第1 フランチャイズ学習塾の結論と基準日
1 本部の認定だけで加盟教室を一括して扱うことはできない
日本版DBSに対応するフランチャイズ学習塾では,最初に,誰の事業として各教室を運営しているかを確認する必要がある。
経営主体が異なる通常のフランチャイズでは,同じブランドを使っていても,それぞれの事業者が認定を申請する。
本部の認定だけで加盟事業者の事業まで認定されたり,教授者の不足人数を本部と合算した共同認定で補ったりできるわけではない(Q&A応用編4-11)。
認定申請は任意であるが,認定を受けた事業者は,犯罪事実確認や安全確保,記録管理等の法定措置を実施する。
本部は規程・研修・運用等の共通支援を整え,加盟事業者は自己の事業の体制に合わせて実施する,という分担を基本に検討する。
本部の支援義務の有無や範囲は,法定措置とは別に,フランチャイズ契約等の内容によって判断する。
2 令和8年12月25日の施行に向けた準備を扱う
本記事は,令和8年10月19日に確認した法令,こども家庭庁の施行ガイドライン及びQ&A等に基づく。
法律の主な施行日は同年12月25日であり,認定申請も同日から可能と案内されている。
ここでは,加盟事業者が自己の経営で学習塾を運営する通常のFCを中心に,同一事業の複数教室や運営全体の委託との違いを説明する。
制度全体は,こども性暴力防止法とは―日本版DBSの対象・義務・令和8年12月25日の施行準備で説明している。
第2 認定主体と教授者3人以上の要件
1 同一事業の複数教室と別経営主体のFCを分ける
同じ学習塾事業を一つの事業者が複数の教室で行う場合は,一つの事業として認定を申請する。
この場合の教授者の人数は事業全体で判断し,各教室に3人ずつ常駐する必要はない。
その一方で,同一事業の一部の教室だけを任意に選んで認定する仕組みではない(Q&A基礎編4-5,応用編3-4・3-5)。
通常のFCで,加盟事業者がそれぞれ独立した事業を営む場合は,各経営主体が別々に認定を申請する。
本部が共通の教材・商標・研修・システムを用意していることだけで,加盟事業者の事業が本部の事業と一つになるものではない(Q&A応用編4-11)。
| 構造 | 認定・人数の考え方 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 同一事業者による同一学習塾事業の複数教室 | 事業全体で申請し,教授者の人数を判断する | 同じ法人の全ての別事業を無条件に合算するものではない |
| 別経営主体の通常FC | 各経営主体が申請する | 同一ブランドや本部との合算では不足人数を補えない |
| 同一事業の運営全体の指定管理・委託 | 事業運営者の実体と共同認定等の条件を確認する | 契約の名称だけで共同認定と決めない |
2 3人は全社員数ではなく教授者の人数である
民間教育事業の人数要件は,児童等に技芸又は知識を教授する者が3人以上であることである(法2条5項3号ニ,施行令1条)。
講師・指導員という職名でなくても実際に教授する者は数えられるが,教授をしない事務職員を含む全社員数とは異なる。
本部の登録講師名簿に名前があるだけでなく,対象となる事業で実際に教授に従事しているかを確認する(Q&A応用編3-3~3-5)。
教授者3人未満の通常FCは,この民間教育事業の人数要件を満たさず,本部との共同認定で不足を補うこともできない(Q&A応用編4-11)。
学習塾という名称だけで対象になるわけではなく,対面指導等の他の要件も必要である。
対象事業の全体像は,こども性暴力防止法の対象となる職種と事業で説明している。
第3 共同認定を検討するのはどのような場合か
1 同一事業の運営全体を任せているかを確かめる
共同認定は,民間教育保育等事業者と,その事業所の運営全体を担う事業運営者について設けられた仕組みである(法19条・21条,施行ガイドライン86頁~87頁)。
一部の活動だけの委託,建物の維持管理,教材供給や商標利用の関係を,運営全体の指定管理・委託と同じに扱うことはできない。
別々に学習塾事業を行う本部と加盟事業者が,共同申請書を作るだけで一つの認定を共有できる制度でもない。
事業運営者側で認定に必要な要件・措置の全てを満たせる場合には,事業運営者が単独で認定を受けられる場合もある(Q&A応用編4-10)。
運営委託という名称なら必ず共同認定になる,とも判断せず,実際の運営と措置の担い手を確認する。
2 共同認定でも措置の役割と情報の流れを定める
共同認定では,それぞれの役割を説明する資料を申請に含め,防止措置,調査及び保護・支援等の役割分担を定める(法21条3項,施行規則19条2項3号)。
人事権を持つ者と,現場で服務を監督する者が異なる場合もあるため,誰が何を決めて実施するかを具体化する必要がある(施行ガイドライン93頁)。
共同認定を受けた者の間でも,確認記録を無制限に回覧できるものではない。
確認書の送付先を共同の交付申請で定め,受領した一方から他方への提供は,犯罪事実確認や防止措置に必要な限度で行う(法26条7項等)。
第4 本部と加盟事業者の役割分担
1 法定措置の主体と共通支援を対応させる
次の表は,通常FCが認定を受ける場合の準備として,法令・公式資料を踏まえた分担の考え方を整理したものである。
国が全てのFCに指定した統一分担表ではなく,実際の契約,雇用関係及び現場の権限に合わせて調整する必要がある。
