令和5年司法試験の国際関係法(公法系)第1問について,完成答案と評価項目を示す。
評価項目と重みは公式資料を基にした独自の分析であり,法務省の採点基準・配点ではない。
第1 この記事の対象と結論
対象は令和5年司法試験の選択科目問題の国際関係法(公法系)第1問である。
出題の趣旨と採点実感の本問部分から,35項目を抽出した。
設問1ではA国の仮保全措置の主張,設問2ではB国の海洋境界画定の主張,設問3ではC国の軍艦通航に関する反論を組み立てる。
権利のもっともらしさ,海洋境界画定の三段階方式及び基線の有効性と通航権の区別が中心となる。
重み5は10項目であり,公開表の番号5,12,15,17,19,22,26,27,28,33に対応する。
第5に2247字の答案と枠外の解説を置いた。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
評価項目は一つの判定対象ごとに原子化し,必須・高評価・負例・許容分岐を区別した。
頁はPDFの物理頁であり,出題趣旨は第1問の設問別段落,採点実感は「3 採点実感等」の第1問又は科目総論を指す。
「記載なし」は本問に関連する範囲を読んだ結果であり,「間接」は一般的要求からの推論を意味する。
島の定義だけで処理して関連事情を落とすという負例は,番号18の裏返しなので独立の公開項目にせず番号18へまとめた。
内部では36単位を保持しているが,記事の件数・重み分布は公開表の35行で数える。
2 5段階の重み付けの基準
重み5は採点実感の評価の分かれ目又は答案の骨格,4は出題趣旨が検討を求め採点実感も評価又は具体的な不足の指摘を通じて取り上げた事項,3は一方が明示する中核理由,2は軽い補強又は典型的な誤り,1は控えめな言及とした。
重み4を「高く評価された事項」だけに限定していない。
高評価の重み5や条件付き分岐を,全答案への必須要件へ自動的に格上げしない。
項目数・重み合計は公式得点や難易度を意味しない。
第3 本問の概要
A国とB国は隣接する沿岸国で,領海境界の等距離線とEEZ・大陸棚の単一境界線には合意したが,後者の位置は未合意である。
B国領γ島はA国沖約30海里,面積約0.5平方キロメートルの無人島であり,B国の埋立準備を契機に両国軍艦が武力衝突した。
A国はICJへ境界画定と仮保全措置を求めた。
B国は関連海岸長比を約1対1.5,島を考慮した線で分けられる面積比を約1対1.7と主張する。
両国は留保なしの選択条項受諾宣言をしている。
別に,C国軍艦X号がB国の島と低潮高地を結ぶ直線基線の内側を迅速かつ継続的に通航し,退去通知を無視して通航を続けた。
B国の国内法には軍艦の事前許可・通告の要求がなく,B国は内水への侵入を主権侵害と抗議した。
三国は国連原加盟国で国連海洋法条約の当事国である。
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 【必須】国連加盟国がICJ規程の当事国となることを確認する | 3 | 物理34頁・第1問・設問1。原加盟国であり、そのため国際司法裁判所規程の当事国となっていることを確認 | 記載なし(関連範囲実読) |
| 2 | 【必須】規程41条の仮保全措置が最終判決まで当事国の権利を保全する制度であると述べる | 3 | 記載なし(関連範囲実読) | 物理43頁・採点実感・設問1。最終判決までの訴訟当事国の権利を保全すること |
| 3 | 【必須】一応の裁判管轄権が指示要件であると示す | 4 | 物理34頁・第1問・設問1。一応の(primafacie)裁判管轄権の存在 | 物理43頁・採点実感・設問1。一応の(primafacie)裁判管轄権の存在 |
| 4 | 【必須】留保なしの選択条項受諾宣言から本件の一応の管轄権を基礎付ける | 4 | 物理34頁・第1問・設問1。いずれも裁判管轄権を制約する趣旨の留保は付していない | 間接:物理43頁・採点実感・設問1。これらが与えられた事実に照らしてそれぞれ満たされていること |
