第1 恩赦法の位置付けと調査基準日
恩赦法(昭和22年法律第20号)は,日本国憲法73条7号に基づいて内閣が決定し,同法7条6号に基づいて天皇が認証する恩赦について,種類,効力及び基本手続を定める法律である。
大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権の5種類を定めている。
以下は,令和8年9月23日時点のe-Gov法令検索の恩赦法に基づき,現行の各条の内容を現代語表記で整理したものである。
条文の逐語引用ではないため,正式な条文はe-Gov法令検索で確認する必要がある。
e-Gov法令検索では「未施行あり」と表示されている。
現行条文と,令和7年法律第39号による将来施行の第14条改正を区別して確認する必要がある。
第2 現行条文
1 恩赦の種類と効力(第1条から第5条まで)
第1条 大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権については,この法律の定めるところによる。
第2条 大赦は,政令で罪の種類を定めてこれを行う。
第3条 大赦は,前条の政令に特別の定めのある場合を除いては,大赦のあった罪について,次の効力を有する。
①有罪の言渡しを受けた者については,その言渡しは効力を失う。
②まだ有罪の言渡しを受けない者については,公訴権は消滅する。
第4条 特赦は,有罪の言渡しを受けた特定の者に対してこれを行う。
第5条 特赦は,有罪の言渡しの効力を失わせる。
2 減刑・刑の執行の免除・復権(第6条から第10条まで)
第6条 減刑は,刑の言渡しを受けた者に対して政令で罪若しくは刑の種類を定めてこれを行い,又は刑の言渡しを受けた特定の者に対してこれを行う。
第7条1項 政令による減刑は,その政令に特別の定めのある場合を除いては,刑を減軽する。
同条2項 特定の者に対する減刑は,刑を減軽し,又は刑の執行を減軽する。
同条3項 刑の全部の執行猶予の言渡しを受けてまだ猶予の期間を経過しない者に対しては,前項の規定にかかわらず,刑を減軽する減刑のみを行うものとし,また,これとともに猶予の期間を短縮することができる。
ただし,刑の全部の執行猶予の言渡しがされているものとみなされている者に対しては,猶予の期間の短縮は行わない。
同条4項 刑の一部の執行猶予の言渡しを受けてまだ猶予の期間を経過しない者に対しては,2項の規定にかかわらず,刑を減軽する減刑又はその刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を減軽する減刑のみを行うものとし,また,刑を減軽するとともに猶予の期間を短縮することができる。
ただし,刑の一部の執行猶予の言渡しがされているものとみなされている者に対しては,猶予の期間の短縮は行わない。
第8条 刑の執行の免除は,刑の言渡しを受けた特定の者に対してこれを行う。
ただし,刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者又は刑の一部の執行猶予の言渡しを受けてその刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わった者であって,まだ猶予の期間を経過しないものに対しては,その刑の執行の免除は行わない。
第9条 復権は,有罪の言渡しを受けたため法令の定めるところにより資格を喪失し,又は停止された者に対して政令で要件を定めてこれを行い,又は特定の者に対してこれを行う。
ただし,刑の執行を終わらない者又は執行の免除を得ない者に対しては,これを行わない。
第10条1項 復権は,資格を回復する。
同条2項 復権は,特定の資格についてこれを行うことができる。
3 既成の効果・個別恩赦の申出・証書・付記(第11条から第15条まで)
第11条 有罪の言渡しに基づく既成の効果は,大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除又は復権によって変更されることはない。
第12条 特赦,特定の者に対する減刑,刑の執行の免除及び特定の者に対する復権は,中央更生保護審査会の申出があった者に対してこれを行うものとする。
第13条 特赦,特定の者に対する減刑,刑の執行の免除又は特定の者に対する復権があったときは,法務大臣は,特赦状,減刑状,刑の執行の免除状又は復権状を本人に下付しなければならない。
第14条 大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除又は復権があったときは,検察官は,判決の原本にその旨を付記しなければならない。
第15条 この法律の施行に関し必要な事項は,法務省令で定める。
第3 令和7年6月1日施行の改正
1 拘禁刑の創設に伴う整理
令和4年法律第68号による改正は,懲役及び禁錮を拘禁刑に一本化する刑法改正の施行に合わせ,恩赦法の用語と執行猶予に関する規定を整理した。
恩赦法の改正部分は令和7年6月1日に施行された。
2 第7条3項及び4項のただし書
現行の第7条3項及び4項には,刑法改正法の経過措置によって執行猶予の言渡しを受けているものとみなされる者について,恩赦による猶予期間の短縮を行わない旨のただし書がある。
旧記事にはこのただし書がなく,令和8年9月23日時点の現行条文とは一致していなかった。
第4 第14条の未施行改正
1 改正内容
情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和7年法律第39号)附則23条は,恩赦法14条を改正する。
裁判書又は裁判を記載した調書が書面である場合は原本に恩赦があった旨を付記し,電磁的記録である場合は当該記録にその旨を記録する仕組みに分ける改正である。
2 施行時期
同法附則1条本文は,令和9年3月31日までの間において政令で定める日から施行すると定めている。
調査基準日である令和8年9月23日時点では,e-Gov法令検索上,この第14条改正は未施行であるため,第2に掲げた現行条文へ混在させていない。
第5 恩赦法施行規則と個別恩赦の手続
恩赦法施行規則は,個別恩赦の上申,出願,審査及び恩赦状の伝達等を定めている。
本人が出願しただけで恩赦の法的効果が生じるものではなく,上申権者による上申,中央更生保護審査会の審査と申出,内閣の決定及び天皇の認証を経る。
法務省の恩赦に関する説明は,政令恩赦と個別恩赦を区別し,個別恩赦について,刑事施設の長,検察官又は保護観察所の長による上申から中央更生保護審査会の審査に至る流れを説明している。
具体的な出願方法は恩赦の手続で整理している。
第6 関連記事
恩赦制度はなぜ存在するのかは,昭和23年の最終意見書が示した4つの存在理由と現在の刑事政策上の役割を扱っている。
恩赦の効果は,5種類の恩赦が裁判や資格に及ぼす法的効果を扱っている。
恩赦申請時に作成される調査書は,個別恩赦の審査資料を扱っている。
戦後の政令恩赦及び特別基準恩赦は,実施時期,対象人員及び制度の変遷を整理している。
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第7 出典
1 法令
日本国憲法
恩赦法
恩赦法施行規則
刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律