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中国政府によるサンフランシスコ平和条約違法・無効論|主張の根拠,締約国への効力及び台湾条項への影響(AI作成)

第1 結論――条約全体の効力と中国への効力を分ける

本記事は,令和8年9月1日現在の中国政府,日本政府,条約本文及び公刊外交文書を確認し,中国政府によるサンフランシスコ平和条約の違法・無効論を整理するものである。
中国政府が同条約を「違法・無効」と述べていることは確認できるが,その発言だけから,日本と批准国との間の条約関係まで消滅したと結論することはできない。

問題本記事の結論
中国政府の主張は何か中国などを除外した単独講和であり,昭和17年の連合国共同宣言,国連憲章及び国際法の基本原則に反するため,中国の領土・主権に関する処分は違法・無効であるという主張である。
締約国間の効力はどうなるか中国は条約当事国ではないが,中国政府が条約を承認しないことだけで,日本と各批准国との間の第1条・第23条等の効力を失わせるものではない。
台湾条項はどうなるか第2条(b)は日本の権利,権原及び請求権の放棄を定めるが,帰属先を定めていない。中国の無効論は中国の主権主張を示すが,日本の権利を復活させるものでも,同条項だけで中華人民共和国への帰属を確定するものでもない。

以下では,「中国政府が述べた内容」という情報源上の事実,「条約本文から確認できる法的構造」及び「本記事の評価」を区別する。
台湾の最終的な法的地位そのものを決定することは,本記事の対象ではない。

第2 中国政府は何を違法・無効と主張しているか

1 令和7年8月18日の中国外交部記者会見

中国外交部の令和7年8月18日記者会見で,毛寧報道官は,サンフランシスコ平和条約を,米国が一部の国を集め,中華人民共和国及びソ連を排除して日本と単独講和を行った違法・無効な文書であると述べた。
その根拠として,①中国,米国,英国及びソ連など26か国が署名した昭和17年の連合国共同宣言に反すること,②国連憲章及び国際法の基本原則に反すること,③中国が非締約国であるのに台湾の主権帰属その他の中国の領土・主権上の権利を処分したことを挙げた。

同会見では,中華人民共和国の成立は「中国」という国際法主体の変更ではなく政府の交代であり,中華人民共和国政府が台湾を含む中国の主権を全面的に享有・行使するという中国政府の立場も示された。
これは中国政府の国家承継・政府承認に関する主張であり,本記事が争いのない事実として認定するものではない。

2 令和7年11月28日の中国外交部記者会見

中国外交部の令和7年11月28日記者会見では,Bloombergの記者が,違法・無効であるなら日本と条約の他の当事国との戦争状態がなお存在するという主張なのかを尋ねた。
毛寧報道官は,前記の単独講和禁止,国連憲章及び国際法の基本原則を繰り返し,中国の領土・主権に関する条約上の取扱いは違法で無効であると答えたが,戦争状態が継続するかという質問には直接答えなかった。

同じ会見で,記者は,昭和53年の日中平和友好条約によって中国がサンフランシスコ平和条約を受け入れたのではないかとも質問した。
毛寧報道官は,中国は台湾の主権その他の中国の領土・主権に関する同条約の取扱いを一度も承認せず,同条約を一度も受け入れていないと答え,昭和47年の日中共同声明を挙げた。

3 「条約全体の無効」と「中国に関する処分の無効」には幅がある

中国政府の表現には,サンフランシスコ平和条約を文書全体として違法・無効と呼ぶ部分と,中国の領土・主権に関する取扱いを違法・無効とする部分がある。
後者は,非締約国である中国に条約上の義務又は領土処分を対抗できないという問題に近いが,前者は,日本と批准国との間の条約関係まで失効させるのかという別の問題を生じさせる。

確認した二つの記者会見では,国連憲章の具体的な条文,違反するとされる国際法上の基本原則の名称及び違反から条約全体の無効が導かれる法的経路は示されていない。
したがって,中国政府の公式発言から確認できるのは主張の結論と三つの大枠の根拠までであり,条約全体の無効原因に関する詳細な法律構成は確認できない。

