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裁判官弾劾制度の仕組み―訴追請求,訴追委員会の調査・議決,弾劾裁判所の裁判,罷免の効果及び資格回復(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 本記事の対象と基準日

本記事は,裁判官を罷免するための弾劾の手続を,訴追の請求から,裁判官訴追委員会(以下「訴追委員会」という。)の調査・議決,裁判官弾劾裁判所(以下「弾劾裁判所」という。)の裁判,罷免の効果及び資格回復の裁判まで,条文の順に整理するものである。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。
これまでの事件の内容と件数は,同日に弾劾裁判所及び訴追委員会の公式サイトで確認した。
本記事でいう「弾劾法」は裁判官弾劾法を指す。

2 結論

①裁判官は,心身の故障のために職務を執ることができないと裁判で決定された場合を除き,公の弾劾によらなければ罷免されず,弾劾は,国会が両議院の議員で組織する弾劾裁判所が行う。
②罷免の事由は,職務上の義務に著しく違反し又は職務を甚だしく怠ったとき(弾劾法2条1号)と,職務の内外を問わず裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき(同条2号)の二つである。
③訴追委員会に罷免の訴追を求める請求は,何人もすることができ,最高裁判所は,罷免の事由があると思料するときは請求をしなければならない。
④もっとも,訴追委員会は,請求がなくても,罷免の事由があると思料するときは調査しなければならず,最高裁判所の請求は訴追の要件とされていない。
⑤罷免の訴追と訴追の猶予は,出席した訴追委員の3分の2以上の多数で決し,罷免の裁判は,審理に関与した裁判員の3分の2以上の多数の意見による。
⑥弾劾裁判所と訴追委員会は,国会の閉会中でも職権を行うことができる。
⑦罷免された者は,裁判官・検察官に任命されることができず,弁護士となる資格も失うが,罷免の裁判の宣告の日から5年を経過し相当とする事由があるとき等には,本人の請求により,弾劾裁判所は資格回復の裁判をすることができる。
⑧弾劾裁判所の公式サイトによれば,同裁判所が判断した罷免訴追事件は10件(うち罷免8件)であり,資格回復裁判請求事件は7件(うち資格回復4件)である。

第2 憲法と法律の規定

1 憲法の規定

憲法78条前段は,「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。」と定める。
憲法64条1項は,「国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。」と定め,同条2項は,「弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。」と定める。
これを受けて,裁判所法48条は,裁判官は,公の弾劾又は国民の審査に関する法律による場合及び別に法律で定めるところにより心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合を除いては,その意思に反して,免官,転官,転所,職務の停止又は報酬の減額をされることはないと定める。

2 国会法と弾劾法

国会法125条1項は,裁判官の弾劾は,各議院においてその議員の中から選挙された同数の裁判員で組織する弾劾裁判所がこれを行うと定める。
同法126条1項は,裁判官の罷免の訴追は,各議院においてその議員の中から選挙された同数の訴追委員で組織する訴追委員会がこれを行うと定める。
同法127条は,弾劾裁判所の裁判員は,同時に訴追委員となることができないと定めている。
訴追する機関と裁判する機関が分けられ,同じ議員が両方を兼ねることはできない仕組みである。
弾劾法1条は,裁判官の弾劾については,国会法に定めるもののほか,弾劾法の定めるところによるとしている。

3 分限裁判との違い

裁判官の懲戒は,弾劾とは別の制度である。
裁判官分限法2条は,裁判官の懲戒は戒告又は1万円以下の過料とすると定め,同法3条・4条により,地方裁判所等の裁判官については高等裁判所の5人の合議体が,最高裁判所及び高等裁判所の裁判官については最高裁判所の大法廷が裁判をする。
同法6条により,分限事件の手続は,当該裁判官に対して監督権を行う裁判所の申立てによって始まる。
懲戒によって裁判官の身分が失われることはなく,意に反して裁判官を辞めさせる手続は,心身の故障を理由とする分限裁判(同法1条)を除けば,弾劾(最高裁判所の裁判官については,これに加えて国民審査)だけである。
裁判官分限法10条は,当該裁判官について刑事又は弾劾の裁判事件が係属する間は,分限事件の裁判手続を中止することができると定めている。

