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CLOUD法とは―日本国内のクラウドデータも米国の開示命令の対象になるのか(AI作成)

第1 国内サーバーという条件だけでは判断できない

1 結論

日本国内のサーバーに保存したデータであっても,その所在だけを理由に米国の法的手続による開示対象から外れるとは限らない。
CLOUD法によって設けられた米国法18 U.S.C. §2713は,対象事業者の保有・管理・支配の下にある情報について,米国内外の所在にかかわらず,同章による保存,バックアップ又は開示の義務に従うと定めている。

もっとも,この規定は,米国政府があらゆる日本のデータへ自由にアクセスできるという意味ではない。
どの事業者が米国の管轄に服するか,その事業者が対象データを保有・管理・支配しているか,どの情報についてどの手続が用いられるかを分けて確認する必要がある。

条文の確認先は米国下院法制局が提供する合衆国法典である。
以下は,令和8年10月24日に確認した同サイトの条文と米司法省の説明等を基に,クラウドを利用する企業,自治体及び法律事務所の確認事項を整理するものである。
https://uscode.house.gov/us/usc/119-118/t18/s2713/

2 保存場所,契約相手及びデータへの支配は別である

クラウドサービスの契約相手が日本法人であること,サーバーが日本にあること,海外の関連会社が運用に関与することは,それぞれ異なる事情である。
導入時には,契約書に記載された相手方だけでなく,保存,運用,障害対応,再委託及び鍵管理に関与する主体を確認したい。

たとえば,顧客の画面で選ぶ保存地域が日本でも,国外の事業者が管理権限を持つ場合と,利用者だけが復号鍵を管理し事業者が内容へアクセスできない場合とでは,検討すべき条件が異なる。
これは契約・技術構成を調べるための例であり,特定のサービスの構成や法的結論を示したものではない。

第2 CLOUD法による国外データの扱い

1 対象事業者とデータの関係

§2713が対象とするのは,電子通信サービス又はリモートコンピューティングサービスの提供者である。
条文は,通信内容その他の記録・情報が事業者の「possession, custody, or control」にあることを条件としている。
単に同じ企業グループに属するという説明だけで,個々の法人とデータへの支配関係の検討を省略することはできない。

米司法省のFAQのQ24~Q25も,米国の管轄とデータへの支配を分けて説明している。
その説明によれば,米国本社企業だけを対象とする制度ではなく,逆に,米国との関係があるという一事だけで全ての法人・データが同じ扱いになるともいえない。
FAQは執行当局の説明であり,特定の事件での裁判所の判断と同一視しないことも必要である。
https://www.justice.gov/d9/pages/attachments/2019/04/10/cloud_act_white_paper_faqs_2.pdf

2 国内保存の意味がなくなるわけではない

§2713から導けるのは,保存場所だけで同章上の義務を免れられるとは限らないという点である。
国内保存が無意味であるという結論ではない。

保存地域は,運用体制,障害対応,国外からのアクセス,再委託及び契約上の管理条件と併せて評価する事項である。
「国内保存だから全て安全」「米国法の問題があるから国内保存に意味がない」という二択では,実際に減らせるリスクと残るリスクを見分けられない。

第3 開示手続と本人への通知

1 情報の種類と手続を区別する

保存データの開示に関する§2703は,通信内容と契約者等に関する記録・情報について,令状,裁判所の命令,召喚状等の手続を区別して規定している。
どの手続でも同じ範囲の情報を得られると考えたり,§2713だけを根拠に個別の開示が適法であると判断したりすることはできない。
https://uscode.house.gov/us/usc/119-118/t18/s2703/

開示要請を受けた事業者の説明を確認するときも,対象が通信内容なのか,契約者情報なのか,アクセス記録なのかを分ける必要がある。
また,保存データの刑事手続に関するこれらの規定だけから,あらゆる情報収集制度の範囲や適法性まで説明できるわけではない。

2 必ず事前通知されるとは限らない

§2705は,一定の条件の下での通知の延期や,事業者に対する通知禁止の命令を定めている。
法定の要件には,生命・身体への危険,逃亡,証拠の破壊,潜在的な証人への威迫又は捜査への重大な支障等が挙げられている。
https://uscode.house.gov/us/usc/119-118/t18/s2705/

したがって,サービスの説明に利用者への通知方針があっても,通知を禁止する法的命令がある場合の扱いまで確認したい。
契約上の通知条項があることと,全ての要請について利用者が必ず事前に知り,異議を述べられることは同じではない。

第4 ガバメントクラウドの政府説明と評価の限界

1 日本側の対策は公表資料に即して読む

令和8年4月8日の衆議院内閣委員会では,政府側が,ガバメントクラウドについて,国内での保存とバックアップ,日本法の準拠及び東京地方裁判所の管轄,外国政府からの要請のデジタル庁への通報,拒否できる旨の契約並びに暗号化等を説明している。
これらは,日本側が対策を全く設けていないという説明と両立しない。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000222120260408002.htm