| 作業 | 加盟事業者側の実施 | 本部が支援する事項 |
|---|---|---|
| 認定単位・対象者 | 自己の事業,教授者,教室,対象業務・従事者を特定する | 運営主体・直営/FC・契約形態の対応表を整える |
| 規程・責任者・研修 | 自己の体制に即して規程を整え,担当者を決めて実施する | ひな型,記入要領,教材,演習や研修機会を用意する |
| 犯罪事実確認 | 自己の認定等事業について,対象者と期限を管理して確認する | 手順・期限管理の設計を支援する。確認書の一括受領を前提にしない |
| 日常の予防・相談 | 行動基準を実施し,疑いを把握したら安全確保・調査・支援につなぐ | 共通基準,相談経路,専門家との連携,代替窓口を整える |
| 配置・雇用上の措置 | 雇用者の人事権と現場の監督権に応じて判断する | 契約上の是正協議や運営支援を行う |
| 記録の管理 | 自己の限定した担当者で保存・閲覧・廃棄等を管理する | 記録内容に触れない教育・規程・環境整備を支援する |
| 広告・行政対応 | 自己の認定範囲を表示し,帳簿・報告等を行う | 共通広告の区分表示,手順・様式,改善を支援する |
2 本部の是正対応と講師の雇用上の措置を分ける
加盟事業者が講師を雇用している場合,本部がFC契約上の指示や是正協議を行えることと,その講師に配置転換・懲戒・解雇を行えることは別の問題である。
本部の関与が強いというだけで,加盟者の雇用契約を本部が当然に終了できるわけではない。
疑いを把握した場合の接触回避を急ぐことと,雇用上の処分の有効性を検討することも分ける必要がある。
本部雇用者の派遣・出向や兼務がある場合は,雇用関係と,誰の対象事業で従事するかを個別に確認する。
確認結果や被害申告を受けた後の一般的な対応は,日本版DBSの確認結果・被害申告を受けた後の労務対応で説明している。
第5 確認記録を本部へ集める設計の限界
1 通常の管理委託や本人同意だけでは提供できない
法27条2項が準用する12条は,犯罪事実確認記録等の目的外利用・第三者提供を原則として禁止し,例外を法定している。
施行ガイドライン275頁は,犯罪事実確認記録等の情報管理業務を他の事業者へ委託する場合を,第三者提供が禁止される例に挙げている。
別経営主体のFC本部に専門部署があることや,秘密保持契約を結ぶこと,本人の同意を得ることだけで,この法定の制限を広げることはできない。
確認書の内容を転記した一覧等も,紙の確認書ではないというだけで自由に提供できるものではない。
本部の監査では,規程・責任者・研修・期限管理の体制や広告の範囲等を確認する設計を検討し,個人別の確認結果や記録の写しを当然の提出資料にしない。
2 内部共有・共同認定・クラウド保存を区別する
同一事業者の内部では,防止措置の検討・実施に必要な最低限の関係者間で共有することが想定される。
同じ看板を掲げる別経営主体の本部は,この同一事業者内部の共有先と同じにはならない(施行ガイドライン275頁)。
共同認定の必要限度の提供は,前記第3の法定の仕組みとして別に確認する。
また,必要な安全管理措置を講じたクラウド保存の説明から,本部や一般の事業者が記録内容を取り扱う管理業務を自由に受託できると導くことはできない(施行ガイドライン252頁~253頁,268頁)。
3 被害申告・相談記録の連絡まで一律に禁止しない
安全確保のために別途取得した本人の事情や,こどもからの聴取情報は,犯罪事実確認記録等とは区別して整理される(施行ガイドライン288頁~291頁)。
これらも個人情報や犯罪被害等の情報を含み得るため,本部の相談窓口へ連絡する際は,目的,共有先,必要性及び適用法令を確認して厳格に管理する。
確認結果の転記を相談記録と呼び替えて渡すことは,この区別を利用した回避にはならない。
一方,本部へ一切連絡できないと誤解し,必要な安全確保や支援を遅らせる運用も避ける必要がある。
記録の種類・保存・廃棄等の一般論は,日本版DBSの犯罪事実確認記録をどう扱うかで説明している。
第6 共通広告と保護者への説明
1 認定済みと未認定の教室を混同させない
本部の共通サイトや教室一覧では,どの事業者のどの事業が認定を受け,どの教室を含むかを明確にする。
一部の事業だけが認定を受けているのに,全加盟教室が認定済みと誤認させる表示は避けなければならない(施行ガイドライン97頁,Q&A応用編4-11)。
人数要件を満たさず認定を受けられない事業所については,認定対象を明示した上で,認定を受けていない理由を同じページに示すことが可能とQ&Aは説明している。
共通ブランドの表示と,各事業の認定範囲を区別することが必要である。
2 認定取得と全講師の確認完了も区別する
認定時の現職者の犯罪事実確認には,認定等の日から1年の期間がある(法26条3項,施行令6条)。
新たな対象者は原則として業務開始までの確認が必要であり,現職者と同じ期限として扱わない(法26条1項)。
認定マークを,現職者全員の確認完了や,将来の性被害が起きないことの保証と同一視しない(施行ガイドライン101頁)。
保護者には,認定の範囲,日常の予防措置,相談先及び安全確保の対応等を説明する。
安心してもらう目的であっても,特定講師の性犯罪事実の有無を自由に伝えられるものではない(施行ガイドライン275頁)。
