第1 この記事の対象と結論
本記事は,令和元年司法試験の国際関係法(公法系)第2問を対象とする。
外交的保護による国家責任追及,反政府勢力の行為帰属と支援国自身の責任,集団的自衛権による空爆の正当化を検討する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象問題 | 法務省の問題PDF・実頁35(https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf#page=35)の第2問 |
| 法の基準時 | 令和元年の試験実施当時。後発の法令・判例を答案へ遡及適用しない。 |
| 出題の趣旨 | 実読済み。PDF実頁39の第2問から40の本問末尾。 |
| 採点実感 | 実読済み。PDF実頁41の科目総論,42の第2問から43の関連総論・末尾。 |
| 主要事項 | 国籍継続・国内救済完了,国際違法行為,実効的支配,不干渉義務,武力攻撃・必要性・均衡性,安保理への報告。 |
| 評価項目 | 公開23項目。重み5は7項目。重みの単純合計90。 |
| 主要判例 | ニカラグア事件(1986年)。行為帰属について公式採点実感はジェノサイド条約適用事件(2007年)も挙げる。 |
| 答案分量 | 2366字(改行を除く)。上限2500字。 |
| 試験後の資料 | 本問の当時法を改変する根拠として用いない。 |
| 確認日 | 令和8年10月19日(日本時間)。 |
B国は,外国籍のみを理由とする上訴拒否等の国際違法行為を指摘し,外交的保護の行使要件を満たす範囲で甲の損害の賠償を請求できる。
B国の反政府勢力支援には独立の国家責任が生じるが,そのことだけで戦線の全活動がB国に帰属するわけではない。
C国は,B国の要請を受け,必要かつ均衡のとれた防衛措置として行う限り,集団的自衛権を主張できる。
評価項目と重みは法務省の資料を基にした本記事独自の分析であり,公式採点基準・配点・得点予測ではない。
第4で評価項目を示し,第5に答案と解説を置く。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
各項目は,答案の記載から判定できる一つの対象として抽出した。
必須・高評価・負例の区分と,重みの大小は別に扱う。
高評価の事項を,全答案の最低限の必須事項へ格上げしない。
「記載なし」は本問の関連範囲を実読した結果を示し,「間接」は包括的な要求から事例に即して具体化したことを示す。
外交的保護の行使要件だけを論じる負例は番号1の裏返しなので,独立の公開項目にせず番号1にまとめた。
実効的支配の不十分な当てはめの負例は番号12に,行為帰属のみで止まる負例は番号13に,それぞれまとめた。
これらの内部追跡単位を含む集計と,公開表の集計は区別する。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | 採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの。 |
| 4 | 出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した)。 |
| 3 | どちらか一方が明示する中核の理由付け。 |
| 2 | 一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項。 |
| 1 | 一方が控えめに触れるだけの事項。 |
段階ごとの件数は割り当てない。
重みは公式の項目別配点ではなく,合計の大小から得点や難易度を推測しない。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
A国ではクーデター後,X民族優遇とB国籍のY民族への経済制限が進められた。
B国籍の甲は外国為替法違反の容疑で逮捕され,罰金と国外退去の判決を受けた。
外国籍を理由に上訴が拒まれ,確定後の救済もなく,財産差押えと退去により経営企業が実質破綻した。
B国政府はA国の反政府勢力であるY民族戦線へ訓練・武器・大規模な資金を供与した。
A国軍はB国の国境の町を攻撃して多数の住民を死傷させ,B国の要請に応じたC国は,攻撃根拠地であるA国軍基地を空爆した。
甲の無実は甲の主張であり,確定事実とは分ける。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・仮定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | B国からA国への主張 | 甲はB国籍。上訴不可・確定後救済なし。人権・投資条約の加入は仮定しない。 | 国際違法行為と外交的保護の行使要件を結び,合理的因果関係のある損害の賠償まで。 |
| 2 | Y民族戦線の活動に関するB国の責任 | 支援と具体的作戦の指揮支配を同一視しない。 | 戦線の行為帰属とB国政府自身の支援の違法性を別々に判断。 |
