交通事故の刑事記録(実況見分調書など)を入手するには,まず事件を特定するための検番や送致番号が必要になります。
この記事では,大阪で交通事故の被害者側が検番・送致番号を調べる方法を,代理人弁護士が弁護士会照会を使う場合と,被害者本人が警察署の窓口で確認する場合に分けて説明します。
あわせて,大阪弁護士会で弁護士会照会を申し出るときの提出書類・費用・照会書の書き方,取得した検番等を使って刑事記録を入手するまでの流れ,物件事故の場合の注意点を整理します。
目次
第1 検番と送致番号の意味
検番とは,検察庁が事件を受理したときに付す事件番号のことで,「令和○年検第○号」の形で表されます。
この呼称は,検察庁の内部規程である事件事務規程の5条4項に定められています(条文は第7で紹介します)。
これに対して送致番号は,警察が事件を検察庁に送致する際に付す管理番号です。
送致日・送致番号は検番と対応しており,罪名や送致先の検察庁は事故の場所などから推測できることが多いため,実務では検番の有無や番号だけで事件を特定できる場合があります。
検番や送致番号が必要になるのは,交通事故の刑事記録(実況見分調書など)を閲覧・謄写する前提として,どの事件かを特定しなければならないからです。
被害者側が事故態様や過失割合を立証する資料として実況見分調書を得るには,まず検番等を調べ,それを手がかりに検察庁へ記録の閲覧謄写を求める,という順序になります。
第2 検番等の調べ方
1 代理人弁護士が弁護士会照会で調べる方法
被害者の代理人弁護士は,弁護士会照会(弁護士法23条の2に基づく照会)を使い,交通事故証明書に記載された警察署の交通課,又は高速道路交通警察隊(略称「高速隊」)に対して照会します。
照会する事項は,検察庁への送致の有無,送致済みの場合の送致日・送致番号・罪名・送致検察庁・検番です。
弁護士会照会は,所属弁護士会による審査を経て照会先へ発出される仕組みのため,回答が届くまでには一定の期間がかかります。
大阪弁護士会の場合,申出から回答までおおむね3週間程度をみておくとよいでしょう(事案や時期により前後します)。
検番等の照会は大阪府内の取扱いです。
他の都道府県では,弁護士会照会によらなくても送致に関する回答を得られる場合があるため,当該警察署にあらかじめ確認しておくのが確実です。
2 被害者本人が警察署の窓口で調べる方法
被害者本人であれば,弁護士会照会を使わなくても検番等を確認できます。
運転免許証などの本人確認書類を持参して,交通事故証明書に書かれている警察署の交通課,又は高速隊を平日に訪ねれば,その場で検番等を教えてもらえます。
交通事故証明書の左上には「事故照会番号」(警察署名と照会番号)が記載されており,警察や検察はこの番号で事故を特定します。
交通事故証明書そのものを持参するか,スマートフォンの画面で提示すると手続が早くなります。
なお,被害者本人が警察署に電話をしても本人確認ができないため,電話で検番等を教えてもらうことはできません。
3 大阪府内の高速道路上の事故の場合
大阪府内の高速道路上で起きた事故は,大阪府警察本部の高速道路交通警察隊が捜査を担当します。
高速隊の所在地は次のとおりです。
| 名称 | 大阪府警察本部 高速道路交通警察隊 |
|---|---|
| 所在地 | 〒552-0023 大阪市港区港晴2丁目11番12号 阪神高速道路株式会社内 |
| 最寄駅 | 大阪メトロ(中央線)弁天町駅 |
| 電話番号 | 06-6573-6821 |
被害者本人が出向いて検番等を確認する場合は,高速隊が高速道路上の事故を管轄していることを前提に,事前に上記の本部へ電話し,当該事故を担当する窓口(本部又は所管の分駐所)を確認してから訪ねるのが確実です。
高速隊は複数の分駐所を置いていますが,どの部署が個々の事故の捜査を担当しているかは事案により異なるためです。
代理人弁護士が弁護士会照会を使う場合,大阪府下の高速道路上の事故についての照会先は「大阪府警察本部高速道路交通警察隊」(前記の所在地)とします。
第3 大阪弁護士会で弁護士会照会を申し出る手続
1 提出書類と提出方法
大阪弁護士会では,会員専用サイトから書式をダウンロードし,パソコンで「照会申出書」及び「照会書別紙」を作成して申し出ます。
交通事故の検番等の照会には,会員専用サイトの23条照会書式(交通事故事案 検番照会/物件事故報告書/実況見分調書)に用意された定型書式を使うと円滑です。
提出方法は持参又は郵送です。
持参する場合
弁護士会館6階の23条照会窓口(総合管理課23条照会係)にある5番カウンターの受付ボックスに,照会申出書一式を照会先宛てのレターパックプラスにすべて入れて提出します。
窓口の受付は午前9時から午後5時までで,午後3時30分以降に提出したものは翌業務日扱いとなります。
郵送する場合
次の宛先に送付します(この送付自体にはレターパックを用いる必要はありません)。
大阪弁護士会 総合管理課 23条照会係
弁護士の職印を押す場所は照会申出書のみです。
また,交通事故事案であっても照会先が警察署でない場合は,交通事故証明書に関係者のプライバシー情報が多く含まれることに配慮し,照会書に疎明資料を添付しないのが原則です。
弁護士会照会では,そもそも添付資料は不要なのが原則で,事案の理解を容易にするためなどに必要となる場合に限って添付します。
2 回答書の受取方法
照会先からの回答書を弁護士会から郵送で受け取るには,照会申出書の備考欄の所定のチェックを入れたうえで,回答書返送用のレターパックプラスを同封する必要があります。
チェックがない場合や返送用レターパックが同封されていない場合は,回答書を郵送で受け取ることはできません。
3 費用
(1) 手数料
大阪弁護士会の会員が弁護士会照会(23条照会)を利用する場合の手数料は,照会1件につき4000円(消費税別)です。
消費税10%を加えると4400円になります。
