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平成30年司法試験公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目―34項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

平成30年司法試験公法系科目第2問(行政法)について,公式の出題の趣旨・採点実感と照合した模範解答と,独自に抽出した34項目を示す。
基準時は試験実施日の平成30年5月16日である。

Dの競業利益とEの施設運営上の環境利益を分け,距離制限・権利濫用・名義貸しと行訴法10条1項の主張制限を検討する。
設問2では住民反対と墓地需給の双方について,Aの主張とB市の反論を比較する。
以下は法務省の公式答案・公式配点ではなく,許容される見解の一例である。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

番号は記事全体の通し番号である。
出典欄の頁はPDFの実頁を示す。
「注意」は誤りを避ける評価項目であり,別枠の減点ではない。
条件付き項目は記載された構成を採る場合に評価し,不採用の別構成を累積要求しない。

2 5段階の重み付けの基準

5はその設問の判断を大きく分ける核心,4は結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ,3は通常押さえる法的処理・事情の評価,2は論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意,1は補充的引用・記述範囲の確認を表す。
重みは本問内の役割から独自に判断し,公式配点や合格可能性を表さない。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

宗教法人Aは,営利会社Cから用地買収・造成費用の全額無利息融資の申出を受け,融資を受けて土地を購入し,墓地経営許可を申請した。
既存墓地経営者Dは経営への影響を懸念し,代表者の親族が代表を務める法人Eと相談して,申請後にEの入所施設を墓地用地から約80メートルのD所有地へ移転させた。
Eの施設には実際の利用・連続入所がある。

B市の条例は経営主体,距離,土地所有,構造設備等を規律する。
住民は渋滞・悪臭・害獣害虫を懸念し,市内の既存墓地には空き区画が目立つ。
融資の申出を全額実行済みと読み替えず,経営破綻や管理不全も確定事実とはしない。

2 設問が求めること

弁護士Fの立場から,設問1⑴ではD・Eの原告適格の結論まで,⑵ではEの違法主張と市の反論までを検討する。
妨害目的は原告適格ではなく本案で扱い,条例の適法性及び最低基準という前提を維持する。
設問2では不許可理由(ア)(イ)を比較し,(ウ)の距離問題や他の訴訟要件の検討を繰り返さない。

第4 評価項目と重み

1 設問1⑴(原告適格)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1第三者D・Eにつき行訴法9条1・2項の保護規範に基づく判断枠組みを示す53頁・明示:「同条第2項の基準」4頁・明示:「第三者の原告適格の判断枠組み」
2法目的・関連条例と利益の内容性質・被害態様を結び付けて解釈する43頁・明示:「法や本件条例がその趣旨目的」4頁・明示:「考慮される損害の性質程度」
3条例3条1項・9条2項の非営利性・資金計画等を踏まえDの安定経営利益保護の主張を構成する43頁・明示:「本件条例第9条第2項」4頁・明示:「Dの墓地経営に関する利益」
4供給過剰・空区画・大規模参入による経営悪化や廃業のおそれをDの不利益として具体化する33頁・明示:「経営上悪影響を受けること」4頁・明示:「事案を踏まえ具体的かつ詳細」
5市の公益保護論と既存業者個別保護論を比較し,法令との関係を示してDの原告適格の結論を出す43頁・明示:「既存の墓地の利益保護」4頁・明示:「原告適格の有無についての結論」
6利用者の健康と区別してE自身の適切な環境の下で円滑に福祉業務を営む利益を特定する53頁・明示:「適切な環境の下で円滑に業務を行う利益」7頁・明示:「事業者としての業務上の不利益」
7条例13条1項2号の入所施設限定・距離基準と14条1項等からEの個別的利益保護を論証する43頁・明示:「本件条例第13条第1項や第14条第1項」4頁・明示:「手掛かりとなる本件条例等の規定」
880m・日常利用・入所実態・衛生生活環境悪化の事業上の影響を評価しEの適格結論へ接続する43頁・明示:「衛生環境や生活環境の悪化」4頁・明示:「考慮される損害の性質程度」
9複数の関連規定を用いて利益保護を多面的に検討し,目的条項だけで結論を出さない3記載なし(本問関連範囲を実読)4頁・明示:「手掛かりとなる本件条例等の規定を複数」
10【条件付き:位置基準判例との発展的比較を採用した答案。未採用は適用外】平成21年10月15日最判の位置基準による施設開設者利益保護を本件との差を示して参照する2記載なし(本問関連範囲を実読)4頁・明示:「平成21年10月15日判決」
11【注意】移転の妨害目的を原告適格判断に混入せず本案へ留保する3記載なし(本問関連範囲を実読)6頁・明示:「原告適格の有無においては検討する必要がない」

