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交通事故の示談案で既払額が合わないとき―支払履歴,自賠責保険金及び治療費の直接払の照合方法(AI作成)

第1 既払額の不一致は資料の範囲から確認する

1 既払額は被害者本人への振込額だけではない

交通事故の示談案に記載された既払額は,被害者本人が受け取った金額だけを意味するとは限らない。
保険会社が医療機関へ直接支払った治療費,自賠責保険から支払われた保険金,加害者本人の支払,入院用品等を提供した事業者への直接払などが含まれることがある。

そのため,示談案の既払額と,一枚の支払履歴又は預金通帳の入金額が一致しないだけで,直ちに計算間違いとはいえない。
最初に,それぞれの資料が誰から誰へのどの支払を収録しているかを確かめる必要がある。

2 認定損害額,過失相殺後の額,既払額及び今回支払額を分ける

示談案の数字は,①損害項目ごとの認定額,②過失相殺後の額,③既払額等を調整した残額,④今回の支払額に分けて読むと整理しやすい。
損害項目の金額が過失相殺前か後かは,書式,計算欄及び合計式から確認し,項目名だけで推測しない。

治療費等の直接払を認定損害額に計上し,過失相殺その他の計算をした後に既払額として差し引く書式もある。
この場合,損害欄と既払欄の双方に同額が現れること自体は,直ちに二重計上又は二重控除を意味しない。

第2 支払台帳を一行一支払で作る

1 最低限の記載項目

既払額を検算するときは,一行を一回の支払として,次の項目を並べるとよい。

① 支払日
② 支払者
③ 支払先
④ 金額
⑤ 名目又は対応する損害項目
⑥ 根拠資料
⑦ 示談案のどの欄に入っているか

支払者と支払先を分けることが重要である。
例えば,任意保険会社から医療機関への直接払は,被害者本人の通帳には現れないが,被害者の損害の填補として示談案の既払額に含まれ得る。

2 資料ごとに小計を出す

支払履歴,保険金支払案内,医療機関の請求書・領収書,被害者本人の通帳等について,それぞれ小計を出す。
次に,重複する行を除き,資料をまたいだ合計を示談案の既払額と比較する。

一枚の支払履歴の合計へ別資料の金額を足すときは,その別資料の支払が支払履歴に既に含まれていないかを,支払日,支払先及び金額で照合する。
資料名だけを見て機械的に合算すると,同じ支払を二度足すおそれがある。

第3 支払履歴に載らないことがある支払

1 自賠責保険金の別払

任意保険会社が作成した支払履歴とは別に,自賠責保険から被害者へ保険金が支払われている場合がある。
示談案の既払額が支払履歴より大きいときは,自賠責保険金の支払案内,振込日及び金額を確認する。

国土交通省の案内によれば,自賠責保険・共済の傷害による損害の支払対象には,治療費,看護料,諸雑費,通院交通費,文書料,休業損害及び慰謝料等が含まれる。
したがって,自賠責保険金を一つの損害項目だけに対応する支払と決め付けず,支払案内又は認定内容を確認する必要がある。

2 医療機関への治療費の直接払

保険会社が医療機関へ治療費を直接支払った場合,被害者本人に入金はない。
もっとも,示談案では,その治療費を認定損害額に含めた上で,既払額として控除することがある。

医療機関ごとに,診療期間,請求額,支払額及び支払日を照合する。
健康保険を利用している場合は,医療機関への実際の支払額と,診療報酬明細書等に記載された総医療費を混同しない。

3 入院用品等の事業者への直接払

入院中の衣類,タオル,日用品その他の入院用品を病院以外の事業者が提供し,保険会社がその事業者へ直接支払うことがある。
この支払が示談案の入院雑費等に対応するものとして整理されていれば,被害者本人への振込ではなくても既払額に含まれ得る。

確認するのは,事業者名だけではない。
利用期間,請求対象,金額,保険会社の支払日及び示談案上の対応費目を照合し,通常の定額評価による入院雑費との関係も確認する。

第4 損害欄と既払欄に同額がある場合

1 損害として認めてから支払済みとして差し引く場合

例えば,保険会社が医療機関へ5万円を直接支払い,示談案が治療費5万円を損害として認めた上で,既払額5万円を一度だけ差し引いているとする。
この計算は,治療費を損害として無視せず,未払残額だけを求めるための表示である。

同じ考え方は,入院用品等の事業者への直接払が入院雑費その他の損害項目に対応している場合にも当てはまり得る。
ただし,どの費目に対応するかは資料で確認し,名称だけから決めない。

