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当事者照会の作り方と不回答への対応―質問の特定・拒絶理由・求釈明・提出命令(AI作成)

第1 当事者照会で何を明らかにするか

1 本記事の対象と基準日

当事者照会は,訴訟の係属中,相手方に対して,主張又は立証を準備するために必要な事項を照会する制度である(民事訴訟法163条)。
裁判所への証拠申出や,相手方に既存文書の提出を命ずる手続とは区別して利用する。
本記事は令和8年10月3日時点の条文と裁判所公表の民事訴訟規則を基準に,照会書の作成,受領側の回答及び不回答後の選択を説明する。

2 先に争点と不足情報を整理する

照会前に,①明らかにしたい事実,②本案での証明責任の所在,③既に提出された証拠から分かること,④不足する情報,⑤回答を得た後の主張又は証拠収集の方針を整理する。
例えば,特定の通知メールが送信されたかが争点なら,送信日時,宛先及び送信記録の有無など,その争点に結び付く事項へ絞る。
「相手方の対応の全部を説明せよ」という広い質問から始めるべきではない。

照会への回答で事実関係を知ることと,その事実を裁判所に証明することは同じではない。
必要に応じて,回答の根拠となった記録を特定し,書証その他の証拠調べにつなげる。

第2 照会できる事項とできない事項

1 163条1項の六つの除外事由

民事訴訟法163条1項は,次の照会を除外している。
① 具体的又は個別的でない照会
② 相手方を侮辱し,又は困惑させる照会
③ 既にした照会と重複する照会
④ 意見を求める照会
⑤ 回答するために不相当な費用又は時間を要する照会
⑥ 196条又は197条により証言を拒絶できる事項と同様の事項についての照会

「当社に対する態度を反省しているか」「契約違反だと認めるか」といった評価又は意見を求める質問ではなく,いつ,誰が,どの通知をしたのかという事実へ分解する。
全取引期間,全従業員,全アカウントを無限定に対象とする質問は,対象の不特定や作業負担が問題となるため,事件との関連性,対象期間及び担当部署を具体化する。

2 秘密を含むときの検討

営業秘密,職務上の秘密その他の保護の必要性があるときは,163条1項6号と196条・197条の要件との対応を検討する。
「秘密」「個人情報」という言葉だけで,すべての質問に一括して回答を拒めるとは限らない。
対象期間の限定,第三者名の省略,項目の分離などで必要な情報を得られるかを検討することが有用である。

提訴前照会には132条の2による別の要件・除外事項があるため,係属中の当事者照会と同じ書式をそのまま流用しない。
照会の段階と法的根拠を最初に確定する。

第3 照会書の記載事項と質問の例

1 書面で照会するときの基本事項

民事訴訟規則84条1項・2項によれば,書面で照会する場合は照会書を相手方に送付し,相手方に代理人があるときはその代理人へ送付する。
照会書には次の事項を記載し,当事者又は代理人が記名押印する。
① 当事者及び代理人の氏名
② 事件の表示
③ 訴訟の係属する裁判所の表示
④ 年月日
⑤ 照会事項及びその必要性
⑥ 民事訴訟法163条により照会する旨
⑦ 回答すべき期間
⑧ 照会者の住所,郵便番号及びファクシミリの番号
⑨ 相手方の選択により書面又は電磁的方法で回答するよう求める場合には,その旨及び照会者の電子メールアドレス

同規則84条4項は,照会事項を項目に分け,回答もできる限りその項目に対応させて具体的に記載することを求めている。
複数の質問を一つの長文にまとめず,回答の有無と内容を照合できる番号を付ける。

2 送信の有無が争点となる場合の仮例

次の例は,契約上の通知が送られたかが争点となっている事件の照会事項である。
実際の照会書では,前記の氏名,事件,裁判所,日付,連絡先等の基本事項を別途記載する。

① 照会事項1:令和○年○月○日,契約番号○○に関する解除通知を,原告のメールアドレス○○宛てに送信したか。送信した場合には,送信日時,送信元アドレス及び宛先アドレスを回答されたい。
② 照会事項2:事項1の送信について,送信済みメール又は配信結果の記録が現在存在するか。存在する場合には,記録の種類及び保存場所を回答されたい。
③ 必要性:解除通知の発送・到達に関する被告の主張を検討し,送信記録の証拠申出を準備するためである。送信したことと,到達したことは区別して検討する。
④ 根拠及び回答期間:民事訴訟法163条に基づく照会である。照会書受領日の翌日から起算して○日以内に回答されたい。

期間の長さは,記録の所在確認,関係者への確認及び回答の負担に応じた相当な期間とする。
法律が一律に「7日」「14日」と定めているわけではないから,緊急性だけを理由に実行困難な期限を設定しない。
既存記録そのものの提出も求める場合は,任意の協力依頼なのか,文書提出命令等を予定するのかを明確にする。

第4 電子メールでの照会・回答

1 照会する側の承諾確認

163条1項は書面による照会を基本とし,同条2項は,相手方の承諾を得て電磁的方法による照会に代えることを認めている。
相手方の電子メールアドレスを知っていることだけで,電子照会への承諾があると扱うべきではない。
承諾の範囲と使用する送信先を確認し,後で確認できる記録を残すことが有用である。

