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令和2年司法試験経済法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した30項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

令和2年司法試験経済法第1問を対象に,法務省の出題の趣旨と採点実感から30の評価項目を整理し,5段階の重みを付しました。
本問は,甲部品メーカーX社の全株式を,その需要者である乙機器メーカーY社が取得する垂直型企業結合の問題です。
市場画定の後,投入物閉鎖,顧客閉鎖,情報取得を通じた協調的行動を分け,各社の供給・購入・増産の余力と取引目的を具体的に評価します。
以下の答案は本件事情から競争の実質的制限を否定しますが,公式資料が唯一の結論を指定したものではありません。

項目内容
対象令和2年司法試験・経済法第1問
公式資料出題の趣旨・採点実感とも関連範囲を実読
評価項目30項目・重み合計112(記事独自の整理)
答案改行を除き2065字・上限2500字以内

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価表は,独立した判断又は事実評価ごとに項目を分けています。
必須は答案の基本構造,高評価は個々の事情を用いる場合の分析,許容分岐は理由付けのある構成,負例は避けるべき誤りを示します。
高評価事項の全てを一律の累積必須要件にせず,負例を避けるための否定文を答案に全て書くことも要求しません。
内部評価項目と公開番号は一対一で,公開上の統合はありません。
引用は公式資料の文言で,頁はPDFの先頭を1頁とする実頁です。
「記載なし」は関連範囲を実読した上での表示です。

2 5段階の重み付けの基準

重み5は答案の骨格又は評価の分かれ目,重み4は趣旨が求め採点実感も評価又は不足を指摘する事項,重み3は中核の理由付け,重み2は補強・典型的な誤り,重み1は控えめな言及を目安とします。
重みは記事独自の学習上の優先度です。
公式の配点,得点,難易度,合格可能性を示すものではありません。
本問の基礎規範については,両資料にあるという理由だけで重み4にせず,採点実感の評価上の位置付けを踏まえ重み3とした項目もあります。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

甲部品市場ではX社とA社が大きなシェアを持ち,甲を用いる乙機器市場にはY社,D社,E社,F社等が存在します。
甲は同質である一方,乙には丙装置の仕様に応じた差があり,乙の製造仕様は低い費用と短い期間で転換できます。
X社とY社には製造余力がなく,A社には十分な余力,D社・E社には若干の乙製造余力があります。
E社には将来の少量内製計画があり,F社はX社にとって重要な別商品の取引先でもあります。

2 設問が求めること

全株式取得という計画が,独占禁止法10条1項の競争の実質的制限をもたらすかを検討します。
供給拒絶が影響する乙市場と,購入拒絶が影響する甲市場を取り違えず,協調についても市場ごとに情報経路と阻害事情を分析することが中心です。

第4 評価項目と重み

1 枠組みと市場画定

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1YのX全株式取得に独禁法10条1項を適用する。〔必須〕5実頁27「第10条第1項に違反しないか」実頁19「独占禁止法第10条第1項」
2需要代替性を基本に必要に応じ供給代替性を考慮する市場画定規範を示す。〔必須〕3実頁27「需要の代替性を基本に供給の代替性を考慮」実頁19「必要に応じ供給の代替性」
3同質の甲部品について甲部品製造販売市場を画定する。〔必須〕3実頁27「差別化されていない甲部品」実頁19「需要の代替性」
4乙の仕様差に需要代替性の限界を認め、設備工程・費用・2~3か月の転換から供給代替性で一市場を画定する。〔必須〕4実頁27「仕様にかかわらず広く乙機器」実頁19「「乙機器」については供給の代替性」
5世界での供給者選択・同等価格等を用い甲乙とも世界市場を画定する。〔必須〕3実頁27「いわゆる世界市場」実頁19「世界市場を画定」
6丙原価に占める乙費用がごく僅かなことから丙装置市場への問題となる影響を除外する。〔高評価〕4実頁27「仕入原価の割合がごく僅か」実頁19「仕入原価の割合がごく僅か」
7甲の他用途取引が小さくYが他用途製品を製造しないことから他用途市場の問題となる影響を除外する。〔高評価〕3実頁27「Y社が乙機器以外の製品」記載なし(関連範囲実読済み)
8価格等をある程度自由に左右する状態とその容易な現出という競争実質制限の蓋然性を示す。〔必須〕3実頁27「解釈を論じた上で」実頁19「「こととなる」(蓋然性)」
9垂直型の単独行動・協調的行動を区別し、水平型だけの分析に終始しない。〔必須〕5実頁27「垂直型企業結合であることを前提」実頁19「「水平型企業結合」」