2 設問1⑵(違法事由と主張制限)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
12法10条1項・条例の内容と公益性・地域性から許否裁量の実質的根拠と審査対象を説明する53頁・明示:「どのような根拠に基づいて,いかなる裁量」4頁・明示:「本件許可処分がB市の裁量に基づくものであることをその理由」
13【条件付き:要件裁量・効果裁量の区別を用いる発展的論証を採用する答案】支障なし等の要件評価と,要件を満たしてなお許否を決める効果選択を区別する3記載なし(本問関連範囲を実読)5頁・明示:「要件裁量,効果裁量の別を意識」
1480mの入所施設に条例13条1項本文を適用し,距離要件違反と裁量逸脱を区別する43頁・明示:「距離制限に違反すること」7頁・明示:「法令上の要件該当性判断」
15市の権利濫用又は信義則による距離違反主張排斥を法的構成として明示する53頁・明示:「権利濫用として」4頁・明示:「権利濫用,信義則違反」
16DEの親族関係・不要な移転・説明会や申請後の設置という客観事情を濫用評価へ使う43頁・明示:「説明会や本件申請の後に事業所を移転」8頁・明示:「主観的目的のみ記載していて」
17DEの事情を多面的に評価し,主観的妨害目的だけの指摘で論証を終えない3記載なし(本問関連範囲を実読)5頁・明示:「DとEとの関係に関する事情を多面的に」
18明文禁止の欠如を踏まえつつ,条例3条・9条・13条3項等の経営責任・永続性から潜脱禁止を説明する54頁・明示:「「名義貸し」を明文で禁止する定め」5頁・明示:「名義貸しが禁止される実質的な理由」
19計画提案・全額無利息融資・C従業員説明等から実質支配を評価し,形式名義だけでも融資だけでも決めない44頁・明示:「資料に示された具体的な事実」5頁・明示:「と解する根拠となる事情」
20【注意】墓地用地のA所有・他権利不存在とE事業所の借地を混同せず条例13条3項の適用対象を守る3記載なし(本問関連範囲を実読)7頁・明示:「墓地等の土地の所有権に係る規制と混同」
21行訴法10条1項の自己の法律上の利益の射程を,9条利益同一説・より広い利益を含む見解と理由から定める54頁・明示:「「自己の法律上の利益」の基本的な理解」8頁・明示:「原告適格を基礎付ける利益と同一であるのか」
22距離違反についてEの利益との具体的関係を示して10条1項の適用を判断する44頁・明示:「各違法事由の主張が制限されるかどうか」5頁・明示:「Eの①,②のいずれの主張についても」
23名義貸しについて保護目的とEの利益との関係を示して10条1項の適用を判断する44頁・明示:「個別に検討すること」8頁・明示:「Eへの当てはめをしていない」
24処分名宛人と第三者の利益保護の違いを踏まえ,Eが第三者であることを10条の理由付けに用いる3記載なし(本問関連範囲を実読)8頁・明示:「Eが処分の相手方以外の者であること」
25【注意】距離不足が20mだけという量的軽微性だけで最低基準を無視せず,但書の支障なし認定と区別する3記載なし(本問関連範囲を実読)7頁・明示:「わずか20」

3 設問2と小問横断の確認

項目31は前後の設問の整合,33・34は各設問に通じる確認である。
項目32の適用対象は設問2である。
新しい「答案全体」の注意項目を追加したものではなく,各項目は1回だけ集計する。

