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恩赦の調査書――上申権者が作成する様式第7号とその記載事項(AIリライト)

第1 この記事が扱う対象

1 調査書とは何か

個別恩赦の上申は,刑事施設の長,保護観察所の長又は検察官(上申権者)が,本人からの出願を受け,又は職権により,中央更生保護審査会に対して行う。上申権者は,恩赦上申書に一定の書類を添付しなければならず,その添付書類の一つが調査書である。調査書は,恩赦法施行規則2条1項3号又は4条1項3号に基づいて上申権者が作成する書類であり,恩赦上申事務規程(昭和58年12月23日法務大臣訓令)10条により様式第7号によることとされている。同規程を運用するための法務省保護局総務課長通知「恩赦上申事務規程の解説の送付について」(平成28年3月31日付)は,調査書を「審査会における審査の資料として最も重視される書類である」と位置づけている。

本記事は,調査書の法的根拠,恩赦上申事務規程が定める記載要領及び記載例,並びに調査書に基づく審査会の判断の法的性格を,情報公開請求により入手し当事務所のウェブサイトで公開している規程原文及び解説通知の原文に基づいて整理するものである。個別恩赦の出願先,出願できる時期,願書の記載事項その他の手続全体は,別稿「恩赦の手続――出願先・時期・必要書類・審査の流れ」で扱っており,本稿はその関連記事に位置づけられる。特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権という恩赦の種類ごとの効果は,別稿「恩赦の効果――五種類の違いと前科・資格・再審への影響」で扱っている。

2 検討の時点と確認した資料

本記事が検討の基礎とするのは,恩赦上申事務規程及びその解説通知の原文(いずれも当事務所が情報公開請求により入手し,ウェブサイトで公開している一次資料),恩赦法・恩赦法施行規則・更生保護法の現行条文(令和8年8月15日にe-Gov法令検索で確認),並びに判例秘書プラスで全文を確認した裁判例である。恩赦上申事務規程は昭和58年の制定後,昭和62年,平成7年,平成13年,平成18年,平成20年及び平成24年に改正されており,当事務所が入手した規程原文はこのうち平成24年9月28日施行分までを反映している。これより後の改正の有無は,公表資料からは確認できなかった。

第2 個別恩赦の上申手続と添付書類の体系

1 上申権者と上申の経路

恩赦法施行規則1条の2は,刑事施設に収容され又は労役場若しくは監置場に留置されている者についてはその刑事施設の長,保護観察に付されている者についてはその保護観察をつかさどる保護観察所の長,その他の者については有罪の言渡しをした裁判所に対応する検察庁の検察官が,職権で特赦,特定の者に対する減刑又は刑の執行の免除の上申をすることができると定める。同条2項は,これらの上申権者が本人から出願を受けたときは,意見を付して中央更生保護審査会にその上申をしなければならないとする。復権については,同規則3条が同様の構造を定めており,上申権者は,保護観察に付されたことのある者については最後にその保護観察をつかさどった保護観察所の長,その他の者については最後に有罪の言渡しをした裁判所に対応する検察庁の検察官である。

恩赦上申事務規程4条は,職権による恩赦の上申は恩赦上申書(甲)(様式第1号)により,出願による恩赦の上申は恩赦上申書(乙)(様式第2号)により行うと定め,上申書は正副2通を作成して法務省保護局に送付するとしている。調査書は,このいずれの経路による上申書にも添付される書類である。

恩赦上申書(乙)の様式
恩赦上申書(乙)(出願による上申の場合の様式第2号)

2 恩赦法施行規則が定める添付書類と調査書の根拠

恩赦法施行規則2条1項は,特赦,減刑又は刑の執行の免除の上申書に添付すべき書類として,判決の謄本又は抄本(1号),刑期計算書(2号)及び「犯罪の情状,本人の性行,受刑中の行状,将来の生計その他参考となるべき事項に関する調査書類」(3号)の3種を定める。復権については,同規則4条1項が同様に,判決の謄本又は抄本(1号),刑の執行を終わり又は執行の免除のあったことを証する書類(2号)及び「刑の免除の言渡しのあった後又は刑の執行を終わり若しくは執行の免除のあった後における本人の行状,現在及び将来の生計その他参考となるべき事項に関する調査書類」(3号)の3種を定めている。調査書は,このうち各条1項3号にいう「調査書類」の実体であり,恩赦の種類(特赦・減刑・刑の執行の免除か,復権か)によって,行状等をどの時点から把握するかという条文上の視点が異なる。

