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都道府県議会の特例選挙区と都議選の島部選挙区―最高裁令和8年10月19日判決(AI作成)

第1 判決の対象と結論

東京都議会議員選挙の島部選挙区について,最高裁第二小法廷は令和8年10月19日,その存置と議員定数の配分を違法としなかった。
この判決を読む際は,人口の少ない選挙区を例外的に残す問題と,各選挙区へ何人の議員を配分するかという問題を分ける必要がある。

特に,判決に出てくる「配当基数0.221」と「最大較差2.54倍」は意味も集計範囲も異なる。
本記事の配当基数及び最大較差の数値は,判決が示す概数である。
本記事では,判決本文をもとに,制度,結論,その判断の限界を整理する。

対象は,令和7年6月22日に行われた東京都議会議員選挙である。
江東区選挙区の選挙人が,島部選挙区を特例選挙区として存置したことなどを争い,江東区選挙区における選挙の無効を求めた。

最高裁第二小法廷令和8年10月19日判決(令和8年(行ツ)第94号,同年(行ヒ)第86号)は,上告を棄却した。
選挙無効請求を退けた原審の結論が維持されている。
裁判官全員一致の判断である。

判決は,島部選挙区の存置が公職選挙法271条に反するかという点と,議員定数配分が同法15条8項に反するかという点を検討し,いずれについても違法とはしなかった。
憲法上の投票価値の平等等に関する主張についても,本件選挙当時の両規定が憲法に違反していたとはいえないとしている。

出典:最高裁判所「令和8年(行ツ)第94号、同年(行ヒ)第86号」判決本文1頁,3頁~5頁。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97191.pdf

第2 特例選挙区と配当基数の意味

判決が説明する制度では,都道府県議会議員の選挙区は,原則として,人口が議員1人当たりの人口の半数以上になるように設けられる。
他方,公職選挙法271条は,昭和41年1月1日に存在した選挙区について,その人口がこの基準を下回る場合でも,当分の間,条例で選挙区を設けることができるとしている。
これが判決でいう特例選挙区である。

ここでいう配当基数は,その選挙区の人口を,都道府県全体の人口を議員総定数で割った数で除した値である。
選挙区間の1票の重みを直接比べた倍率ではない。
島部選挙区の配当基数が0.221というのは,その人口が都全体の議員1人当たりの人口の0.221倍であることを意味する。

東京都の条例は,議員の総定数を127人とし,島部選挙区を,大島町,利島村,新島村,神津島村,三宅村,御蔵島村,八丈町,青ヶ島村及び小笠原村の区域で構成し,定数を1人としている。
本判決が特例選挙区としての存置の適否を判断したのは,この島部選挙区である。

出典:判決本文1頁~3頁。
東京都「東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例」1~3条及び選挙区・定数の表。
https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00000068.html

第3 島部選挙区の存置について最高裁が考慮した事情

判決は,特例選挙区を存置するかどうかについて,都道府県議会に合理的な裁量があるという枠組みを採っている。
ただし,条例で定めれば人口にかかわらず常に存置できるという判断ではない。

本件では,島しょ地域に固有の行政需要があることや,地理的な事情から他の選挙区との合区が困難であることなどが考慮されている。
判決は,こうした事情の下で,島部選挙区を特例選挙区として存置した都議会の判断が合理的な裁量の限界を超えたとはいえないとした。

島部選挙区の配当基数は,令和2年の条例改正時には0.249,本件選挙当時には0.221であった。
それでも本件で存置が違法とされなかったというのが,この判決の判断である。
「配当基数が0.221以上なら全国どこでも適法」「これを下回れば直ちに違法」という数値基準が示されたわけではない。

出典:判決本文2頁~4頁。
数値だけでなく,判決が挙げた島しょ地域の事情と併せて読む必要がある。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97191.pdf

第4 定数配分と最大較差2.54倍の判断

判決は,島部選挙区の存置とは別に,議員定数の配分も検討している。
公職選挙法15条8項に関する判断では,人口比例を最も重要かつ基本的な基準としつつ,地域の均衡等の事情を考慮する都道府県議会の裁量が問題になる。

判決が挙げる議員1人当たりの人口の最大較差2.54倍(概算)は,特例選挙区以外の選挙区間の数値である。
特例選挙区である島部選挙区まで含めた最大較差として紹介すると,判決の前提を取り違えることになる。

また,人口比例による定数と実際の定数との差があったのは6選挙区で,その差はいずれも1人であった。
人口の多い選挙区の定数が人口の少ない選挙区より少なくなる逆転現象は3通りあり,定数差はいずれも1人であった。
最高裁は,これらの事情等を踏まえ,本件の定数配分を違法とはしなかった。

ここから「2.54倍までの較差は適法」という一般的な許容限界を取り出すことはできない。
判決は,本件選挙の定数配分全体を,その具体的な事情の下で判断している。

出典:判決本文3頁~5頁。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97191.pdf

第5 国政選挙の一票の格差判決と区別する点

この判決は東京都議会議員選挙に関するものである。
衆議院・参議院の選挙区割りや定数配分について,そのまま同じ数値や結論を用いることはできない。
本件で適用された特例選挙区の仕組み,都議会の条例,島しょ地域の事情を踏まえる必要がある。

また,特例選挙区の存置を認める判断と,定数配分を認める判断は,それぞれ検討の対象と根拠条文が異なる。
「島部の定数1が認められた」という結論だけで整理すると,どの問題についてどの事情が考慮されたのかが見えなくなる。

国政選挙の判決の整理は,一票の格差に関する既存記事を参照されたい。
地方選挙の異議申出・審査申立て・選挙無効訴訟の手続は,地方選挙を争う手続の記事で扱っている。
本記事は,島部選挙区の存置と定数配分という実体的な判断を扱う。

https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/10/13/ippyou-iken-hanketsu/

https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/11/chihou-senkyo-mukou-soshou/

第6 判決を実務で参照する際の確認事項

他の都道府県の特例選挙区を検討する場合は,まず,対象選挙当時の条例と人口資料をそろえ,特例選挙区の存置と定数配分のどちらを問題としているのかを分ける。
配当基数と選挙区間の較差も,それぞれ計算の分母・分子と対象範囲を確認する必要がある。

そのうえで,地域固有の行政需要,他の選挙区との合区の可能性,人口比例による定数との差,逆転現象など,判決が検討した事情に対応する資料を確認するという読み方が考えられる。
これは本判決を他の地域で検討する際の整理方法であり,これらの資料があれば訴訟の結論が決まるという意味ではない。

本判決は,判例として平成5年10月22日判決や令和4年10月31日判決を参照している。
過去の判決との関係を詳しく検討する際は,引用部分だけでなく,それぞれの判決の対象選挙や地域事情を確認する必要がある。

第7 主要資料

最高裁判所第二小法廷令和8年10月19日判決(令和8年(行ツ)第94号,同年(行ヒ)第86号)。
本記事の事件経過,制度の説明,数値及び判決の結論は,この判決本文を基礎としている。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97191.pdf

東京都「東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例」。
本記事では総定数,島部選挙区の区域及び定数を確認している。
https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00000068.html

本記事は令和8年10月19日判決と,令和8年10月25日に確認した公開資料に基づく。