第3 昭和17年連合国共同宣言の単独講和禁止をどう読むか

1 宣言本文と中国の署名

米国務省が公刊する昭和17年1月1日の連合国共同宣言第2項は,各政府が署名国政府と協力し,敵国と単独の休戦又は講和をしないことを約した。
署名欄には中華民国国民政府が含まれているため,中国が同宣言の原署名国であったことは確認できる。

中国政府は,この単独講和禁止を,戦勝後の対日平和条約も主要な連合国が共同で締結すべきことを定めた約束と読み,中華人民共和国及びソ連を欠くサンフランシスコ平和条約がこれに反すると主張する。
もっとも,中華人民共和国も中華民国も講和会議に招請されなかったのに対し,ソ連は講和会議に出席したが条約へ署名しなかったため,両者を同じ意味で「排除された」と扱うことには事実関係上の違いがある。

2 米国務省法律顧問が昭和22年に示した反対解釈

米国務省法律顧問チャールズ・フェイヒーの昭和22年8月7日付意見は,勝利した交戦国の一部が他の戦勝国と別に講和することを一般的に禁止する国際法規則はないという米国側の見解を示した。
同意見は,連合国共同宣言の「単独の休戦又は講和」を,勝利前に一国が共同戦線から離脱して敵国と取決めをすることの禁止と読み,勝利後に全連合国の共同講和が不可能な場合まで別個の平和条約を禁止したものではないと解した。

この意見は,サンフランシスコ平和条約の成立より前に,まさに対日講和の手続を検討するために作成された公刊外交文書であり,中国政府の解釈に対する同時代の反対解釈として重要である。
ただし,これは米国務省内部の法律意見であって,中立的な国際裁判所の判断ではない。

3 宣言違反の有無と条約無効の効果は別問題である

連合国共同宣言の文言が勝利後の講和条約にも及ぶかについて,中国政府と米国務省の公刊文書は異なる解釈を示している。
このため,単独講和禁止への違反を前提とする中国政府の第一の根拠には,少なくとも宣言の適用範囲という先決問題がある。

また,先行する国際的約束への違反があったかという問題と,後に締結された条約が当然に無効となるかという問題は同じではない。
中国政府の記者会見は,宣言違反がなぜサンフランシスコ平和条約全体の無効を生じさせるのかを具体的に説明していないため,この効果まで公式発言から補うことはできない。

第4 締約国間で条約の効力が失われたとはいえない

1 署名,批准,発効及び現在の公的索引

サンフランシスコ平和条約は昭和26年9月8日に署名され,日本の国会は同年11月18日にその締結を承認した。
条約は第23条所定の条件を満たして昭和27年4月28日に最初に発効し,その後に批准した国との関係では原則として各批准書の寄託日に効力を生じた。

国立国会図書館の日本法令索引は,令和8年9月1日現在,日本国との平和条約及び関係文書を昭和27年条約第5号,公布日を昭和27年4月28日,効力を「有効」と表示している。
これは日本の公的索引上の現在の取扱いを確認する資料であり,それ自体が全締約国間のあらゆる国際法上の争点を裁定するものではない。

2 第1条と第23条が作った国別の締約関係

日本国との平和条約本文第1条(a)は,日本と各連合国との戦争状態が,日本と当該連合国との間で条約が効力を生ずる日に終了すると定める。
第23条は最初の発効要件及び後発批准国との効力発生を定めており,条約の効果は,日本と各批准国との関係ごとに成立する構造である。

中国はこの条約の署名国でも批准国でもないため,第1条による中国との戦争状態終結を論ずる前提を欠く。
他方,中国が非締約国として条約を承認しないことと,日本と各批准国との間で成立した条約関係が失われることも同一ではない。

3 中国政府の声明だけから戦争状態の復活は導けない

中国政府が条約を無効と呼んでも,その一方的な声明だけで,日本と各批准国との間の第1条及び第23条による効果が変更されたことにはならない。
令和7年11月28日の記者会見で,中国政府報道官自身も,質問者が述べた他の当事国との戦争状態継続という帰結を確認しなかった。

なお,質問者が用いた当事国数と,署名国・批准国・条約上の連合国の数は必ずしも一致しない。
国別の署名,批准及び発効日は,サンフランシスコ平和条約の署名国・批准国・非参加国に関する記事で整理している。