3 恩赦上申事務規程が定める書類一式と編てつ順序

恩赦上申事務規程は,恩赦法施行規則が定める添付書類の実務上の様式を,条文ごとに割り当てている。5条は,恩赦上申書の正本に前科調書及び戸籍の謄本又は抄本を追加的な添付書類として定め,必要があれば情状に関する参考資料も添付できるとする。6条は裁判書の謄本又は抄本,7条は判決原本が滅失又は破損した場合に検察官が作成する裁判に関する調査書(様式第3号),8条は禁錮以上の刑又は拘留について上申権者が作成する刑期計算書(様式第4号)及び罰金又は科料について検察官が作成する刑執行証明書(様式第5号),9条は刑の執行に関する帳簿書類が滅失した場合に検察官が作成する刑執行調査書(様式第6号)を,それぞれ定める。10条が定めるのが,本稿の主題である調査書(様式第7号)である。

これらの書類は,13条により編てつの順序も定められている。恩赦上申書,裁判書の謄本又は抄本,刑期計算書又は刑執行証明書,前科調書,調査書,恩赦の願書,戸籍の謄本又は抄本,情状に関する参考資料の順であり,調査書は前科調書に続く5番目に位置づけられる。前科調書が前科の有無・内容・執行状況という客観的な記録を示す書類であるのに対し,調査書はそれに続けて,本人の性格や行状,家族関係や生計といった,記録だけでは把握できない事情を上申権者自身の調査によって明らかにする書類である。

第3 調査書(様式第7号)の法的根拠

1 恩赦法施行規則2条1項3号・4条1項3号

前記のとおり,調査書の直接の法的根拠は,恩赦法施行規則2条1項3号(特赦,減刑及び刑の執行の免除の場合)又は同規則4条1項3号(復権の場合)である。恩赦上申事務規程10条は,「規則第2条第1項第3号又は第4条第1項第3号の規定により恩赦上申書に添付する調査書類は,調査書(様式第7号)による」と定めており,条文上の「調査書類」という抽象的な文言を,具体的な様式に落とし込む役割を果たしている。

2 更生保護法90条が定める法定調査事項

調査書が最終的に供される先は,中央更生保護審査会である。更生保護法90条1項は,審査会が法務大臣に恩赦の実施について申出をする場合,あらかじめ「申出の対象となるべき者の性格,行状,違法な行為をするおそれの有無,その者に対する社会の感情その他の事項」について必要な調査を行わなければならないと定める。同条2項は,刑事施設若しくは少年院に収容されている者又は労役場に留置されている者について特赦,減刑又は刑の執行の免除をする場合には,その者が社会の安全及び秩序を脅かすことなく釈放されるに適するかどうかを考慮しなければならないとする。調査書の記載事項は,この90条が審査会に課す法定調査事項を,上申権者の段階で具体化したものと位置づけられる。

3 恩赦上申事務規程10条とその沿革

恩赦上申事務規程は,第1章総則(1条~3条),第2章恩赦上申(4条~16条)及び第3章恩赦出願期間短縮上申(17条~21条)から成る全21条の法務大臣訓令である。調査書を定める10条は第2章に置かれ,恩赦上申書の添付書類を定める5条から16条までの一連の規定の中に位置する。前記のとおり,同規程は昭和58年12月23日の制定以来複数回の改正を経ており,当事務所が確認できた最新の改正は平成24年9月28日施行分である。恩赦法自体は,拘禁刑の創設に伴う令和7年6月1日施行の法改正により「懲役」「禁錮」の語を「拘禁刑」に統一しており,現行の恩赦法施行規則6条も「有期の拘禁刑」「無期の拘禁刑」という語を用いている。もっとも,恩赦上申事務規程及びその解説通知が調査書の様式・運用実務についてこれに対応する改正を経たかどうかは,公表資料からは確認できなかった。

第4 法務省の解説通知が示す作成要領

1 審査に最も影響する書類としての位置づけ

解説通知は,調査書について「審査会における審査の資料として最も重視される書類である」としたうえで,更生保護法90条が定める法定調査事項を引用し,上申権者は,その調査結果が審査会の恩赦相当又は不相当の判断の基礎となり審査に大きな影響を及ぼすものであることを念頭に置いて調査書を作成するべきであるとする。上申権者の作成する調査書が,中央更生保護審査会という別の機関の判断を実質的に基礎づける資料として位置づけられている点に,この書類の重みがある。

恩赦上申事務規程の解説の送付について(通知)の表紙
恩赦上申事務規程の解説の送付について(平成28年3月31日付の法務省保護局総務課長の通知)

