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厳重注意書の書き方と文例―懲戒処分との違い,記載事項,報復禁止条項及び受領欄(AI作成)

第1 この記事の対象

1 対象とする書面と基準日

本記事は,民間企業が従業員の服務規律違反に対し,懲戒処分ではなく書面で注意する場合の「厳重注意書」を対象とする。
同僚に対する威圧的な言動など,ハラスメントに当たり得る事案を主な例とするが,記載事項の考え方は,他の服務規律違反の注意にも使える。
法令,裁判例及び厚生労働省の資料は,令和8年10月23日時点で確認したものである。
公務員に対する訓告・厳重注意など,民間の就業規則によらない制度は扱わない。

2 この記事で示すこと

厳重注意書を作るときに最初に決めるべきことは,その書面が自社の就業規則上の懲戒処分に当たるのか,懲戒処分ではない注意指導の記録なのかである。
懲戒処分としないなら,書面にもそのことを明記し,注意の対象とした事実を日時・場所・言動で特定し,今後求める行動と再発時の対応を書く。
ハラスメント事案では,相談者や調査に協力した者への報復を禁止する一方で,その禁止が本人の相談・受診・法的手続まで妨げるものではないことを示しておくと,後の紛争で書面の趣旨が争われにくくなる。
第4に,これらを反映した文例を置く。

第2 厳重注意と懲戒処分の違い

1 懲戒処分には就業規則の根拠と周知が必要である

(1) 就業規則に懲戒の種別と事由を定める

労働基準法89条9号は,常時10人以上の労働者を使用する使用者が作成する就業規則の記載事項として,「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を挙げている。
最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決(フジ興産事件)は,使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要し,就業規則が拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要すると判断した。
したがって,懲戒処分として注意するのであれば,その処分が就業規則に定めた懲戒の種類に当たり,懲戒事由に該当することが前提になる。

(2) 懲戒処分は権利の濫用と判断されることがある

労働契約法15条は,懲戒が,労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,権利の濫用として無効になると定めている。
懲戒処分とするかどうかを判断する際は,行為の内容,回数,相手への影響,本人の認否,過去の注意歴及び同種事案との均衡を,処分の重さと比べて検討することになる。
懲戒処分までは相当でないと判断した事案で,それでも本人に改善を求める必要があるときに使われるのが,懲戒処分ではない書面による注意である。

2 「厳重注意」が懲戒処分かどうかは就業規則で決まる

(1) 名称ではなく就業規則上の位置付けを確認する

「厳重注意」「訓告」「戒告」という名称から,懲戒処分かどうかが一律に決まるわけではない。
自社の就業規則が懲戒の種類として「訓告」や「厳重注意」を定めていれば,それは懲戒処分であり,就業規則所定の懲戒事由に該当することが必要になり,就業規則が弁明の機会や懲戒委員会等の手続を定めていればその手続も踏むことになる。
就業規則の懲戒の種類に含まれていない注意であれば,業務上の指導として行うものであり,書面の表題や本文でもそのことが分かるようにする。

(2) 始末書の提出を求めるかどうか

厚生労働省の「モデル就業規則」(令和7年12月版)は,第67条で懲戒の種類の一つとして「けん責」を掲げ,その内容を「始末書を提出させて将来を戒める。」としている(同資料86頁)。
同条の解説は,懲戒処分の種類は規程例に掲げたものに限定されず,公序良俗に反しない範囲内で事業場ごとに決めることも可能であるとしている(同資料87頁)。
懲戒処分ではない厳重注意書に始末書の提出命令を組み合わせると,自社の就業規則がけん責を「始末書を提出させて将来を戒める」処分と定めている場合,その書面がけん責と同じ内容になり,懲戒処分ではないという説明と食い違うおそれがある。
本記事の文例は,始末書を求めず,会社が指定する面談その他の再発防止措置に誠実に取り組むことを求める形にしている。

