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法定審理期間訴訟手続とは―6か月の審理・利用要件・通常訴訟への移行と異議申立て(AI作成)

第1 法定審理期間訴訟手続とは何か

1 審理と判決の予定を法律で定める手続

法定審理期間訴訟手続は,当事者双方の申出又は一方の申出に対する相手方の同意を前提に,裁判所がこの手続による審理・裁判をする旨を決定し,法律で定められた期間内に審理と判決を行う民事訴訟の特別な手続である。
開始決定後の所定の期日から6か月以内に口頭弁論を終結し,終結の日から1か月以内に判決を言い渡す予定を定める(民事訴訟法381条の2・381条の3)。

訴状を提出した日から6か月以内に,必ず紛争が最終的に解決する制度ではない。
途中で通常の手続に移行する場合があり,判決に対する適法な異議によって通常の手続で審理が続く場合もある。

2 施行日と適用される事件

この制度は,令和4年法律第48号による民事訴訟法改正で設けられ,令和8年5月21日に施行された。
同改正法附則23条は,改正後の民事訴訟法第7編の規定を,施行日以後に提起される訴えに係る事件に適用すると定めている。

本記事は,令和8年10月17日までに確認した法令と裁判所公表資料を基に,制度の要件,期間,利用前の検討事項及び不服申立てを説明する。
電子提出やウェブ会議を利用することだけで,通常の訴訟が当然にこの手続へ切り替わるわけではない。

第2 利用するための要件と対象外事件

1 相手方の同意と裁判所の判断が必要

当事者双方がこの手続を求めて申し出た場合,又は一方が申し出て相手方が同意した場合に,裁判所が利用の可否を判断する。
裁判所は,事案の性質,訴訟追行による当事者の負担の程度その他の事情から,当事者間の衡平を害し,又は適正な審理の実現を妨げると認める場合には,この手続による決定をしない(民事訴訟法381条の2第2項)。

申出と同意は,原則として書面でする。
ただし,口頭弁論又は弁論準備手続の期日では,口頭ですることもできる(同条3項)。
相手方が利用を希望しないのに,一方の希望だけでこの手続を開始することはできない。

2 消費者契約と個別労働関係民事紛争は対象外

消費者契約に関する訴えと,個別労働関係民事紛争に関する訴えでは,この手続を求める申出をすることができない(民事訴訟法381条の2第1項)。
対象となる紛争の種類を先に確認し,当事者が同意しているという理由だけで利用可能と判断しないことが必要である。

他方,条文は利用できる事件を「企業間の売掛金事件だけ」などと限定列挙しているわけではない。
対象外事件に当たらないことと,具体的な事件が短期間の審理に適していることは,分けて検討する必要がある。

3 申出・同意の後に提出する書面

民事訴訟規則231条の3は,申出又は同意の後,速やかに,予想される主要な争点と関連事実,争点ごとの証拠,交渉その他の訴訟に至る経緯の概要を記載した書面を提出することを求めている。
その書面には,予想される主要な争点についての書証の写しも添付する。

したがって,利用を申し出てから争点や証拠を一から調べ始めるという準備では,手続の予定に対応しにくい。
依頼者への事実確認,相手方の主張の把握及び証拠の収集を,申出・同意の前から進めておくことが重要となる。

第3 6か月はいつから数えるのか

1 訴え提起日と開始決定後の期日を区別する

裁判長は,この手続による旨の決定の日から2週間以内の間に,口頭弁論又は弁論準備手続の期日を指定する(民事訴訟法381条の3第1項)。
以下では,この期日を「開始期日」という。
6か月の審理期間は,訴えを提起した日でも,この手続による旨の決定の日でもなく,この開始期日を起点とする。

裁判長は開始期日に,その日から6か月以内の口頭弁論終結期日と,終結の日から1か月以内の判決言渡期日を指定する(同条2項)。
裁判所と当事者は,開始期日に訴訟の進行に必要な事項を協議する(民事訴訟規則231条の4)。