2 秘密保持と客観的・総合的な調査の要請

解説通知は,調査の性質上,本人その他関係人の名誉,信用及び人権に関することが多いから秘密の保持に特に慎重な配意が必要であるとし,保護司等に調査を依頼する場合にはあらかじめ秘密保持について注意を喚起することが望ましいとする。調査に当たっては,恩赦上申事務規程2条が定める公正な態度で臨み,本人又は関係人の申立てのみに依拠せず,主観的,一面的な調査に偏らず,客観的,総合的に行い,かつ豊富な資料に基づいて信用性を十分に確保する必要があるとされる。また,検察庁,刑事施設及び保護観察所の間の相互協力(同規程3条参照)が求められ,記載は簡明・平易にしつつも問題点は深く掘り下げ,抽象的でなく具体的に記載して,調査書を一読すれば本人の過去及び現在の状況が明らかになるよう配慮する必要があるとされている。

3 様式第7号11項目の記載要領

様式第7号は,氏名及び年齢,心身の状況,経歴及び行状,家族の状況,資産及び生計並びに将来の生計方針,犯時の職業及び生活状況,犯罪の動機・原因及び概要,犯罪に関する参考事項,被害者及び社会の感情,その他参考となる事項,総合所見の11項目から成る。解説通知は,各項目について記載上の留意点を示している。「氏名及び年齢」欄の犯時年齢は,対象刑が複数ある場合には最後の犯罪事実を敢行したときの年齢を「最終犯時」として記載する。「心身の状況」欄には健康状態(壮健・普通・虚弱・疾病等の別),知能程度及び性格を記載し,虚弱・疾病の場合は病名・病状・治療状況を,性格については犯行時以後の変化があればこれを含めて記載する。

「経歴及び行状」欄は上申権者の種類によって記載事項が異なり,検察官上申の場合は経歴の概要,就業状況その他平素の行状及び近隣の風評等,刑事施設の長の上申の場合は経歴の概要に加え,受刑中の作業や各種指導の状況を含めた矯正処遇等の進捗状況,職員に対する態度,他の受刑者との折り合い,賞罰の有無とその内容,面会・書信の受発信の状況及びその他の行状等,保護観察所の長の上申の場合は経歴の概要,保護観察の実施状況,就業状況その他平素の行状及び近隣の風評等を記載する。「家族の状況」欄には同居家族及び別居の両親・子・兄弟姉妹その他生活に相当程度影響を及ぼしている者の氏名・年齢・続柄・職業・本人との折り合いを記載し,収容中の者については帰住予定地の状況も併記する。「資産及び生計並びに将来の生計方針」欄は,資産状況,生計状況及び将来の生計方針の3つに分けて記載する。「犯罪の動機,原因及び概要」欄は,判決書に記載があっても「判決書のとおり」とせず簡潔にまとめて記載することとされている。

4 被害者及び社会の感情欄の特則

「被害者及び社会の感情」欄は,被害弁償又は慰謝・慰霊の状況並びに被害者(遺族を含む)及び地域社会の感情等を記載する欄であり,解説通知が特に詳しく留意点を示す項目である。被害者及び社会の感情は恩赦を相当とするか否かについての意見を含むものであるため,裁判時に示談が成立し嘆願書等が提出されていた場合であっても,恩赦上申時にこれらの者の感情が融和しているか否か,恩赦に異議があるか否かを改めて明らかにする必要があるとされる。複数の被害者がいる事案では被害者ごとに示談・被害弁償の内容と慰謝・慰霊の措置をまとめて記載し,交通事故の事案では損害賠償金の内訳(保険による賠償金と自己負担金の別)を明らかにする。社会の感情については,犯行地・居住地の有識者(保護司会長,町内会長,商工会長等)の意見を徴することが必要な場合もあるが,その際は本人及び被害者と利害関係のない公平な第三者から意見を徴する必要があるとされる。被害者(遺族)の感情の記載方法についても,「感情は融和している」と「感情を刺激するおそれはない」という表現を区別して用いる基準が示されている。

第5 様式第7号の記載例に見る運用の実際

恩赦上申事務規程の解説通知には,様式第7号の記載例が4例添付されている。記載例1は検察官の上申の場合における罰金刑に処せられた者の特赦又は復権の例,記載例2は刑事施設の長の上申の場合における無期刑受刑者の減刑の例,記載例3は保護観察所の長の上申の場合における無期刑仮釈放事件の刑の執行の免除の例,記載例4は保護観察所の長の上申の場合における有期刑仮釈放事件の復権の例である。上申権者の種類(検察官・刑事施設の長・保護観察所の長)と恩赦の種類(特赦・復権,減刑,刑の執行の免除)の組合せを変えた4例が示されており,第4の3で述べた「経歴及び行状」欄の記載事項が上申権者ごとに異なることに対応している。

