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立退料の増額・減額と引換給付判決―申立事項の解釈と不意打ち防止(AI作成)

立退料の金額を裁判所が判断する場面では,金額の相当性と,その条件で明渡しを命じられるかを分けて検討する必要がある。申出額を超える判決も,申出額より少ない判決も,金額の大小だけで一律に処理できない。

第1 金額の相当性と判決できる範囲を分ける

1 正当事由の判断

借地借家法6条は土地の更新拒絶について,同法28条は建物の更新拒絶・解約申入れについて,使用の必要性その他の事情とともに,財産上の給付の申出を正当事由の判断要素にしている。土地と建物では対象条文が異なる。

最高裁昭和46年11月25日第一小法廷判決は,旧借家法の店舗明渡しの事案で,立退料の提供を他の事情と総合して正当事由を判断することを示した。金銭の提供だけが独立の正当事由になるわけではなく,借家人の損失を必ず全額補償するという制度でもない。

2 申立事項の判断

民事訴訟法246条は,当事者が申し立てていない事項について裁判所が判決することを禁じている。立退料として相当な額が分かっても,その額を条件とする明渡しが申立ての範囲に含まれるかは,別に検討しなければならない。

本記事では,①原告が現実に求める権利保護の範囲,②意思が不明な部分を補う合理的な解釈,③被告に予告された不利益の範囲,の順に整理する。この手順は,法務省の令和3年司法試験の出題の趣旨・採点実感が説明する検討を実務の確認事項へ整理したものである。

第2 最高裁昭和46年判決が扱った申出

1 申出には範囲の限定があった

最高裁昭和46年11月25日第一小法廷判決(昭和41年(オ)第1005号,民集25巻8号1343頁)は,賃貸人が300万円,又はそれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う意思を表明した事案を扱った。

判決は,500万円の支払との引換えに店舗明渡しを認めた原審の判断を是認した。原文の申出は,裁判所が相当と考える金額を無制限に受け入れるというものではない。「格段の相違のない一定の範囲内」という限定を落とすと,判決の前提が広がってしまう。

2 判決の前提を一般的な上限規則にしない

同判決から,裁判所があらゆる事案で申出額を自由に超えられるとはいえない。他方,格段の相違を超える増額を,どのような申立てでも一律に禁止した判決として扱うこともできない。

法務省の令和3年司法試験の公式解説は,申出の内容が異なる問題について,この判決だけで結論を出さず,訴状と期日の陳述から原告の意思を具体的に検討することを求めている。最高裁の当該事案での判断と,申立てが異なる場合の解釈を分けて読む必要がある。

第3 増額を検討するときの確認順序

1 現実の意思を記録から読む

まず,請求の趣旨,準備書面,口頭弁論期日の陳述を読み,原告がどの条件まで明渡しを求めているかを確認する。特定額を上限として明渡しを求めるのか,裁判所の判断による別の額を含めるのか,申出の範囲を明らかにする。

「必要なら増額を検討する」という発言と,特定の増額を受け入れて支払う意思の確定は,同じではない。交渉の用意を表した文言から,具体的な支払意思を直ちに認定しない。

2 不明な部分について判決の効果を比較する

原告の意思がなお不明な場合は,必要な立退料を条件とする判決ができないときに,どのような判決になるかを先に特定する。申出額では正当事由を補完できないという前提なら,比較対象は請求棄却となる。

その上で,請求棄却と増額を条件とする明渡判決を比較し,通常の原告がどちらを望むかを検討する。引換条件は,原告に対する独立の金銭支払命令とは区別されるため,明渡しを実現するための選択肢が残るという効果が問題になる。

ただし,これは意思の不明な部分を補う解釈である。原告が明確に示した上限を,原告に有利に見えるという理由で取り払う手順ではない。高額条件が交渉へ与える影響など,反対方向の事情も確認する。

3 被告の防御機会を確認する

増額すると被告が受ける金額は多くなるが,それだけで全ての手続上の問題が解消するとは限らない。明渡しを求める範囲,金額の評価資料,期日での説明と被告の反論・立証機会を記録に即して確認する。

第4 減額は原告に有利でも自動的には許されない

1 原告の申立てに含まれるか

立退料を減らせば原告の負担は軽くなる。しかし,特定額の支払との引換えを条件に申し立てている場合に,より少額を条件とする判決がその申立てに含まれるかは,原告の意思の解釈を要する。「一部認容だから当然に許される」とだけ説明しない。

2 被告に何が予告されていたか

被告には,申出額の支払を受けることを条件に明渡しを求められているという防御の前提がある。減額した条件での明渡しは,原告に有利でも,被告が受ける金員を減らす。

そこで,少額の支払を条件とする明渡しまで予告されていたかを,訴状と期日の陳述,金額差及び反論・立証の機会から確認する。原告の意思の範囲に含まれることと,被告への不意打ちがないことは,別々に説明する必要がある。法務省の公式解説も,この二つの観点から具体的な検討を求めている。

第5 訴訟代理人が残す記録

原告側は,依頼者が受け入れる条件の範囲を確認し,訴訟上の申出としてどこまで表明するかを整理する。交渉用の提示,訴訟上の申出,内部の予算を区別し,記録上の表現が依頼者の意思を超えていないかを点検する。

被告側は,申出額が変わった時点,変更内容,追加の評価資料及び反論に必要な事項を特定する。金額について争う対象と,その条件で判決できるかという手続上の対象を分けて書く。

これらは,本記事が公開資料から整理する記録管理上の提案である。裁判所に特定の結論を保証させるものではない。判決前に,金額,明渡範囲,支払と明渡しの関係が,訴訟記録上どのように表明されているかを確認することが重要である。

第6 出典及び関連記事

1 一次資料と確認範囲

①e-Gov法令検索「民事訴訟法」246条。令和8年10月8日に現行条文を確認。
②e-Gov法令検索「借地借家法」6条・28条。令和8年10月8日に現行条文を確認。
③最高裁昭和46年11月25日第一小法廷判決全文2頁。申出と引換額に関する判示は物理2頁。旧借家法の事案であり,現行法の対象と区別した。
④法務省「令和3年司法試験論文式試験出題の趣旨」民事系第3問・設問1,物理12~13頁。
⑤法務省「令和3年司法試験の採点実感(民事系科目)」第3問・設問1,物理18~20頁。

法務省資料は,試験で評価される理由付けを説明する資料であり,その全てが最高裁の判示又は個別事件の裁判結果を示すものではない。本記事も,立退料の全国的な相場や全裁判例を調査したものではない。

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