第1 この記事の対象と結論
令和5年司法試験論文式試験・公法系科目第2問(行政法)について,出題の趣旨と採点実感から独自に抽出した64の評価項目と,5段階の重みを示す。
重み5は9項目であり,勧告と解散命令の連動,Dの法定欠格と権利侵害,A自身の事業継続不能,損害の考慮要素への配置,裁量の区分及び比較事例の法的評価が中心となる。
答案例は,解職勧告の処分性を否定し,Dの原告適格を肯定する。
設問2では,Aの立場から重大な損害と解散命令の実体的違法事由を主張し,B県の反論にも応答する。
評価表を第4に,約5,100字の模範答案と枠外の解説を第5に置く。
項目,区分及び重みは法務省の公式採点基準・配点ではなく,答案はAIが作成した学習用の例である。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一つの項目には一つの判定対象を置き,答案のどの規範,理由付け,当てはめ又は誤りの回避を評価するかが分かる形に整理した。
「必須」24項目,「高評価」18項目,「負例」21項目,「許容分岐」1項目という区分は,重みとは別に判断している。
負例は誤った記載を避けるための項目であり,許容分岐は特定の結論だけを正解としないための条件付きの整理である。
評価表は設問ごとの連続番号1〜64とし,出題趣旨と採点実感の根拠を別欄で示す。
頁はPDFの物理頁,節は各公式資料の節番号である。
「記載なし」は,本問に対応する範囲を実際に読んだ上で,その具体的な補強理由・誤り・分岐の記載を確認できなかったことを示す。
「間接」は,一般的な検討要求又は評価の記述から本項目への対応を導いた箇所を意味し,具体的な記載がある場合と区別する。
2 5段階の重み付けの基準
重みは本記事の分析によるものであり,法務省の公式配点,予測得点又は問題の難易度を示さない。
①重み5:採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの。
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項。
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け。
④重み2:一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項。
⑤重み1:一方が控えめに触れるだけの事項。
各項目の根拠と役割から判断し,各段階に件数を割り当てていない。
同じ論点でも,検討対象を捉える項目と,理由付けを深める項目を分けた。
重み5の高評価項目を自動的に必須へ変更していない。
全項目の重み合計は参考値であり,負例や条件付きの分岐を含めて全てを答案に書くことを求めるものではない。
第3 本問の概要
Aは複数の福祉施設・サービスを営む社会福祉法人,Cは理事長,Dは業務執行理事である。AによるDへの無利子・無担保の1億円の貸付けをきっかけに,知事は改善勧告,公表,改善命令,Cの解職勧告を経て,解散命令をした。各段階の効果を区別して検討することが本問の出発点である。
①設問1(1):Aを名宛人とするCの解職勧告の処分性を,反対構成も踏まえて検討する。
②設問1(2):D自身の原告適格を,行訴法9条1項と解散命令の法効果から検討する。
③設問2(1):Aが主張すべき「重大な損害」を,B県の反論も踏まえて検討する。
④設問2(2):Aが主張すべき解散命令の実体的違法事由を,B県の反論も踏まえて検討する。
設問1(2)では行訴法9条2項による検討を行わない。
設問2はAが取消訴訟を適法に提起したことを前提とし,改善勧告・改善命令及び解散命令の手続は適法という設定を維持する。
設問が求めていない訴訟要件や手続的違法を広げず,各問が指定する立場と検討対象に答える。
第4 評価項目と重み
1 設問1(1) 解職勧告の処分性
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 行訴法3条2項の処分性を本件解職勧告について検討する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(1) 行訴法3条2項の処分性を本件解職勧告について検討する | 採点実感 PDF 4頁・3(1) 一般基準と法効果性を踏まえた処分該当性 |
| 2 | 平成17年判決が勧告の処分性を肯定した論拠を示す 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(1) 平成17年判決が勧告の処分性を肯定した論拠を示す | 採点実感 PDF 4頁・3(1) 平成17年判決に触れ,後続処分との連動を考察 |
| 3 | 勧告拒否と後続措置の連動関係を条文構造から比較する 【必須】 | 5 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(1) 勧告拒否と後続措置の連動関係を条文構造から比較する | 採点実感 PDF 7頁・4(2)・平成17年判決 56条7項・8項の構造に則して後続行為を検討 |
| 4 | 後続解散命令がAへ及ぼす深刻な不利益を処分性の議論に置く 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(1) 後続解散命令がAへ及ぼす深刻な不利益を処分性の議論に置く | 採点実感 PDF 7頁・4(2)・平成17年判決 Aにとっての解散命令の不利益の深刻度 |
| 5 | 社会福祉法上の弁明と行手法上の意見聴取を比較する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(1) 社会福祉法上の弁明と行手法上の意見聴取を比較する | 採点実感 PDF 4頁・3(1) 56条9項の弁明を踏まえた論理的な検討 |