2 二重控除を疑う場面

同じ支払が,既払額の内訳に二行計上されている場合は二重控除を疑う必要がある。
また,自賠責保険金の内訳に含まれる支払を,別名の既払金としてさらに控除していないかも確認する。

これに対し,損害欄への一回の計上と既払欄での一回の控除は,それだけでは二重控除ではない。
「損害として何回足したか」と「既払額として何回引いたか」を別々に数えることが大切である。

第5 過失相殺との前後関係を確認する

1 損害項目の金額が過失相殺前か後かを確かめる

示談案に個別の損害項目と過失割合が記載されていても,各項目の金額が過失相殺前か後かは書式によって異なり得る。
合計欄の式,過失相殺額の表示及び既払額を差し引く位置をたどって確認する。

例えば,損害項目の合計が100万円,被害者側の過失が1割,既払額が20万円であり,書面が全損害を過失相殺してから既払額を控除する構造なら,書面上の単純計算は「100万円×9割-20万円=70万円」となる。
ただし,給付の法的性質や対象損害によって調整方法が異なることがあるため,この式を全ての示談案へ一律に当てはめない。

2 項目別の合意と全体計算を分ける

当事者が特定の損害項目を過失相殺前の額として合意することもある。
その場合は,合意した項目の意味と,全体のどの段階で過失割合を反映するかを分けて記録する。

口頭の説明だけでは後から解釈が分かれることがあるため,対象項目,金額,過失相殺前後の別及び最終計算への反映方法を書面で確認することが望ましい。

第6 既払額を照合する手順

1 示談案だけでできる検算

最初に,損害項目の小計,合計,過失相殺額,既払額及び今回支払額の加減乗除を検算する。
ここで合わなければ,転記,端数処理又は計算式の説明を求める。

算術が合っても,項目の漏れ,基準,日数,過失割合及び既払額の内訳が正しいとは限らない。
算術検算と内容の妥当性は別の作業である。

2 支払資料を順番に重ねる

次に,①保険会社の支払履歴,②自賠責保険金の支払案内,③医療機関等への直接払の資料,④被害者本人の通帳,⑤加害者本人その他からの支払資料を照合する。
各資料の小計と,重複を除いた総額を残す。

差額が出たときは,差額と同額の一行を探すだけでなく,複数の支払の合計,端数,支払日及び支払先を確認する。
差額が偶然一致しても,同じ支払であることの証明にはならない。

3 保険会社への照会事項

既払額がなお合わない場合は,次の事項を表にして書面で照会するとよい。

① 既払額の全内訳
② 各支払の支払者,支払先,支払日,金額及び名目
③ 支払履歴に含まれない支払の根拠資料
④ 自賠責保険金の認定額及び一括払との調整内容
⑤ 各損害項目が過失相殺前か後か
⑥ 過失相殺と既払額控除の順序
⑦ 同じ支払を別名目で重ねて控除していないか

金融庁の保険会社向け監督指針は,保険金等の請求・支払について分かりやすい説明や請求漏れ防止の態勢,支払査定時の十分な事実確認等を評価項目としている。
これは個別示談の金額を決める基準ではないが,内訳と計算根拠を具体的に確認する実務上の手掛かりとなる。

第7 照合用チェックリスト

確認項目確認資料合わない場合の次の確認
示談案内部の算術示談案・計算書小計,端数,計算式
支払履歴の合計支払履歴対象期間,支払先,取消・再払
被害者本人への入金通帳・支払案内支払者,振込日,名目
自賠責保険金支払案内・認定内容任意保険の一括払との重複
治療費の直接払医療機関の請求資料実支払額,対象期間,健康保険分
第三者への直接払利用明細・支払記録対応する損害項目,利用期間
過失相殺示談案の合計欄対象項目,前後関係,合意内容
既払額控除既払額内訳同じ支払の重複控除

この表を埋めても,示談案へ署名するかどうかは,慰謝料,休業損害,後遺障害,清算条項及び時効等を含めて判断する必要がある。
既払額の照合は,示談案全体を確認する一工程である。

第8 関連記事

① 交通事故の示談案の確認方法―慰謝料・過失割合・既払金(AI作成)

② 交通事故の入院雑費―領収書がない場合と自賠責・裁判基準の違い(AI作成)

③ 交通事故の既払金は元本と遅延損害金のどちらに充当されるか―自賠責保険金と任意保険の支払の違い(AI作成)

④ 任意保険の示談代行とは-利用できない場合,一括払及び直接請求権との関係(AIリライト)

第9 出典

① 国土交通省「損害賠償を受けるときは?」(令和8年11月2日確認)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/accident/nopolicyholder/index.html

② 金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針(Ⅱ-4 業務の適切性)」(令和8年11月2日確認)
https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/ins/02d.html