2 単独行動による閉鎖

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
10XからE/F等への供給拒絶が乙市場の競争圧力を減ずる経路を示し、影響市場を甲と取り違えない。〔必須〕5実頁27「乙機器市場において競争を実質的に制限」実頁19「乙機器市場(川下市場)」
11Aの十分な余力とBの若干の余力によるE/Fの代替調達を閉鎖能力の制約として分析する。〔高評価〕4実頁27「の製造余力を有するB社」実頁19「A社及びB社からの供給可能性」
12Eの将来の少量内製を供給拒絶への対抗可能性として時期・規模の限界とともに分析する。〔高評価〕4実頁27「近い将来に甲部品の一部を自製」実頁19「E社による甲部品の内製計画」
13Fの他商品取引の重要性・切替容易性からXの供給拒絶誘因が弱いと分析する。〔高評価〕4実頁28「取引上の立場が強い」実頁19「供給拒絶は想定し難い」
14Xの高稼働率維持の必要から販売を失う供給拒絶の誘因の弱さを分析する。〔高評価〕4実頁28「稼働率の維持が重要」実頁19「製造設備稼働率維持」
15YのA/B/Cからの購入拒絶が甲市場を閉鎖する経路を示し、乙市場と取り違えない。〔必須〕5実頁27「甲部品の購入を拒絶すること」実頁20「甲部品市場」
16D/Eの乙製造余力を甲の購入余力に結び付け、A等の代替販路として分析する。〔高評価〕4実頁28「甲部品の購入余力」実頁20「甲部品の購入余力」
17Yが安定調達のため外部から購入する理由は取得後も残り、購入拒絶誘因が弱いと分析する。〔高評価〕4実頁28「購入を停止することはない」実頁20「それら購入を停止する」

3 協調的行動

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
18Y経由でXと甲競争者、X経由でYと乙競争者が情報を取得し、行動予測や逸脱監視により協調しやすくなる経路を区別する。〔必須〕5実頁28「競争者の価格等の情報を入手」実頁20「製造原価等の情報共有」
19競争者の少なさ・甲の同質性を協調促進事情として評価する。〔高評価〕4実頁28「部品の同質性」実頁20「甲部品の同質性」
20Aの大きな余力と増販利益を協調からの逸脱誘因として分析する。〔高評価〕4実頁28「協調的行動からの逸脱」実頁20「らの逸脱のインセンティブ」
21より良い条件を求めるD/Eの調達行動を協調阻害的な競争圧力として評価する。〔高評価〕4実頁28「より良い取引条件」実頁20「D社やE社からの競争圧力」
22少数競争者とXのE/F向け大量取引から得られる大きな情報量を協調促進事情として評価する。〔高評価〕4実頁28「取引量の大きさに起因する情報量の大きさ」実頁20「取引量の大きさに起因する情報量の大きさ」
23乙の若干の差別化を協調阻害事情として評価し、市場画定における供給代替性と混同しない。〔高評価〕4実頁28「乙機器が差別化されていること」実頁20「乙機器に見られる差別化」
24甲仕入原価が乙製造原価に占める比率の小ささを費用共通化の割合の小ささとして協調阻害方向へ評価する。〔高評価〕4実頁28「費用共通化の割合の小ささ」実頁20「費用共通化の割合の小ささ」
25D/Eの乙製造余力を協調からの逸脱誘因へ結び付けて評価する。〔高評価〕4実頁28「存在することによるD社」実頁20「製造余力が存在すること」
26丙メーカーの強い取引上の立場を乙市場の協調に対する競争圧力として評価する。〔高評価〕4実頁28「丙装置メーカーからの競争圧力」実頁20「丙装置メーカーからの競争圧力」