| 6 | 自説に対する処分性肯定又は否定の反対構成に応答する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(1) 自説に対する処分性肯定又は否定の反対構成に応答する | 採点実感 PDF 7頁・4(2)・平成17年判決 反対の見解も踏まえて56条の構造を分析 |
| 7 | 処分性の一般的判断基準を正確に定立する 【必須】 | 4 | 間接:出題趣旨 PDF 3頁・設問1(1) 処分該当性の検討に必要な規範として位置付ける | 採点実感 PDF 4頁・4(2) 処分性の一般的判断基準を正確に定立する |
| 8 | 行手法2条6号を挙げ行政指導の非拘束性を示す 【高評価】 | 3 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 4頁・3(1) 行手法2条6号を挙げ行政指導の非拘束性を示す |
| 9 | 罰則の不存在を非拘束性の理由として検討する 【高評価】 | 3 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 4頁・3(1) 罰則の不存在を非拘束性の理由として検討する |
| 10 | 勧告段階の早期救済の必要性を反対構成に置く 【高評価】 | 3 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 4頁・3(1) 勧告段階の早期救済の必要性を反対構成に置く |
| 11 | 24条1項と61条の自主性を処分性否定の根拠へ置く 【高評価】 | 3 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 4頁・3(1) 24条1項と61条の自主性を処分性否定の根拠へ置く |
| 12 | 勧告拒否と解散を定型的に連動させる運用の有無を検討する 【高評価】 | 3 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 7頁・4(2) 勧告拒否と解散を定型的に連動させる運用の有無を検討する |
| 13 | 避ける記載:勧告が一方的だから権力性があるとだけ断定する 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 6頁・4(1) 勧告が一方的だから権力性があるとだけ断定する |
| 14 | 避ける記載:平成17年判決の後続処分を病院開設不許可と取り違える 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 7頁・4(2) 平成17年判決の後続処分を病院開設不許可と取り違える |
| 15 | 避ける記載:平成17年判決が勧告に直接の法的効果を認めたと説明する 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 7頁・4(2) 平成17年判決が勧告に直接の法的効果を認めたと説明する |
| 16 | 避ける記載:56条7項の役員解職勧告と4項の改善勧告を混同する 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 7頁・4(2) 56条7項の役員解職勧告と4項の改善勧告を混同する |
| 17 | 避ける記載:Aの処分性をC本人の不利益だけで論じる 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 7頁・4(2) Aの処分性をC本人の不利益だけで論じる |
| 18 | 避ける記載:早期救済の必要性だけから勧告の処分性を安易に肯定する 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 7頁・4(2) 早期救済の必要性だけから勧告の処分性を安易に肯定する |
| 19 | 避ける記載:行手法13条1項1号ニにより聴聞は非処分も対象だとする 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 7頁・4(2) 行手法13条1項1号ニにより聴聞は非処分も対象だとする |
| 20 | 避ける記載:行手法の弁明は行政処分以外だけを対象とすると解する 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 7頁・4(2) 行手法の弁明は行政処分以外だけを対象とすると解する |
| 21 | 避ける記載:56条9項の弁明を受ける主体を所轄庁指定職員とする 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 7頁・4(2) 56条9項の弁明を受ける主体を所轄庁指定職員とする |
| 22 | 処分性の肯定・否定を理由付けに応じて許容する 【許容分岐】 | 1 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 間接:採点実感 PDF 4頁・3(1) 処分性の一定の結論と,否定説の論拠を論じる答案の評価(結論の許容は間接) |
2 設問1(2) Dの原告適格
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 23 | 9条1項の法律上の利益を法効果から判定する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(2) 9条1項の法律上の利益を法効果から判定する | 採点実感 PDF 4頁・3(2) 9条1項の一般基準からD自身への法効果を検討 |