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
26条例が最低限の基準であることと法10条の裁量を接続し,条例充足時の許可義務を当然視しない44頁・明示:「市長に裁量を認めていることを前提」8頁・明示:「裁量判断と絡めた上で」
27Aの他事考慮・植栽等の環境配慮・条例要件充足の主張を根拠付きで構成する44頁・明示:「単に近隣住民の反対運動が激化」5頁・明示:「Aは環境に対する配慮」
28市が法目的・条例14条等により具体的環境懸念と配慮の十分性を要件判断で評価できると理由付ける44頁・明示:「住環境の悪化を懸念する反対運動」9頁・明示:「B市長に要件裁量があること」
29Aの需給調整規定欠如・既存業者保護は他事考慮という主張を法令に即して示す44頁・明示:「墓地の需給を考慮して」5頁・明示:「需給状況を考慮して本件不許可」
30市が条例3条の公共団体原則・9条の資金等と永続安定管理をつなぎ,供給過剰の公益上の考慮を説明する44頁・明示:「経営の安定性を求める法や本件条例の規定」9頁・明示:「公共団体であるとされていること」
31【注意】Dの個別的競業利益保護と公益的な墓地経営安定を区別して前後問の整合を保つ3記載なし(本問関連範囲を実読)5頁・明示:「反対の結論を示して」
32【注意】関連法令の文言・趣旨を先に検討し,未記載の社会事情や被害を補って利益衡量しない3記載なし(本問関連範囲を実読)9頁・明示:「問題文に記載されていない事由」
33【注意】本件条例を根拠未確認の委任条例と断定せず,適法・最低基準という指定を維持する3記載なし(本問関連範囲を実読)6頁・明示:「本件条例を法第10条第1項に基づく委任条例」
34【注意】条文を具体的な項・号まで示し,原告適格と本案・他事考慮等の用語を正確に用いる2記載なし(本問関連範囲を実読)6頁・明示:「第何項第何号まで引用すべき」

4 重みの分布

重み1は0項目,2は2項目,3は11項目,4は15項目,5は6項目である。
N=0+2+11+15+6=34,W=0+2×2+3×11+4×15+5×6=127となる。
条件付き項目も公開一覧のN・Wには含むが,個別答案の適用分母は別に判断する。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

平成30年5月16日を基準に,Dの原告適格を否定し,Eの原告適格を肯定する構成を採る。
Eの妨害目的については市の権利濫用の反論を具体化した上で,現実の入所・利用を反対事情として検討する。
名義貸しの実質支配や不許可理由の合理性は与件だけで確定できない部分を条件付きで示す。
答案は見出し・空白を含め,改行を除いて4795字であり,唯一の結論を指定するものではない。

