メインコンテンツへスキップ
       

国際売買の品質トラブルとウィーン売買条約―準拠法,見本,検査・通知と損害賠償(AI作成)

第1 品質問題が起きたら最初に確認すること

海外から届いた商品が見本と違う場合,直ちに日本民法の契約不適合責任だけで処理してはならない。
契約に適用される法,ウィーン売買条約(CISG)の適用,裁判又は仲裁の場所を分け,検査・通知の期限と証拠保全を先に確認する。

本記事は事業者間の国際的な物品売買を主な対象とする。
消費者向け売買,役務が主となる契約,所有権の移転効果,身体損害などは,条約の適用範囲を別に確認する必要がある(CISG2条~5条)。
確認日は令和8年10月18日である。

第2 準拠法とCISG,紛争解決条項を分ける

1 日本法を選択しても条約の排除とは限らない

CISG1条1項は,異なる締約国に営業所を有する当事者間の売買のほか,国際私法の規則によって締約国法が適用される場合を定める。
後者では,相手方の営業所が非締約国にあっても条約の適用が問題となる。
実際には,契約に関係する営業所,契約時期,適用除外及び関係国の宣言・留保を確認する。

日本の裁判所で契約準拠法を判断する場合には,通則法7条の当事者の選択,選択がない場合には8条の最密接関係地法を検討する。
外国の裁判所でも同じ抵触規則が使われるとは限らない。

CISG6条は当事者による条約の適用排除等を認める。
「日本法を準拠法とする」という条項だけから当然にCISGを排除したとは扱わず,排除の合意があるかを契約全体から確かめる。
条約を排除するかどうかは,検査・通知,救済及び相手方との交渉条件を比較して決める。

2 日本で訴えられるかは別の問題である

準拠法の合意と,裁判管轄の合意は役割が異なる。
日本の裁判所の管轄については,民事訴訟法3条の2以下及び3条の7の管轄合意等を確認する。
仲裁条項がある場合には,その対象,仲裁地,機関及び手続も先に確かめる。

日本に相手方の財産がある場合も,金銭請求について差押え可能な被告財産があるか,その価額が著しく低くないかを3条の3第3号に即して検討する。
同法3条の9の特別の事情による却下と,判決後の回収可能性も別に確認し,国内資産の存在だけで解決したと考えない。

第3 合意した品質と見本を証拠で示す

1 通常の用途,特定の用途,見本を区別する

CISG35条1項は契約に定める数量・品質・種類等に適合した物品の引渡しを求める。
同条2項は,別段の合意がない場合について,通常の目的への適合,売主に知らされた特定の目的への適合,売主が示した見本又はひな形と同じ品質等を分けて定める。

特定の目的への適合には,売主の技能・判断への依存に関するただし書がある。
「業界では使える」と「買主の製造工程で使える」,「売主が示した見本と一致する」は別の確認事項である。
見本だけを提出して結論を出さず,合意の内容と,どの基準に照らして不適合とするのかを対応させる。

2 比較可能な状態で資料を残す

見本の提供者,品番・ロット,受領日,交渉メール,承認した仕様書の版を結び付ける。
量産品との比較では,採取方法,検体の保管状況,試験条件,測定値,許容差及び測定者を残す。
買主が独自に追加した条件と,契約時に売主へ伝わっていた条件を混ぜない。

これらは条約が一律に指定する帳票ではなく,品質の合意と実際の不適合を説明するための資料整理である。
現物を廃棄・加工・返送する前に,安全確保の必要性も踏まえ,写真,検体及び第三者試験を残せるか検討する。
危険移転時に存在した不適合かという36条の問題もあるため,輸送・保管中の状態の記録も確保する。

第4 検査と不適合通知の期限を別々に管理する

1 2年以内ならよいという意味ではない

CISG38条1項は,状況に応じて実行可能な限り短い期間内の検査を求める。
運送を伴う場合等の検査延期は同条2項・3項による。
検査担当者,試験に必要な日数及び異常発見時の連絡先を,納品前から決めておく。

39条1項は,不適合を発見し,又は発見すべきであった時から合理的な期間内に,不適合の性質を特定した通知を求める。
同条2項には現実の交付から2年という外側の制限があり,契約上の保証期間との関係にも例外がある。
2年という数字は,発見後の通知を2年間待ってよいという意味ではない。

日本民法566条の「知った時から1年」を,CISGが適用される売買へそのまま流用しない。
合理的な期間は商品・不適合等の事情に左右されるので,一律の日数を記事や社内一覧だけで確定しない。
通知日,通知内容,送付先及び送信・受領の記録を残す。

2 例外の射程と他の期間制限を確認する

40条は,売主が知り,又は知らないことはあり得なかった事実を明らかにしなかった場合について,売主が38条・39条に依拠することを制限する。
44条は,通知しなかった合理的な理由がある場合の代金減額及び一定の損害賠償を定めるが,対象は39条1項等であり,逸失利益も除かれている。
これらを全ての通知遅れが救済される一般条項とは扱わない。

検査・通知のほか,契約の解除等に関する個別の要件・期間と,適用法による消滅時効を別に管理する。
社内の対応期限には余裕を設け,法律上の最終期限と社内アラートを区別する。