| 24 | 名宛人以外にも法効果による権利制限が及ぶ判例の枠組みを使う 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(2) 名宛人以外にも法効果による権利制限が及ぶ判例の枠組みを使う | 採点実感 PDF 7頁・4(3)・平成18年判決等 法効果により権利が制限される第三者の判断枠組み |
| 25 | 40条1項5号による社会福祉法人一般の評議員欠格を摘示する 【必須】 | 5 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(2) 40条1項5号による社会福祉法人一般の評議員欠格を摘示する | 採点実感 PDF 8頁・4(3)・侵害されるDの権利等 40条1項5号による社会福祉法人一般の欠格 |
| 26 | 44条1項の準用により役員欠格まで法効果を追う 【必須】 | 5 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(2) 44条1項の準用により役員欠格まで法効果を追う | 採点実感 PDF 8頁・4(3)・侵害されるDの権利等 44条1項の準用による役員への欠格の拡張 |
| 27 | 9条1項の一般的な利益侵害基準を先に置く 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 3頁・設問1(2) 9条1項の法律上の利益を法効果から検討 | 採点実感 PDF 7頁・4(3) 9条1項の一般的な利益侵害基準を先に置く |
| 28 | 欠格により制約される本人の権利を職業選択等として具体化する 【高評価】 | 5 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 8頁・4(3) 欠格により制約される本人の権利を職業選択等として具体化する |
| 29 | 平成18年判決が直接認めた不服申立適格を正確に述べる 【高評価】 | 3 | 間接:出題趣旨 PDF 3頁・設問1(2) 平成18年判決・平成25年判決による不服申立適格又は原告適格の参照 | 採点実感 PDF 4頁・3(2) 平成18年判決が直接認めた不服申立適格を正確に述べる |
| 30 | 平成25年判決の共有者自身への利用制限を説明する 【高評価】 | 3 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 間接:採点実感 PDF 4頁・3(2) 平成25年判決への言及と法効果の検討(用益権設定の具体的内容は判決原文で確認) |
| 31 | 法人の出訴可能性による役員の救済否定へ応答する 【高評価】 | 3 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 間接:採点実感 PDF 5頁・3(2) 反対説とその排斥理由を論じる答案の評価(法人による出訴という具体的反論は間接) |
| 32 | 避ける記載:9条2項の保護範囲を詳細に検討する 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 6頁・4(1) 9条2項の保護範囲を詳細に検討する |
| 33 | 避ける記載:DとAの同一視又は利益の同一性で原告適格を認める 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 7頁・4(3) DとAの同一視又は利益の同一性で原告適格を認める |
| 34 | 避ける記載:違法貸付け等のDの個別行動で原告適格を決める 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 8頁・4(3) 違法貸付け等のDの個別行動で原告適格を決める |
| 35 | 避ける記載:欠格をA自身の役員への就任不能だけと理解する 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 8頁・4(3) 欠格をA自身の役員への就任不能だけと理解する |
| 36 | 避ける記載:業務執行権限の喪失だけで適格を認める 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 8頁・4(3) 業務執行権限の喪失だけで適格を認める |
3 設問2(1) 重大な損害
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 37 | Aの執行停止申立てについて25条2項の重大な損害を論じる 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(1) Aの執行停止申立てについて25条2項の重大な損害を論じる | 採点実感 PDF 5頁・3(3) 25条2項・3項による重大な損害の検討 |
| 38 | 25条3項の考慮事項を判断規範として示す 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(1) 25条3項の考慮事項を判断規範として示す | 採点実感 PDF 5頁・3(3) 各事情を25条3項の文言に当てはめる論述 |
| 39 | 平成19年決定の信用・業務信頼の損害を本件へ接続する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(1) 平成19年決定の信用・業務信頼の損害を本件へ接続する | 採点実感 PDF 5頁・3(3) 平成19年決定を踏まえたAの損害の検討 |
| 40 | 解散そのものによるAの事業継続不能を先に示す 【必須】 | 5 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(1) 解散そのものによるAの事業継続不能を先に示す | 採点実感 PDF 8頁・4(4)・損害の内容 まず解散自体による事業継続不能を捉える |