第5 中国への効力――非締約国であることの法的意味

1 第21条と第25条は中国を締約国にしていない

条約第25条は,この条約上の「連合国」を,日本と戦争していた国等で,かつ,条約に署名して批准した国と定義する。
また,第21条の例外を除き,この定義に当たらない国に条約上の権利,権原又は利益を与えず,日本の権利,権原又は利益もその国のために減損されないと定める。

第21条は,第25条にかかわらず,中国が第10条及び第14条(a)2の利益を受ける権利を有すると定める。
しかし,この限定的な利益の規定は,中国を署名国又は批准国にするものでも,中国に条約全体を受諾させるものでもない。

2 第三国に義務・権利を作らないという枠組み

昭和44年の条約法に関するウィーン条約第34条は,第三国の同意がなければ,条約はその国について義務も権利も創設しないという一般則を置く。
この考え方によれば,中国が条約当事国でないことから直接導かれるのは,中国が当事国として条約全体に拘束されないということであって,他国間の条約全体が当然に無効になるということではない。

もっとも,同条約第4条は,同条約が各国について効力を生じた後に締結された条約にのみ適用されると定める。
昭和26年に締結されたサンフランシスコ平和条約へウィーン条約をそのまま遡及適用することはできないため,本記事では第34条を後に明文化された条約法の枠組みとして参照し,昭和26年当時の無効原因を直接定める条文としては用いない。

3 中国側主張の強い部分と届かない部分

中国が非締約国である以上,サンフランシスコ平和条約だけを根拠として,中国自身に新たな条約上の義務を課し,又は中国が保有する権利を中国の同意なしに処分できるとする説明には限界がある。
この意味で,中国の領土・主権に関する取扱いを中国へ対抗できないという問題提起は,第三国効の問題として検討を要する。

しかし,第三国である中国に条約を対抗できる範囲が限られることと,日本と批准国との間で条約が無効であることは別である。
中国政府の公式発言は,この二つを区別した無効原因と効果を示していないため,非締約国性だけから条約全体の無効を導くことはできない。

第6 台湾条項への影響

1 第2条(b)が定めたのは日本の放棄である

条約第2条(b)は,日本が台湾及び澎湖諸島に対する全ての権利,権原及び請求権を放棄すると定める。
同項は,その帰属先として中華人民共和国,中華民国又は「中国」のいずれも記載していない。

したがって,第2条(b)から直接確認できるのは,日本の権利等の放棄であり,その条文だけで台湾が中華人民共和国に帰属したと読むことも,帰属先が最終的に確定したと読むこともできない。
帰属先が記載されなかった起草過程は,サンフランシスコ平和条約第2条の領土帰属に関する記事で扱っている。

2 中国政府は戦時文書により帰属が決まったと主張する

中国政府は,カイロ宣言,ポツダム宣言及び日本の降伏文書によって台湾の中国への返還が既に確認されており,後のサンフランシスコ平和条約には中国の主権を処分する権限がなかったと主張する。
この主張において,第2条(b)は台湾を中国へ移転する根拠ではなく,既に確定したとする中国の主権を非締約国である中国の同意なしに取り扱ったため無効であるという位置付けになる。

ポツダム宣言第8項,カイロ宣言,日本の受諾及び領土処理文書の関係は,ポツダム宣言第8項に関する記事で整理している。
中国政府の戦時文書に関する評価を採用するかは,第2条(b)の文言だけでは決まらない。

3 日本政府は平和条約による放棄を現在も基礎にしている

参議院外交防衛委員会の令和8年5月12日の答弁で,政府参考人は,カイロ宣言が当時の連合国の政策目的を掲げ,ポツダム宣言を日本が受諾したことを確認した上で,第二次世界大戦後の日本の領土を法的に確定したのはサンフランシスコ平和条約であると述べた。
さらに,日本は同条約第2条に基づいて台湾に対する全ての権利,権原及び請求権を放棄しており,台湾の法的地位について独自の認定を行う立場にないと答弁した。

