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交通事故の治療期間と実通院日数の数え方―初日・最終日,30日換算,3倍・3.5倍(AI作成)

第1 交通事故の慰謝料で区別すべき日数

1 治療期間,暦日数,実通院日数及び慰謝料の対象日数は別である

交通事故の傷害慰謝料を確認するときは,少なくとも,①事故日又は初診日から治療最終日までの期間,②始期と終期の間にある暦日数,③実際に医療機関へ通った実通院日数,④自賠責保険で慰謝料の対象とされた日数,⑤裁判実務上の目安へ当てはめる入院期間及び通院期間を区別する必要がある。
同じ資料に「治療期間」と「通院日数」が書かれていても,両者が同じ数字になるとは限らない。

大阪地方裁判所は,交通事故による傷害の内容及び治療の経過として,入通院先,入通院期間及び通院実日数を記載するよう案内している。
また,損害額は個別事件の主張及び証拠に基づいて判断されるとしており,日数だけで慰謝料が自動的に決まるものではない。

2 先に「何の日数か」を特定する

保険会社の損害計算書に日数が記載されている場合は,その数字を直ちに正しい又は誤りと判断せず,何の始期と終期を用い,両端の日を含めたのかを確認する。
表題の「治療期間」,計算欄の「対象日数」,実通院日数及び日額を掛けた日数が互いに整合しているかを順に照合するのが安全である。

第2 初日と最終日をどう確認するか

1 事故日,初診日,最終受診日,治癒日及び症状固定日を分ける

事故日と初診日が同じとは限らず,最終受診日と治癒日又は症状固定日も同じとは限らない。
まず,事故日,医療機関ごとの初診日,入院日及び退院日,通院日,治療最終日,治癒日並びに症状固定日を時系列に並べる必要がある。

治療を中断した期間,転院前後の重複,同じ日に複数の医療機関を受診した場合及び整骨院等の施術日がある場合は,単純な受診回数と実通院日数が一致しないことがある。
医療機関ごとの診断書,診療報酬明細書,領収書,診療明細書及び通院日一覧を突き合わせる。

2 両端を含む暦日数は「終了日-開始日+1日」で検算する

開始日と終了日の双方を含む暦日数を数えるのであれば,日付の差に1日を加える。
例えば,同じ月の10日から15日までを双方含める場合は,10日,11日,12日,13日,14日及び15日の6日である。

もっとも,この計算は,何を開始日とするか,終了日を含めるかという前提を決めた後の検算にすぎない。
事故日から数える資料と初診日から数える資料とを混在させたり,表題では両端を含むのに計算欄では日付の差だけを使ったりすれば,1日又はそれ以上のずれが生ずる。

3 民法の初日不算入を治療期間へ機械的に当てはめない

民法138条から143条は,法令,裁判上の命令又は法律行為に別段の定めがない場合の期間計算を定め,日,週,月又は年による期間は原則として初日を算入しないとしている。
しかし,交通事故の治療期間は,診療記録上の事実や各支払基準の定義を確認する問題であり,民法140条だけを根拠に事故日又は初診日を当然に除外することはできない。

示談案の数字を確認するときは,まず当該基準又は計算書が何を「治療期間」と定義しているかを読み,その定義に従って暦日を検算する。
消滅時効その他の法的な期限計算は,治療期間の数え方とは別に民法その他の適用規定を確認する必要がある。

第3 自賠責保険の慰謝料対象日数

1 日額4300円と対象日数を分ける

国土交通省「限度額と補償内容」は,傷害慰謝料を1日4300円とし,対象日数は,被害者の傷害の状態,実治療日数等を勘案して治療期間内で決めると説明している。
傷害部分の120万円は,慰謝料だけでなく,治療関係費,文書料及び休業損害を含む支払限度額である。

したがって,「実通院日数×4300円」又は「治療期間の全日数×4300円」のどちらかが常に正しいわけではない。
計算書には,日額だけでなく,採用された対象日数,治療期間及び実治療日数の関係が示されているかを確認する。

2 実治療日数の2倍は告示本文そのものではない

自賠責保険の支払実務を説明する資料では,「治療期間」と「実治療日数の2倍」のいずれか少ない日数を用いる簡便な式が示されることがある。
もっとも,国土交通省の支払基準が定めるのは,傷害の態様,実治療日数その他を勘案し,治療期間の範囲内で対象日数を決めるという枠組みであり,告示本文に実治療日数の2倍という数式はない。

国土交通省「自動車損害賠償保障事業が行う損害の塡補の基準実施要領」は,ひき逃げ又は無保険車事故等に関する政府保障事業について,治療期間を事故日から治療最終日までとし,その範囲内で実治療日数の2倍を対象日数とする旨を明記している。
これは政府保障事業の実施要領であり,自賠責保険会社の個別支払を直接規律する告示とは区別しなければならない。