| 41 | 利用者等への影響を解散命令の性質として検討する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(1) 利用者等への影響を解散命令の性質として検討する | 採点実感 PDF 8頁・4(4)・損害の内容 利用者等への影響を法の目的・処分の性質と接続 |
| 42 | 解散命令が保護する利益を踏まえB県の反論へ応答する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(1) 解散命令が保護する利益を踏まえB県の反論へ応答する | 採点実感 PDF 9頁・4(4)・B県の反論等 解散命令の保護利益を考慮要素に置き評価する |
| 43 | 一時的な3か月の業務停止と法人解散の違いを示す 【高評価】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(1) 本件と平成19年決定の違いを意識して検討 | 採点実感 PDF 5頁・4(4) 一時的な3か月の業務停止と法人解散の違いを示す |
| 44 | 各事情を25条3項の具体的考慮要素に割り当てる 【高評価】 | 5 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(1) 各事情を25条3項の考慮要素に当てはめる | 採点実感 PDF 5頁・3(3) 各事情を25条3項の具体的考慮要素に割り当てる |
| 45 | 利用者・従業員の損害をA自身の損害へ引き直す 【高評価】 | 5 | 間接:出題趣旨 PDF 4頁・設問2(1) Aの損害と利用者等への不利益という処分の性質 | 採点実感 PDF 9頁・4(4) 利用者・従業員の損害をA自身の損害へ引き直す |
| 46 | B県の保護利益の反論を処分の内容及び性質に位置付ける 【高評価】 | 3 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 9頁・4(4) B県の保護利益の反論を処分の内容及び性質に位置付ける |
| 47 | B県の反論に理由を示して再反論する 【高評価】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(1) 想定されるB県の反論を踏まえAの主張を検討 | 採点実感 PDF 9頁・4(4) B県の反論に理由を示して再反論する |
| 48 | 避ける記載:重大な損害を金銭賠償で回復困難な損害だけと定義する 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 8頁・4(4) 重大な損害を金銭賠償で回復困難な損害だけと定義する |
| 49 | 避ける記載:Aの主張を求める問いに重大な損害がないとだけ答える 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 6頁・4(1) Aの主張を求める問いに重大な損害がないとだけ答える |
| 50 | 避ける記載:第三者の損害をそのままAの損害に加算する 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 8頁・4(4) 第三者の損害をそのままAの損害に加算する |
| 51 | 避ける記載:B県の反論を理由のない否認だけで済ませる 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 9頁・4(4) B県の反論を理由のない否認だけで済ませる |
4 設問2(2) 解散命令の実体的違法性
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 52 | 56条8項の文言を踏まえ裁量の有無を論じる 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(2) 56条8項の文言を踏まえ裁量の有無を論じる | 採点実感 PDF 5頁・3(4) 文言・専門性から行政裁量の存否を検討 |
| 53 | 裁量逸脱濫用の判断枠組みを明示する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(2) 裁量逸脱濫用の判断枠組みを明示する | 採点実感 PDF 5頁・3(4) 違法となる判断枠組みを示して当てはめる |
| 54 | 24条・61条の自主性尊重を処分選択の制約へ接続する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(2) 24条・61条の自主性尊重を処分選択の制約へ接続する | 採点実感 PDF 5頁・3(4) 24条・61条の自主性尊重を違法事由へ接続 |
| 55 | 他方法不能を最終手段性・比例原則の要請として解釈する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(2) 他方法不能を最終手段性・比例原則の要請として解釈する | 採点実感 PDF 5頁・3(4) 過去の例に照らして比例原則違反を検討 |
| 56 | 監督措置の実績と本件の重要な相違を評価する 【必須】 | 4 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(2) 監督措置の実績と本件の重要な相違を評価する | 採点実感 PDF 9頁・4(5)・実績資料 具体的相違と監督目的に比した不利益を評価 |
| 57 | 要件裁量と効果裁量を別の根拠から区分する 【必須】 | 5 | 間接:出題趣旨 PDF 4頁・設問2(2) 56条8項に基づく裁量の存否を検討 | 採点実感 PDF 9頁・4(5) 要件裁量と効果裁量を別の根拠から区分する |