| 3 | C国の立場から空爆を正当化 | C国は直接攻撃を受けていない。3国とも国連加盟国。 | Bへの武力攻撃,Bの認識・要請,必要性・均衡性,安保理の制約を満たす集団的自衛。 |
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 【必須】行使要件の列挙だけで止めず,外国籍のみを理由とする上訴拒否をA国の国際違法行為として評価する。 | 5 | PDF39頁・第2問・設問1。国際違法行為があったこと。 | PDF42頁・第2問・設問1。国際違法行為があること。 |
| 2 | 【必須】外交的保護を国籍国による相手国の国家責任追及として説明する。 | 3 | PDF39頁・第2問・設問1。外交的保護の権利を行使して。 | PDF42頁・第2問・設問1。国家責任を追及し。 |
| 3 | 【必須】国籍継続の原則について損害時から請求開始時までという両端を示す。 | 4 | PDF39頁・第2問・設問1。国籍を継続的に有していること。 | PDF42頁・第2問・設問1。国籍継続の原則。 |
| 4 | 【必須】甲のB国籍とその継続を事例に当てはめる。 | 3 | 間接:PDF40頁・第2問・設問1。これらの要件が満たされているか。 | 間接:PDF42頁・第2問・設問1。事例への当てはめ。 |
| 5 | 【必須】領域国で利用可能な救済を尽くす国内救済完了の原則を示す。 | 4 | PDF40頁・第2問・設問1。国内救済完了の原則。 | PDF42頁・第2問・設問1。国内救済完了の原則。 |
| 6 | 【必須】上訴拒否・判決確定・確定後救済なしを使い,国内救済が残らないと論証する。 | 4 | 間接:PDF40頁・第2問・設問1。問題文の記述に即して。 | 間接:PDF42頁・第2問・設問1。事例への当てはめ。 |
| 7 | 【高評価】A国の措置と甲の事業破綻による損害の合理的な因果関係を具体的に評価する。 | 3 | PDF40頁・第2問・設問1。合理的な因果関係。 | 関連範囲に記載なし。 |
| 8 | 【高評価】甲が被った損害についてB国が金銭賠償を請求し得ると結論付ける。 | 2 | PDF40頁・第2問・設問1。金銭賠償の支払。 | 関連範囲に記載なし。 |
2 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 9 | 【必須】国家責任の成立を行為帰属と国際義務違反の二要件で整理する。 | 5 | PDF40頁・第2問・設問2。自国に帰属する行為が国際法上の義務に違反。 | PDF42頁・第2問・設問2。行為の国家への帰属と国際義務の違反。 |
| 10 | 【必須】非国家主体の行為は原則として国家に帰属しないと説明する。 | 3 | PDF40頁・第2問・設問2。国家に帰属しない。 | PDF42頁・第2問・設問2。非国家主体の行為の国家。 |
| 11 | 【必須】ICJの実効的支配の基準を具体的作戦との関係で説明する。 | 5 | PDF40頁・第2問・設問2。実効的支配の有無。 | PDF42頁・第2問・設問2。実効的支配という基準。 |
| 12 | 【必須】訓練・武器・大規模財政支援と個別作戦の支配を区別し,単なる援助から全活動を一括帰属させない。 | 4 | 間接:PDF40頁・第2問・設問2。実効的支配の有無。 | PDF42頁・第2問・設問2。不正確あるいは不十分。 |
| 13 | 【必須】戦線の行為の帰属のみで止めず,帰属を否定した場合もB政府自身の支援行為の責任を別に論じる。 | 5 | PDF40頁・第2問・設問2。その支援行為についての国家責任。 | PDF42頁・第2問・設問2。支援に関するB国の国家責任。 |
| 14 | 【必須】武装反政府活動へのB国の支援をA国への不干渉義務違反として論証する。 | 5 | 間接:PDF40頁・第2問・設問2。ニカラグア事件判決。 | PDF42頁・第2問・設問2。内政不干渉義務に違反。 |
3 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 15 | 【必須】空爆が武力行使禁止に原則抵触し,自衛権をその例外として位置付ける。 | 4 | PDF40頁・第2問・設問3。第51条に規定。 | PDF42頁・第2問・設問3。武力による威嚇と武力の行使の禁止。 |
| 16 | 【必須】A国の対B攻撃を規模・効果と与件に即して武力攻撃の発生と評価する。 | 5 | PDF40頁・第2問・設問3。武力攻撃の「発生」。 | PDF42頁・第2問・設問3。自衛権の行使の要件。 |
| 17 | 【必須】必要性を他の合理的手段不存在と定義し,基地空爆による攻撃排除に当てはめる。 | 4 | 間接:PDF40頁・第2問・設問3。他の合理的手段が存在しない。 | 間接:PDF43頁・第2問・設問3。行使の要件が必ずしも正確。 |