| 5 | 【必須】本案で主張する権利の少なくとももっともらしさを独立の要件として示す | 5 | 物理34頁・第1問・設問1。仮保全措置要請国が本案で主張する権利が少なくとももっともらしい | 物理43頁・採点実感・設問1。基準(plausibilitytest)に言及した答案は少なかった |
| 6 | 【必須】A国の沿岸国としてのEEZ・大陸棚の海域権利にもっともらしさを当てはめる | 4 | 物理34頁・第1問・設問1。A国は問題の海域の沿岸国であることからこの権利の主張が可能 | 間接:物理43頁・採点実感・設問1。これらが与えられた事実に照らしてそれぞれ満たされていること |
| 7 | 【必須】保護権利と要請措置の関連性を独立の要件として示す | 4 | 物理34頁・第1問・設問1。当該権利とこれを保全するために要請される措置との間に関連性が存在すること | 物理43頁・採点実感・設問1。当該権利とこれを保全するために要請される措置との間に関連性が存在すること |
| 8 | 【必須】γ島の大きさ等の人工的変更を防ぐことを境界画定上のA国の権利保全へ接続する | 3 | 物理34頁・第1問・設問1。その大きさなどについてのγ島の法的地位は問題の海洋境界画定線の設定に影響を及ぼし得る | 記載なし(関連範囲実読) |
| 9 | 【必須】埋立停止・作業船及び護衛軍艦の撤収・軍事活動停止・不拡大の要請を権利保全へ関連付ける | 3 | 物理35頁・第1問・設問1。船舶及びそれを護衛する軍艦をγ島から撤収させて埋立作業と軍事活動の停止 | 記載なし(関連範囲実読) |
| 10 | 【必須】回復不能な侵害の現実的かつ切迫した危険を緊急性の要件として示す | 4 | 物理34頁・第1問・設問1。回復不能な侵害を起こすような緊急性の存在 | 物理43頁・採点実感・設問1。回復不能な侵害を起こすような緊急性の存在 |
| 11 | 【高評価】継続する武力衝突の人命保護を緊急性の追加理由として挙げる | 3 | 物理35頁・第1問・設問1。現に武力衝突が継続しているために人命保護も追加的な理由として緊急性 | 記載なし(関連範囲実読) |
2 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 12 | 【必須】両国が条約当事国でありEEZに74条・大陸棚に83条が適用されると示す | 5 | 物理35頁・第1問・設問2。第74条 | 物理44頁・採点実感・設問2。第74条 |
| 13 | 【必須】両条が衡平な解決を求めるが具体的画定方式を明示しないと説明する | 4 | 物理35頁・第1問・設問2。具体的な画定方式 | 物理44頁・採点実感・設問2。具体的な画定方式 |
| 14 | 【必須】2009年黒海判決等を三段階方式の判例上の根拠として参照する | 4 | 物理35頁・第1問・設問2。黒海海洋境界画定事件ICJ判決(2009年) | 物理44頁・採点実感・設問2。黒海海洋境界画定事件ICJ判決(2009年) |
| 15 | 【必須】第一段階で暫定等距離線を引くと示す | 5 | 物理35頁・第1問・設問2。暫定的に等距離線を引き | 間接:物理44頁・採点実感・設問2。「三段階アプローチ」の内容を正確に指摘 |
| 16 | 【高評価】領海等距離線の合意から等距離線を引けない地形ではないとB国が主張できることを説明する | 3 | 物理35頁・第1問・設問2。等距離線を引くことができないような地形ではない | 記載なし(関連範囲実読) |
| 17 | 【必須】第二段階で関連事情によって暫定線を調整すると示す | 5 | 物理35頁・第1問・設問2。関連事情を考慮して暫定等距離線を調整 | 間接:物理44頁・採点実感・設問2。「三段階アプローチ」の内容を正確に指摘 |
| 18 | 【必須】γ島がB国領でA国側海域にあるためB国は暫定線のA国側への移動を主張できると論ずる(島の定義だけで処理しない)。 | 4 | 物理35頁・第1問・設問2。この島を関連事情として考慮して暫定等距離線をA国側にやや移動させることも正当化 | 物理44頁・採点実感・設問2。暫定等距離線を修正する関連要素としての島の存在を考慮しなかった |