2 答案

第1 設問1⑴
1 判断枠組み
 取消訴訟を提起できるのは,処分の取消しにつき法律上の利益を有する者である(行政事件訴訟法9条1項。以下「行訴法」という。)。
処分により自己の権利又は法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者がこれに当たる。
 第三者の利益については,根拠法令が一般的公益に吸収させず,個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むかを,同条2項により判断する。
法と目的を共通にする本件条例の趣旨・目的,利益の内容・性質,被害の態様・程度も考慮する。
2 D
 Dは,本件墓地の参入で既存墓地の経営が悪化し,廃業に至り得るから,その経営利益が保護されると主張する。
墓地は永続的な管理を必要とし,経営が破綻すれば管理不全を生ずる。
法1条の公衆衛生・公共の福祉と,本件条例3条1項が経営主体を原則として地方公共団体とし,同条例9条2項1号・5号が法人の登記と経営資金計画を審査させることを併せれば,安定的経営の確保には既存業者の経営保護も含まれる,との主張である。
 これに対しB市は,主体限定は営利企業の撤退等を防ぎ,墓地利用者と公益を保護するためであって,既存経営者の営業上の利益を保障しないと反論する。
法10条1項も条例も需給調整や既存業者の同意を許可要件としておらず,競争による経営悪化からの個別保護をうかがわせる規定はない。
 経営の安定が公益上重要であることと,個々の業者に競争を免れる利益を保障することは別である。
条例3条の主体限定だけから後者を導くことはできない。
Dの不利益は反射的利益の侵害にとどまり,原告適格は認められない。
3 E
 Eは,80メートルの位置にある本件墓地によって交通混雑,悪臭,害獣・害虫等が生じ,良好な生活・衛生環境の下で障害福祉サービスを営む利益が害されると主張する。
 B市は,法1条は一般的公益を定め,最高裁平成12年3月17日判決も墓地経営許可について周辺住民の原告適格を否定しており,条例13条1項但書も宗教的感情への適合及び公益上の無支障を認めれば制限を解除できると反論する。
また,利用者の健康利益と法人Eの事業利益は異なる。
 しかし,同判決の条例は住宅・事務所・店舗等を広く列挙していた。
本件条例は住宅に加え,福祉施設について入所施設を有するものに限定して距離を定める。
この限定は,継続的な生活の場の環境を具体的に保護する趣旨を示す。
6条の説明会,14条の排水・駐車・ごみ処理設備及び周辺環境への配慮も,具体的被害防止という解釈を補強する。
但書も,支障の有無を個別に審査させる規定であり,個別利益の保護を当然に否定しない。
 最高裁平成21年10月15日判決は,場外車券発売施設の位置基準について,一般住民の生活環境利益とは区別して,医療施設等の開設者が健全で静穏な環境で円滑に業務を行う利益を個別に保護するとした。
規制施設と支障の内容は異なるが,特定の公益的施設の業務利益を保護する位置基準の機能は本件でも参照できる。
 利用者個人の生命・健康をEの利益と同一視はできないが,施設を良好な環境の下で継続的に運営し,サービスを提供する利益はE自身に帰属する。
入所施設の保護は,その設置・運営者の業務上の環境利益をも含むと解すべきである。
定員に近い利用者が日常的に利用し,連続入所もある施設が80メートルにあるから,Eには具体的な侵害のおそれがあり,原告適格を認める。
移転の妨害目的は,指定に従い本案で扱う。