4 許容される構成と論述上の注意

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
27全考慮要素の列挙を一律の累積必須要件とせず、主要事情から蓋然性を説得的に論じる構成を許容する。〔許容分岐〕2実頁28「全て列挙,検討する必要はない」実頁22「少なくとも主要な論点」
28協調的行動を取得当事会社XとYの間の協調自体が問題となると誤解しない。〔負例〕2記載なし(関連範囲実読済み)実頁20「当事会社間の「協調」」
29競争制限の機序と与件分析を犠牲にして、細かなガイドラインやセーフハーバー知識の記載に偏らない。〔負例〕2実頁27「こうした知識を問うものではない」実頁18「細かな知識を求めるものではない」
30結論自体を固定せず、協調等の蓋然性の有無を事実から説得的に評価する。〔許容分岐〕2実頁28「有無を説得的に論じる」記載なし(関連範囲実読済み)

5 重みの分布

重み1は0項目,重み2は4項目,重み3は5項目,重み4は16項目,重み5は5項目です。
項目数はN=0+4+5+16+5=30,重み合計はW=1×0+2×4+3×5+4×16+5×5=112です。
重み5は番号1・9・10・15・18です。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

試験実施日である令和2年8月12日を基準時として検討した答案です。
独占禁止法10条の公取委掲載条文と,令和元年12月17日改定の表示がある企業結合審査指針及び同日の改定公表資料を参照しました。
法令沿革の全改正についての逐条照合と,関連する原判決の全文確認は未了です。
以下は見出しと末尾の「以上」を含め,改行を除き2065字です。

2 答案

第1 適用条文と判断枠組み
Y社によるX社の全株式取得は,甲部品メーカーとその需要者である乙機器メーカーとの結合関係を形成する垂直型企業結合であり,独占禁止法10条1項により規制される。
各市場の競争単位数は直接減少しないが,単独行動又は競争者との協調的行動によって,価格等の取引条件をある程度自由に左右できる状態が容易に現出するなら,競争を実質的に制限することとなる。

第2 一定の取引分野
一定の取引分野は,需要の代替性を基本に,必要に応じ供給の代替性を考慮し,商品範囲と地理的範囲を画定する。
甲部品はメーカーによる機能・性能・仕様の差がなく,需要の代替性から甲部品製造販売市場を画定できる。乙機器は丙装置の仕様に応じて異なるため,需要の代替性からは市場が細分される可能性がある。しかし,基本設備・工程は共通し,特殊技術は不要で,少額の調整費と2~3か月で他仕様品を製造でき,各拠点でも異仕様品を製造できる。供給の代替性から仕様を通じた一つの乙機器製造販売市場を画定できる。
両商品とも多国に製造・配送拠点があり,輸送費は取引障壁とならず,需要者は世界中から国を問わず発注し,供給者も応需でき,地域間の価格も実質同一である。したがって地理的範囲はいずれも世界市場である。
丙原価に占める乙費用はごく僅かであり,丙装置市場への競争上問題となる影響は考えにくい。甲の交換品・他用途取引も小さく,Y社は他用途製品を製造しないから,主として上記二市場を検討する。

第3 単独行動による競争の実質的制限
1 投入物閉鎖
X社がY社の競争者への甲供給を拒絶し,又は不利な条件を課せば,乙市場の閉鎖性・排他性が生じ得る。甲は不可欠な部品であり,X社は約50%を占め,E社・F社は甲のほとんどをX社から購入している。そのため,供給拒絶により両社の競争力が弱まり,Y社への牽制力が減少する懸念がある。
しかし,甲は同質で,約45%のA社には十分な供給余力があり,B社にも若干の余力があるため,E社・F社は購入先を振り替え得る。E社の内製計画も対抗要因となるが,開始は今後2年以内で少量であるため,現在の十分な代替供給とは評価できない。
また,甲は高額設備を要し,高稼働率の維持が重要なX社にとって,供給拒絶による販売減少は損失となる。Y社にも乙の製造余力がなく,競争者から顧客を奪って増産する利益には限界がある。特にF社は,X社にとって極めて重要な甲以外の商品取引を他社へ容易に移せるから,X社の供給拒絶の誘因は弱い。以上より,投入物閉鎖による乙市場の競争実質制限は認めにくい。
2 顧客閉鎖
Y社がA社・B社・C社からの購入を拒絶してX社に集中すれば,競争者の販売機会・稼働率が低下し,甲市場が閉鎖される懸念がある。甲の他用途の販路も小さい。
もっとも,Y社は従前からX社中心に購入しており,追加的に失われる販路は限定される。A社にはD社という主要顧客があり,D社・E社には乙の製造余力,したがって甲の購入余力がある。入札等で有利な調達を模索する両社へ販売を振り向ける余地がある。Y社の外部調達は安定調達のためであり,この必要性は取得後も残るから,購入を停止する誘因も弱い。X社にも供給余力がない。したがって顧客閉鎖による甲市場の競争実質制限も認めにくい。