各記載例では,家族の状況欄に同居家族・別居の親族それぞれの氏名(匿名化されている)・年齢・職業・続柄が具体的に記載され,経歴及び行状欄には出生から婚姻,就業,資格取得に至る経歴が時系列で記載されるなど,解説通知が求める「具体的な記載」の水準を確認することができる。実際の記載例の全文は,本記事末尾の出典欄からPDFで確認できる。

調査書(様式第7号)記載例の冒頭部分
調査書(様式第7号)記載例1(罰金刑に処せられた者の特赦又は復権の例)の冒頭部分

第6 調査書に基づく判断の法的性格――取消訴訟の対象になるか

調査書に基づいて中央更生保護審査会が行う判断,すなわち恩赦の実施について法務大臣に申出をするかどうかの議決は,本人が取消訴訟等によってその適否を争うことができる行政処分に当たるのだろうか。この論点を正面から扱った公表裁判例として,大阪地方裁判所昭和38年7月16日決定(昭和38年(行モ)第4号,訟務月報9巻9号1117頁)がある。同決定は,刑事施設に収容されていた死刑確定者が,中央更生保護審査会が個別恩赦の申出をしない旨の議決をしたこと及び刑事施設の長がその旨を通知したことについて,これらの取消しを求める本案訴訟を提起したうえで,本案判決があるまで死刑執行命令又は上記各処分の効力を停止するよう求めた執行停止事件である。

同決定は,まず,恩赦法施行規則の規定によれば,出願者には特赦等の請求権があるわけではなく,出願は中央更生保護審査会の職権発動を促すだけの意味を有するにすぎないとした。そのうえで,本人からの出願があった場合に上申権者が意見を付して審査会に上申すべき義務が生じることは規則上明らかであるが,審査会が不相当の議決をしたときに上申権者がその旨を本人に通知する取扱い(恩赦法施行規則10条〔当時〕参照)は,本人には請求権がない以上,本人の心理に働きかけ改善及び受刑についての心構えに資することを慮ったにすぎない単なる事実行為であり,これを行政処分として取消訴訟の対象と考えることはできないと判示した。主文は,申請人の申請をいずれも却下するというものである。本決定は,裁判所ウェブサイトには掲載されておらず,判例秘書プラスで全文を確認した。

調査書自体は上申権者が作成する内部的な調査資料であって,本人に開示されることが予定された書類ではない。本決定が示す枠組みを踏まえると,調査書の記載内容やこれに基づく審査会の相当・不相当の判断は,恩赦法及び恩赦法施行規則が本人に恩赦を求める法的な権利を認めていないことの帰結として,本人が独立にその適否を争う手段に乏しいという性格を持つことになる。

第7 恩赦の願書との違い――本人側の書式との対比

調査書は上申権者が作成する書類であるのに対し,本人が上申権者に提出する書類は恩赦の願書である。恩赦法施行規則9条1項は,願書に出願者の氏名,出生年月日,職業,本籍及び住居,有罪の言渡しをした裁判所及び年月日,罪名,犯数,刑名及び刑期又は金額,刑執行の状況,上申を求める恩赦の種類,出願の理由を記載すべきことを定め,恩赦上申事務規程12条は,この願書についてできる限り恩赦願書(様式第8号)によらせるとしている。調査書が上申権者による調査結果を記載する書類であるのに対し,願書は本人が自ら出願の理由を記載して提出する書類であり,作成主体と性質を異にする。

実務家向けの解説書にも,恩赦の出願に関する書式の例が紹介されている。東京弁護士会法友全期会刑事弁護研究会編『新・刑事弁護マニュアル――手続の勘所と実践知』(ぎょうせい,2022年)は,地方検察庁検事正宛ての恩赦の出願書のひな型を掲載しており,出願人及び代理人弁護士の記載欄,有罪判決の言渡し内容等の記載事項を示している。恩赦法施行規則が定める願書の記載事項を満たしていれば,恩赦上申事務規程が定める参考様式と同一でなくても適法な願書として扱われるとされており,実務書が示すひな型は,この余地を活用した記載例の一つと位置づけられる。弁護士が代理人として出願することも制度上可能であるが,代理人を選任することで恩赦が認められやすくなることを示す公表統計はない。