2 手続の予定を一覧で確認する

段階法律が定める期間・内容
この手続による旨の決定双方の申出又は申出・同意を踏まえ,裁判所が決定する
開始期日決定の日から2週間以内の間に指定する
攻撃防御方法の提出開始期日から5か月以内。裁判所が双方の意見を聴いて,より短い期間を定める場合がある
判断事項の確認攻撃防御方法の提出期間が満了するまでに,裁判所が当事者双方との間で確認する
証拠調べ・口頭弁論終結証拠調べは開始期日から6か月以内。より短い期間を定める場合がある。口頭弁論終結期日も開始期日から6か月以内に指定する
判決言渡し口頭弁論を終結する日から1か月以内に指定する

この予定は,民事訴訟法381条の3に基づく。
「約7か月で判決」という説明を見るときも,訴え提起からの期間,判決が確定するまでの期間及び実際に支払を受けるまでの期間とは区別する必要がある。

第4 主張・証拠の準備と判断事項の確認

1 5か月の提出期間を前提に準備する

当事者は,開始期日から5か月以内,裁判所が双方の意見を聴いて短い期間を定めた場合はその期間内に,攻撃又は防御の方法を提出しなければならない(民事訴訟法381条の3第3項)。
ここでいう攻撃防御方法は,単に訴状や答弁書の表題を持つ書類だけを指すものではない。
請求を支える事実,相手方の主張への反論及び証拠の申出等を,審理の予定に即して準備する必要がある。

民事訴訟規則は,早期の主張・証拠提出を求めるとともに,準備書面では主要な争点と関連事実を明確に分けて簡潔に記載し,証拠の申出では立証に必要な証拠を厳選することを定めている(231条の2・231条の5・231条の6)。
資料を多く提出することだけでなく,どの争点のどの事実を証明する資料かを明確にすることが必要となる。

証拠の種類についての制限と,証拠の提出・取調べに使える時間は,別の問題である。
この手続では証拠調べの期間も限られるため,鑑定や第三者からの資料収集に時間がかかる事件では,予定された期間内に必要な立証を終えられるかを利用前に検討する必要がある。
「証拠制限がない」という言葉だけで,通常訴訟と同じだけの時間をかけて証拠調べができると理解すべきではない。

2 判決で判断すべき事項を確認する

裁判所は,攻撃防御方法の提出期間が満了するまでに,争点及び証拠の整理の結果に基づき,判決で判断すべき事項を当事者双方との間で確認する(民事訴訟法381条の3第4項)。
必要があれば,判断事項と,これに関連する各当事者の攻撃防御方法の要旨を記載した書面の提出を命ずることができる(民事訴訟規則231条の7)。

確認された事項は電子調書に記録される。
当事者側では,請求,抗弁,再抗弁,予備的な主張等のうち判断を求める事項が,確認対象から抜けていないかを点検することが重要である。

この手続の電子判決書には,事実として請求の趣旨・原因その他の攻撃防御方法の要旨を,理由として確認された事項に係る判断の内容を記録する(民事訴訟法381条の5)。
争点整理の結果と判決の記載が結び付くため,短い書面にまとめること自体を目的として,必要な判断事項を落とすべきではない。

第5 途中で通常訴訟に戻せるか

当事者の双方又は一方が通常の手続への移行を申し出たときは,裁判所は移行の決定をしなければならない。
提出された攻撃防御方法と審理の現状から,この手続による審理・裁判が困難と認めるときも,同様である(民事訴訟法381条の4第1項)。

当事者の移行の申出は,期日にする場合を除き書面でする(民事訴訟規則231条の8)。
移行の決定には不服を申し立てることができず,既に指定された期日は通常の手続のための期日とみなされる(民事訴訟法381条の4第2項・第3項)。

この手続の期日の変更は,やむを得ない事由がある場合に限られる(民事訴訟法381条の3第6項)。
証拠収集や反論の準備が予定に収まらなくなったときは,単に次回期日を先へ延ばす希望と,通常の手続へ移行する申出を区別して検討する必要がある。