第3 罷免の事由

1 二つの類型

弾劾法2条は,弾劾により裁判官を罷免するのは,次の場合とする。
①職務上の義務に著しく違反し,又は職務を甚だしく怠ったとき(1号)
②その他職務の内外を問わず,裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき(2号)
1号は職務に関する義務違反・職務懈怠であり,2号は職務の外の私生活上の行為も対象とする。
いずれも「著しく」又は「甚だしく」という程度の限定が付いている。

2 訴追請求で主張された事実

訴追委員会の公式サイトの「訴追審査事案統計表」によれば,昭和23年から令和7年までに罷免事由として主張された事実のうち,93.7%が2条1号に当たるものとして主張され,その中で最も多いのは「誤判不当裁判」(主張事実全体の49.1%)であった。
「その他」を除けば,続いて,「訴訟手続違反」(同13.8%),「不当訴訟指揮」(同9.4%)が多い。
これに対し,実際に罷免の訴追がされた事案は,後記第7のとおり,児童買春,ストーカー行為,盗撮など,2条2号の非行を理由とするものが多い。

第4 訴追の請求と訴追委員会の手続

1 訴追の請求ができる者

弾劾法15条1項は,「何人も、裁判官について弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し、罷免の訴追をすべきことを求めることができる。」と定める。
同条4項により,請求には事由を記載した書面を提出しなければならないが,証拠は要しない。
訴追委員会の公式サイトは,訴追請求状は郵送で提出し,手数料は不要であるとしている。
同サイトによれば,既に裁判官の身分を失っている者は訴追審査の対象とならず,過去に審議した事案と同一のものは重ねて審議しない取扱いとされている。

2 最高裁判所の請求義務と報告義務

弾劾法15条3項は,「最高裁判所は、裁判官について、弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し罷免の訴追をすべきことを求めなければならない。」と定める。
同条2項により,高等裁判所長官,地方裁判所長及び家庭裁判所長は,所定の範囲の裁判官について弾劾による罷免の事由があると思料するときは,最高裁判所にその旨を報告しなければならない。
昭和56年法律第66号の附則2項は,改正前の同条3項により「最高裁判所長官から」罷免の訴追をすべきことを求められている裁判官は,改正後の同項により「最高裁判所から」求められている裁判官とみなすと定めており,同年の改正で請求の主体が最高裁判所長官から最高裁判所に改められたことが分かる。
訴追委員会の統計表によれば,昭和23年から令和7年までの訴追請求人数は,最高裁判所が8,弁護士が2,698,国民が896,801である。

3 訴追委員会の職権による調査

弾劾法11条1項は,「訴追委員会は裁判官について、訴追の請求があつたとき又は弾劾による罷免の事由があると思料するときは、その事由を調査しなければならない。」と定める。
訴追委員会は,訴追の請求がなくても,自ら罷免の事由があると思料すれば調査をしなければならない。
弾劾法には,罷免の訴追をするために最高裁判所の請求その他の特定の者の請求を必要とする規定はない。
同条2項・3項により,訴追委員会は,官公署に調査を嘱託し,証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
弾劾法44条2項は,正当な理由がないのにこの要求に応じず,又は虚偽の陳述・記録の提出をした者を10万円以下の過料に処すると定めている。

4 訴追委員会の構成と議決

訴追委員は衆議院議員と参議院議員が各10人であり(弾劾法5条1項),各自独立してその職権を行う(同法8条)。
同法10条1項により,衆議院議員である訴追委員と参議院議員である訴追委員がそれぞれ7人以上出席しなければ,議事を開き議決することができない。
議事は出席訴追委員の過半数で決するが,罷免の訴追又は罷免の訴追の猶予をするには,出席訴追委員の3分の2以上の多数で決する(同条2項)。
訴追委員会の議事は公開しない(同条3項)。
訴追委員会の公式サイトは,訴追審査事案について,①罷免の事由に当たる事実があり訴追の必要があると認めるときの「訴追の決定」,②罷免の事由に当たる事実があるが情状により訴追の必要がないと認めるときの「訴追猶予の決定」(弾劾法13条),③罷免の事由に当たる事実がないと認めるときの「不訴追の決定」の三つを挙げている。

