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仕入先・販売先を買収する前に―垂直型企業結合の競争審査と株式取得費用の税務(AI作成)

第1 仕入先・販売先の買収で最初に確認すること

仕入先や販売先の株式を取得すると,調達や販売の安定につながる一方,競争者が必要な商品を買えなくなる,販売先を失う,取引情報が競争相手へ流れるといった問題が生じることがある。
本稿は,内国法人が既存株式を購入する計画を想定し,垂直型企業結合の競争審査と購入費用の法人税処理を確認する手順を整理する。
令和8年10月18日に確認した公取委の運用指針と税務資料を基準とする。

株式保有は公取委の企業結合審査の対象となり得る。
届出の要否と,市場の競争を実質的に制限するかという実体判断は,別々に確認する。
売上高等の届出要件を満たすかだけで,買収後の取引条件まで適法と判断することはできない。

出典:公取委・企業結合審査の運用指針の「はじめに」,第1及び第5。

第2 供給を止める場合と購入を止める場合

1 投入物閉鎖―競争者の仕入れを難しくする場合

買収後,グループ内の会社を優先して川下の競争者への供給を拒んだり,条件を悪化させたりする場合は,投入物閉鎖が問題になる。
確認するのは,閉鎖を行う能力と,実際にそうする誘因である。

代替仕入先の名前を挙げるだけでは足りない。
必要な仕様を満たすか,必要数量を供給できるか,切替えが容易かを確認する。
実務では,供給開始日,認証・試験の期間,契約上の制約を付けた一覧にすると,単なる生産能力と利用可能な供給を区別できる。
この一覧化は運用指針を踏まえた本稿の実務上の提案である。

供給を減らすと川上会社の利益が減っても,川下会社の販売増加等によってグループ全体の利益が増えることがある。
上流の減収だけで誘因を否定せず,利益率,供給余力,競争者の商品との代替性を確認する。

2 顧客閉鎖―競争者の販売先を失わせる場合

川下会社がグループ外の川上事業者からの購入を拒み,その事業者が販売先を十分に振り替えられなくなる場合は,顧客閉鎖が問題になる。
川下会社の市場での地位に加え,特定顧客向けの設備等があり,ほかへ販売しにくい事情も確認する。

こちらも能力と誘因を分ける。
グループ内への購入切替えで川上会社の稼働率が改善する利益と,仕入れの選択肢や品ぞろえを失う不利益を比較する。
特定の競争者が売上げを失うという事実から,市場全体の競争への影響まで直ちに結論付けず,振替先や参入等による競争圧力も検討する。

出典:同運用指針第5の2(1)~(3)。

第3 競争者の秘密情報を買収計画に含めて点検する

仕入先や販売先には,競争者の価格,数量,仕様,開発計画等が集まる場合がある。
買収によってその情報を入手し,自社に有利に使うことで競争者の競争力が弱まる場合や,協調的行動をとりやすくなる場合も,運用指針の検討対象である。

実務では,情報の種類,取得元,閲覧者,用途を整理し,買収後の報告様式やアクセス権限を検討する。
情報管理策を設けても,供給・購入拒否による閉鎖の問題まで解消したことにはならないため,別に評価する。

出典:同運用指針第5の2(1)イ・(2)イ及び3。

第4 株式の購入代金と付随費用を一括して経費にしない

内国法人が購入した有価証券の取得価額は,法人税法施行令119条1項1号により,購入代価に購入手数料その他購入のために要した費用を加算した金額が原則である。
国税庁の確認表も,これらの費用を取得価額へ算入し,一時の損金にしない点を示している。
一方,取得のための通信費・名義書換料は,取得価額に含めないことができると説明している。

例えば,株式購入代金1億円と,株式購入のための購入手数料300万円を支払う単純な例では,取得価額は1億300万円になる。
手数料を支払ったという事実だけで,当期に300万円を損金算入する扱いにはしない。
この例は説明用であり,個別取引の費用全体を判定したものではない。

調査費,助言報酬等が混在した請求書は,名目だけで全部を取得価額又は当期費用と決めず,契約書・明細・成果物によって役務内容と株式購入との関係を確認する。
購入が中止された場合や組織再編による株式取得には,この購入の例をそのまま当てはめず,別途確認が必要である。

出典:法人税法施行令119条及び国税庁・大規模法人における税務上の要注意項目確認表実頁8・項目41。

第5 弁護士と税理士が共有する資料

契約案,買収前後の取引関係図,市場・調達・販売の資料,供給能力と切替期間の裏付け,情報管理案,報酬契約書と請求明細を,同じ取引計画に対応させて共有する。
計画変更で調達先や取得方法が変わった場合は,競争審査と費用処理の両方を見直す。
これは本稿の実務上の整理であり,税務上の取扱いが独占禁止法上の適法性を保証するという意味ではない。

第6 関連記事と資料の基準日

競争者とのOEM・共同製造は適法かでは共同製造・会社分割を,供給停止・取引妨害への対応では実際の取引妨害への対応を整理している。
令和2年司法試験経済法第1問は,垂直型企業結合の検討例である。
試験の具体的な結論は,別の買収案件の結論を直接決めるものではない。

公取委の掲載指針は令和元年12月17日改定表示の本文を確認した。
令和8年7月17日の意見募集資料は改定案として区別している。
法人税法施行令は令和8年10月1日施行版の119条1項1号,国税庁の確認表は令和8年2月版の上記項目を確認している。