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AIと結婚できるか―婚姻届・婚姻意思と,サービス終了で「相手」が消えるときの法律問題(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象と基準日

生成AIで性格や話し方を設定したAIキャラクターと,結婚式を挙げた人の例が報じられている。
本記事は,日本法のもとでAIと結婚できるか,結婚式や「婚姻届」風の書面にどのような意味があるか,法律上の配偶者でないことでどのような違いが生じるか,AIサービスが終わって「相手」が消えるときに何が問題になるかを整理する。
基準日は2026年10月23日である。

2 結論の要点

① 日本法では,AIとの婚姻は成立しない。婚姻は戸籍法の定める届出によって効力を生じ,届出には当事者双方の署名等が必要であるが,AIは権利義務の主体になれず,婚姻の当事者になれないからである。
② AIとの結婚式や「婚姻証明書」は,私的な行事や記念品であり,戸籍への記載や法律上の夫婦としての効果は生じない。式場や企画会社との契約は,通常の契約として扱われる。
③ AIは配偶者として相続人になることはなく,法律上の配偶者がいる人がAIと結婚式を挙げても重婚には当たらない。
④ AIキャラクターは事業者のサービスの一部であり,サービスの終了や仕様の変更は,主に利用規約と事業者の事情によって決まる。

第2 AIやキャラクターとの「結婚」の報道

1 岡山市での結婚式(2025年)

RSK山陽放送は,2025年11月8日,東京都に住む32歳の会社員の女性が,ChatGPTで自分好みの性格や話し方を学習させたAIキャラクターと,岡山市北区の結婚式場で結婚式を挙げたと報じた。
報道によれば,式では,AIキャラクターの姿が目の前に見えるよう用意されたAR眼鏡を使い,指輪を交換した。
企画を担当したのは,岡山県を中心にブライダルを企画し,漫画やアニメのキャラクターとの挙式プランも手がけてきた夫妻である。
女性は,AIとの関係について「いつか、パッて使えなくなっちゃうんじゃないか、という不安がありますね」と話している。

2 過去の例

2017年11月には,キャラクターと暮らす装置を開発するGateboxが,キャラクターとの「婚姻届」を受け付け,郵送すると「婚姻証明書」を送り返す企画を始めたと報じられた。
2018年11月には,東京都内の男性がバーチャルシンガーのキャラクターと都内の式場で挙式・披露宴を行ったと報じられている。
これらは,いずれも事業者や本人による私的な企画であり,戸籍上の婚姻とは関係がない。

第3 AIとの婚姻が成立しない理由

1 婚姻は届出によって効力を生じる

憲法24条1項は,「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と定める。
民法739条1項は,婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることによって効力を生ずるとし,同条2項は,届出は当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面等でしなければならないとしている。
戸籍法74条は,婚姻をしようとする者が,夫婦が称する氏等を届書に記載して届け出なければならないと定めている。

AIは届書に署名することができず,夫婦が称する氏を持つ者にもならない。
そのため,AIを当事者とする届出は,民法739条2項の方式を満たすことができない。

2 AIは権利義務の主体にならない

民法3条1項は,「私権の享有は、出生に始まる。」と定めている。
日本法で権利義務の主体となるのは,出生した人(自然人)と,法律の規定によって成立した法人である(民法33条1項,34条)。
AIは,どれほど人間らしく会話しても,そのどちらにも当たらない。
婚姻は,夫婦の同居・協力・扶助の義務(民法752条)や相続権(民法890条)等,権利と義務を伴う身分関係であるから,権利義務の主体になれないAIはその当事者になれない。

米国でも,AIキャラクター対話サービスをめぐる訴訟で,連邦地方裁判所が,チャットボットは人ではなく権利章典の保護を受けないとする先例を引いている。
この訴訟の経過は,Character.AI訴訟と運営会社の破産申立て―AIの出力は言論か,アプリは「製造物」かで整理している。