| 58 | 効果裁量の根拠を文言に加え処分の性質から説明する 【高評価】 | 3 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 9頁・4(5) 効果裁量の根拠を文言に加え処分の性質から説明する |
| 59 | Cの改善努力を考慮不尽等の枠組みに当てはめる 【高評価】 | 4 | 間接:出題趣旨 PDF 4頁・設問2(2) 事実関係から監督措置の選択と裁量を検討 | 採点実感 PDF 5頁・3(4) Cの改善努力を考慮不尽等の枠組みに当てはめる |
| 60 | D起因の不正とCの解職拒否の過重評価を分けて論じる 【高評価】 | 4 | 間接:出題趣旨 PDF 4頁・設問2(2) 事実関係から監督措置の選択と裁量を検討 | 採点実感 PDF 5頁・3(4) D起因の不正とCの解職拒否の過重評価を分けて論じる |
| 61 | 比較例との具体差を監督目的とAの不利益の比例へ接続する 【高評価】 | 5 | 出題趣旨 PDF 4頁・設問2(2) 監督措置の実績と比例原則に照らして検討 | 採点実感 PDF 9頁・4(5) 比較例との具体差を監督目的とAの不利益の比例へ接続する |
| 62 | 避ける記載:命ずることができるという文言だけで要件裁量を認める 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 9頁・4(5) 命ずることができるという文言だけで要件裁量を認める |
| 63 | 避ける記載:解職勧告拒否の考慮自体を他事考慮とする 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 9頁・4(5) 解職勧告拒否の考慮自体を他事考慮とする |
| 64 | 避ける記載:比較事例の差を事実列挙のみで済ませる 【負例】 | 2 | 記載なし:この補強理由・誤り又は分岐の具体的な指摘なし | 採点実感 PDF 9頁・4(5) 比較事例の差を事実列挙のみで済ませる |
5 答案全体
判読できる文字で書くこと,条・項・号と根拠文言を正確に示すこと,会議録の指示に答えること,判例の事案・法的仕組みと本件の異同を説明することも必要である。
採点実感5〜6頁・4(1)の一般的な答案作法として示されているため,設問別の64項目とは別に掲げ,集計には加えていない。
6 重みの分布
重み5は9項目,重み4は23項目,重み3は10項目,重み2は21項目,重み1は1項目である。
総項目数は64,重み合計は210(5×9+4×23+3×10+2×21+1×1)となる。
重み5は,3の後続措置との連動,25・26・28の法定欠格とD自身の権利侵害,40・44・45のA自身の損害と考慮要素への配置,57・61の裁量の区分と比例的な法的評価である。
答案の具体的な対応箇所は,第5の3(1)で説明する。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
基準時は試験実施日の令和5年7月12日とし,問題の配付条文,その日に施行されていた法令及び当時の裁判例を用いる。
答案は設問の順に,1→(1)→アの階層で規範,理由付け,当てはめ及び結論を示す。
設問2ではAの主張を構成し,B県の反論と再反論を必要な箇所に置く。
「最高裁平成○年○月○日判決・決定」は,第7で掲げる確認済みの裁判例を指す。
最高裁が直接判断した事件類型・法廷意見と,本問への参照・当てはめを区別し,個別意見を法廷意見として用いていない。
答案枠内は見出し・番号・末尾の「以上」を含め,空白・改行を除いて5152字である。
2 答案
1 設問1(1) 解職勧告の処分性
(1) 取消訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法3条2項)とは,公権力の主体たる行政庁の行為のうち,国民の権利義務を直接形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
本件勧告に直接の法的効果があるか,これがなくても後続の不利益との連動関係から取消訴訟の対象に取り込めるかが問題となる。
ア 社会福祉法56条7項は,改善命令に従わない法人に対し,業務停止を「命じ」,役員の解職を「勧告する」と区別している。
勧告は特定の者に一定の行為を求める非処分の行政指導(行政手続法2条6号)であるのが原則であり,従わないことへの罰則もない。
Aが拒否しても,Cの役員たる地位が直ちに失われるわけではなく,Aに解職義務も生じない。
役員の選任を評議員会に,理事長の選定・解職を理事会に委ねる43条及び45条の13,自主的な経営基盤の強化等を求める24条1項,法人の自主性を尊重して不当な関与を禁止する61条1項2号からも,所轄庁が勧告だけで人事を直接変更する制度とは解し難い。
(2) もっとも,最高裁平成17年7月15日判決は,医療法上の病院開設中止勧告について処分性を認めている。
行政指導という名称や罰則の不存在だけで処分性を否定することはできない。
同判決では,勧告に従わず病院を開設した場合には保険医療機関の指定を受けられないことが相当程度確実であり,国民皆保険制度の下では事実上病院開設を断念せざるを得ないという仕組みが重視された。
ア 本件でも,Aが勧告を拒否した後に解散命令を受けた以上,拒否が法人の存続を失わせる不利益につながり,実質的に解職を強制するとの構成が考えられる。
役員解職を受け入れてから救済を求めても,人事への介入を回復し難いため,勧告時点の救済の必要性もある。
イ しかし,56条8項の解散命令には,法令等の違反に加え,「他の方法により監督の目的を達することができない」ことが必要である。
勧告不遵守だけから当然に解散へ進むのではなく,違反の改善状況や他の監督方法の実効性を別途判断しなければならない。
本件には,勧告拒否を理由として一律に解散する処分基準もなく,紹介された実績からもそのような定型的運用は認められない。