5 訴追期間

弾劾法12条本文は,罷免の訴追は,弾劾による罷免の事由があった後3年を経過したときは,これをすることができないと定める。
同条ただし書は,その期間内に衆議院議員の任期が満了し又は衆議院が解散されたときの延長と,同一の事由について刑事訴追があったときは事件の判決が確定した後1年を経過するまで訴追できるとする延長を定めている。
訴追委員会の公式サイトは,この3年は訴追請求状を提出する期限ではなく,訴追委員会が審議議決し,弾劾裁判所に訴追状を提出するまでの期間を含むとし,判決の日を例に,判決の確定を待たずに期間が進行すると説明している。
同サイトによれば,訴追請求状を受理してから審議議決に至るまでの期間は,半年から1年程度であり,事案によってはさらに期間を要する場合がある。

6 不訴追決定に対する不服

訴追委員会の公式サイトは,弾劾法には不訴追決定に対する不服申立ての制度が定められておらず,裁判所は訴追委員会の決定の当否を審査する権限を有しないので,不訴追決定の取消し等を求めて訴えを提起することはできないとされていると説明している。
議決の結果は訴追請求人に文書で通知されるが,議事が非公開であるため,決定の理由は知らされない。
最高裁判所が訴追委員会から受領した文書の開示を求めた例は,裁判官に対する訴追請求事案について,裁判官訴追委員会から受領した文書は,その全部が不開示情報であることの記事で紹介している。

第5 弾劾裁判所の手続

1 構成と職権の独立

裁判員は衆議院議員と参議院議員が各7人であり(弾劾法16条1項),各自独立してその職権を行う(同法19条)。
弾劾法4条は,「弾劾裁判所及び訴追委員会は、国会の閉会中でも職権を行うことができる。」と定める。
弾劾法20条本文により,衆議院議員である裁判員と参議院議員である裁判員がそれぞれ5人以上出席しなければ,審理及び裁判をすることができない。

2 訴追状の提出から審理まで

罷免の訴追は,弾劾裁判所に訴追状を提出して行い,訴追状には,訴追を受ける裁判官の官職,氏名及び罷免の事由を記載する(弾劾法14条1項・2項)。
訴追委員会は,訴追状を提出したときは,直ちにその旨を最高裁判所に通知しなければならない(同条3項)。
罷免の訴追を受けた裁判官は,何時でも弁護人を選任することができる(同法22条)。
罷免の裁判は口頭弁論に基づいて行い(同法23条1項),対審と裁判の宣告は公開の法廷で行う(同法26条)。
証拠については刑事訴訟に関する法令の規定を準用するが,勾引,押収,捜索等の強制の処分や過料の決定はできない(同法29条2項)。
弾劾裁判所は,相当と認めるときは,何時でも,罷免の訴追を受けた裁判官の職務を停止することができ(同法39条),同一の事由について刑事訴訟が係属する間は,手続を中止することができる(同法40条)。

3 罷免の裁判

裁判は,審理に関与した裁判員の過半数の意見によるが,罷免の裁判をするには,審理に関与した裁判員の3分の2以上の多数の意見による(弾劾法31条2項)。
弾劾裁判所は,既に裁判を経た事由については,罷免の裁判をすることができない(同法32条)。
罷免の裁判に付する理由には,罷免の事由及びこれを認めた証拠を示さなければならない(同法33条2項)。
終局裁判は,裁判書の謄本を罷免の訴追を受けた裁判官及び最高裁判所に送達し(同法35条),官報に掲載して公示する(同法36条)。
弾劾法には,罷免の裁判に対する不服申立ての規定はない。

4 退官による手続回避の防止

弾劾法41条は,罷免の訴追を受けた裁判官は,本人が免官を願い出た場合でも,弾劾裁判所の終局裁判があるまでは,これを免ずることができないと定める。
同法41条の2は,最高裁判所から罷免の訴追をすべきことを求められており,又は訴追委員会から罷免の訴追をされている裁判官については,公職の候補者となった公務員は届出の日に公務員たることを辞したものとみなすとする公職選挙法90条を適用しないと定める。
二つの規定は,訴追の途中で身分を離れることにより,弾劾の裁判が行われなくなることを防ぐ趣旨のものと考えられる。

第6 罷免の効果と資格回復

1 罷免の効果

弾劾法37条は,「裁判官は、罷免の裁判の宣告により罷免される。」と定める。
罷免の裁判を受けた者は,裁判官に任命されることができず(裁判所法46条2号),検察官に任命されることができず(検察庁法20条1項2号),弁護士となる資格を有しない(弁護士法7条2号)。
弾劾裁判所の公式サイトの「よくある質問と回答」は,罷免の判決の宣告を受けると同時に裁判官の身分を失い,弁護士や検察官になる資格もなくなり,退職金ももらえなくなると説明している。
退職手当の扱いは,裁判官に対する罷免判決と退職手当の記事で紹介している。

