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こども性暴力防止法の施行と弁護士の役割―事業者側助言・こども側代理・聴き取りの注意点(AI作成)

第1 こども性暴力防止法とこの記事の結論

1 令和8年12月25日から施行される

こども性暴力防止法の正式名称は,「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」であり,令和6年法律第69号として公布された。
同法は,令和8年12月25日から施行される。
学校設置者等には法定の措置が義務付けられ,学習塾等の民間教育保育等事業者については,認定を受けた事業者に同等の措置が求められる仕組みである。

2 弁護士の役割は一つではない

性暴力の疑いが生じた場面で,弁護士は,事業者側で初動,調査,安全確保,関係機関との連携及び労務対応を助言する場合と,こども又は保護者の側で権利擁護,意思確認,被害申告及び支援機関との連携を担う場合がある。
事業者側の事実確認と,こどもの安全・回復のための支援は,目的も担当者も一致するとは限らない。
同じ弁護士が双方の立場を曖昧に担当すると,利益相反や,こどもが事業者の調査へ協力することを当然視する危険が生じるので,受任主体,依頼目的,情報共有の範囲及び意思決定者を最初に明確にする必要がある。

3 公開資料だけを根拠とする

本記事は,令和8年9月20日現在の法令,こども家庭庁の指針,Q&A及び公開研修資料に基づく。
個別の被害事案や関係者名は扱わず,公開資料から一般化できる実務上の確認事項だけを記載する。
個別案件では,対象事業,施行時期,所管行政庁,警察・児童相談所への連絡,労働法上の措置及び証拠保全を,最新の公式資料と当該事案の事情に即して確認する必要がある。

第2 事業者側弁護士が最初に整理する事項

1 法の対象と事業者の区分を確認する

最初に,事業者が学校設置者等に当たるのか,民間教育保育等事業者に当たるのか,後者であれば認定を受けているのか又は受ける予定があるのかを確認する。
同じ法人が複数の事業を行う場合,施設又はサービスごとに法の対象範囲が異なることがあるので,法人名だけで判断しない。
従事者の職名ではなく,実際に児童等へ提供する役務,接触の態様及び法令上の区分を確認する。

2 初動を「聴き取り」だけにしない

こども家庭庁の公開資料は,こどもへの聴き取りに先立ち,警察への通報・相談,所管行政庁への相談及び専門家への相談を検討するよう求めている。
したがって,事業者が最初に行うべき作業は,詳しい供述を直ちに取り切ることではない。
①現在も接触の危険があるか,②緊急の医療が必要か,③証拠が失われるおそれがあるか,④警察,児童相談所又は所管行政庁へいつ連絡するか,⑤誰がこどもと保護者へ説明するかを先に整理する。

3 担当者,指揮系統及び記録を決める

事業者内部では,安全確保,関係機関への連絡,こども・保護者対応,従事者対応,労務判断及び広報対応の担当を分ける。
弁護士は,誰が最終判断を行うのか,どの情報を誰へ共有するのか,時刻を含む初動記録を誰が作成するのかを確認する。
関係者が独自に繰り返し質問すると,こどもの負担を増やし,記憶や供述の評価を難しくすることがあるので,連絡経路を一本化する必要がある。

第3 こどもへの聴き取りに先立つ安全確保

1 現在の危険から離す

性暴力の疑いが具体化した場合は,こどもと加害が疑われる従事者との接触を止める必要性を検討する。
ただし,従事者への措置は,こどもの安全確保と,雇用契約,服務規律及び適正手続を別々に検討し,懲戒処分を先取りした表現を避ける。
法に基づく防止措置と労働法上の措置は,同じ資料だけで自動的に決まるものではない。

2 医療と証拠保全を遅らせない

身体的被害又は急性期の被害が疑われるときは,聴き取りを重ねる前に,医療機関及び警察へ相談する必要性を検討する。
診察は治療のためであると同時に,時期によっては客観的資料を確保する機会にもなるが,診察や資料提供の目的と範囲をこども又は保護者へ説明する必要がある。
衣類,メッセージ,写真,入退室記録,勤務表,防犯カメラ映像その他の資料については,取得者,取得日時,保存場所及び原本性を記録する。

3 外部機関との役割分担を決める

警察の捜査,児童相談所等の安全確保,医療機関の診療,事業者の内部調査及び弁護士の法的支援は,それぞれ目的が異なる。
公開研修資料は,必要に応じて警察等と調整し,司法面接を含む専門的な聴き取りを検討することにより,こどもが同じ内容を何度も話す負担を減らす考え方を示している。
事業者だけで詳細な聴き取りを終えてから外部機関へ連絡するという固定順序にしてはならない。

第4 こどもへの聴き取りの注意点

1 聴き取りの目的を限定する

初期の聴き取りは,こどもの安全を確保し,次に連絡すべき機関を判断するために必要な範囲に限定する。
誰が,いつ,どこで,何を,どの程度確認する必要があるかを事前に決め,すでに他の機関が聴き取った内容を確認する。
こどもが話したくないことを無理に話させず,途中でやめられることを伝える。

2 誘導を避け,自由な説明を尊重する

「この人に触られたのか」など結論を含む質問を重ねるのではなく,こどもが自分の言葉で話せる問いから始める。
分からないことは「分からない」,覚えていないことは「覚えていない」と答えてよいことを説明する。
聴き手が推測で言葉を補ったり,褒めることによって特定の答えを期待したりしない。