Aにとって法人の存続と全事業を失う不利益は深刻だが,実際に解散命令がされたという事後的事実と,勧告の段階で制度上その不利益が相当程度確実であることは異なる。
この点で上記判決とは後続処分との結び付きが弱い。
(3) また,56条9項が勧告に先立ちAに弁明の機会を与えることは,重大な人事への働き掛けであることを示す。
しかし,処分なら一般に必要となる手続を単に重複して定めたとは限らない。
役員の解任を命ずる不利益処分であれば行政手続法13条1項1号ハにより聴聞が要求されるのに対し,本件は法人への弁明である。
これは自主的な解職の判断を法人に残す勧告について,特別の手続保障を加えたものと理解できる。
したがって,弁明手続の存在から処分性を当然に導くこともできない。
ア 以上から,本件勧告の処分性は否定するのが相当である。
解散命令を争えること自体は,上記判決に照らし処分性を否定する決定的理由にはならないが,本件の独立した解散要件と合わせれば,勧告に直接の法的効果を認める必要性は乏しい。
2 設問1(2) Dの原告適格
(1) 行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」には,処分により自己の権利又は法律上保護された利益を侵害される者が含まれる。
Dは本件解散命令の名宛人ではないが,同命令の法的効果がD自身の法的地位に及ぶかを検討すべきであり,9条2項による保護範囲の検討を要する場面とは区別する。
ア 社会福祉法46条1項6号により,Aは所轄庁の解散命令によって解散する。
40条1項5号は,同命令により解散した法人の解散当時の役員を評議員の欠格者とし,44条1項がこれを役員にも準用する。
Dは解散当時の業務執行理事であるから,本件命令によって他の社会福祉法人の評議員・役員にも就任できなくなる。
これはAの役職を失うことに伴う経済的不利益にとどまらず,Dが社会福祉法人の役員等を職業として選択する自由を法定の欠格により制限する直接の法律上の不利益である。
Dは自己の権利を侵害される者として,命令の取消しによりその原因を除去する法律上の利益を有する。
(2) 最高裁平成18年1月19日判決は,主たる納税者への課税処分が第二次納税義務者の義務の範囲を規定し,その取消しによって義務が減少又は消滅することを重視して,第二次納税義務者の不服申立適格を認めた。
最高裁平成25年7月12日判決も,他の共有者の持分への差押処分が,差押えを受けていない共有者自身の用益権設定等を制限する法的効果を有することから,その共有者の原告適格を認めた。
いずれも名宛人という形式ではなく,処分による本人の法的地位の制約を捉えている。
Dも法効果によって自己の権利を制限される点で名宛人に準じて扱える。
ア 法人と役員の人格は別であるから,A自身の出訴可能性によってD固有の利益が吸収されることはない。
また,Dが違法な貸付けを受け,調査にも非協力的であったことは,本案の適法性判断に関係し得るとしても,命令による資格制限が存在する以上,原告適格を失わせる理由とはならない。
したがってDには原告適格が認められる。
3 設問2(1) 重大な損害
(1) Aは本案の提起を前提に,解散命令の効力の停止を求める。
その「重大な損害」(行政事件訴訟法25条2項)の判断では,損害の回復の困難の程度を考慮し,損害の性質・程度及び処分の内容・性質を勘案する(同条3項)。
平成16年改正により従来の「回復の困難な損害」から要件が緩和されているため,金銭賠償で回復困難な損害だけに限定してはならず,これらの事項を総合して判断する。
(2) 「損害の性質及び程度」として,本件は一施設の一時的停止ではなく,複数の特別養護老人ホーム及びデイサービス事業を営む法人自体を解散させ,清算を経て法人格を消滅させる措置である。
Aの事業継続自体が不可能となる不利益がまず大きい。
Aは地域の中核的な事業者であり,解散は,利用関係の解消,利用者の転出,職員の離職,組織及び専門的な人的体制の喪失につながり得る。
「損害の回復の困難の程度」として,後に勝訴しても,移った利用者や離職した職員を元に戻し,従前の支援関係や地域の信用を再建することは容易でない。
事業の処分や清算が進めば回復は更に困難となる。
Aはこれらの具体的な発生経路を疎明すべきである。
ア 「処分の内容及び性質」として,利用者や職員の不利益は別人格の損害であり,B県はそれをAの損害に算入できないと反論できる。
しかし,Aは利用者を保護して社会福祉事業を継続する法人であり(社会福祉法1条,22条,24条),本来福祉を増進するための解散命令が,その継続基盤を壊すという逆の作用をもたらす。
第三者の損害をそのまま加算せず,利用者との信頼関係や職員という事業基盤の喪失をA自身の事業遂行上の損害に引き直して評価すべきである。
イ 最高裁平成19年12月18日決定は,弁護士の3か月の業務停止による社会的信用や業務上の信頼関係の毀損等を踏まえ,重大な損害を認めた原審判断を是認した。
本件も継続的な対人サービスと信用を基盤とする点で共通し,しかも法人の恒久的な解散である点では,事後回復の困難性が一層強い。
(3) B県は,Aが流動資産の半分に当たる1億円を無利子・無担保で貸し付け,回収できず,度重なる改善要求にも従っていない以上,利用者に安定した福祉サービスを提供する基盤が損なわれていると反論する。
これは「処分の内容及び性質」において,解散命令が利用者保護を図る監督措置であることに関わり,損害の重大性を相対化する事情となる。
イ しかし,Aは現に経営破綻の状態にあるわけではない。
違法貸付けや改善の遅れから,直ちに全事業の継続が利用者に危険を及ぼすとはいえない。
検査や改善の履行確保,問題を担う役員の交代等により,審理中の危険を抑える余地もある。
違反による懸念は認めつつ,法人解散で具体的に失われる信用・組織・継続関係の回復困難性を示せば,Aには重大な損害が生ずるとの主張が成り立つ。