2 資格回復の裁判

弾劾法38条1項は,弾劾裁判所は,次の場合には,罷免の裁判を受けた者の請求により,資格回復の裁判をすることができると定める。
①罷免の裁判の宣告の日から5年を経過し相当とする事由があるとき(1号)
②罷免の事由がないことの明確な証拠をあらたに発見し,その他資格回復の裁判をすることを相当とする事由があるとき(2号)
同条2項により,資格回復の裁判は,罷免の裁判を受けたため他の法律の定めるところにより失った資格を回復させる。
資格回復の裁判は裁判官の身分を回復させるものではなく,回復するのは,弁護士となる資格等の法律上の資格である。

第7 これまでの事件

1 罷免訴追事件

弾劾裁判所の公式サイトの「過去の事件と判例」に掲載された罷免訴追事件10件は,次のとおりである。
被訴追者の官職は訴追当時のものであり,本記事では氏名を記載しない。

事件番号被訴追者の官職訴追提起判決宣告結論
昭和23年(訴)第1号静岡地方裁判所浜松支部判事昭和23年7月1日昭和23年11月27日不罷免
昭和23年(訴)第2号大月簡易裁判所判事昭和23年12月9日昭和25年2月3日不罷免
昭和30年(訴)第1号帯広簡易裁判所判事昭和30年8月30日昭和31年4月6日罷免
昭和32年(訴)第1号厚木簡易裁判所判事昭和32年7月15日昭和32年9月30日罷免
昭和52年(訴)第1号京都地方裁判所判事補兼京都簡易裁判所判事昭和52年2月2日昭和52年3月23日罷免
昭和56年(訴)第1号東京地方裁判所判事補兼東京簡易裁判所判事昭和56年5月27日昭和56年11月6日罷免
平成13年(訴)第1号東京地方裁判所判事兼東京簡易裁判所判事(東京高等裁判所判事職務代行)平成13年8月9日平成13年11月28日罷免
平成20年(訴)第1号宇都宮地方裁判所判事兼宇都宮簡易裁判所判事平成20年9月9日平成20年12月24日罷免
平成24年(訴)第1号大阪地方裁判所判事補平成24年11月13日平成25年4月10日罷免
令和3年(訴)第1号仙台高等裁判所判事兼仙台簡易裁判所判事令和3年6月16日令和6年4月3日罷免

同サイトの要約によれば,罷免の理由とされた事実は,略式命令請求事件の大量失効や白紙令状用紙の預け置き等(昭和30年),調停関係者からの饗応(昭和32年),検事総長の名をかたったにせ電話の録音テープを新聞記者に聞かせたこと(昭和52年),担当する破産事件の破産管財人からの物品の受領(昭和56年),児童買春(平成13年),裁判所職員の女性に対するストーカー行為(平成20年),電車内での盗撮(平成24年),担当外の事件に関するインターネット上の投稿(令和3年)である。
同サイトは,平成13年と平成20年の事件の判決が,在任中に禁錮以上の刑が確定しても弾劾裁判を経るまでは当然には失官しないとした上で判断したと紹介している。
令和3年の事件では,判決宣告までに約2年10か月を要した。
平成25年4月10日付の罷免判決の内容は,平成25年4月10日付の罷免判決の記事で紹介している。

2 訴追猶予の決定

訴追委員会の統計表によれば,昭和23年から令和7年までの受理件数の合計は26,390件で,そのうち訴追は58件(被審査裁判官の実員10人),訴追猶予は12件(同7人)であった。
件数は,同じ裁判官について同じ事由で別々の訴追請求があった場合もそれぞれ1件と数えられている。
最近3年の受理件数は,令和5年が791件,令和6年が992件,令和7年が888件である。
同委員会の公式サイトの「罷免の訴追を猶予した事案の概要」には,昭和25年から昭和45年までの7件の決定が掲載されている。
その中には,長沼基地訴訟事件の裁判長が,同事件の係属する地方裁判所の所長から個人的見解を述べた書簡を交付され,その取扱いを裁判官会議で審議することになっていたにもかかわらず写しを他の裁判官に送り,結果として書簡が報道で公表された事案(昭和45年10月19日決定)がある。
同サイトの概要によれば,同決定は,裁判官会議非公開の原則を侵したもので弾劾法2条1号に当たるとしつつ,受け取る側として助言の域を超えた干渉ではないかと一応考えることも無理でないこと等の諸事情を総合して,訴追を猶予した。
この書簡をめぐる出来事(いわゆる平賀書簡事件)の位置付けは,ブルーパージとは―昭和44年からの青法協会員裁判官への脱会勧告・再任拒否と「司法の危機」の全体像の記事で紹介している。