| 19 | 【必須】第三段階で関連海岸長比と面積比との不均衡を検査すると示す | 5 | 物理35頁・第1問・設問2。海域の面積の比と関連海岸線の長さの比の間に不均衡がないか | 間接:物理44頁・採点実感・設問2。「三段階アプローチ」の内容を正確に指摘 |
| 20 | 【必須】B国説の海岸長比1対1.5と面積比1対1.7の近似から非不均衡を主張する | 3 | 物理35頁・第1問・設問2。海域の面積は、B国が主張する関連海岸線の長さの比とほぼ同じ | 記載なし(関連範囲実読) |
| 21 | 【負例】海洋境界画定を陸地国境の画定問題と混同しない | 2 | 記載なし(関連範囲実読) | 物理44頁・採点実感・設問2。陸地の国境画定問題と混同した答案 |
3 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 22 | 【必須】7条4項が低潮高地との直線基線を原則禁止すると示す | 5 | 物理35頁・第1問・設問3。第7条第4項 | 物理44頁・採点実感・設問3。第7条第4項 |
| 23 | 【必須】恒久的に海面上にある灯台等の建設が7条4項の例外であると示す | 4 | 物理35頁・第1問・設問3。「恒久的に海面上にある灯台」などが建設されている場合 | 間接:物理44頁・採点実感・設問3。直線基線を引くことができる条件とその例外を確認 |
| 24 | 【必須】一般的な国際的承認が7条4項のもう一つの例外であると示す | 4 | 物理35頁・第1問・設問3。一般的な国際的承認を受けている | 間接:物理44頁・採点実感・設問3。直線基線を引くことができる条件とその例外を確認 |
| 25 | 【高評価】沿岸近くの島列と海岸の全般的方向を7条1項・3項へ当てはめる | 3 | 物理35頁・第1問・設問3。海岸の全般的な方向から著しく離れて引かれてはいない | 記載なし(関連範囲実読) |
| 26 | 【必須】違法な直線基線なら通常基線に戻り本件水域を内水ではなく領海と構成する | 5 | 物理36頁・第1問・設問3。内水ではなく領海 | 物理44頁・採点実感・設問3。内水ではなく領海 |
| 27 | 【高評価】船種別規制説と態様別規制説の対立を示す | 5 | 物理36頁・第1問・設問3。態様別規制説と船舶の種類を理由に通航禁止が許される船種別規制説が対立 | 物理44頁・採点実感・設問3。船種別規制説と態様別規制説の対立に触れている答案はごく僅か |
| 28 | 【高評価】19条1項の一般基準と2項の列挙活動との関係を通航規制の解釈に接続する | 5 | 物理36頁・第1問・設問3。第19条第1項にいう「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない」 | 物理44頁・採点実感・設問3。第1項と第2項の関係に関する解釈を通じた外国軍艦の無害通航権の扱いは重要な主題 |
| 29 | 【必須】B国が事前許可・通告を要求しない事実を船種だけで排除しない実行として評価する | 3 | 物理36頁・第1問・設問3。軍艦であるというだけで無害ではないとする船種別規制説に立った実行を採用していない | 記載なし(関連範囲実読) |
| 30 | 【必須】C国が態様別規制説による軍艦の無害通航権を主張する理由を示す | 4 | 物理36頁・第1問・設問3。軍艦も領海内で無害通航権の行使を主張し得る態様別規制説の立場から主張 | 間接:物理44頁・採点実感・設問3。国連海洋法条約の関連規定に関する適切な解釈が要求 |
| 31 | 【必須】迅速かつ継続的な通航を18条2項へ当てはめる | 3 | 物理36頁・第1問・設問3。B国領海内を迅速かつ継続的に通航しなければならない | 記載なし(関連範囲実読) |
| 32 | 【必須】X号の具体的通航を19条1項及び2項に照らして無害と評価する | 4 | 物理36頁・第1問・設問3。「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない」ものであって無害 | 間接:物理44頁・採点実感・設問3。第19条によれば、当該海域において外国軍艦が無害通航権を享有 |