2 回答方法の選択と電子回答の承諾

1項により,相手方の選択で書面又は電磁的方法のいずれかにより回答するよう求めることができる。
その選択を認める形で照会していない場合に,書面による回答を電磁的方法へ代えるときは,同条3項による照会者の承諾を確認する。
民事訴訟規則84条5項には電子照会・回答への準用と読替えがあるため,書面の記名押印等を電子手続へ機械的に移すのではなく,同項に従う。

電子化の経過措置が問題になる事件では,事件の開始時期と適用条文を確認する。
送信しただけで到達まで確認したと扱わず,送信日時,送信先及び受領を確認できた記録を区別して保存する。

第5 照会を受けた側の回答と拒絶理由

1 回答書を項目に対応させる

書面の回答書には,当事者及び代理人の氏名,事件,裁判所,年月日及び各照会事項への回答を記載し,当事者又は代理人が記名押印する(規則84条3項)。
回答できる事項,確認中の事項及び拒絶する事項を分け,回答できる部分まで一括して留保しないよう検討する。
確認中の場合は,調査対象と見込時期を示して期間調整を申し入れることが実務上の選択肢となる。

例えば,事項1には「指定された日時の送信済みフォルダを確認した結果,該当メールは確認できない」と回答し,事項2には「令和○年○月以前の配信結果の記録は,保存期間経過により現在存在しない」と回答することが考えられる。
これは回答内容の仮例であり,実際には確認した資料,担当者及び保存状況に即して記載し,推測と確認できた事実を分ける。
記録が見つからないことと,送信がなかったことを同一視しない。

2 回答拒絶は条項と理由を具体化する

規則84条3項は,163条1項各号に該当することを理由に回答を拒絶する場合,その条項も記載することを求める。
例えば「事項3は全従業員の過去10年分の全メールを対象とし,対象期間・取引との関係が特定されていないため,163条1項1号に該当する」と,質問と条項の対応を示す。
不相当な費用又は時間を理由にするなら,必要な対象件数,確認作業及び代替可能な範囲を具体化することが有用である。

証明責任を負わないことだけを回答不要の理由としない。
研究会資料11の3頁~4頁は,適法な照会への回答義務を認める説明と,法的な回答義務を否定する考え方の両方を紹介している。
現行法には不回答それ自体に対する過料等の直接的制裁はないが,無制裁という説明と回答義務についての解釈論は別問題である。

第6 不回答又は不十分な回答の後に検討すること

1 質問と拒絶理由を見直す

まず送付・受領と期限を確認し,①無回答,②対象不特定,③意見を求める質問,④作業負担,⑤秘密を理由とする拒絶,⑥記録不存在を分けて整理する。
回答可能な範囲へ質問を限定する,意見を事実の質問へ組み替える,未回答部分と必要性を特定して補充を求めるなど,問題に応じて対応する。
既に回答された質問をそのまま繰り返すのではなく,追加質問の必要性を示す。

2 求釈明と既存記録の取得へつなげる

争点の明確化に必要な事項については,民事訴訟法149条3項により,裁判長に必要な発問を求めることを検討する。
照会事項,不回答又は拒絶の内容,争点との関係及び具体的に明らかにしてほしい事項を準備書面等に記載する。
求釈明をしたから当然に相手方へ163条の回答を強制する命令が出るという制度ではない。

既存の文書を必要とするなら,220条の提出義務と除外事由を検討し,221条の文書の表示,趣旨,所持者,証明すべき事実及び提出義務の原因を明らかにして提出命令を申し立てる。
文書の表示又は趣旨を明らかにすることが著しく困難な場合は,所持者が識別できる事項を示して222条の特定手続を検討する。
電磁的記録には231条の3による書証規定の準用があり,記録の内容,利用する権限を有する者及び保存場所を確認する。

資料の消去等によって後日証拠を使用することが困難となる事情がある場合には,234条の証拠保全を早期に検討する。
単なる保存依頼は裁判所の証拠保全と同じではなく,不回答だけで224条の提出命令違反等の効果が発生するわけでもない。
第三者の記録である場合は,照会の相手方と資料の保有者を区別し,調査嘱託,文書送付嘱託その他の手段を比較する。

第7 制度改正の議論との区別

研究会報告書(令和8年2月)の19頁~31頁では,当事者間の情報取得や裁判所の関与等に関する見直しが検討されている。
研究会の提案は施行済みの法律と区別し,本記事の照会書や不回答後の対応では,現在の163条,149条及び提出命令等の規定を用いる。
将来制度の成立・施行後には,回答義務,拒絶手続及び不回答の効果を改めて確認する必要がある。

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第9 出典

e-Gov法令検索「民事訴訟法」(132条の2,149条,163条,196条・197条,220条~225条,231条の3,234条。令和8年10月3日確認)
裁判所「民事訴訟規則」(84条,28頁~29頁)
商事法務研究会・研究会資料11(令和4年12月22日,3頁~4頁。回答義務の解釈論と,制度改正の議論)
商事法務研究会・研究会報告書(令和8年2月,19頁~31頁。現行制度と見直し案を区別して参照)

質問例,期間調整,内部の確認記録等は,本記事で提案する実務上の工夫であり,裁判所が定めた一律の書式又は運用ではない。