第1 刑訴法382条の基準
1 判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認
刑事訴訟法382条の事実誤認は,原判決の事実認定に誤りがあるだけでなく,その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかな場合に問題となる。
2 控訴審は第一審の心証を作り直す場ではない
最高裁平成24年2月13日判決は,控訴審が事実誤認をいうには,第一審判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要があるとした。
第2 論理則・経験則違反の示し方
1 推認過程を分解する
原判決が,間接事実から要証事実をどのように推認したかを分解する。前提事実の誤り,推認の飛躍,反対仮説の検討漏れ及び証拠相互の矛盾を指摘する。
2 供述信用性
供述の一部だけを取り出すのではなく,変遷,客観証拠との整合性,利害関係,誘導の可能性及び供述時の条件を示す。第一審が直接見聞した供述態度を,記録上の別評価だけで置き換える主張は慎重に構成する。
第3 控訴趣意書の組み立て
1 争点ごとに六段階で書く
①原判決の認定,②根拠証拠,③不合理な推認,④見落とされた証拠・事実,⑤合理的な認定,⑥主文への影響の順で書く。
2 「疑わしきは被告人の利益に」との関係
この原則を掲げるだけでは足りない。原判決のどの推認が合理的疑いを超えていないかを,証拠に即して示す。
第4 裁判員裁判
1 直接主義・口頭主義の重み
裁判員裁判では第一審の直接主義・口頭主義が徹底されるため,控訴審の事後審査は一層慎重であるべきとされる。
2 無条件の尊重ではない
第一審判断に論理則・経験則違反があれば破棄され得る。第一審尊重は,具体的な不合理を審査しないという意味ではない。
第5 根拠資料及び関連記事
刑事訴訟法382条(e-Gov法令検索)及び最高裁平成24年2月13日判決を確認した。
裁判員裁判については,裁判員裁判の控訴審を参照されたい。