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国家責任とは―行為の帰属・国際義務違反・賠償と対抗措置(AI作成)

第1 国家責任が問題となる場面

国家責任とは,国家の国際違法行為について生ずる国際法上の責任である。
日本の国家賠償法に基づく損害賠償請求や,個人の国際刑事責任とは,根拠・当事者・手続が異なる。
外国で受けた被害についても,国際法上の義務違反,国内裁判での請求権,国際裁判所の管轄権を順に分けて検討する必要がある。

国連国際法委員会が2001年に採択した国家責任条文は,その一般的な検討枠組みを示す重要な資料である。
ただし,条文全体が条約として成立したものではなく,すべての規定を一律に慣習国際法と断定することはできない。
具体的な事件では,個々の規定に関する裁判例・国家実行と,適用される条約の特別規則を確認する。

第2 行為の帰属と国際義務違反を分ける

国家責任条文2条は,作為又は不作為が国際法上その国家に帰属することと,その国家の国際義務への違反を構成することを基本要素とする。
国内法上は適法な行為でも,国際法上の評価が同じになるとは限らない(3条)。
また,12条・13条に従い,違反を主張する義務の内容と,問題の行為時にその国がその義務に拘束されていたかを特定する必要がある。

例えば,外国企業の行為で損害を受けたとき,損害があるという事情だけでは国家責任を導けない。
その企業の行為自体を国家に帰属させる根拠があるのか,企業の行為とは別に国家自身が負う保護義務への違反があるのかを検討する。
損害・因果関係がどの段階で必要となるかも,問題となる義務と求める救済によって整理する。

第3 国家機関・公的権限を担う団体・私人の行為

1 国家機関と権限を超えた行為

4条は,立法・行政・司法を含む国家機関の行為を対象とし,中央政府の機関か地方的な機関かを問わない。
5条は,国家機関ではない団体等でも,国内法により政府権限の一部を行使する権限を付与され,具体的にその資格で行動する場合を扱う。
7条では,国家機関等がその資格で行動したときは,権限を超え,指示に反したことだけでは帰属を否定しない。

2 私人への指示・指揮・統制と国家による採用

8条は,具体的な行為について国家の指示・指揮・統制の下で行動した私人等を扱う。
資金供与,国有という形式,政府との親密さだけから,その者のすべての行為が当然に国家へ帰属するわけではない。
どの行為について,誰が,どのような指示等をしたかを証拠で特定することが重要である。

11条は,他の規定によって帰属しない行為でも,国家が自己の行為として承認し採用した場合を扱う。
単なる支持や一般的な声明と,行為を自己のものとして承認・採用することは区別して検討する。

第4 国家自身の不作為と他国への援助

私人による加害行為が国家へ帰属しなくても,国家自身が負う警備・保護等の義務に違反したかという問題は残る。
この場合に必要なのは,まず保護義務の根拠と内容を確認することであり,私人の加害結果だけから国家の無過失責任を導くことではない。
私人の行為の帰属と,国家自身の不作為責任を別々に検討する。

16条は,他国の国際違法行為を援助・支援する国家の責任を扱い,事情の認識や,援助国自身が行えば国際違法となる行為かなどの条件を置く。
援助先の行為の帰属を論じる8条と,援助する国家自身の責任を論じる16条は,同じ問題ではない。
武器供与等については,国家責任の一般規則に加え,武力行使禁止,不干渉原則その他の個別の義務を特定する必要がある。

第5 違法性阻却事由とその限界

20~25条は,同意,自衛,対抗措置,不可抗力,遭難,緊急避難をそれぞれ異なる要件で扱う。
「緊急だった」「国内事情があった」という説明だけで,当然に国際義務違反が正当化されるわけではない。
特に緊急避難については,重大かつ急迫した危険から不可欠な利益を守る唯一の方法か,他国等の不可欠な利益を重大に害しないかなど,25条の厳格な条件を検討する。

26条は,強行規範から生ずる義務への違反について留保を置く。
また,27条により,違法性阻却事由を援用できることと,事情がなくなった後の履行や物的損失の補償の問題がすべて消えることを同一視してはならない。

第6 停止・賠償と,責任を追及できる主体

1 違反の停止と損害の回復

30条は,継続する違反の停止と,事情に応じた再発防止の保証を扱う。
31条・34~37条は,損害の完全な賠償について,原状回復,金銭賠償,満足という形態を整理する。
原状回復には不能や不均衡に関する条件があり,金銭賠償にも損害・因果関係等の立証が必要となる。

2 責任の成立と裁判手続は別である

42条は被害国による責任追及を,48条は一定の集団的利益又は国際社会全体に対する義務について被害国以外の国が行う責任追及を扱う。
これらの規定があることだけで,国際司法裁判所に一方的に提訴できるわけではない。
裁判所の管轄権,請求の国籍,国内的救済手段の完了等は,それぞれ適用される規則に従って検討する。

個人が外国で被害を受けた場合の外交的保護についても,国際法上の責任追及と,日本国内で国家賠償等を求めるための要件は区別する。
国家責任の一般論から,国があらゆる個人被害について外交的保護を行う国内法上の義務を直ちに導くことはできない。

第7 対抗措置は無制限な報復ではない

49条以下の対抗措置は,責任国に義務の履行を促すための措置として整理されている。
単なる懲罰や制裁という呼び方だけで適法性が決まるものではない。
武力行使禁止等の維持すべき義務,外交・領事上の不可侵,相当性,事前の履行要求・通知・交渉の申出,終了条件等を検討する(50~53条)。

被害国以外の国による措置について,54条は一定の適法な措置を妨げないという留保を置く。
これを,被害国以外の国が自由に対抗措置を採れるという包括的な許可規定として扱うことはできない。
特別の条約による紛争処理・責任制度がある場合には,55条の特別法との関係も確認する。

第8 関連記事と一次資料

個人被害に関する責任追及は外交的保護の解説を,私人の行為と支援国の責任の区別はニカラグア事件の解説を参照されたい。
日本の裁判所で外国国家を被告とする場合には,国家免除・送達・強制執行の解説に示す別の検討が必要となる。

主な一次資料は,国際法委員会2001年国家責任条文と同年の公式コメンタリーである。
条文の記載,コメンタリーによる説明,個別規定の慣習国際法性及び具体的事実への評価を区別して読む必要がある。