ただし,国会で政府がそのように説明したことと,個別の開示要請に対する対抗可能性や,鍵管理を含む実装が独立して確認されたことは別である。
日本法を準拠法とする契約があるという事情だけで,外国の公法上の開示義務が当然に消滅するとはいえない。

2 国産・外資の名称だけで結論を出さない

デジタル庁は,さくらのクラウドが令和8年3月27日以降,ガバメントクラウドの本番環境を提供可能になったと説明している。
国産の選択肢があるかという問題と,既存システムがどの事業者へ集中しているかという問題は分けて扱う必要がある。
https://www.digital.go.jp/policies/gov_cloud

民間企業が選ぶ場合も,国産という名称だけで国外事業者の関与がないと推定しない。
逆に,外資系という名称だけから,個別の顧客データが実際に開示されたと推定することもできない。
利用状況の割合を論じる場合は,集計対象,基準日及び分母を確認し,システム数や契約団体数を国民の情報量の割合へ置き換えないことが必要である。

第5 暗号化と学習オフは別の問題を扱う

1 暗号化の有無から一歩進んで確認する

転送中・保存時の暗号化は,その場面の情報保護を評価する要素となる。
しかし,暗号化しているという説明だけでは,誰が復号鍵を管理し,事業者がどの情報を読み出せるかは分からない。
本文,添付ファイル,バックアップ,検索用データ及び運用ログを同じ条件だと決め付けないことも必要である。

米司法省FAQのQ29は,CLOUD法が新たな復号強制権限を設けるものではないと説明している。
この説明から,「暗号化があれば開示命令の対象にならない」「他の既存権限も一切問題にならない」と結論づけることはできない。

2 生成AIの学習利用の停止と政府開示を分ける

学習オフは入力等をモデルの学習に利用するかという条件であり,保存期間,運用担当者のアクセス,国外での取扱い又は法的要請への対応まで同時に決めるものではない。
AIを業務に使う場合は,学習利用の条件と,適用される規約・データ処理契約・当局請求方針を別々に確認する必要がある。

CLOUD法の適用可能性があるという一事から,個別のAI利用が日本の弁護士の守秘義務違反になるという結論も直ちには導けない。
入力情報の性質,実際の送信・保存・アクセスの条件,依頼者への説明等は別に検討する事項である。
この点は,学習オフ設定のAI利用と弁護士の守秘義務に関する記事で述べている。

第6 導入・見直しの際に残す確認記録

本記事では,法務担当者と情報システム担当者が,契約締結前又は重要な利用条件の変更時に,次の事項を一つの記録へまとめることを提案する。
以下は運用上の提案であり,§2713がこの書式での記録作成を義務付けているという意味ではない。

① 契約相手,サービス提供者,再委託先及び運用上のアクセス主体。
② 本文・添付・バックアップ・ログごとの保存地域とアクセス権限。
③ 対象事業者がデータを保有・管理・支配しているかを判断するための契約・技術構成。
④ 当局請求時の法的審査,通知,通知禁止時の扱い及び異議・協議の方針。
⑤ 暗号化の対象,復号鍵の管理者及び鍵の変更・回収の方法。
⑥ 保存・削除・返還・移行の条件と,確認した規約の版・URL・確認日。

相手方の説明と契約条項が食い違う場合や,取り扱う情報に照らして通知・鍵・再委託の条件を判断できない場合は,投入する情報の範囲を先に絞り,法務・情報管理の担当者へ確認することが適切である。
「日本リージョンを選んだ」という一行だけで検討を終えず,どの条件で,どのリスクを受け入れたかを残すことが,導入後の見直しにも役立つ。

第7 関連記事と出典

契約相手の所在と実際に利用されるAI基盤・派生データの条件の違いについては,国内リーガルテックと国産AIの派生データ条項に関する記事も参照されたい。

① 合衆国法典18 U.S.C. §§2703, 2705, 2713。
取得時の法典サイトは令和8年10月7日までの法令を反映した旨を表示していた。
https://uscode.house.gov/us/usc/119-118/t18/s2703/
https://uscode.house.gov/us/usc/119-118/t18/s2705/
https://uscode.house.gov/us/usc/119-118/t18/s2713/

② 米司法省「Promoting Public Safety, Privacy, and the Rule of Law Around the World」のFrequently Asked Questions,特にQ24~Q25,Q28~Q29(PDF実頁8頁~9頁,印字17頁~18頁)。
https://www.justice.gov/d9/pages/attachments/2019/04/10/cloud_act_white_paper_faqs_2.pdf

③ 衆議院内閣委員会会議録(令和8年4月8日),ガバメントクラウドに関する質疑・政府答弁。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000222120260408002.htm

④ デジタル庁「ガバメントクラウド」。
https://www.digital.go.jp/policies/gov_cloud