第5 救済方法と損害額を対応させる

1 損害賠償と解除を同じ条件で扱わない

CISG45条は買主の救済と損害賠償を定める。
修補・代替品の引渡し,代金減額,解除及び損害賠償は,それぞれの要件を確認する必要がある。
品質不良があれば直ちに全部解除,又は代金全額の支払拒絶ができると決め付けない。

74条の損害賠償では,契約違反との関係に加え,契約締結時の予見可能性による限度を確認する。
損害賠償一般について解除が常に必要なわけではないが,75条の代替取引の価格差を使うには,解除及び合理的な方法・期間等の要件がある。
請求する救済の根拠と計算方法を混同しない。

2 損害の拡大を防いだ経緯も残す

77条は損失を軽減するための合理的な措置を求める。
代替調達の見積り,修補の可否,使用停止の範囲,転売・廃棄の必要性及び追加費用を,判断時点の資料とともに記録する。
最終的に高い費用がかかったという事実だけでなく,他の方法を採れたかを説明できるようにする。

通知に記載した不適合,修補等の要求,解除の意思表示,損害額の計算及び残代金の精算を分けて整理する。
相殺で処理する場合も,帳簿上の差引きだけで相殺が成立したとせず,適用される法と要件を確認する。

第6 輸入消費税と和解金は別に判断する

1 外国企業との売買というだけでは税区分は決まらない

契約の準拠法,決済通貨又は相手方の国籍だけで,日本の消費税の内外判定は決まらない。
物品の譲渡については,消費税法4条3項1号の原則的な資産所在地の基準等を確認する。
これとは別に,保税地域から引き取られる外国貨物には輸入に係る消費税の問題がある(同条2項・5条2項)。

国税庁No.6563は,輸入では無償取引にも課税され,免税事業者や事業者でない個人も納税義務者となり得ると説明する。
売買代金を減額したことから,既に納めた輸入消費税の額も同額だけ当然に減るとは扱わない。
返品・代替品の通関や納付額の訂正・還付の可否は,輸入申告等の資料に即して税関・税務の手続を確認する。

2 賠償,値引き,費用補填を合意書で分ける

品質紛争の精算では,代金の返還・値引き,修補費,検査費,運賃,逸失利益等を,実際の請求原因と合意内容に対応させる。
国税庁No.6257は,損害賠償金という名称ではなく実質による消費税の判定を求める。
個人事業者の必要経費を補填する賠償金には,所得税の総収入金額への算入が問題となる(No.2201)。
消費税の対象外であることと,所得税でも非課税であることを同じ意味にしない。

弁護士は品質の合意,不適合,通知,権利の内容及び和解の内訳を整理し,税理士へ契約書,インボイス,輸入許可書,納税・入金記録及び費用明細を渡す。
税理士は元の取引と申告,受領者の属性,金額の実質及び対応する費用を照合する。
受領する賠償金の税区分と,回収のための弁護士費用等の仕入税額控除も別問題である。
国税庁の質疑応答事例は,課税対象外の賠償金を得るための課税仕入れを,個別対応方式では共通して要するものとする取扱いを示している。

第7 関連記事

海外取引の未回収代金―準拠法・時効・仲裁と貸倒処理を分けて確認する(AI作成):https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/10/kaigai-torihiki-mikaishu-jikou-chusai-kashidaore/
契約不適合責任の期間制限―1年以内の通知,5年・10年の消滅時効及び旧瑕疵担保責任の判例(AI作成):https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/19/keiyaku-futekigou-kikan-seigen/
契約書審査の進め方とチェックポイント―取引の把握,修正の優先順位及び締結前の確認(AI作成):https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/08/keiyakusho-shinsa-susumekata-checkpoint/
締結後に使う「契約書の取扱説明書」の作り方―TODO,禁止事項,期限,担当者,原本リンク及び履行証拠(AI作成):https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/08/keiyakusho-toriatsukai-setsumeisho-rikou-kanri/
示談金・解決金・和解金に税金はかかるか―名目ではなく補填対象・所得区分・権利確定時期で判断する(AI作成):https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/25/jidan-kaiketsukin-wakaikin-zeikin/
消費税とは―税率・免税事業者・簡易課税・インボイスの基本(AI作成):https://yamanaka-bengoshi.jp/2023/01/01/shouhize-memo/
令和2年司法試験国際関係法(私法系)第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した27項目と5段階の重み付け(AI作成):https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/18/r2-shihoushiken-kokusai-shihou2-mohan-kaitou-hyouka-koumoku/

第8 根拠資料

外務省・CISG本文:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty169_5.pdf
1条~6条はPDF4~6頁,35条・36条は19~20頁,38条~40条は21~22頁,44条・45条は24頁,74条~77条は40~41頁を参照した。

e-Gov・法の適用に関する通則法:https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000078
7条・8条を参照した。
e-Gov・民事訴訟法:https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
3条の3第3号・3条の7・3条の9を参照した。
e-Gov・消費税法:https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108
4条・5条を参照した。

国税庁No.6563・輸入取引:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6563.htm
国税庁No.6257・損害賠償金:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6257.htm
国税庁No.2201・個人事業者の必要経費を補填する損害賠償金:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2201.htm
国税庁・資産の譲渡等に該当しない取引のために要する課税仕入れの税額控除:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/19/12.htm
タックスアンサー3件は令和8年4月1日現在,質疑応答事例は令和7年8月1日現在の法令等に基づく公表資料である。
個別の国の留保・裁判例及び具体的な申告額を本記事で一律に示すものではない。