中国政府と日本政府は,戦時文書及び平和条約の法的役割について同じ見解を採っていない。
本記事で確認できるのは双方の公式見解と条約文言の範囲であり,この見解対立だけから台湾の最終的帰属を認定することはできない。

4 無効論から日本への復帰又は中国への帰属は自動的に生じない

中国政府の無効論は,中国が条約を受諾せず,中国の領土・主権に関する処分を認めないという立場を表す。
しかし,中国政府の一方的な無効表明は,日本と批准国との間で行われた第2条(b)の放棄を取り消して日本の権利を復活させる手続ではない。

他方,第2条(b)には帰属先が書かれていないため,同項だけを根拠として中華人民共和国の主権を確定することもできない。
「条約を無効と呼べば台湾が日本に戻る」又は「条約が有効なら台湾が中華人民共和国に帰属する」という二つの説明はいずれも,第2条(b)の文言からは導かれない。

第7 日中間の戦争状態及び国交正常化との関係

1 中国との関係はサンフランシスコ平和条約第1条だけでは決まらない

中華人民共和国はサンフランシスコ平和条約の当事国でないため,日本と中華人民共和国との関係を同条約第1条だけで説明することはできない。
日本は昭和27年に中華民国との日華平和条約を発効させ,その後,昭和47年の日中共同声明によって中華人民共和国との国交を正常化した。

日中共同声明第1項は,日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態が声明公表日に終了すると定め,第2項は,日本政府が中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認すると定めた。
したがって,サンフランシスコ平和条約に対する中国の無効論から,現在も日本と中華人民共和国が戦争状態にあるという結論が直ちに生ずるものではない。

2 昭和53年条約はサンフランシスコ平和条約の受諾ではない

日中平和友好条約は,日中共同声明を基礎として両国間の平和友好関係を発展させる二国間条約である。
その締結は,中華人民共和国がサンフランシスコ平和条約へ署名,批准又は加入したことを意味しない。

中国政府は令和7年11月28日の記者会見でも,昭和53年条約の存在によってサンフランシスコ平和条約を受け入れたとの理解を明確に否定した。
したがって,日中間の国交正常化及び平和友好条約と,中国によるサンフランシスコ平和条約の非承認は,それぞれ別の文書と当事国関係に即して整理する必要がある。

第8 誤解しやすい点

1 「中国が参加しなかったから条約全体が無効」ではない

非締約国は原則として条約当事国として拘束されないが,そのことは他の締約国間の条約関係が存在しないことを意味しない。
中国の非締約国性は,中国への効力を検討する出発点であり,締約国間の効力を否定する結論そのものではない。

2 「無効なら全ての戦争状態が復活する」と中国が答えたわけではない

令和7年11月28日の会見では,記者がその帰結を質問したが,中国政府報道官は直接肯定しなかった。
中国政府の発言にない帰結を中国政府の公式見解として付け加えるべきではない。

3 第2条(b)は台湾の帰属先を書いていない

第2条(b)が日本の放棄を定めることと,台湾がどの国家に帰属するかは別の命題である。
中国政府,日本政府及び台湾側の見解対立を検討するときも,条文に書かれている内容と,各政府が他の文書を組み合わせて述べる評価を分ける必要がある。

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サンフランシスコ講和はなぜ全面講和でなく多数国講和になったのかでは,全面講和から多数国講和へ移った経緯と各国が参加しなかった理由を扱っている。

第10 出典

外務省「日本国との平和条約」(昭和26年9月8日署名)
国立国会図書館「日本法令索引 日本国との平和条約及び関係文書」
中華人民共和国外交部「2025年8月18日外交部发言人毛宁主持例行记者会」
Ministry of Foreign Affairs of the People’s Republic of China, “Foreign Ministry Spokesperson Mao Ning’s Regular Press Conference on November 28, 2025”
United States Department of State, Office of the Historian, “Declaration by United Nations,” January 1, 1942
United States Department of State, Office of the Historian, “Memorandum by the Legal Adviser (Fahy),” August 7, 1947
United Nations, Vienna Convention on the Law of Treaties, 1969,4頁及び13頁
参議院外交防衛委員会令和8年5月12日会議録・北郷恭子政府参考人答弁
外務省「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」
外務省「日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約」