3 聴取回数と参加者を絞る

同じ内容の反復はこどもの心理的負担になり,後の供述評価にも影響し得る。
参加者を必要最小限にし,過去の聴取者,質問内容及び回答の概要を確認して,重複を避ける。
専門的な司法面接が見込まれるときは,その実施前に事業者がどこまで聴くべきかを警察又は専門家と調整する。

4 録音・録画は目的と負担を確認する

公開研修資料は,録音・録画を行う場合,こどもの同意を得て,心理的負担を与えないよう配慮する必要があるとしている。
記録を残す必要性だけでなく,利用目的,閲覧者,保存場所,保存期間及び外部提供の条件を決める。
録音・録画をしない場合も,質問と回答を区別し,聴取日時,場所,参加者及び作成者が分かる記録を早期に作成する。

第5 事業者側弁護士とこども側弁護士の役割分担

1 事業者側弁護士の役割

事業者側弁護士は,法の適用,安全確保,通報・相談,調査設計,個人情報管理,従事者への措置及び所管行政庁への対応を助言する。
警察その他の関係機関との連絡窓口を整理し,内部調査が捜査又は専門的聴取を妨げないよう調整する。
事業者の説明責任を果たしつつ,こどもの情報を必要以上に組織内又は外部へ広げない仕組みを設ける。

2 こども側弁護士の役割

こども側弁護士は,こども又は保護者の依頼に基づき,安全確保,被害申告,刑事手続,民事上の請求,学校・施設との調整及び支援制度の利用を検討する。
こどもの年齢及び発達に応じて説明し,保護者の希望とこどもの利益又は意思が一致しない可能性にも注意する。
事業者から情報提供又は聴き取りへの協力を求められたときは,その目的,範囲,記録方法及び共有先を確認する。

3 必要に応じて代理人を分ける

こども家庭庁の公開資料は,事業者側弁護士が警察等との連携を支援するとともに,被害を受けたこども側に別の弁護士を付けることを事業者へ助言する場面を示している。
また,こども側の法的支援と心理職による支援は代替関係ではなく,法的安全と心理的安全の両方を確保するために連携することが考えられる。
誰の代理人であるかを明示し,こども・保護者の同意なく情報が事業者へ共有されるとの誤解を生じさせない。

第6 情報管理,労務対応及び説明

1 情報共有は必要性と権限で判断する

犯罪事実確認,申告内容,医療情報及び聴取記録は,高度にセンシティブな情報である。
取得の法的根拠,利用目的,閲覧権限,保存場所,外部提供及び廃棄までを一つの記録管理表で確認する。
「関係者だから共有する」のではなく,各担当者がその情報を必要とする理由を確認する。

2 安全確保と懲戒判断を分ける

接触回避,配置変更又は一時的な就業上の措置は,こどもの安全確保のための暫定措置として検討されることがある。
これに対し,懲戒処分,解雇その他の不利益措置には,就業規則,事実認定,相当性及び手続の検討が必要である。
犯罪事実確認の結果又は申告の存在だけから,一律に懲戒処分が当然に有効になるわけではない。

3 こども・保護者への説明事項を記録する

説明では,現在講じた安全措置,今後連絡する機関,聴き取りの目的,情報共有の範囲,問い合わせ窓口及び次回連絡時期を明確にする。
確定していない事実を断定せず,調査の結論を約束しない。
説明者,説明日時,説明内容及び相手方の意向を記録する。

第7 弁護士が使う初動確認表

1 事業者側の確認事項

事業者側では,少なくとも次の事項を確認する。
①対象となる事業,施設及び従事者の範囲。
②こどもの現在の安全と緊急医療の必要性。
③警察,児童相談所,所管行政庁及び専門家への相談状況。
④すでに行われた聴き取りの回数,担当者,質問及び記録。
⑤失われるおそれのある客観資料と保存措置。
⑥こども・保護者への説明者と連絡窓口。
⑦事業者側弁護士とこども側支援者の役割分担。
⑧従事者に対する暫定措置と,最終的な労務判断の区別。

2 こども側の確認事項

こども側では,少なくとも次の事項を確認する。
①こどもが現在安心して過ごせる場所と支援者。
②医療,心理,福祉及び法的支援の必要性。
③これまで話した相手,回数及び残っている記録。
④警察その他の機関へ伝えることについての説明と意向。
⑤事業者へ提供する情報の範囲と目的。
⑥こどもと保護者の意向が異なる場合の対応。
⑦緊急対応後の継続支援と連絡方法。

第8 出典・確認範囲

1 法令及びこども家庭庁資料

e-Gov法令検索「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和8年9月20日確認)。
こども家庭庁「こども性暴力防止法」(令和8年9月20日確認)。
こども家庭庁「こども性暴力防止法に関する解説動画・資料」(令和8年9月20日確認)。
④こども家庭庁「こどもへの聴き取りに関する留意点<知識編>」(令和8年9月18日更新),同「性暴力を受けたこどもへの対応のポイント」(令和8年9月18日更新)及び「教育・保育等を提供する事業者による児童対象性暴力等の防止等の取組を横断的に促進するための指針」(同庁ウェブサイト掲載資料)。

2 確認していない事項

本記事は,個別事件の記録,非公開の弁護士会資料又は当事者の供述を根拠としていない。
個別の通報義務,行政報告,労務措置,刑事手続及び損害賠償の成否は,事業・施設の根拠法,事実関係及び最新資料により別途検討する必要がある。