第8 調査の実務をめぐる指摘――被害者等調査の位置づけ

調査書の記載事項のうち被害者及び社会の感情欄の調査は,保護観察所の保護観察官が行う被害者等調査によって支えられる場面がある。太田達也『仮釈放の理論――矯正・保護の連携と再犯防止』(慶應義塾大学出版会,2017年)は,仮釈放審理のための被害者等調査を主たる検討対象としつつ,同種の調査が恩赦上申のための調査においても行われることに言及したうえで,この調査の在り方について批判的な検討を加えている。同書は,被害者等調査における被害者は調査の「客体」であって「主体」ではなく,被害者が意見表明を希望しても機会が保障されるとは限らない一方で,そっとしておいてほしいと考える被害者にまで調査担当者が連絡を取ることで二次的な負担を生じさせかねないという問題を指摘する。犯罪被害者等基本法の制定後に導入された被害者の意見等聴取制度が別途存在するとしても,これによって被害者等調査そのものが持つ上記の構造的な問題が解消されるわけではないという趣旨の指摘である。

解説通知が「被害者及び社会の感情の調査に当たっては,調査に当たる者に,調査の趣旨,事案の内容,本人の現在の生活状況や心情等について熟知させ,適切な調査が行われるよう配慮する必要がある」と述べているのは,調査を担当する者の姿勢に対する注意喚起であるが,被害者が調査の対象とされること自体が持つ性格については踏み込んでいない。調査書の被害者及び社会の感情欄が恩赦の相当性判断に大きな影響を持つ記載事項である以上,その基礎資料を得るための調査の在り方は,制度の公正さを検討するうえで併せて考慮されるべき論点である。

第9 中央更生保護審査会の現在の構成

調査書が最終的に供される中央更生保護審査会は,更生保護法4条により法務省に置かれ,同法5条により委員長及び委員4人(うち2人は非常勤)をもって組織される合議制の機関である。委員長及び委員は,優れた識見を有する者のうちから両議院の同意を得て法務大臣が任命し,任期は3年である(同法6条,7条)。参議院の議案審議情報によれば,中央更生保護審査会委員長には小川秀樹氏が任命されており,直近では令和8年6月9日提出,同月11日の衆議院本会議及び同月12日の参議院本会議における議決を経て再任されている。

出典・参考資料

1 法令

恩赦法(昭和22年法律第20号)8条・11条・12条(e-Gov法令検索)
恩赦法施行規則(昭和22年司法省令第78号)1条の2・2条・3条・4条・6条・9条(e-Gov法令検索)
更生保護法(平成19年法律第88号)4条~8条・89条・90条(e-Gov法令検索)

2 裁判例

①大阪地方裁判所決定昭和38年7月16日(昭和38年(行モ)第4号,訟務月報9巻9号1117頁。裁判所HP未掲載,判例秘書プラスにより全文確認)

3 公文書・行政資料

恩赦上申事務規程(昭和58年12月23日付の法務大臣訓令)(情報公開請求により入手した原文のPDF)
恩赦上申事務規程の解説の送付について(平成28年3月31日付の法務省保護局総務課長の通知)(情報公開請求により入手した原文のPDF,実頁27頁~31頁が第10条〔調査書〕関係)
調査書の記載例(罰金刑に処せられた者の特赦又は復権の例)(様式第7号記載例1)
調査書の記載例(無期刑受刑者の減刑の例)(様式第7号記載例2)
調査書の記載例(無期刑仮釈放者の刑の執行の免除の例)(様式第7号記載例3)
調査書の記載例(有期刑仮釈放事件の復権の例)(様式第7号記載例4)
中央更生保護審査会委員長に小川秀樹君を任命することについて同意を求めるの件(参議院・第221回国会・議案審議情報,提出令和8年6月9日)

4 文献

①太田達也『仮釈放の理論――矯正・保護の連携と再犯防止』(慶應義塾大学出版会,2017年)弁護士ドットコムライブラリー・ビューア144頁~145頁・160頁・236頁付近(被害者等調査に関する記述)
②東京弁護士会法友全期会刑事弁護研究会編『新・刑事弁護マニュアル――手続の勘所と実践知』(ぎょうせい,2022年)弁護士ドットコムライブラリー・ビューア298頁・501頁付近(恩赦の出願書のひな型)
③大塚仁・河上和雄・中山善房・古田佑紀編『大コンメンタール刑法〔第3版〕第1巻〔序論・第1条~第34条の2〕』(青林書院,2015年)弁護士ドットコムライブラリー・ビューア758頁~766頁・779頁付近
④林眞琴・北村篤・名取俊也『逐条解説 刑事収容施設法〔第3版〕』(有斐閣,2017年)弁護士ドットコムライブラリー・ビューア921頁~922頁付近(恩赦による釈放の実務手続)