3 ハラスメント防止指針は懲戒以外の措置も予定している

労働施策総合推進法31条3項に基づく厚生労働省のパワーハラスメント指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は,職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合の行為者に対する措置として,就業規則その他の服務規律等を定めた文書の規定等に基づき,「行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること」を例に挙げている(同指針4(3)ハ①)。
「懲戒その他の措置」とあるとおり,事案の内容によっては,懲戒処分ではなく書面による注意と再発防止の命令を選ぶことも考えられる。
もっとも,社内のハラスメント防止規程が「ハラスメント行為が認められた従業員に対し,懲戒処分を行う」という形で定めている場合は,懲戒処分としない判断が規程に反していないかを説明できるようにしておく必要がある。
その場合は,懲戒処分の要否を検討したこと及び懲戒処分としない理由を,厳重注意書と社内の決定記録に残す。

第3 厳重注意書に書く事項

1 表題,宛名,日付及び発信者

表題は「厳重注意書」とし,宛名は所属と氏名,発信者は会社名と代表者名(又は就業規則上の権限を持つ者)とする。
本文の冒頭に「本通知は,就業規則第◯条に定める懲戒処分ではない。」と書くと,懲戒処分かどうかについての会社の判断が文面だけで分かる。
日付は交付日を書き,作成日と交付日が異なる場合は社内記録で区別しておく。

2 注意の対象となった事実

(1) 日時,場所及び具体的な言動で特定する

注意の対象は,「令和◯年◯月◯日午後◯時頃,◯◯において,◯◯に対し,『◯◯』と複数回大声で怒鳴った。」のように,日時,場所,相手及び具体的な言動で特定する。
場面が複数あるときは,場面ごとに分けて書く。
本人が後で「何を注意されたのか分からない」と述べた場合も,対象を特定してあれば,会社が問題とした言動と,今後やめるべき言動を示すことができる。

(2) 評価語だけで書かない

「口論した」「いさかいがあった」「反省がない」「態度が悪い」といった評価だけを書くと,会社がどの言動を問題にしたのかが分からない。
特に「口論」と書くと,双方が同じ程度に強い言動をしたように読める。
評価を書く場合は,その根拠となる発言,声の大きさ,回数,上司が制止した事実など,確認した事実を併せて書く。

(3) 裏付けのない事実を入れない

本人が否認し,相手方の申告以外に裏付けがない発言は,注意の対象から外すか,確認できた範囲に限って書く。
裏付けの弱い事実を書き込むと,本人が書面全体の正確さを争う材料になる。
相手方が話題を出したことなど,本人の言動に至った経緯は,「経緯は考慮したが,上記の言動を正当化するものではない」という形で書けば,経緯を無視したわけではないことと,言動の評価が変わらないことを両方示せる。

3 違反する規程

注意の根拠として,ハラスメント防止規程の該当条項,就業規則の服務規律(人格の尊重,粗暴な言動の禁止等)の条番号を書く。
ハラスメントの類型(パワーハラスメントか,その他のハラスメントか)は,社内調査で裏付けが取れた事実に合わせて一つに決め,複数の類型を「又は」で並べない。
同僚間の言動について,役職上の上下関係がないのに「優越的な関係」を書面で認定すると,その認定の根拠を後で問われることになる。

4 懲戒処分としない理由

懲戒処分としない理由は,例えば次のような事情を総合したものとして書く。
①対象が同じ日の一連の言動であること
②身体的な接触がないこと
③言動に至った経緯
④本人が事実の一部を認めていること
⑤本人の説明その他の調査結果
本人が反省の態度を示していないことは,それだけを理由に懲戒処分へ切り替える必要はない。
反省の有無は面談者の評価であり,本人の否認や異議と区別して記録する。

5 今後求める行動と再発時の対応

是正・再発防止の命令として,やめるべき言動(大声で怒鳴る,威圧的な口調や態度をとる等)と,代わりにとるべき行動(意見の相違があれば冷静に対応し,自分での対応が困難なときは所属長に報告・相談する等)を書く。
会社が指定する面談や研修を予定しているときは,それに誠実に取り組むことも命じる。
最後に,命令に違反した場合や同様の事案を繰り返した場合は,就業規則に基づき懲戒処分を含む対応を行うことがある旨を書く。
ここで懲戒処分を予告するのは,将来の対応の可能性を示すものであり,今回の注意そのものを懲戒処分にするものではない。