第4 裁判実務上の通院期間と30日換算

1 裁判基準は入通院期間を月単位の表へ当てはめる

裁判実務上の入通院慰謝料は,事故と相当因果関係のある入院期間及び通院期間を基礎とし,傷害の内容,治療経過,通院頻度その他の事情を踏まえて判断される。
自賠責保険の対象日数に4300円を掛ける計算とは,基準も計算方法も異なる。

日弁連交通事故相談センター東京支部のいわゆる赤い本は,入院月数と通院月数を組み合わせた表を示している。
大阪の交通損害賠償実務で参照される基準については,医療関係者から見た大阪地裁の交通損害賠償の算定基準も参照されたい。

2 1か月を30日とする計算は端数月の概算である

月単位の表へ1か月未満の端数を当てはめるため,1か月を30日として前後の月額の差を日割りする概算が用いられることがある。
この30日換算は,暦上の2月,30日の月及び31日の月をすべて30日と認定するものではなく,実際の治療期間の暦日数を数える方法でもない。

例えば,暦日数を確認する段階では各月の実際の日数を用い,慰謝料表の端数月を概算する段階でだけ30日換算を用いる。
示談案では,実際の期間の記載と表への当てはめ計算を一つの数字にまとめず,両方の計算過程を分けて確認するのが望ましい。

3 実通院日数の3倍・3.5倍は一律の式ではない

長期で不規則な通院について,通常の傷害では実通院日数の3.5倍程度,他覚所見のないむち打ち症等では3倍程度を通院期間の目安とすることがある。
しかし,実通院日数が少ないという理由だけで,実際の通院期間を当然に3倍又は3.5倍へ置き換えることはできない。

大阪民事交通訴訟研究会編著『大阪地裁における交通損害賠償の算定基準〈第4版〉』は,長期かつ不規則な通院では,実通院日数の3.5倍と実際の通院期間のいずれか短い期間を目安とする取扱いを示す一方,軽度の神経症状では通常の慰謝料額の3分の2程度とする取扱いを別に説明している。
大阪弁護士会総合法律相談センターの交通事故Q&Aも,長期かつ不規則な通院では実通院日数を考慮することがあり,軽度の神経症状では標準的な慰謝料額の3分の2程度とするのが通常であると説明している。
通院期間をどこまで算定対象とするかという問題と,慰謝料額をどの水準で評価するかという問題を混同してはならない。
具体的な条件は,通院日数が少ない場合の入通院慰謝料で説明している。

第5 示談案の日数を照合する手順

1 時系列表を作る

最初に,日付,医療機関,入院・通院・施術の別,傷病名又は症状,治療内容,転帰及び根拠資料を一行ずつ並べる。
同じ日の重複受診,転院,治療中断,予約だけの日及び薬の受取りだけの日を区別し,実通院日数に含めた理由を記録する。

2 五つの数字を別欄にする

①事故日から治療最終日までの暦日数,②初診日から治療最終日までの暦日数,③入院日数,④実通院日数,⑤保険会社が慰謝料計算に採用した対象日数を別欄に記載する。
裁判実務上の目安を検討する場合は,これらに,入院月数,通院月数,端数月の処理及び実通院日数による修正の有無を加える。

3 保険会社へ計算根拠を照会する

日数が合わない場合は,「傷害慰謝料の始期,終期,治療期間,実治療日数,対象日数,端数月の処理及び採用した基準」を書面で照会する。
表題だけの誤記なのか,計算式だけの誤りなのか,支払額にも影響するのかを分けて確認する。

第6 確認のチェックリスト

1 日付と資料

①事故日と初診日を区別したか。
②入院日,退院日,通院日,治療最終日,治癒日及び症状固定日を資料で確認したか。
③複数の医療機関,整骨院等及び同日受診の重複を確認したか。
④始期と終期の双方を含むかを明示して暦日数を検算したか。

2 基準と計算

①自賠責保険の対象日数と裁判実務上の入通院期間を混同していないか。
②実治療日数の2倍を告示本文の固定式として扱っていないか。
③30日換算を実際の暦日数と混同していないか。
④3倍又は3.5倍を条件確認なしに適用していないか。
⑤大阪基準の3.5倍による期間の目安と,軽度神経症状の3分の2程度という金額水準を区別したか。

第7 関連記事

1 示談案と慰謝料計算

交通事故の示談案の確認方法―慰謝料・過失割合・既払金
交通事故の慰謝料相場と計算方法―3つの基準・早見表
自賠責保険の支払基準――令和2年4月1日以降の交通事故に適用される告示の全文,別表及び改正経緯

第8 出典

1 法令及び公的資料

e-Gov法令検索「民法」
国土交通省「限度額と補償内容」
国土交通省「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」
国土交通省「自動車損害賠償保障事業が行う損害の塡補の基準実施要領」
大阪地方裁判所「交通事件の審理について」
大阪弁護士会総合法律相談センター「交通事故に関するQ&A」

2 実務書

日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』2026年版上巻。
大阪民事交通訴訟研究会編著『大阪地裁における交通損害賠償の算定基準〈第4版〉』(判例タイムズ社,2022年)。