4 設問2(2) 解散命令の実体的違法性
(1) 社会福祉法56条8項による解散命令は,法令等の違反に加え,他の方法では監督目的を達成できないことを要する。
本件の27条違反及び適法な改善命令の不履行は前提とし,これを争わない。
他方法不能は解散を最後の監督手段とする要件であり,同項の「命ずることができる」は,その要件を満たす場合にも解散するかという選択を残している。
ア 他方法の実効性の見通しには専門的判断の余地があるが,最終手段性の法的意味は裁判所が審査すべきである。
効果選択については,福祉サービスの安定,法人の運営・資産,監督措置の実効性を専門的に予測して判断するという処分の性質も,裁量を認める根拠となる。
しかし,その裁量は無制限ではない。
1条の利用者保護等の目的,24条1項及び61条の自主性尊重を踏まえ,違反の重大性,改善可能性及び解散の影響を評価すべきである。
重要な事情を考慮せず,又は一部の事情を過重に評価した結果,解散が社会通念上著しく妥当性を欠けば,裁量の逸脱・濫用として違法となる(行政事件訴訟法30条)。
(2) Aは,知事がCの改善努力を十分に考慮せず,他の手段による改善可能性を尽くして検討していないと主張する。
Cは調査を進めるため理事に協力を求め,改善命令後はDから一定の説明を得ている。
主な阻害要因はDの非協力及び即時返済の困難であり,知事もこれを知っていた。
改善の進展が遅いという不利な事情はあるが,Cの行動は改善の期待を支える重要な事情であり,これを無視して改善不能とするなら考慮不尽となる。
改善命令の不履行を否定するのではなく,その原因から今後の改善の可能性を区別して評価すべきである。
ア また,不正の中心がDであるのにCの解職拒否を決定的に重視することは,原因に対応した措置の検討を欠き,拒否を過重に評価したものと主張できる。
拒否自体は改善への対応を判断する関連事情だから,「他事考慮」とするのではない。
知事はDの責任調査,回収計画,理事会による監督及び必要な人事措置等の改善を促す余地がある。
検査・再調査や業務の一部停止なども,全事業を失わせる前に実効性を検討すべきである。
これらが常に有効だとはいえないが,Cの解職拒否だけで全ての他方法が不能だとするのは飛躍がある。
(3) 比較事例も改善可能性の評価に関係する。
同程度の資産を持つ法人の1億5000万円の無利子・無担保貸付けでも,貸付金が回収され,改善が行われた例では解散命令がされていない。
これは金額や貸付けの違法性だけで解散が決まるわけではなく,改善の実現可能性が重要であることを示す。
他方,資産がはるかに少ない法人から1億円が使途不明のまま流出し,理事長が一切協力せず,回収見込みもなく,破産に近い状態となった例では解散命令がされている。
Aは,未回収・改善遅延という共通点はあるが,経営破綻に至っておらず,Cが改善に向けて動いているという重要な相違がある。
ア 処分基準は定められていないため,過去の扱いによる機械的な自己拘束をいうことはできない。
しかし,同種の監督目的に照らした処分の均衡や,判断で重視すべき事実を検証する比較資料にはなる。
Aについて破綻例と同じ措置を選ぶなら,その相違にもかかわらず他方法が実効性を欠く理由を示す必要がある。
(4) B県は,貸付金が総流動資産の半分であり,調査完了・回収・体制整備のいずれも期限内に実現しなかったこと,勧告,公表,命令と段階的措置を尽くしたこと,理事会がDを統制できずCの交代にも応じなかったことから,自主改善への期待は失われたと反論できる。
回収済みの比較例とAは異なり,Cの努力や改善の意欲だけで監督目的を達成できるともいえない。
ア これに対しAは,抽象的な善意を主張するだけでなく,Dへの回収請求と資金計画,責任者の交代,監督体制及びその実施期限を示し,より軽い措置で改善できる具体的見込みを立証すべきである。
知事がその検討をせず,Cへの解職勧告の拒否を決定的に重視し,法人全体の存続と利用者への影響を十分に考慮しなかったなら,他方法不能の判断又は効果選択に考慮不尽・過重評価がある。
Aは,そのような最終手段性及び比例的な選択を欠くことを理由として,解散命令の取消しを主張することになる。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
評価項目3(重み5)は,1(2)イで,独立した解散要件と運用を比較し,事後に解散した事実と勧告段階の連動の確実性を分けた。
重み5とする理由は,勧告と後続処分の連動は,名称だけで処分性を決めないための答案の骨格である。
評価項目25(重み5)は,2(1)アで,40条1項5号の欠格を,Aだけでなく社会福祉法人一般への就任制限として説明した。
重み5とする理由は,社会福祉法人一般への欠格という権利制限を捉えなければ,本問特有の原告適格を説明できない。
評価項目26(重み5)は,2(1)アで,44条1項の準用を示し,役員への欠格に至る法効果を追った。
重み5とする理由は,準用条文まで追うことが,評議員だけでなくDの役員資格に及ぶ効果を示す答案の骨格である。
評価項目28(重み5)は,2(1)アで,法定欠格をDの職業選択等の自由の制限に結び付け,9条1項の規範に当てはめた。
重み5とする理由は,法定欠格と職業選択等の本人の権利とを結ぶ論証の有無が,採点実感で評価上の差として指摘されている。
評価項目40(重み5)は,3(2)で,まず法人の解散による事業継続不能をA自身の損害として置いた。
重み5とする理由は,第三者の損害に先立ってA自身の事業継続不能を示すことが,損害論の骨格である。
評価項目44(重み5)は,3(2)〜(3)で,事業継続不能,回復困難性,第三者への影響,B県の保護利益を25条3項の各文言に割り当てた。
重み5とする理由は,各事情を25条3項のどの文言に当てはめるかを明示する論述が,優秀な答案の水準として示されている。
