出要求とその応答など同号が列挙する資料は,手続で使用する場合又は裁判所が命じた場合を除き,原則として裁判所に提出しない。
当事者間で資料を取得することと,裁判所に資料を提出することが区別されている。

規則26条c項は,誠実な協議又はその試みについての証明と正当な理由等の要件の下で,開示の禁止,範囲や条件の限定,費用の配分,営業秘密等の保護に関する命令を認めている。
秘密性や探索負担は,請求の可否と範囲を検討する際の重要な論点である。

第3 日本の文書提出命令と当事者照会

1 文書提出命令の役割

日本の民事訴訟では,文書提出命令により,文書の所持者に提出を求める手続が設けられている。
民事訴訟法220条以下の提出義務,申立て及び命令の規定に従うものであり,米国のディスカバリーと同じ制度ではない。

比較に際しては,立証したい事実,必要な資料,所持者,提出義務の根拠及び秘密等による除外事由を整理することになる。
対象資料をまだ十分に把握できていない場合には,資料の存在・所在等を知る手段と,文書そのものを取得する手段を分けて検討する必要がある。

2 当事者照会は資料の一括開示と異なる

当事者照会は,民事訴訟法163条に基づき,相手方に対して主張又は立証の準備に必要な事項を照会する制度である。
同条には照会をすることができない場合も定められている。
また,当事者照会は事項への回答を求める制度であり,相手方の資料の提出や写しの送付を求める規定はない。

質問への回答を求めるのか,既存の文書を取得したいのかを先に分けると,制度の選択を整理しやすい。
各手段の具体的な使い分けは,民事訴訟で相手方・第三者の資料を集める方法(AI作成)で説明している。

第4 日弁連の早期開示命令構想が目指したもの

1 2022年提案の内容

日弁連の2022年7月15日付けの立法提案は,訴訟関係を明瞭にするため又は争点及び証拠の整理を行うため必要があるときに,当事者の申立てにより,裁判所が,相手方又は第三者に対し,当事者の主張と「相当の関係」を有する文書その他の物件を申立人へ開示するよう命ずることができる制度を提案している。
開示先は申立人とされ,相手方だけでなく第三者も対象に含めている(第三者の全てを含めることは更に検討するとされている)。

同提案は,物件の個別的な特定を要件とせず,カテゴリーによる特定その他の概括的な特定による申立てを想定している。
ただし,申立人は,対象物件又はそれを含むグループを他の物件等から区別できる事項を示す必要があるとしている。
対象を無限定に広げる構想ではなく,主張と資料の関係,資料の範囲及び秘密等の問題が残る。

2 米国制度の単純な移植と説明しない

日弁連提案は,参考とした制度としてドイツ民事訴訟法142条を挙げている。
米国のディスカバリーと共通する問題意識があっても,参考法制,発動の仕組み,対象及び制裁まで同一であるとはいえない。

また,2022年提案が採用した不開示への制裁は過料である。
判例時報2559号のシンポジウム報告には別の制裁を支持する意見も収録されているため,提案本文と討論で示された意見を分けて読む必要がある。

3 立法提案とその後の検討を区別する

2022年提案は,制度改革についての提案として読む必要がある。
法務省の法制審議会第206回会議(2026年9月14日開催)の議事概要によれば,法務大臣から発せられた「民事訴訟制度の見直しに関する諮問第131号」は,新設の「民事訴訟法(証拠収集等関係)部会」に付託して審議することとされた。

その後の検討経緯や各構想の位置付けは,民事訴訟の証拠収集法制見直し(AI作成)を参照されたい。
歴史的な提案の説明と,個別事件で利用する手続の確認は分けて行う必要がある。

第5 具体例から考える資料の指定

1 製品の欠陥を疑う場合

ここでは,製品の不具合が事故につながったと主張する場面を仮定する。
相手方が何らかの試験をしたと考えられても,試験の名称,実施時期,対象機種及び保管部署を申立人が知らない場合がある。

まず,どの不具合について,どの時期・機種の資料を必要とするのかを整理することが考えられる。
資料の存在・所在を知る質問と,特定した資料そのものの取得を区別することが,手段を選ぶ出発点となる。

2 社内調査報告書の内容を争う場合

会社の調査報告書を根拠として責任を追及された者が,報告書や調査の元資料を確認したい場面も考えられる。
作成目的,作成主体,対象期間,引用された資料及び非公表部分を分けて整理することが有用である。

ただし,報告書の公表,訴訟での提出義務,弁護士の職業上の秘密は,それぞれ検討すべき問題である。
調査委員会と報告書の開示については,企業不祥事の第三者委員会(AI作成)の説明を参照されたい。

第6 よくある疑問

1 米国なら社内資料をすべて取得できるのか

そのようにはいえない。
本記事で扱った米国連邦規則でも,関連性,比例性,特権及び対象の具体性等による制限があり,保護命令の仕組みもある。

2 ディスカバリーで取得した資料は全部裁判所へ出すのか

資料取得と裁判所への提出は別の段階である。
規則5条は,同条が列挙するディスカバリーの請求・回答等を原則として裁判所に提出しない扱いを定めている。

3 早期開示構想と文書提出命令の違いはどこか

2022年の日弁連提案では,申立人が情報を取得するための開示に重点が置かれている。
制度の違いを比べるときは,開示の相手,対象範囲,資料の指定方法,秘密・負担への配慮及び不開示への対応を確認する必要がある。

第7 関連記事

民事訴訟で相手方・第三者の資料を集める方法(AI作成)は,日本の各手段の使い分けを扱う。
当事者照会の作り方と不回答への対応(AI作成)は,質問の具体化と不回答後の対応を扱う。

文書提出命令に関する最高裁判例(AIリライト)は,提出義務等に関する最高裁判例を条文別に整理している。
民事訴訟の証拠収集法制見直し(AI作成)は,改革の検討経緯を扱う。

第8 出典・参考資料

米国連邦裁判所のFederal Rules of Civil Procedure(2025年12月1日までの改正を反映した版)の5条,26条及び34条。
日本の民事訴訟法の163条及び220条以下。

日弁連の早期開示命令制度新設の立法提案(2022年7月15日)。
法務省の法制審議会第206回会議(2026年9月14日)。

判例時報2559号80頁~100頁「民事裁判における情報・証拠収集手段の拡充に向けて―早期開示命令制度について― 日弁連主催シンポジウム報告」。
同報告に掲載された事例は,討論のための仮定の事例である。