| 33 | 【許容分岐】有効な直線基線でも従前内水でなかった水域には8条2項の無害通航権が存続すると示す | 5 | 物理36頁・第1問・設問3。第8条第2項 | 物理44頁・採点実感・設問3。第8条第2項 |
| 34 | 【必須】直線基線の無効枝・有効枝のいずれでもC国の無害通航の反論を閉じる | 4 | 物理36頁・第1問・設問3。合法であれ違法であれ、態様別規制説に立って軍艦X号の無害通航権が許容 | 物理44頁・採点実感・設問3。いずれの場合においても |
4 答案全体
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 35 | 【高評価】各設問で条約規定・法理と与件を接続し理由を示して結論まで論ずる | 3 | 記載なし(関連範囲実読) | 物理46頁・採点実感・答案全体。説得力のある論述 |
5 重みの分布
重み1は0項目,2は1項目,3は11項目,4は13項目,5は10項目である。
総項目数N=35,重みの単純合計W=137である。
番号5:本案で主張する権利の少なくとももっともらしさを独立の要件として示す。
この項目は答案の骨格又は明示された識別点として重み5とした。
番号12:両国が条約当事国でありEEZに74条・大陸棚に83条が適用されると示す。
この項目は答案の骨格又は明示された識別点として重み5とした。
番号15:第一段階で暫定等距離線を引くと示す。
この項目は答案の骨格又は明示された識別点として重み5とした。
番号17:第二段階で関連事情によって暫定線を調整すると示す。
この項目は答案の骨格又は明示された識別点として重み5とした。
番号19:第三段階で関連海岸長比と面積比との不均衡を検査すると示す。
この項目は答案の骨格又は明示された識別点として重み5とした。
番号22:7条4項が低潮高地との直線基線を原則禁止すると示す。
この項目は答案の骨格又は明示された識別点として重み5とした。
番号26:違法な直線基線なら通常基線に戻り本件水域を内水ではなく領海と構成する。
この項目は答案の骨格又は明示された識別点として重み5とした。
番号27:船種別規制説と態様別規制説の対立を示す。
この項目は答案の骨格又は明示された識別点として重み5とした。
番号28:19条1項の一般基準と2項の列挙活動との関係を通航規制の解釈に接続する。
この項目は答案の骨格又は明示された識別点として重み5とした。
番号33:有効な直線基線でも従前内水でなかった水域には8条2項の無害通航権が存続すると示す。
基線有効を仮定する代替構成で適用する。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
基準時は選択科目の試験実施日である令和5年7月12日である。
答案は設問順にA国・B国・C国の立場を示し,特に設問2ではB国に有利な主張を先に述べる。
字数は見出し・句読点・空白・「以上」を含め,改行だけを除いて2247字と数えた。
判例は試験日前の命令・判決を用いる。
直線基線の無効構成を先に,有効とした場合の8条2項を代替構成として示す。
2 答案
1 設問1
(1)AB両国は国連原加盟国であり,国連憲章93条1項によりICJ規程の当事国である。
規程41条の仮保全措置は,最終判決まで訴訟当事国の権利を保全する制度である。
近時のICJ判例によれば,①本案について一応の管轄権,②本案で主張する権利の少なくとももっともらしいこと,③その権利と求める措置との関連性,④回復不能な侵害を起こす緊急性が必要である。
「ニカラグアによる国境地域での一定の活動」事件の2013年命令も,権利のもっともらしさと関連性を分け,本案判断前の回復不能な損害の現実的かつ切迫した危険を審査した。
(2)AB両国は規程36条2項の選択条項受諾宣言を留保なく行い,海洋境界画定は国際法上の法律的紛争であるから,一応の管轄権は認められるとA国は主張できる。
A国は沿岸国であり,本案で境界画定されるEEZ・大陸棚の海域・区域について権利を主張し得るから,その権利はもっともらしい。
(3)γ島の大きさや法的地位は境界画定で考慮され得るため,A国は,人工的変更を加えず島の現状を維持することが自己の海域権利の保全につながると主張する。