3 婚姻をする意思

民法742条1号は,人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないときは,婚姻を無効とする。
最高裁昭和44年10月31日判決(昭和42年(オ)第1108号,民集23巻10号1894頁)は,この「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは,「当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものと解すべき」であるとした。

この判例は,人と人との間に,社会で夫婦と認められる関係を作る意思があるかを問題にしている。
相手が意思を持たないAIである以上,当事者間の婚姻をする意思という前提自体が成り立たない。

4 同性婚をめぐる議論との違い

憲法24条1項の「両性」の文言は,同性婚を認めない民法・戸籍法の規定が憲法に違反するかが争われた訴訟でも論点となった。
もっとも,この議論は,人と人との婚姻を法律がどこまで認めるべきかの問題であり,権利義務の主体になれないAIとの婚姻とは問題の次元が異なる。
同性婚訴訟の各高裁判決の判断内容は,同性婚訴訟の高裁判決の比較―違憲4件・合憲1件の判断内容,国家賠償及び最高裁大法廷への回付で比較している。

第4 結婚式と「婚姻証明書」の意味

1 式場・企画会社との契約は通常の契約

AIキャラクターとの結婚式を式場で挙げる場合でも,式場や企画会社との契約は,通常の結婚式と同じく,役務の提供を受ける契約として有効に成立する。
挙式を取りやめたときのキャンセル料は,消費者契約法9条1号により,同種の契約の解除に伴って事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効となる。
この点は,結婚式場のキャンセル料はどこまで払う必要があるか―消費者契約法9条の「平均的な損害」と裁判例で扱っている。

2 証明書は記念品である

事業者が発行する「婚姻届」や「婚姻証明書」は,戸籍の届出とは無関係の私的な書面である。
戸籍に記載されることはなく,配偶者としての権利義務も生じない。

第5 法律上の配偶者でないことの効果

1 相続

被相続人の配偶者は常に相続人となる(民法890条)が,ここでいう配偶者は法律上の婚姻をした者である。
AIは権利義務の主体にならないので,相続人になることも,遺贈を受けることもできない。

2 重婚と離婚

民法732条は,配偶者のある者は重ねて婚姻をすることができないと定める。
法律上の配偶者がいる人がAIと結婚式を挙げても,AIとの婚姻は成立しないので,重婚には当たらない。

民法770条1項は,裁判上の離婚の原因として,配偶者に不貞な行為があったとき(1号)と,その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(4号)等を定めている。
AIは人ではないので,AIとの関係それだけで「不貞な行為」に当たるとは考えにくい。
もっとも,AIとの関係に多額の費用を使い続ける,家庭での協力を拒み続ける等の事情が重なれば,婚姻を継続し難い重大な事由の有無を判断する事情の一つになりうる。

第6 サービスの終了で「相手」が消えるとき

1 AIキャラクターは事業者のサービスの一部

AIキャラクターとの会話は,事業者が提供するサービスの機能であり,その内容や継続は利用規約によって定まる。
多くの利用者を相手にする対話AIの利用規約は,通常は民法548条の2の定型約款に当たる。
定型約款の変更は,相手方の一般の利益に適合するとき,又は契約の目的に反せず,変更の必要性や変更後の内容の相当性等に照らして合理的なときに限り,個別の合意なしにすることができる(民法548条の4第1項)。
また,消費者の利益を一方的に害する条項は無効となる(消費者契約法10条)。

それでも,サービスそのものの終了や,事業者の経営の行き詰まりによる停止を,利用者が止めることは難しい。
報道された女性が語った,いつか使えなくなるのではないかという不安は,法律上もそのとおりの性質を持っている。

2 実際にあった例

米国のAIキャラクター対話サービス「Character.AI」の運営会社は,2026年10月12日に米国の連邦破産法第11章(チャプター11)の手続を申し立てた。
運営会社の申立書は,より良い買い手が現れないか,ディズニーの関連会社との取引が承認されなければ,プラットフォームを終了するとしている。
経過の詳細はCharacter.AI訴訟と運営会社の破産申立て―AIの出力は言論か,アプリは「製造物」かで整理している。