第6 判決に不服がある場合の異議申立て

1 原則として控訴ではなく異議を申し立てる

この手続の終局判決に対しては,原則として控訴をすることができない。
ただし,訴えを却下した判決については,控訴禁止の例外となる(民事訴訟法381条の6)。

訴えを却下した判決を除く終局判決に対しては,電子判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に,その判決をした裁判所へ異議を申し立てることができる(民事訴訟法381条の7)。
判決の言渡日と送達日を混同せず,どの種類の判決を受けたのか,どの裁判所へ何を申し立てるのかを先に確認する必要がある。

2 適法な異議があった後の審理と執行

適法な異議があると,訴訟は口頭弁論終結前の程度に復し,通常の手続によって審理・裁判をする。
異議申立ては執行停止の効力を有する(民事訴訟法381条の8第1項・第2項)。

異議後の判決では,民事訴訟法362条・363条が準用され,最初の判決を認可する場合と取り消す場合等が区別される。
したがって,「異議を出しただけで,最初の判決が当然に取り消されて不存在になる」と説明するのは適切ではない。
異議後の判決への不服申立ては,この手続で最初に言い渡された判決に対する異議と区別して検討する必要がある。

第7 通常訴訟・少額訴訟との違い

比較する事項法定審理期間訴訟手続通常訴訟・少額訴訟との区別
手続を始める条件双方の申出又は申出・同意と裁判所の決定が必要通常訴訟では,相手方が審理期間の限定に同意することは訴え提起の条件ではない
審理期間開始期日から6か月以内の口頭弁論終結等を定める通常訴訟の計画審理と,全事件に6か月の上限を置くことは同じではない
金額の要件381条の2に少額訴訟と同じ60万円以下という要件はない少額訴訟は,簡易裁判所の60万円以下の金銭支払請求が対象である
期日の考え方所定の期間内に争点整理と証拠調べを進める少額訴訟は,特別の事情がある場合を除き最初の口頭弁論期日で審理を完了する

通常訴訟の計画審理は民事訴訟法147条の2・147条の3,少額訴訟の金額・請求の要件と一期日審理の原則は同法368条・370条による。
少額訴訟の要件を満たさないからこの手続も利用できない,あるいはmintsを使う事件はすべてこの手続になる,という関係にはない。

第8 利用を選ぶ前に確認したいこと

1 期間の見通しと準備の負担を合わせて検討する

利用を検討する利点は,口頭弁論終結と判決の予定を早い段階で具体化できることである。
一方で,短期間のうちに必要な主張と証拠の準備を進める負担があり,途中の通常手続への移行や判決後の異議も予定に織り込む必要がある。

検討の目安として,①相手方の主張と主要な争点を把握できているか,②契約書・取引記録・通信履歴等の必要な証拠がそろっているか,③第三者からの資料収集,尋問又は鑑定等に要する時間を見込めるか,④依頼者の確認・決裁と反論の準備を期間内に進められるかを確認することが考えられる。
これは個別事件で利用を判断するための実務上の整理であり,列挙した条件を満たせば裁判所が必ず利用を認めるという法定要件ではない。

2 裁判所から勧められたら同意しなければならないか

この手続の開始には,当事者双方の申出又は申出・同意が必要である。
裁判所から利用の打診を受けても,証拠収集や反論に必要な時間,判決後の不服申立ての仕組みを検討した上で,利用するか判断する必要がある。

3 期間が短ければ費用や回収も有利になるか

審理期間の予定,裁判所へ納める費用,弁護士との報酬契約及び実際の回収可能性は,それぞれ確認すべき事項である。
この手続を選ぶという理由だけで,弁護士費用が安くなることや,相手方から早期に全額回収できることを前提にしない。
依頼時には,集中的な準備に必要な作業と費用,通常の手続に移行した場合や異議が出た場合の対応も確認しておくとよい。

第9 根拠資料と関連記事

1 法令・裁判所資料

① 民事訴訟法381条の2~381条の8,147条の2・147条の3,362条・363条,368条・370条及び令和4年法律第48号附則23条
https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109

② 民事訴訟規則231条の2~231条の10(裁判所公表・令和8年5月21日施行版,PDF実頁52頁~53頁)
https://www.courts.go.jp/assets/080521minnsokisoku.pdf

③ 法務省「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」第5(制度の創設と施行日)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00316.html

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