認定・マークの一般的な説明は,こども性暴力防止法の認定制度で確認できる。
第7 契約・規程で整理しておきたい事項
1 実施主体・報告範囲・是正手順を具体化する
契約・規程では,少なくとも次の事項を対応させることが考えられる。
①事業者・事業・教室・対象従事者の対応と,認定申請・変更・報告・確認期限管理の担当者。
②本部が提供する規程・教材・研修と,加盟者が具体化して実施・記録する事項。
③本部に報告する運用状況と,提供してはならない犯罪事実確認記録等の区分。
④安全確保・調査・支援,配置・雇用上の措置について,決定者・実施者と代替者。
⑤共通広告の掲載承認・修正,認定範囲や確認完了状況が変わったときの連絡。
⑥不備の是正方法,支援の費用及び重大な不履行への契約上の対応。
これらは法令の条項をそのまま列挙したものではなく,通常FCで役割を具体化するための実務上の検討項目である。
本部への契約上の報告と,国への法定報告を混同せず,実際の契約と各事業者の権限に即して定める必要がある。
2 共通基準を各教室の行動と相談経路へ落とし込む
規程のひな型を配布するだけでなく,個別指導,SNS,撮影,送迎等の場面で何をしてはいけないか,例外を誰に報告するかを具体化する。
本部側が関係する疑いでも利用できる代替の相談経路や,専門機関との連携も準備する。
行動基準は,こども性暴力防止法の「不適切な行為」とは,保護者説明は,学校・保育施設で性暴力の疑いが生じたときの保護者対応をそれぞれ参照できる。
第8 よくある質問
1 本部の認定があれば,教授者2人の加盟者も対象になるか
別経営主体がそれぞれの学習塾事業を行う通常FCでは,本部との共同認定で教授者3人以上の人数要件を補うことはできない(Q&A応用編4-11)。
一つの事業者が同じ事業を複数教室で営む場合の事業全体の人数判定とは,前提が異なる。
2 本部が規程・研修を支援することも禁止されるか
規程・研修・運用の支援と,犯罪事実確認記録等の管理委託は分けて考える。
本部が共通支援を提供する設計には実務上の利点があるが,記録の第三者提供の制限や,各認定主体が措置を実施する必要性は変わらない。
3 本部のクラウドに保存すれば管理負担をまとめられるか
保存環境の安全管理と,別事業者に記録内容を取り扱わせることの可否は別の問題である。
本部が運用するクラウドという名称だけで判断せず,実際に誰が閲覧・取得・管理できるかと,法定の提供制限を確認する必要がある。
第9 出典と適用範囲
1 法令とこども家庭庁の公式資料
①こども性暴力防止法(令和6年法律第69号。令和8年12月25日施行予定版)2条,12条,19条~21条,23条,25条~28条,33条及び35条。
https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000069/20261225_000000000000000
②同法施行令(令和7年政令第440号)1条及び6条,同法施行規則(令和7年内閣府令第104号)19条及び20条。
https://laws.e-gov.go.jp/law/507CO0000000440
https://laws.e-gov.go.jp/law/507M60000002104
③こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン」(令和8年9月改訂)86頁~87頁,93頁,97頁,101頁,219頁,224頁~228頁,252頁~253頁,268頁,274頁~275頁及び288頁~291頁。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/abc50df0/20260901_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_72.pdf
④こども家庭庁「こども性暴力防止法に関するQ&A」(令和8年9月29日改訂)基礎編4-2~4-5・4-8,応用編3-3~3-5・4-10・4-11。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/379c2e9b/20260929_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_100.pdf
⑤こども家庭庁「認定事業者等に係る監督等の指針」(令和8年10月1日通知別添2)1頁~5頁及び制度の公式案内。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/6f082eb8/20261001_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_103.pdf
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou
2 個別の事業では契約と運営の実態を確認する
本記事の分担は,通常の独立したFCを中心とする説明である。
個別事業への適用では,FC契約・運営受託契約,雇用・派遣・出向関係,事業の範囲,教授者,現場の権限,情報アクセス及び広告表示を確認する必要がある。
契約の名称だけで共同認定や本部の権限を判断せず,最新の公式資料と実態に即して検討することが重要である。