第2 設問1⑵
1 許可の審査構造
 法10条1項が詳細な要件を定めないのは,墓地経営の高度の公益性と,風俗習慣・宗教活動・地域条件への依存性から,地域に即した公益判断を行政に委ねる趣旨である(最高裁平成12年3月17日判決)。
条例が最低基準を定めるにとどまる以上,基準を満たした後の許否についても効果裁量が残る。
他方,条例13条1項本文の距離は客観的要件であり,但書の公衆衛生等への「支障がない」との評価に関する要件裁量と区別する。
要件の解釈・適用違反と,裁量部分における行訴法30条の逸脱・濫用を分けて審査する。
2 距離制限違反
 Eは,本件事業所が条例13条1項2号に該当し,100メートル未満である以上,許可は同項本文に反すると主張する。
許可処分の適法性は原則として処分時の状態による。
同項に申請時に既に存在する施設に限るとの定めはなく,申請後の移転だけで適用を排除できない。
 B市は,Dが既存墓地の経営を守るため,親族関係を利用し,本件説明会後,しかも3月16日の申請から1週間後に,移転の必要のないEの施設を80メートルの土地へ移したのであり,そのような施設設置をもって許可を妨げることは制度目的に反し,距離制限違反の主張は権利濫用であると反論する。
単に適合施設であるという形式だけで濫用を否定することはできない。
 他方,Eは,施設が架空又は名目的なものではなく,従前の利用者を引き継ぎ,定員に近い実利用と連続入所があると応答する。
距離規定は入所者の生活環境と施設運営を守るものであり,設置者の動機だけで保護を失わせれば現実の保護必要性を無視することになる。
したがって,妨害目的は強い反論となるが,それのみから当然に本文の適用又は主張を排除すべきではない。
 さらにB市は,同項但書により,市民の宗教的感情に適合し,かつ,公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認められる場合は距離制限を解除できると反論すべきである。
支障の評価には一定の判断余地があるが,目的に即した合理的判断を要する。
墓地の規模,交通,悪臭・害虫等の影響と,駐車場・ごみ処理・植栽等の対策の実効性を具体的に検討すべきであり,Eの動機だけを支障なしの根拠にできない。
宗教的感情への適合を含め,調査・対策によって但書の双方の要件を満たすと合理的に認定できれば,距離制限違反の主張を退け得るが,その裏付けを欠くなら但書による正当化はできない。
3 実質的経営主体
 Eは,Cが墓地計画を持ち込み,取得・造成費用の全額無利息融資を申し出て,土地購入資金を融資し,説明も行っているから,実質的経営者は営利会社Cであり,条例3条の主体制限を潜脱すると主張する。
名義貸しを明文で禁止する定めはないが,同条1項による主体限定,同条例9条2項5号の資金計画の審査,13条3項の経営者による用地所有と他権利の排除は,公益性と永続的管理を担う主体に経営責任を集中させる構造である。
営利企業が実質経営を支配すればこの構造を潜脱するから,名義を整えるだけでは足りない。
 B市は,Aは10年来市内に事務所を有する宗教法人であり,同条の形式要件を満たすと反論する。
Aが土地を所有し,他の権利も設定されていないから,13条3項の土地要件も形式上は満たす。
全額無利息融資と従業員による説明補助は当然に経営支配を意味しないが,営利会社が費用全額を無利息で融資する点と,C自身は許可を受けられずAの協力を求めた経緯は,名義貸しを推認させる事情である。
 もっとも,Aの所有名義だけでCの実質支配が否定されるわけでもない。
資金計画書を含む資料により,経営上の意思決定,収益・負担の帰属,管理責任等を確認し,Aが独立した経営主体かを判断すべきである。
Cが実質経営者なら3条違反となるが,提示事実だけで断定はできない。
4 Eが主張できる違法
 以上の客観的違法と,Eがこれを援用できるかは別である。
行訴法10条1項は,自己の法律上の利益に関係のない違法による取消請求を制限する。
 同項の利益を9条の適格基礎利益と同一とする見解は,取消訴訟が自己の権利利益の救済を目的とする主観訴訟であり,一般的な公益監督の手段ではないことを理由とする。
これに対し,適格を有する者の権利救済を充実させるため,適格基礎利益に限らず法律上保護される他の利益との関係も認める見解がある。
ここでは前者を採る。
EはAと異なり第三者であり,名宛人が処分による直接の権利制約の排除を求める場合のように,あらゆる違法をEの利益に関係させることはできない。
 距離制限違反はEの施設運営上の環境利益に直接関係するから主張できる。
これに対し,経営主体制限は主として経営の永続性・公益性と墓地利用者の継続的管理を確保するものであり,隣接するEの環境利益を直接守るものではない。
Eは管理不全が衛生悪化につながると主張し得るが,単なる抽象的関連では足りない。
 自己の法律上の利益を原告適格の基礎とした利益に限らず広く捉える見解によっても,本件の営利主体による経営という違法がE自身の別の法律上の利益に関係することは示されていない。
B市は,この主張は10条1項により制限されると反論すべきである。