この権利を守る埋立停止と,その作業船・護衛軍艦の撤収,軍事活動停止及び紛争不拡大には関連性がある。
島自体のB国帰属は争わず,その所有から周辺海域全部の帰属まで確定するものではないと説明する。
また,埋立てで島・周辺海底が人工的に改変されれば,境界画定に関する権利に回復し難い侵害が生じる危険があり,作業開始が迫る以上,本案判決を待てない。
現に武力衝突が継続しているため,人命保護も緊急性を支える追加理由となる。
カメルーン・ナイジェリア事件の1996年命令も武力衝突に伴う回復不能な被害と不拡大措置を扱った。
A国自身も発砲しているため,双方への不拡大指示を排除しない。
2 設問2
(1)AB両国は国連海洋法条約の当事国であり,EEZと大陸棚の境界画定にはそれぞれ74条・83条が適用される。
両条1項は国際法に基づく合意による衡平な解決を要求するが,具体的な画定方式までは定めない。
黒海海洋境界画定事件の2009年判決等が採る三段階アプローチは,暫定等距離線を引き,関連事情を考慮して調整し,関連海岸長比と帰属海域面積比に著しい不均衡がないかを検査するものである。
(2)第一段階についてB国は,両国が各基線を確認し領海の等距離線画定に合意したことから,等距離線を引けない地形ではなく,EEZ・大陸棚の単一線についても暫定等距離線を引くことに不都合はないと主張できる。
これは領海の合意線を最終線に自動転写することではない。
第二段階について,γ島はB国領であり,小さな無人島であってもA国側海域に位置することから,関連事情として考慮して暫定等距離線をA国側へやや移動させることが正当化されるとB国は主張する。
無人であることだけでは,121条3項の「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」とは確定しない。
もっとも,海域を生む権原と境界画定上の効果は別であり,小島に完全な効果を与えてA国海岸の投影を過度に遮断してよいわけではない。
B国の主張は,島の存在を考慮した限定的調整であり,島の定義だけを論じて終えてはならない。
(3)第三段階では,B国は関連海岸長400対620キロメートル,約1対1.5と,島を考慮した線による面積比約1対1.7とがほぼ対応し,著しい不均衡はなく衡平であると主張できる。
関連海岸は両国の海への投影が重複する範囲で特定するので,620キロメートルがその範囲に属することも示す。
この検査は数学的比例配分ではなく,二つの比率が完全に一致しないだけで非衡平とはならない。
3 設問3
(1)C国はまず,B国の直線基線の有効性を争う。
7条1項・3項上,海岸に至近の島列があり,全般的な海岸方向から著しく離れないことは設定を支える。
しかし,同条4項は低潮高地との間の直線基線を原則禁止し,恒久的に海面上にある灯台等が建設された場合又は一般的な国際的承認を受けた場合だけを例外とする。
C国は例外を満たさないと主張し,通常基線が基準となる本件海域は内水ではなく領海であると論ずる。
A国による基線の確認だけから,C国の同意や一般的な国際的承認を当然には導けない。
(2)軍艦の無害通航について国家実行は一致せず,19条1項の平和・秩序・安全への害を船種にも結び付ける船種別規制説と,2項の活動列挙によって通航態様を審査する態様別規制説が対立する。
C国は,17条が船種を限定せず,軍艦の通航を前提とする30条もあること,19条2項が無害でない活動を具体的に列挙することから,通航の態様による判断を主張する。
B国自身も事前許可・通告を要求しておらず,軍艦という船種だけで通航を排除する実行を採っていない。
X号は迅速かつ継続的に通航し18条2項を満たし,19条1項の害や2項の列挙活動も認められないから無害である。
法令違反がない以上,退去通知の無視だけで30条の違法を導けず,24条による無害通航の妨害禁止が及ぶ。
(3)仮に直線基線が一般的な国際的承認等により有効でも,8条1項の内水化だけでは通航権は消滅しない。
7条に適合する直線基線で従前内水でなかった海域が新たに内水化した場合には,8条2項により無害通航権が存続し,19条の無害性基準が適用される。
