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詐害的事業譲渡と残存債権者の請求―会社法23条の2の要件・期間と倒産手続(AI作成)

第1 事業だけ移されても譲受会社へ請求できる場合がある

会社の事業・資産が別会社へ移り,自分の債権だけが旧会社に残された場合には,会社法23条の2による譲受会社への請求を検討する。
同条は,所定の要件を満たす残存債権者に,承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求する道を認めている。
事業譲渡や債務の除外があっただけで成立する請求ではなく,債権者への不利益と両会社の認識を調べる必要がある。

本記事は,令和8年10月20日に確認した会社法を中心に,会社間の事業譲渡における請求の確認順序を説明する。
商号を続用した責任,民法上の詐害行為取消し及び倒産手続での否認は,それぞれの制度として区別する。

第2 残存債権者と請求先を特定する

会社法23条の2の残存債権者とは,譲受会社に承継されない債務の債権者をいう。
まず,元の契約相手,債権の発生原因・金額・弁済期,事業譲渡契約による債務の扱いを確認する。
譲渡会社に請求する問題と,同条により譲受会社へ請求する問題を分けることが必要である。

契約書に債務不承継と書かれていることは,譲受会社に対する同条の請求を当然に排除する理由にはならない。
反対に,自分が譲渡契約の債務一覧に載っていないという事情だけで,詐害性や認識まで証明されたことにもならない。

会社名や店舗名が似ている場合も,登記履歴と契約資料により両法人を区別する。
同じ商号の会社への表示訂正と,別法人を相手方とする責任追及は異なる。

第3 債権者への不利益と両会社の認識を調べる

1 譲渡会社が残存債権者を害することを知っていたか

同条1項本文は,譲渡会社が残存債権者を害することを知って事業を譲渡した場合を対象とする。
譲渡対象資産だけでなく,対価が旧会社に実際に入ったか,その後どこへ支払われたか,旧会社にどの資産・負債・弁済原資が残ったかを調べる。

事業を低額で移した,対価を関係者へ流したという事情は調査の端緒となる。
もっとも,帳簿価額と売却額の差や役員の共通性だけで,直ちに全要件を満たすと決め付けてはならない。
価格の根拠,債務の選別,資金移動を客観資料で確認する必要がある。

2 譲受会社が効力発生時に何を知っていたか

同項ただし書は,譲受会社が事業譲渡の効力発生時に残存債権者を害することを知らなかったときは,この責任を負わないと定める。
譲渡会社の認識と譲受会社の認識を一つにまとめず,それぞれの担当者,入手資料,説明を受けた日を時系列で確認する。

契約後に届いた督促状だけから,契約交渉時や効力発生時に同じ情報を知っていたと断定しない。
財務調査の資料,債権者一覧,送金指図,取締役会等の資料,交渉メールが,いつ誰に共有されたかを対応させることが実務上有用である。

第4 請求できる額には限度がある

同条1項の請求は,譲受会社が承継した財産の価額を限度とする。
元の債権額と承継財産の価額は別に確認し,旧会社の負債全額を当然に譲受会社へ移せる制度として説明してはならない。

例えば,他の要件を満たし,責任の限度となる財産価額が400万円と評価される場合,600万円の債権全額を同項だけに基づいて請求することはできない。
これは責任の限度を説明する仮定例であり,契約書の売却代金や資産の帳簿価額がそのまま限度額になるという意味ではない。

資産明細,評価資料,譲渡契約,支払記録を集め,何が承継されたかとその価額を整理する。
複数の債権者や担保が関係する場合には,額面を機械的に足し引きせず,請求の構成と評価を個別に確認する必要がある。

第5 2年と10年の期間を別々に管理する

同条2項は,譲渡会社が残存債権者を害することを知って事業を譲渡したことを知った時から,2年以内に請求又は請求の予告をしない残存債権者に対して,その期間経過時に責任が消滅すると定める。
単に事業譲渡を知った日を,無条件にこの起算点とするわけではない。
何を,いつ,どの資料で知ったかを保存する必要がある。