申出書が1通でも,照会事項によっては複数件として件数分の手数料がかかることがあります。
扶助事件や国選弁護事件などについては,所定の手続により手数料が免除される制度があります。
(2) レターパックプラス
レターパックプラス(赤色のもの)は,弁護士会から照会先への発送用と,照会先から弁護士会への回答返信用の2通が必要です。
レターパックプラスの料金は,令和6年10月1日に520円から600円へ改定されました。
そのため往復2通で1200円となり,手数料4400円と合わせると合計5600円が必要です。
さらに,弁護士会からの回答書も郵送で受け取る場合は返送用のレターパックプラスを1通追加するため(600円),合計6200円となります。
第4 照会書(警察署宛て)の記載方法
警察署宛ての照会書のうち「申出の理由」と「照会事項」は,次のように記載します。
1 申出の理由
申出弁護士は,別紙交通事故証明書記載の交通事故(以下「本件交通事故」という。)について,依頼者より,加害者に対する損害賠償請求の依頼を受けており,事故態様を明らかにするため,事件記録を閲覧・謄写する必要があります。
2 照会事項
本件交通事故に関し,下記の者について,以下の事項にご回答ください。
1 検察庁へ送致済みですか。未送致の場合は送致後にご回答ください。また,送致予定がない場合は,その旨をご回答ください。
2 送致済みの場合は,送致日,送致番号,罪名,送致検察庁,検番。
記
(氏名)
照会対象者の特定は氏名のみで足り,ふりがなや生年月日などの記載は不要です。
送致済みかどうかを照会したときに未送致であれば「捜査中のため回答を差し控える」旨の回答がされることがあるため,書式には,未送致なら送致後に回答すること,送致予定がなければその旨を回答することを求める文言を入れておきます。
なお,事故発生時点で14歳未満であった者は,刑事未成年で検察庁に送致されることがないため,この照会の対象とはなりません。
第5 取得した検番等による刑事記録の入手
警察署から回答を得た罪名・送致日・検番などをもとに,検察庁に対して記録の閲覧・謄写が可能かどうかを確認し,実況見分調書などの閲覧謄写を行います。
不起訴事件記録(実況見分調書及び物件事故報告書)の具体的な入手方法は,別の記事で説明しています。
弁護士会照会の制度そのもの(報告義務や照会先ごとの注意点など)については,次の記事にまとめています。
第6 物件事故の場合の注意点
交通事故証明書の「照合記録簿の種別」が「物件事故」となっている場合は,実況見分調書が作成されていません。
この場合は,担当の警察署に対し,交通事故直後の診断書を持参して「人身事故」への切替えを求める必要があります。
人身事故に切り替われば,実況見分調書の作成につながります。
第7 検番の根拠となる事件事務規程5条
検番(検察庁の事件番号)の付け方は,事件事務規程(法務省)の5条が定めています。
条文上は「検番」ではなく「事件番号」と表記されています。
現行の条文は次のとおりです。
(事件受理の管理)
第5条 事件担当事務官は,事件を受理したときは,検察システムによりその旨を管理するとともに,次の表に掲げる区別に従い,事件番号を事件記録表紙等に記入する。
受理の事由 事件番号の記入箇所 第3条第1号 送致(付)書の所定欄 同条第2号 移送書(甲)(様式第3号)又は移送書(乙)(様式第4号) 同条第3号 家庭裁判所で添付した送付書 同条第4号 直受事件表紙(様式第5号)を付し,その所定欄 同条第5号から第8号まで 認知・再起事件表紙(様式第6号)を付し,その所定欄 2 事件番号は,第3条各号の所定の事由が生じるごとに,被疑者1名につき1番号を付し,暦年ごとに改める。この場合において,第3条第2号,第3号,第6号,第7号又は第8号に掲げる事由により受理手続をするときは,その事件が処理されたときに被疑者に付されていた事件番号の数に応じた事件番号を付するものとする。
3 被疑者の数が不明である事件については,その人員を1名として番号を付し,後に被疑者の数が判明した場合において,その数が2名以上であるときは,その1名を超える人員については,第3条第5号に掲げる事由があるものとして,新たに受理手続をするものとする。
4 事件番号は,「 年検第 号」と呼称する。
この4項の呼称が,実務で「検番」と呼ばれているものです。
事件事務規程は法務省の訓令であり,e-Gov法令検索には収録されていないため,条文は法務省ウェブサイトで公表されている本文で確認できます。
出典・参考資料
1 法令・規程
- 弁護士法23条の2(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000205
- 事件事務規程(法務省) https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji16.html / 本文PDF https://www.moj.go.jp/content/001400166.pdf
2 公的機関の資料
- 大阪府警察 高速道路交通警察隊(所在地・電話番号) https://www.police.pref.osaka.lg.jp/sogo/keisatsusho/8845.html
- 自動車安全運転センター 交通事故に関する証明書(交通事故証明書の記載事項) https://www.jsdc.or.jp/certificate/tabid/112/Default.aspx
- 日本郵便 レターパックの料金(令和6年10月1日改定) https://www.post.japanpost.jp/service/letterpack/
3 文献
- 大阪弁護士協同組合『23条照会の手引2022』(大阪弁護士会司法委員会編。提出手続・費用・照会先別書式)
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