| 18 | 【必須】均衡性・比例性を発生している武力攻撃と措置の釣合いとして,基地・規模・目的に即して評価する。 | 4 | 間接:PDF40頁・第2問・設問3。均衡性(比例性)。 | 間接:PDF43頁・第2問・設問3。行使の要件が必ずしも正確。 |
| 19 | 【必須】直接攻撃を受けていないC国の行為を集団的自衛権として構成する。 | 5 | PDF40頁・第2問・設問3。集団的自衛権の行使の要件。 | PDF42頁・第2問・設問3。集団的自衛権の行使の要件。 |
| 20 | 【必須】被攻撃国の認識・援助要請という追加要件を示し,B国の介入要請に当てはめる。 | 3 | 間接:PDF40頁・第2問・設問3。ニカラグア事件判決。 | 間接:PDF43頁・第2問・設問3。それらを事例に当てはめて。 |
| 21 | 【高評価】安保理が必要措置を採るまでという自衛権の時間的限界を示す。 | 4 | PDF40頁・第2問・設問3。必要な措置を採るまでの間。 | PDF43頁・第2問・設問3。必要な措置を採るまでの間。 |
| 22 | 【高評価】自衛措置を直ちに安保理へ報告する義務を示す。 | 4 | PDF40頁・第2問・設問3。直ちに安全保障理事会に報告。 | PDF43頁・第2問・設問3。安全保障理事会への報告義務。 |
| 23 | 【負例】武力を用いるC国の空爆を対抗措置として正当化しない。 | 2 | 関連範囲に記載なし。 | PDF43頁・第2問・設問3。対抗措置には武力を用いた措置が含まれない。 |
4 重みの分布
重み5は7項目,重み4は9項目,重み3は5項目,重み2は2項目,重み1は0項目である。
総項目数は23,重みの単純合計は90である。
重み5は,番号1・9・11・13・14・16・19である。
番号1はA国の国際違法行為,番号9は国家責任の二要件,番号11は実効的支配,番号13・14は支援自身の責任と不干渉義務,番号16・19は集団的自衛の入口を構成する。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
試験実施当時の法令・判例を基準とし,設問1・2・3の順に論じる。
答案は改行を除いて2366字であり,見出しと「以上」を含めて計数している。
必要性・均衡性を判断する資料が足りない部分は,C国の主張としての条件を保つ。
2 答案
1 設問1
(1)B国は,甲に対するA国の国際違法行為について,外交的保護権を行使して国家責任を追及し,損害賠償等を請求できる。
領域国は外国人の経済活動や在留を規律できるが,外国人待遇に関する慣習国際法上の最低基準を守らなければならない。
国内法上判決が確定しても,国際法上の適法性が確定するわけではない。
甲の無実はその主張にとどまるから,逮捕や罰金をそれだけで違法とはいえない。
しかし,B国籍だけを理由に利用可能な上訴から排除したことは,合理的理由を欠く差別的な裁判拒否として国際義務違反となる。
X民族優遇やB国籍のY民族への経済制限も,措置の恣意性を裏付ける。
裁判所の独立は国際的な行為帰属を妨げず,当局の逮捕・執行と裁判所の判決はいずれもA国の行為である。
(2)外交的保護は,自国民への国際違法行為を根拠に,国籍国が相手国の国家責任を追及する制度である。
国籍継続と国内救済完了はその行使要件であり,これらだけを満たしても違法行為の論証に代わらない。
原則として,甲が損害発生時からB国の請求開始時までB国籍を継続して有する必要がある。
甲はB国籍であり,国籍変更の事情は示されていないから,この要件を満たすと考えられる。
A国への長期居住はB国籍を失わせず,Y民族同士という関係自体が保護適格を生むものでもない。
また,領域国に自ら救済する機会を与えるため,利用可能な国内救済を尽くす必要がある。
甲には上訴が認められず,確定後の救済も残されていない。
実効的な救済のない手続まで行わせる理由はなく,B国による請求は国内救済未完了を理由に妨げられない。
(3)違法行為と損害には合理的な因果関係が必要である。
本件では,甲の財産の差押えが事業の財産的基礎を奪い,国外退去がA国内での事業遂行を妨げ,企業の実質破綻に至ったと評価できる。
B国は,これらによって甲自身に生じた損害について金銭賠償を請求できる。
損害額は措置に起因する範囲に限られ,企業が別法人である場合にはその損害と甲個人の損害を混同しない。
返還等で回復できる財産については原状回復も求め得る。
2 設問2
(1)国家責任には,行為の国家への帰属と国際義務違反を要する。
Y民族戦線はB国の機関ではなく,その行為は原則としてB国に帰属しない。
ただし,B国の指示・指揮又は実効的支配の下で行われた行為は,B国に帰属し得る。
ニカラグア事件判決の実効的支配の基準では,一般的な援助・依存関係では足りず,問題となる行為が行われた具体的軍事作戦に対する支配を要する。
B国は訓練,武器及び大規模な資金を供与し,戦線の地域支配を可能にしている。