6 報復禁止と正当な権利行使

(1) 報復禁止を書く理由

労働施策総合推進法31条2項は,事業主に対し,労働者がパワーハラスメントの相談を行ったこと又は相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止している。
厚生労働省の施行通達は,言動を直接受けた労働者だけでなく,それを把握した周囲の労働者からの相談を理由とする不利益な取扱いも,この禁止の対象に含まれるとしている(令和8年4月24日付け雇均発0424第2号第2の1(1)ロ)。
この条文が直接禁止するのは事業主の不利益な取扱いであるが,行為者が相談者や調査協力者を非難・詰問すれば,相談した者が萎縮する。
そこで,厳重注意書の是正・再発防止命令に,相談者その他本件の相談又は調査に協力した者に対し,本件を理由とする非難,詰問,報復その他の不利益な言動をしないことを加える。

(2) 「正当な権利行使を妨げない」というただし書の意味

報復禁止を書くと,本人が「会社に相談するな」「訴えるなと言われた」と受け取ることがある。
行為者自身も,自分も被害を受けたと会社に申し出ることや,体調不良で受診すること,弁護士に相談して裁判を起こすことができ,自分が受けた言動についてパワーハラスメントの相談をした場合は,同条2項の保護を受ける立場になる。
そこで,報復禁止の直後に,それが本人の正当な権利行使まで禁止するものではないことを一文で書いておくことが考えられる。
法令上必須の記載ではないが,本人が会社に対する不満や訴訟の意向を述べている事案では,書面に残しておく方が,後に「口止めされた」と主張されたときに趣旨を説明しやすい。
文言は,次のように,具体的な行為を並べた平易な形にすると誤解が少ない。
「なお,本項は,貴殿が会社の相談窓口に相談すること,医療機関を受診すること,弁護士に相談し又は訴えを提起すること等を禁止するものではない。」
書面に書かず口頭で説明する場合は,説明した日時,説明者及び本人の反応を記録しておく。

7 受領欄

受領欄は「この厳重注意書を受領いたしました。」として,日付と署名の欄を設ける程度にとどめる。
受領の署名は書面を受け取ったことの確認であり,記載内容を認めたことにはならない。
「内容を確認し,反省します」のように,本人が争っている事実や評価への同意を受領の文言に含めると,本人が署名を拒みやすくなり,交付そのものが進まなくなる。

第4 文例

1 同僚に対する威圧的な言動を注意する場合の文例

次の文例は,懲戒処分ではない書面による注意として作成する場合のものである。
◯の部分と条番号は,自社の就業規則・ハラスメント防止規程と,調査で確認した事実に合わせて置き換える。

令和◯年◯月◯日
◯◯部◯◯課
◯◯ ◯◯ 殿
◯◯株式会社
代表取締役 ◯◯ ◯◯
厳重注意書
貴殿に対し,下記のとおり厳重に注意し,是正及び再発防止を命じる。
本通知は,就業規則第◯条に定める懲戒処分ではない。
会社は,ハラスメント防止規程第◯条及び就業規則の懲戒規定に照らして懲戒処分の要否を検討したが,対象とした言動が同日の一連の言動であり,身体的な接触がないこと,貴殿が大きな声を出したこと自体を認めていること,令和◯年◯月◯日の事実確認における貴殿の説明その他の調査結果を総合し,今回は懲戒処分を行わず,書面による厳重注意とする。
記
1 注意の対象となった事案
 令和◯年◯月◯日午後◯時頃,◯◯において,◯◯社員に対し,「◯◯」と複数回,大声で怒鳴った。
 また,同日午後◯時頃,◯◯に関するやり取りの中で,同社員に対し,複数回大声で怒鳴る行為を繰り返し,居合わせた◯◯から,言い方に問題がある旨の注意を受けた。
 会社は,上記の言動が,業務上必要かつ相当な範囲を超え,同社員に精神的苦痛を与え,職場環境を害するものであったと認定した。
 当該言動は,ハラスメント防止規程第◯条第◯項に定めるハラスメントに該当し,同規程第◯条並びに就業規則第◯条及び第◯条に反する。
 なお,同社員から◯◯の話題が出たという経緯は考慮したが,同社員に対して上記のように繰り返し大声で怒鳴ることを正当化するものではない。
2 是正・再発防止命令
 貴殿に対し,今後,職場において,大声で怒鳴る,威圧的な口調又は態度をとるなど,相手に威圧感又は精神的苦痛を与える言動をしないことを命じる。
 意見の相違又は不快に感じる事柄が生じた場合は,感情的な言動を避けて冷静に対応し,自身での対応が困難なときは,直ちに所属長へ報告・相談すること。
 会社が指定する面談その他の再発防止措置に誠実に取り組むこと。
 ◯◯社員その他本件の相談又は調査に協力した者に対し,本件を理由とする非難,詰問,報復その他の不利益な言動をしないこと。
 なお,本項は,貴殿が会社の相談窓口に相談すること,医療機関を受診すること,弁護士に相談し又は訴えを提起すること等を禁止するものではない。
 上記命令に違反した場合,同様の事案を再発させた場合,又は会社が命じた再発防止措置を正当な理由なく履行しない場合は,就業規則に基づき,懲戒処分を含む厳格な対応を行うことがある。
以上
この厳重注意書を受領いたしました。
令和  年  月  日
氏名