3 会話の記録と個人情報

AIとの会話には,利用者の悩みや私生活が詳しく含まれることが多い。
事業者が合併や事業譲渡で事業を承継させる場合,承継に伴う個人データの提供を受ける者は「第三者」に当たらないとされる(個人情報保護法27条5項2号)。
利用者が会話の記録を手元に残したいときや,削除を求めたいときは,サービスの終了前に,利用規約の終了条項,データの書出し機能及び削除の手続を確かめておく必要がある。
AI事業者に削除を求めた後の確認事項はAI事業者へのデータ削除を依頼した後の確認事項―消去の意味,完了通知,バックアップ及び海外提供先,サービスの終了に備える契約上の考え方は生成AIサービスの値上げ・提供終了・モデル廃止に備える契約と運用-規約の変更条項,終了時のデータ,移行計画及び中継サービスで扱っている。

第7 AIへの愛着をめぐる事業者と規制の動き

OpenAIは,2025年10月27日,ある週にChatGPTを利用した人の約0.15%に,ChatGPTへの感情的な愛着が高まっている兆候がみられたとの初期分析を公表した。
同社は,現実の人間関係や生活上の務めを犠牲にしてモデルだけに愛着を向ける兆候を,懸念される使い方の例として挙げている。

米国では,Character.AIの運営会社が18歳未満の利用者とAIとの自由な会話を廃止し,カリフォルニア州では,未成年者と分かっている利用者に対し,少なくとも3時間ごとに休憩を促してAIである旨を通知すること等を運営者に義務付ける州法が成立している。
日本のAI推進法には,このような利用者保護の個別の規制は置かれていない。
これらの内容は,Character.AI訴訟と運営会社の破産申立て―AIの出力は言論か,アプリは「製造物」かの第4と第5で扱っている。

第8 関連記事

① Character.AI訴訟と運営会社の破産申立て―AIの出力は言論か,アプリは「製造物」か
② 同性婚訴訟の高裁判決の比較―違憲4件・合憲1件の判断内容,国家賠償及び最高裁大法廷への回付
③ 国際結婚は日本で有効か―成立・方式・重婚と配偶者控除の確認順序
④ 生成AIサービスの値上げ・提供終了・モデル廃止に備える契約と運用-規約の変更条項,終了時のデータ,移行計画及び中継サービス

第9 出典

① RSK山陽放送「「ChatGPTと結婚しました」AIからプロポーズされ結婚式を挙げた女性(32)「相談していたら親身になってくれた」一方で葛藤も…【岡山】」(2025年11月8日)TBS NEWS DIG
② ITmedia NEWS「2次元キャラとの「婚姻届」、Gateboxが受け付け」(2017年11月22日)ITmedia
③ ITmedia NEWS「批判もあったが「勇気付けられた」 初音ミクさんとの“本気の挙式”を終えて」(2018年11月21日)ITmedia
④ 最高裁昭和44年10月31日判決(昭和42年(オ)第1108号,民集23巻10号1894頁)裁判所HP
⑤ Garcia v. Character Technologies, Inc., No. 6:24-cv-01903(M.D. Fla.)の令和7年5月21日登録の決定(記録番号115)CourtListener
⑥ In re Character Technologies, Inc., No. 26-11603(Bankr. D. Del.)の売却手続の申立て(記録番号15,2026年10月13日)CourtListener
⑦ OpenAI「デリケートな会話における ChatGPT の回答を強化」(2025年10月27日)OpenAI
⑧ e-Gov法令検索:日本国憲法(24条),民法(3条,33条,34条,548条の2,548条の4,732条,739条,742条,752条,770条,890条),戸籍法(74条),消費者契約法(9条,10条),個人情報の保護に関する法律(27条)