第3 設問2
1 裁量審査の枠組み
 Aは,適法な条例の基準を充足する以上,不許可は許されないと主張する。
しかし法10条1項は具体的許可要件をほとんど定めず,墓地の公益性,風俗習慣・地域条件への依存性から,公益的見地での許否を市長の広い裁量に委ねる。
本件条例は最低限の遵守事項を定めるという前提であり,条例充足は当然の許可を意味しない。
 ただし裁量は無制限ではない。
法1条の目的との関連を欠く事情を考慮し,重要な事実の基礎を欠き,又は考慮事項の評価・衡量が著しく不合理である場合は,裁量権の逸脱・濫用となる(行訴法30条)。
2 理由(ア)
 Aは,100メートル以内に住宅はなく,14条2項に従い植栽等で環境調和にも配慮しているのに,単に住民の反対が激しいことを理由に不許可とするのは,条例にない住民同意を要求し,無関係な感情を重視するものだと主張する。
 B市は,条例14条2項の周辺環境への調和について,法1条の目的に沿った評価上の幅,すなわち要件裁量があり,Aの対策が十分かを実質的に審査できると反論する。
100メートルという最低距離を満たしてもその外に被害が及ばないとは限らず,大規模墓地による狭い道路の渋滞や供物放置による悪臭・害獣害虫という具体的な懸念は,法の衛生・公共福祉目的と関係すると反論する。
植栽が視覚的調和を図っても,交通や衛生の問題まで解消するとは限らない。
 市は反対運動の強さと被害の具体的根拠を分け,墓地規模・交通量・設備・管理計画等を調べ,対策を評価する必要がある。
合理的な危険評価に基づく不許可なら裁量内となり得るが,反対運動だけに屈し,対策を検討せず不許可とするなら逸脱・濫用となる。
3 理由(イ)
 Aは,法と条例に需給調整規定はなく,Dらの競争上の利益を保護して新規参入を排除するのは法目的外だと主張する。
既存墓地に空きがあるだけで管理不全まで生ずるとはいえない。
 B市は,条例3条1項が原則を地方公共団体の経営とし,9条2項5号が資金計画を審査させるのも,法1条に即した公益性・非営利性と永続的な管理の確保のためであると反論する。
墓地には長期・安定的管理が求められ,市内の既存墓地には空き区画が目立ち,供給過剰気味という事情がある上,大規模参入で小規模墓地が破綻すれば,既存の墳墓の管理と利用者に支障が生じるから,公共の福祉上考慮できると反論する。
Dに競争利益による原告適格がないことも,この公益上の考慮を妨げない。
 もっとも,市は需要,空区画,参入規模,経営破綻及び管理不全に至る蓋然性を具体的に把握しなければならない。
単なる既存業者の利益保護なら目的違反となるが,永続管理への具体的危険を適切に評価したものであれば考慮が許される。
市は,競争排除自体でなく墓地管理への実害防止を判断の根拠として示すべきである。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 原告ごとの利益と法源

項目1・6は,Dの経営利益と,利用者の健康とは区別されたE自身の業務上の環境利益を特定する核心である。
最高裁第二小法廷平成12年3月17日判決(平成10年(行ツ)第10号,集民197号661頁)を本件にそのまま当てはめず,条例の保護対象を比較する。
最高裁第一小法廷平成21年10月15日判決(平成20年(行ヒ)第247号,民集63巻8号1711頁)の参照(項目10)は本件と異なる規制の機能を用いた補強であり,全答案への累積要求ではない。

(2) 違法性と援用可能性

項目12・15・18・21は,裁量の根拠,権利濫用,名義貸し禁止の実質及び10条1項の判断基準という,法的経路を分ける核心である。
距離本文の客観的要件と但書の評価,さらに許否選択を混同しない。
但書は宗教的感情への適合と公益上の無支障を共に要し,距離問題の解決だけで許可全体の適法性は確定しない。

(3) 不許可理由と前後の整合

住民反対の強さと具体的な環境影響を分け,需給状況も単なる競争者保護ではなく永続管理との関係から検討する。
Dの個別的競業利益を保護しないことは,公益としての経営安定を考慮しないことを意味しない。