したがって,この場合にもX号の無害通航が許され,C国はB国主権の侵害ではないと反論できる。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案1の(1)・(2)は番号1~7,1の(3)は番号8~11を回収する。
答案2の(1)は番号12~15及び17・19,2の(2)は番号16・18,2の(3)は番号20に対応する。
番号21は海洋境界を陸地国境と混同しないことに対応する。
答案3の(1)は番号22~26,3の(2)は番号27~32,3の(3)は番号33・34に対応する。
番号35は全答案の規範・与件・結論の接続に対応する。
(2) 仮保全措置の要件と保護する権利
採点実感は権利のもっともらしさへの言及が少なかったことを具体的に指摘している。
管轄・もっともらしさ・関連性・緊急性を分け,A国の沿岸国としての権利から島の現状維持と各措置へ接続する必要がある。
埋立てが海洋境界画定上の権利へ及ぼす作用を説明し,人命保護は緊急性の追加理由とする。
(3) B国の主張と三段階方式
島が領海等の権原を生むかという121条の問題と,暫定線を動かす関連事情かという問題は異なる。
B国側の答案では島の位置からA国側への限定的移動をまず主張し,その後に小島の過大な効果の限界を示す。
海岸長比1対1.5と面積比1対1.7は著しい不均衡がないとの主張を支えるが,関連海岸の範囲は海への投影の重複から判断する。
(4) 基線の有効性と軍艦の通航態様
低潮高地を用いる例外を欠けば本件水域を領海と構成でき,有効でも新たな内水化には8条2項が適用され得る。
どちらの枝でもC国の通航の反論を終点まで閉じる。
19条1項の一般基準と2項の活動列挙の関係を述べ,国家実行・解釈の対立を無視して軍艦の通航権を無条件の確定法理としない。
(5) 答案の限界と扱わなかった事項
答案は与えられた各国の主張を構成するものであり,現実の島の居住可能性,灯台の存否,関連海岸長や地図を独自計測したものではない。
双方への不拡大指示,30条の退去要件などは法源に基づく補足であり,公式資料から抽出した独立の評価項目としては加えていない。
武力行使の適法性や国家責任の全論点は設問の終点を超えるため詳述していない。
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②国際公法とは―国際法・国際私法との違いと基本原則
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①法務省・令和5年司法試験問題(選択科目):物理38~39頁,第1問。
②法務省・令和5年司法試験論文式試験出題の趣旨:物理34頁の第1問~36頁の第2問直前。
③法務省・令和5年司法試験の採点実感(選択科目):物理43~44頁の第1問・科目総論,46頁の答案水準と教育総論。
④法務省・令和5年司法試験の実施日程:選択科目は令和5年7月12日。
2 法令
①国連海洋法条約原文:7・8・17~19・24・30・74・83・121条。
②ICJ規程原文:36条2項・41条。
③国連憲章93条:国連加盟国とICJ規程の当事国資格。
3 裁判例
①Certain Activities事件・2013年11月22日命令:22~35,44~50段落。
②カメルーン・ナイジェリア事件・1996年3月15日命令:30~44段落。
③黒海海洋境界画定事件・2009年2月3日判決:98~104,115~122,185~188,210~216段落。
④ニカラグア・コロンビア事件・2012年11月19日判決:167~178,208~212段落。
4 確認状態
公式資料は本問の範囲をPDF本文で確認した。
国連海洋法条約は公式PDFと条文掲載ページ,ICJ規程・国連憲章は公式掲載本文,裁判例はICJ公式ページ掲載の判決・命令原文を確認した。
裁判例PDFの配信には到達できなかったため,PDFを読んだとする確認はしていない。
公式資料が挙げる全判例を独立に確認したわけではなく,記事の判例欄は原文を確認したものに限る。
国家実行の全体や架空事例の地理の実測を確定するものではない。
評価項目・重み及び答案は本記事の分析である。