第4 協調的行動による競争の実質的制限
1 甲部品市場
Y社の外部調達を通じて,X社がA社等の価格・原価等の情報を得れば,競争者の行動や協調からの逸脱を予測・把握しやすくなり,協調が容易になる。甲はX社・A社に約95%が集中し,同質である点も協調を促進する。
反面,設備を増強したA社には十分な余力がある。高稼働率を維持すべく値下げして増販する利益が大きく,余力のないX社・C社が増産して対抗できる範囲は限られるから,A社には協調から逸脱する誘因がある。D社・E社が入札等で有利な取引条件を求めることも協調を妨げる。これらから,情報取得の可能性だけで協調による市場支配が容易に現出するとはいえない。
2 乙機器市場
X社との取引を通じて,Y社が競争者の甲調達価格・数量等を把握できれば,競争者の行動を予測・監視しやすくなる。競争者数は少なく,X社とE社・F社との取引量が大きいため,得られる情報量も大きい点は協調を促進する。
他方,乙には若干の差別化があり,甲仕入原価が乙製造原価に占める割合は小さく,甲費用を通じた費用共通化の割合も小さい。これらは協調を妨げる。また,若干の余力を有するD社・E社には,値下げ・増販により協調から逸脱する誘因がある。丙装置メーカーの強い取引上の地位も,乙の価格等を自由に左右することを妨げる。以上を総合すると,乙市場でも協調による競争実質制限の蓋然性は低い。

第5 結論
本件事情の下では,単独行動・協調的行動のいずれによっても競争を実質的に制限することとなるとは認め難く,本件計画は10条1項に違反しないと考える。なお,国内売上高等が不明であるため,同条2項の事前届出の要否は確定できない。
以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

答案第1は番号1・8・9,第2は番号2~7,第3の1は番号10~14,第3の2は番号15~17に対応します。
第4は番号18~26を,甲市場と乙市場に分けて論じています。
番号27~30は構成・論述上の留意点として反映しており,個別の否定文を答案へ追加する趣旨ではありません。
供給余力は代替調達の可能性に加え,値下げして増販する逸脱利益にも作用します。
また,乙の仕様差は供給代替性による市場画定と,協調を妨げる差別化という別々の判断で使う必要があります。
甲原価の比率も費用共通化の程度として評価することが重要です。
外部から調達する目的が株式取得後も残るか,供給を止める者自身にどのような販売減少が生じるかまで論じると,抽象的な閉鎖の説明から具体的な誘因の評価へ進めます。

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第7 出典及び確認状態

1 公式資料

法務省・令和2年司法試験論文式試験問題集(選択科目)の経済法第1問は実頁12~13です。
法務省・出題の趣旨は実頁26の経済法見出しから28の第2問直前までを読みました。
法務省・採点実感(選択科目)は実頁18の総論・第1問概要,19~20の第1問,22の第1問に関する2箇所,23の今後の法科大学院に求める事項を読みました。

2 法令

公正取引委員会・関係法令及び企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針を参照しました。
令和元年12月17日の改定公表資料も確認しました。

3 裁判例

原判決全文を独立に確認した裁判例はなく,答案には特定判決の引用を置いていません。

4 確認状態

問題文と公式資料の対象範囲,引用及び答案の字数は保存資料と照合しています。
公式の文章と記事独自の評価項目・重み・結論は区別しています。
前記の法令沿革と原判決の確認未了を留保し,現在の条文・指針の表示だけから試験当時の全法状態を確認済みとはしていません。