(4) 答案と評価項目の対応

番号答案中の対応箇所適用条件・位置付け
1「法律上保護された利益」を含む段落全答案。主要な訴訟要件の判断経路自体であり,理由付けの補強を超える核心
2「法と目的を共通」を含む段落全答案。9条の結論を支える主要な解釈操作であり核心規範そのものとは区別
3「9条2項1号・5号」を含む段落全答案。Dの主張を具体的条文から支える主要論証
5「公益上重要」を含む段落全答案。Dの結論を理由付きで支える主要な対立処理。結論の方向自体に重みを付さない
6「E自身に帰属」を含む段落全答案。保護主体と利益の取り違えが原告適格を左右する核心
7「入所施設を有するものに限定」を含む段落全答案。利益保護の具体的根拠となる主要な条文解釈
8「定員に近い利用者」を含む段落全答案。具体的侵害のおそれと利益帰属を接続する主要な当てはめ
10「平成21年10月15日」を含む段落位置基準判例との発展的比較を採用した答案。未採用は適用外。採点実感の優秀化の例示であり全答案共通の要求にしない
12「地域に即した公益判断」を含む段落全答案。許可本案の審査経路を決める核心。設問2の説明だけで設問1⑵への移送を代用しない
13「効果裁量が残る」を含む段落要件裁量・効果裁量の区別を用いる発展的論証を採用する答案。採点実感の発展的深化。ただし用語を使う場合の分類誤りは別に許されない
14「100メートル未満」を含む段落全答案。法定要件の主要な適用。単なる20m差で緩めない
15「主張は権利濫用」を含む段落全答案。意図的設置をどう法的処理するかという本案の核心
16「申請から1週間後」を含む段落全答案。濫用反論を支える主要な当てはめ。説明会後の独立の意味は弱い
18「名義貸しを明文」を含む段落全答案。名義貸しの法的な問題性を確定する核心
19「全額無利息融資を申し出て」を含む段落全答案。実質経営者の主要な事実評価。無利息と動機・非営利主体の関係をさらに接続できる
21「主観訴訟」を含む段落全答案。客観的違法と第三者の援用範囲を決める核心。両説への言及だけでは理由付け不足
22「距離制限違反はE」を含む段落全答案。独立した違法事由に対する主要な適用
23「経営主体制限は主として」を含む段落全答案。別の違法事由に対する主要な適用。採用基準の理由不足は項目21と共通の欠陥として別に減点しない
26「当然の許可を意味しない」を含む段落全答案。不許可審査の主要な法的前提。個別理由の核心とは分ける
27「単に住民の反対」を含む段落全答案。Aの主張を支える主要な論証
28「周辺環境への調和について」を含む段落全答案。B市の反論を支える主要論証
29「需給調整規定はなく」を含む段落全答案。Aの反対構成における主要論証
30「供給過剰気味」を含む段落全答案。B市反論の主要な条文根拠・因果の接続。単なる供給状況の指摘より深いが核心5までは置かない

重み3以下の通常項目は,4・9・11が原告適格,17・20・25が違法主張,31~34が設問横断又は指定された範囲の確認に対応する。
13は要件裁量・効果裁量の分類を用いる構成として答案で採用した。
各表の「重み」は評価項目の役割であり,文章量の指定ではない。

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1 同じ年度の司法試験

同年度の問題文は,法務省の平成30年司法試験論文式試験問題から確認できる。

2 同じ科目の別の年度

令和7年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目

令和6年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目

令和5年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目

令和4年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目

3 関連論点

原告適格・違法主張の制限・裁量審査は,上記行政法の別問題と比較できる。
本問の根拠資料は次の第7にまとめる。

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

法務省・平成30年司法試験論文式試験問題集[公法系科目](第2問のPDF8~13頁を実読)。
https://www.moj.go.jp/content/001258872.pdf

法務省・平成30年司法試験論文式試験問題出題の趣旨(第2問のPDF3頁から4頁の民事系見出し直前までを実読)。
https://www.moj.go.jp/content/001273705.pdf

法務省・平成30年司法試験の採点実感(公法系科目第2問)(PDF4~9頁の総論・末尾注記を含め実読)。
https://www.moj.go.jp/content/001273545.pdf

2 法令

行政事件訴訟法9・10・30条及び墓地,埋葬等に関する法律1・2・10条は,e-Gov法令APIの平成30年5月16日時点の版と問題添付資料を照合した。
B市条例は問題中の仮設条例であり,実在自治体の現行条例として扱わない。
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000139
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048

3 裁判例

墓地経営許可処分取消請求事件・最高裁第二小法廷平成12年3月17日判決(平成10年(行ツ)第10号,集民197号661頁)。
判決全文(2頁)を確認した。

場外車券発売施設設置許可処分取消請求事件・最高裁第一小法廷平成21年10月15日判決(平成20年(行ヒ)第247号,民集63巻8号1711頁)。
判決全文(10頁)を確認した。
場外車券発売施設の位置基準の事件であり,墓地許可自体の判示ではない。

4 確認状態

問題・出題の趣旨・採点実感は,記載した本問の範囲を実読・照合した。
表の記述と重み,答案の構成・結論は記事独自の分析である。
試験後の法改正・後発判例を当時の答案要求へ遡及させていない。
名義貸しの実質支配や具体的危険の有無について,与件にない事実を確定していない。