3 資格回復裁判請求事件

弾劾裁判所の公式サイトに掲載された資格回復裁判請求事件7件は,次のとおりである。

事件番号対象となった罷免訴追事件請求日決定日結論
昭和31年(回)第1号昭和30年(訴)第1号昭和31年5月15日昭和31年7月11日請求棄却
昭和33年(回)第1号昭和32年(訴)第1号昭和33年3月15日昭和33年3月25日請求棄却
昭和33年(回)第2号昭和32年(訴)第1号昭和33年10月21日昭和34年2月10日請求棄却
昭和37年(回)第1号昭和32年(訴)第1号昭和37年10月9日昭和38年2月4日資格回復
昭和59年(回)第1号昭和52年(訴)第1号昭和59年10月17日昭和60年5月9日資格回復
昭和61年(回)第1号昭和56年(訴)第1号昭和61年11月8日昭和61年12月25日資格回復
平成28年(回)第1号平成20年(訴)第1号平成28年4月8日平成28年5月17日資格回復

同サイトによれば,昭和31年の請求棄却の決定は,弾劾裁判には刑事裁判の執行猶予に相当する制度はなく,罷免の事由に関連する情状以外の情状は考慮されないとした。
資格回復が認められた4件は,いずれも罷免の裁判から5年を経過した後の請求であり,反省や罷免後の生活状況等から相当とする事由があるとされたものである。
同サイトの「よくある質問と回答」も,罷免された8人の裁判官のうち4人について資格回復が認められたとしている。

第8 司法試験との関係

令和8年司法試験の短答式試験(憲法)第17問は,司法権の独立に関する記述の正誤を問うものであった。
同問には,弾劾裁判所は国会から独立して職権を行うから国会閉会中も活動することができるとの記述(エ)と,罷免の訴追及び罷免の裁判の宣告に当たって最高裁判所による訴追請求の存在は必ずしも必要とされていないとの記述(オ)が含まれていた。
法務省が公表した正解によれば,同問の正解は5(エとオの組合せ)であり,この二つの記述はいずれも正しいものとされた。
本記事の第4の3と第5の1で紹介した弾劾法4条・11条1項の規定が,その根拠となる。

第9 関連記事

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平成25年4月10日付の罷免判決
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昭和27年4月発覚の刑事裁判官の収賄事件
裁判官の記録紛失に基づく分限裁判
ブルーパージとは―昭和44年からの青法協会員裁判官への脱会勧告・再任拒否と「司法の危機」の全体像

第10 出典・参考資料

1 法令

①日本国憲法(e-Gov法令検索)64条,78条
②国会法(e-Gov法令検索)125条~129条
③裁判官弾劾法(e-Gov法令検索)1条~44条,附則(昭和56年法律第66号)
④裁判官分限法(e-Gov法令検索)1条~6条,10条
⑤裁判所法(e-Gov法令検索)46条,48条
⑥検察庁法(e-Gov法令検索)20条
⑦弁護士法(e-Gov法令検索)7条
⑧公職選挙法(e-Gov法令検索)89条,90条

2 公的資料

①裁判官弾劾裁判所「過去の事件と判例」
②裁判官弾劾裁判所「よくある質問と回答」
③裁判官訴追委員会「訴追の請求」
④裁判官訴追委員会「訴追委員会の決定」
⑤裁判官訴追委員会「訴追請求の仕方」
⑥裁判官訴追委員会「罷免の訴追を猶予した事案の概要」
⑦裁判官訴追委員会「訴追審査事案統計表」
⑧法務省「令和8年司法試験短答式試験結果」(正答及び配点)

3 調査範囲

弾劾裁判所及び訴追委員会の公式サイトは,令和8年9月27日に閲覧した。
罷免訴追事件の判決書そのものは閲覧しておらず,事件の内容は弾劾裁判所の公式サイトの要約に基づいて記載した。
訴追委員会の統計の数値は,同サイトの統計表の令和7年までの数値である。