同項には,事業譲渡の効力が生じた日から10年が経過した場合にも責任が消滅する規定がある。
認識に関する時点と効力発生日の双方を管理し,元の債権の消滅時効等も別に確認する。

会社法22条3項・23条2項にある2年の規定は,それぞれの要件の下で譲渡会社の責任を消滅させるものである。
23条の2第2項と同じ請求先・同じ起算点だと扱わず,対象となる会社と責任根拠を期間表に記載する。
期限が迫る場合は,通知文の送付だけで安全と判断せず,請求・予告の内容,宛先,到達と必要な裁判手続を弁護士へ確認することが望ましい。

第6 倒産手続開始後と他の請求を区別する

会社法23条の2第3項は,譲渡会社について破産手続開始,再生手続開始又は更生手続開始の決定があったときは,残存債権者が譲受会社に対して同条1項の請求権を行使できないと定める。
この制限を,譲受会社に対する他の責任根拠による請求もすべて消えるという説明へ広げない。
旧会社についての申立てと開始決定の日を区別して確認する。

検討する根拠中心となる問題本記事との分担
会社法22条・23条商号続用や債務引受広告による弁済責任表示・広告を調べる別の請求根拠
会社法23条の2残存債権者を害する事業譲渡と価額限度の履行請求本記事で要件・期間・開始決定後の制限を確認
民法上の詐害行為取消し処分行為の取消しと財産の返還等民法424条以下の要件・効果を別に検討
倒産手続上の否認倒産手続における財産回復個別債権者の直接請求と分けて検討

同条1項の履行請求は,事業譲渡の取消しを請求する形の制度ではない。
取消し,履行請求,倒産手続上の対応を並べるときは,誰が誰に何を求めるかを明確にし,回収額を重複して計算しない。

第7 早期に集める資料と相談の準備

① 元の契約書,請求書,未払残高と弁済期の資料。
② 両会社の登記履歴,事業譲渡契約,効力発生日と承継資産・債務の一覧。
③ 価格算定資料,対価の支払先・送金記録,譲渡前後の資産・負債・資金繰り。
④ 両会社が得た財務情報,債権者一覧,交渉メールと社内決裁資料。
⑤ 債権者が事業譲渡と債権者への不利益を知った経緯,請求・予告と到達の記録。
⑥ 旧会社の倒産手続の申立て・開始決定を確認できる資料。

債権者は,手元にある資料と相手方等が保有する資料を分け,取得できていない事実を推測で埋めない。
資産移転が続いている,旧会社が連絡に応じない,期間が迫っているという場合は,保全の要否を含めて早期に相談することが望ましい。

譲受会社側も,事業の取得を決める前に,価格だけでなく旧会社に残る債務と弁済原資を確認する。
債務不承継条項,商号変更又は免責登記だけでこの問題への対応が済むとは考えず,調査資料と決裁の根拠を保存する。

第8 関連記事

① 事業譲渡で残存債権者は譲受会社に請求できるか
② 事業譲渡の債務不承継条項と対外責任
③ 詐害行為取消しの悪意・認識と証拠
④ 偏頗弁済と否認権
⑤ 債務引受けを伴う事業譲渡の否認リスクと消費税
⑥ 同名会社・商号変更がある訴訟の当事者確定

第9 出典と判断の範囲

① 会社法(平成17年法律第86号)22条・23条・23条の2。令和8年10月20日取得の条文を確認した。
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

② 民法(明治29年法律第89号)424条以下。詐害行為取消しの制度との区別に関係する条文を参照した。
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

資料の収集・担当分担は,条文を踏まえた実務上の提案である。
個別取引の詐害性,両会社の認識,承継財産の評価及び各請求の関係は,契約・財務資料・時系列に即して判断する必要がある。