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国連国家免除条約とは―発効状況と日本の対外国民事裁判権法との関係(AI作成)

第1 国連国家免除条約は何を定めるか

国連国家免除条約は,外国国家とその財産について,他国の裁判所の裁判権から免除される範囲等を定める条約である。
正式名称は「国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約」であり,平成16年12月2日にニューヨークで採択された。
主権免除の原則だけでなく,免除されない裁判手続と,財産への強制措置に関する条件を分けて定めている。

本稿は,令和8年10月19日に確認した国連寄託情報,外務省資料,現行の国内法及び飛澤知行『逐条解説 対外国民事裁判権法―わが国の主権免除法制について』(商事法務,2009年)を基礎とする。
外国国家を日本で訴える手順の全体像は,主権免除(国家免除)と外国国家への民事訴訟を参照されたい。

第2 発効状況と日本の受諾

1 条約は発効しているか

令和8年10月19日の確認時,国連条約集の寄託情報は,同月19日付の状態として,この条約を未発効と表示していた。
同画面の署名国数は28,参加国数は25である。
これらは確認時点の数値であり,署名国数と批准・受諾等をした参加国数は同じ意味ではない。

30条1項は,30番目の批准書,受諾書,承認書又は加入書が国連事務総長に寄託された日から30日目の発効を定める。
したがって,「30か国が署名すれば発効する」という説明は正確ではない。
最新の状態は,国連の次の寄託情報で確認できる。
https://treaties.un.org/pages/ViewDetails.aspx?chapter=3&clang=_en&mtdsg_no=III-13&src=TREATY

2 日本の署名と受諾

外務省によれば,日本は平成19年1月11日に署名し,平成21年6月10日に国会承認を得て,平成22年5月11日に受諾書を寄託した。
日本の受諾という行為と,多数国間条約全体が発効することを区別する必要がある。
日本の受諾日だけから,同日以降この条約が発効済みであると説明することはできない。

外務省の条約案内には,和文・英文テキスト,説明書及び概要へのリンクがある。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_23.html

確認事項意味本条約・日本についての確認結果
採択条約文の採択平成16年12月2日
署名日本による署名平成19年1月11日
国会承認日本国内の締結手続平成21年6月10日
受諾書寄託日本の受諾書を寄託平成22年5月11日
条約の発効30条の条件を満たしたか令和8年10月19日確認時の国連情報では未発効

第3 未発効でも日本の国内法が適用される理由

1 条約と国内法は同じ文書ではない

日本には,平成21年法律第24号「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」がある。
この法律は,外国等を当事者とする民事裁判手続と,外国等の財産への保全処分・民事執行に関する日本の裁判権の範囲等を定める国内法である。
条約の発効条件が満たされていないことだけを理由に,国内法の適用もなくなると考えることはできない。

逐条解説6~7頁は,条約の発効前に国内法を整備する意義を説明している。
法務省の法律概要も,法律の「外国等」の定義は条約締約国に限られておらず,非締約国にも適用されると説明する。
相手国が条約を受諾しているかという問題と,日本の国内法上の「外国等」に当たるかという問題を分けて確認する。

法務省の法律概要:
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji182.html
現行法1~4条:
https://laws.e-gov.go.jp/law/421AC0000000024/

2 国家免除は債務の不存在を意味するか

国家免除は,外国国家への裁判権行使等の範囲を画する制度である。
免除によって訴えの適法性が問題となることと,契約上の債務や損害賠償責任が実体法上存在するかは,別の検討事項である。
反対に,義務違反や債権の存在を主張できることだけで,特定の国の裁判所が審理・執行できるとは限らない。

第4 裁判権免除と保全・執行免除

条約は,裁判手続の免除の原則と例外に関する規定に加え,財産への判決前・判決後の強制措置に関する規定を置く。
日本の国内法でも,5~16条の裁判手続と,17~19条の保全処分・民事執行は分けて検討する。
本案裁判への同意があることだけで,外国国家の財産への強制措置まで当然に認められるわけではない。

問題日本の国内法で先に確認する箇所注意点
訴えを審理できるか2~4条と5~16条被告の資格,維持される特権・免除,免除されない場合の要件を確認する。
仮差押え等ができるか17条等本案への同意と,保全・執行への同意等を分ける。
判決後に執行できるか17・18条等財産の用途と,各条の例外を財産ごとに確認する。
中央銀行の財産に執行できるか19条一般の国家財産についての18条1項をそのまま適用しない。

18条1項の政府の非商業的目的以外にのみ使用される財産に関する規定は,「民事執行」の免除の例外である。
これを,商業目的の財産なら保全処分も同じ条件で許されるという一般則へ広げてはならない。
対象財産の所在,名義,実際の用途及び同意の範囲を別々に確認する。

第5 外交官の免除・慣習国際法との関係

1 外交官や公館の保護との区別

国家そのものに対する請求と,外交官個人に対する請求,公館財産への強制措置は区別する必要がある。
国内法3条は,条約又は確立された国際法規に基づく外国等の特権・免除に影響を及ぼさないと定める。
そのため,労働契約や不動産等の免除の例外だけを読み,外交関係条約等による保護を検討せずに結論を出すことはできない。

外交官個人の民事裁判権免除は,外交官の免除と私的な有償活動で説明している。
国家と外交官では,免除の主体と例外の条件が異なる。

2 条約の規定はすべて慣習国際法か

条約が未発効であることと,その対象分野に慣習国際法上の規則が存在するかは,別の問いである。
反対に,採択された条約の全条文がそのまま慣習国際法になったと一括して扱うこともできない。
問題となる規定と事件の時点を特定し,国家実行,法的確信,裁判例等を確認する。

条約と慣習国際法の基本的な区別は,国際公法の法源を参照されたい。
日本の民事事件では,まず適用される国内法とその経過措置,条約等による特別の保護を確認する。

第6 よくある質問

1 日本が受諾していれば条約は発効済みか

日本の受諾だけで条約全体が発効するわけではない。
30条の多数国間条約としての発効条件と,国連の現在の寄託情報を確認する必要がある。

2 条約の非締約国は日本で常に免除されるか

非締約国であるという理由だけでは決まらない。
国内法の「外国等」は条約締約国に限定されず,免除の原則と法定の例外を検討する。

3 条約が未発効なら外国国家を訴える規則はないか

日本には対外国民事裁判権法があり,適用される国内法や条約等に従って判断する。
条約の発効状況と,国内の裁判手続で適用する法規を混同してはならない。

4 条約の現在の状態はどこで確認できるか

国連条約集の該当条約の寄託情報で,発効の表示,参加国,寄託日,宣言・留保等を確認できる。
日本の署名・受諾と条約文は外務省資料,国内法の現行条文はe-Gov法令検索で確認する。

第7 出典・関連記事

飛澤知行『逐条解説 対外国民事裁判権法―わが国の主権免除法制について』(商事法務,2009年)2~18頁,19~23頁,78~96頁及び条約資料の30条〔144頁〕。
刊行当時の条約参加国数を現在値として使用せず,上記の国連寄託情報の確認日を付した。

外務省「国連国家免除条約」:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_23.html
国連条約集・発効状況及び寄託情報:
https://treaties.un.org/pages/ViewDetails.aspx?chapter=3&clang=_en&mtdsg_no=III-13&src=TREATY
法務省・国内法の概要:
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji182.html
e-Gov・現行法:
https://laws.e-gov.go.jp/law/421AC0000000024/

主権免除(国家免除)の総合解説
国際公法とは