評価項目45(重み5)は,3(2)アで,利用者・職員の損害をそのまま加えず,信頼関係・人的体制というAの事業基盤の損害へ引き直した。
重み5とする理由は,第三者の損害をA自身の損害へ引き直すことが,主観訴訟としての執行停止の骨格である。
評価項目57(重み5)は,4(1)及びアで,他方法不能という要件の判断と,要件充足後の解散の選択を区別し,専門性と法的審査の位置を示した。
重み5とする理由は,要件と効果選択を区別しなければ,どの判断に裁量を認め何を審査するのかが不明になる。
評価項目61(重み5)は,4(3)及びアで,回収済みの例・破綻に近い例との重要な差を,最終手段性と処分の均衡へ結び付けた。
重み5とする理由は,比較例の違いを監督目的とAの不利益の比例へ結ぶことが,事実列挙を法的評価へ進める核心である。
(2) 設問1(1) 解職勧告の処分性
処分性では,「勧告」という名称や罰則がないことだけで判断せず,後続不利益が相当程度確実か,その不利益がAにとってどれほど深刻かを比較する。平成17年判決は,勧告に直接の法的効果があるとした判決として説明しないようにする。社会福祉法の弁明は特別の保障であり,行手法上の弁明が不利益処分を対象とすることを否定する根拠にはならない。
(3) 設問1(2) Dの原告適格
Dの適格はAとの同一視ではなく,Dの資格と職業選択の自由への制限から説明する。平成18年判決が直接扱ったのは第二次納税義務者の不服申立適格であり,本問での原告適格への参照と分ける。
(4) 設問2(1) 重大な損害
損害では,まず解散して事業継続が不可能となるA自身の損害を置く。利用者や従業員の損害をそのまま足さず,信用・人的体制・継続関係というAの事業基盤の損害へ引き直す。重大な損害を,金銭賠償で回復困難な損害だけに限定してはいけない。
(5) 設問2(2) 解散命令の実体的違法性
裁量では,Cの改善努力の不十分な考慮と,Dが不正の原因なのにCの解職拒否を過重に評価したことを分ける。拒否自体は関連事情なので,これを考慮すること自体を「他事考慮」としない。比較事例との相違を列挙するだけでなく,監督目的に対して全事業を失わせる不利益が過大かまで結び付ける。
(6) 答案の弱点と扱わなかった事項
処分性については,本答案は否定説を採るが,評価項目22のとおり,結論だけで評価を固定しない。
肯定説を採る場合にも,後続措置との連動,Aの不利益,弁明と聴聞の異同及び否定説への応答が必要である。
利用者の移行,職員離散,信用喪失及び貸付金の回収については,問題文を超える確定事実を補っていない。
答案は合理的な損害の発生経路とAが主張・疎明すべき方向を示すが,実際の発生時期・程度や具体的な改善計画を立証できるかは別の問題である。
より軽い監督措置で必ず改善できると断定しておらず,設問2の結論はAの主張としての条件付きの構成である。
法人の解散と法人格消滅は同時ではなく,清算を経る。
答案でも清算を経た消滅として述べており,清算法人が存続することと,従前の事業基盤を維持できることを分けている。
設問1(2)の9条2項による検討,設問2の手続的違法及び執行停止の他の要件は,設問の指定に従い詳論していない。
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1 同じ年度の司法試験の別の模範解答
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関連する実務記事は,本問の論点を実務の確認手順へつなげるために紹介する。
後年の法令・運用は,令和5年の答案の根拠には混ぜていない。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①法務省・令和5年司法試験論文式試験問題(公法系科目第2問,6〜13頁)
②法務省・令和5年司法試験論文式試験問題出題の趣旨(公法系第2問,3〜4頁)
③法務省・令和5年司法試験の採点実感(公法系第2問,4〜10頁)
④法務省・令和5年司法試験の実施日程等について
2 法令
①行政事件訴訟法(試験日の適用版)
②行政手続法(試験日の適用版)
社会福祉法は,問題PDF11〜12頁の【資料1 社会福祉法(抜粋)】に配付された条文を答案の根拠とする。
行政事件訴訟法及び行政手続法は,上記の試験日適用版を用いた。
3 裁判例
①最高裁平成17年7月15日第二小法廷判決(病院開設中止勧告)
②最高裁平成18年1月19日第一小法廷判決(第二次納税義務者の不服申立適格)
③最高裁平成25年7月12日第二小法廷判決(共有者の原告適格)
④最高裁平成19年12月18日第三小法廷決定(弁護士の業務停止と執行停止)
4 確認状態
問題は公法系第2問に対応するPDF6〜13頁,出題趣旨はPDF3〜4頁,採点実感はPDF4〜10頁を確認した。
評価表の各欄はこの読了範囲に基づく。
法令の基準時は令和5年7月12日であり,裁判例4件は裁判所が公開する判決・決定原文の全文を確認し,法廷意見,原審判断及び個別意見を区別した。
一次資料で確認した法令内容と裁判例の判示は「確認済み(Confirmed)」,公式が述べる評価傾向は「資料の記述(Source statement)」,独自の項目・重み,本問への当てはめ及び条件付きの主張は「推論(Inference)」として区別する。
出題趣旨と採点実感を未閲覧又は閲覧禁止として扱う段階ではなく,読了後に校正した答案と評価項目を掲載している。
法務省内部の項目別配点・実際の得点,比較例の背後にある実在行政運用,利用者の移行先,職員離散及び貸付金の回収可能性は未確認(Unknown)である。
問題文を超える資料の不存在を確認したという意味ではない。
判例秘書の原文は本記事作成時には閲覧しておらず,裁判例の裏付けは裁判所の公開原文による。
記事は,現行の監督処分についての個別事件の判断又は法務省による答案例ではない。