しかし,軍事活動を可能にする援助と,個別作戦の目標・方法を決める指揮支配とは異なる。
後者を認める事実は示されていないから,本件の支援のみで戦線の全活動をB国に帰属させることはできない。
個別行為への実効的支配が立証されれば,その行為の国際義務違反について責任を負う。
(2)帰属を否定しても,B国自身の支援行為の責任は残る。
慣習国際法上,他国が自由に決定すべき政治体制や政府の選択について,強制的に介入することは許されない。
A国政府に武力で対抗する戦線への訓練・武器・大規模財政支援は,その軍事力と領域支配を支え,A国の政治的選択を軍事的に左右するもので,不干渉義務に違反する。
Y民族への親近感はこれを正当化しない。
訓練・武器供与は武力行使禁止にも抵触するが,単なる資金供与を当然に武力行使とすることはできない。
B国政府自身の支援はB国に帰属するため,少なくとも違法な干渉について国家責任が成立する。
私人であるB国住民のかくまい・参戦は,B国籍というだけでB国に帰属するわけではない。
3 設問3
(1)C国の空爆は,A国に対する武力行使であり,原則として国連憲章2条4項に反する。
C国は,その例外である51条及び慣習国際法上の集団的自衛権を根拠に正当化を主張する。
前提となるのはB国への武力攻撃の発生である。
A国正規軍によるB国内の複数の町への攻撃は,多数の一般住民を死傷させており,規模・効果から重大な武力攻撃に当たる。
これに対し,B国の先行支援が違法でも,武器・訓練等の援助は直ちに武力攻撃に当たらず,住民の参戦も当然にはB国に帰属しない。
本件の事情からA国の対B攻撃を適法な自衛とすることはできない。
違法干渉への対抗措置としても武力行使は許されない。
(2)集団的自衛には,被攻撃国が武力攻撃を受けたと認め,援助を要請することが必要である。
B国はA国による武力攻撃に関してC国へ軍事介入を要請しており,この要件を満たす。
C国自身への攻撃や事前の同盟は必要ないから,遠隔地の友好国でも行使できる。
ただし,B国の要請だけでA国への空爆が許されるのではなく,自衛の他の要件も必要となる。
(3)必要性とは,採られる措置以外に攻撃を排除する他の合理的手段がないことである。
C国は,町への攻撃が継続する中,その根拠地である基地の無力化は攻撃の実力的基盤を除く措置であり,より限定的な手段で実効的な防御を実現できない限り必要性を満たすと主張できる。
均衡性は,発生している武力攻撃と対処措置との釣合いを求める。
空爆対象を攻撃根拠地の軍事基地に絞ることは,攻撃排除目的との対応を示す。
もっとも,軍事基地というだけで十分ではなく,空爆の規模・態様もB国防衛の目的に照らし過大であってはならない。
C国はその範囲の空爆として正当化する。
さらに,C国は措置を直ちに安保理へ報告し,安保理が国際の平和及び安全の維持に必要な措置を採るまでという時間的限界にも従わなければならない。
安保理の権限を妨げず,必要かつ均衡のとれた防衛措置として行う限り,C国は集団的自衛権による正当化を主張できる。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
| 番号 | 答案の箇所 | 対応する論証 |
|---|---|---|
| 1 | 1(1) | 合理的理由を欠く差別的な裁判拒否 |
| 2 | 1(2) | 国籍国が相手国の国家責任を追及 |
| 3 | 1(2) | 損害発生時からB国の請求開始時まで |
| 4 | 1(2) | 国籍変更の事情は示されていない |
| 5 | 1(2) | 利用可能な国内救済を尽くす必要 |
| 6 | 1(2) | 確定後の救済も残されていない |
| 7 | 1(3) | 財産の差押えが事業の財産的基礎を奪い |
| 8 | 1(3) | 甲自身に生じた損害について金銭賠償を請求 |
| 9 | 2(1) | 行為の国家への帰属と国際義務違反を要する |
| 10 | 2(2) | その行為は原則としてB国に帰属しない |
| 11 | 2(2) | 具体的軍事作戦に対する支配 |
| 12 | 2(2) | 個別作戦の目標・方法を決める指揮支配とは異なる |
| 13 | 2(1)・(2) | 帰属を否定しても,B国自身の支援行為の責任は残る |
| 14 | 2(1) | A国の政治的選択を軍事的に左右する |
| 15 | 3(1) | 原則として国連憲章2条4項に反する |
| 16 | 3(1) | 規模・効果から重大な武力攻撃に当たる |
| 17 | 3(3) | 他の合理的手段がないこと |
| 18 | 3(3) | 発生している武力攻撃と対処措置との釣合い |
| 19 | 3(1)・(2) | 集団的自衛権を根拠に正当化を主張 |
| 20 | 3(2) | 被攻撃国が武力攻撃を受けたと認め,援助を要請 |
| 21 | 3(3) | 必要な措置を採るまでという時間的限界 |
| 22 | 3(3) | 直ちに安保理へ報告 |