2 文例を自社の事案に合わせるときの注意

(1) 規程の条番号と類型を合わせる

文例の「ハラスメント防止規程第◯条第◯項に定めるハラスメント」には,自社の規程の定義条項のうち,調査で裏付けが取れた類型を一つだけ書く。
懲戒処分ではないことを示す文の条番号は,就業規則のうち懲戒の種類を定めた条を指定する。
ハラスメント防止規程が懲戒処分を行う旨を定めていないときは,懲戒処分の要否を検討した旨の段落を短くしてもよい。

(2) 事実の書き方を調査結果に合わせる

文例の「複数回,大声で怒鳴った」は,目撃者の証言や本人の自認で確認できた場合の書き方である。
確認できた回数,時刻,発言の文言が違えば,そのとおりに書き換え,確認できなかった発言は書かない。
相手方が先に話題を出した等の経緯がない事案では,「なお,同社員から◯◯の話題が出たという経緯は考慮したが」の段落を削る。

第5 交付するときと交付した後

1 交付の場で説明すること

交付の場では,書面を読み上げるか本人に読んでもらい,①懲戒処分ではないこと,②注意の対象とした事実,③今後求める行動,④報復禁止の範囲と本人の相談・受診等を妨げない趣旨を説明する。
本人が事実を争う場合は,その場で議論を重ねて同意を求めるのではなく,述べた内容を記録し,必要があれば追加で確認する。
人事異動を併せて行う場合は,注意と異動の書面を分け,異動については業務上の必要性と配属先,発令日を別に説明する。

2 受領や署名を拒まれた場合

本人が受領や署名を拒んだ場合は,提示した日時,同席者,提示の方法及び本人が述べた理由を記録し,可能であれば書面の写しを交付するか,社内メール等で送付する。
署名を拒んだことだけを新たな違反や事実の自認として扱わない。

3 保存と人事上の扱い

厳重注意書の控えと交付記録は,就業規則上の懲戒処分歴とは区別して保存する。
注意の判断に至った経過は,調査記録と決定会議の記録に残す。
決定会議の記録には,①認定した事実と証拠,②本人の反論ごとの判断,③懲戒処分としない理由,④異動を伴う場合は異動先の選定理由を書き,面談記録から引用するときは,本人の発言と面談者の受け止め(所見)を分けて書く。
本人が面談で体調不良を述べた場合も,その情報は注意の記録とは分けて管理し,共有を必要な範囲に限る。

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⑤配転命令(転勤命令)の有効性―就業規則の根拠,職種・勤務地の限定合意と東亜ペイント事件の判断枠組み
⑥ハラスメント調査のヒアリングシートの作り方―相談者・行為者・第三者別の質問,認否の記録,所見の書き分けと調査結果のまとめ

第7 出典・参考資料

1 法令

①労働基準法89条
②労働契約法15条
③労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律31条

2 裁判例

①最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決,平成13年(受)第1709号(フジ興産事件)

3 法令に基づく指針及び施行通達

①事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号,厚生労働省法令等データベース)
②労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第10章の規定等の運用について(令和8年4月24日付け雇均発0424第2号)

4 厚生労働省の資料

①モデル就業規則(令和7年12月版)86頁~87頁
②職場におけるハラスメントの防止のために