| 23 | 3(1) | 対抗措置としても武力行使は許されない |
(2) 外交的保護と国際違法行為
国籍継続と国内救済完了は,B国が保護権を行使するための前提である。
それだけでA国に国際違法行為があるとの説明にはならないため,答案は先に上訴拒否の差別性を指摘する。
さらに,財産差押えと退去が事業の財産的基礎と遂行を損なうという経路を述べ,甲の損害への合理的因果関係を評価した。
(3) 行為帰属と支援自身の責任
訓練・武器・資金が活動を可能にすることと,具体的作戦を指揮・支配することは異なる。
実効的支配の当てはめを援助の列挙だけで終えず,目標・方法の決定との違いを示した。
戦線の全活動の帰属を認められなくても,B政府による強制的支援の責任は残る。
国連憲章2条7項をそのまま国家間の不干渉義務の条文とせず,慣習国際法に基礎を置く。
(4) 集団的自衛と空爆の限界
C国が攻撃されていないことは,集団的自衛権を構成する理由である。
B国の要請だけでA国領域への空爆が適法になるわけではなく,武力攻撃の発生と必要性・均衡性を別に検討する。
軍事基地であることは目的と標的の対応を示すが,合理的な代替手段の有無や空爆規模の審査を代替しない。
報告義務と安保理の必要措置までという制限は,採点実感が評価対象とした事項である。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
本問は空爆の規模や他の対処手段を細かく示していないため,必要性・均衡性の当てはめには条件が残る。
具体的な事実を創作して無条件の適法結論にしない。
企業が別法人である場合の損害帰属,私人の越境活動に対する注意義務,特定の人権・投資条約による救済は,本問の主ルートから区別する。
後二者の詳細や国際裁判の管轄は答案の対象に広げていない。
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本問は,外交的保護・国家責任・自衛権の三領域を横断する問題である。
2 同じ科目の別の年度の記事
他年度の問題と比較するときは,条約上の要件と慣習国際法上の要件の区別,及び各試験の基準時に注意する。
3 本問の論点に関連する資料
外交的保護,国家責任及び自衛権の出典は,次の第7にまとめた。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
① 令和元年司法試験論文式試験問題(選択科目)(https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf#page=35):PDF実頁35の第2問。
② 令和元年司法試験論文式試験問題出題趣旨(https://www.moj.go.jp/content/001305186.pdf#page=39):PDF実頁39の第2問から40の本問末尾。
③ 令和元年司法試験の採点実感(https://www.moj.go.jp/content/001308864.pdf#page=41):PDF実頁41の科目総論,42の第2問から43の関連総論・末尾。
2 法令・法典化資料
① 国連憲章(https://treaties.un.org/doc/publication/ctc/uncharter.pdf):2条4項・51条。
② 国際法委員会・国家責任条文(2001年)(https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/draft_articles/9_6_2001.pdf):2~4条,8条,21条,30・31条,34~36条,50条。
③ 国際法委員会・外交的保護条文(2006年)(https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/draft_articles/9_8_2006.pdf):1・3~5条,9~12条,14・15条。
国際法委員会の条文は,条約として直接適用するのではなく,慣習国際法の法典化・整理を参照するために用いる。
各条文全体を一括して慣習法と断定するものではない。
3 裁判例
① ニカラグア事件のICJ公式事件ページ(https://www.icj-cij.org/case/70):1986年6月27日本案判決。
② 国家責任条文注釈(https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/commentaries/9_6_2001.pdf):PDF実頁18~19の8条注釈,ニカラグア判決109・115段落の引用部分。
4 確認状態
問題・出題の趣旨・採点実感はいずれも本問の上記関連範囲を実読した。
評価単位と1~5の重みは記事独自の分析である。
判例については,公式試験資料の紹介と国際法委員会注釈中の引用の確認範囲によっており,判決原文全体の独立照合には至っていない。
公式資料の記載,独自の推論及び一次資料による確認を区別する。