弁護士会照会


目次
1 総論
2 弁護士会照会を受けた団体等の回答義務
3 日本郵便に対する弁護士会照会に関する判例
4 弁護士会照会で債務者の財産を調査する方法
5 損害保険料率算出機構に対する弁護士会照会
6 自由と正義の特集
7 関連記事その他

1 総論
(1) 弁護士会照会の流れは以下のとおりです(6訂 民事弁護における立証活動52頁参照)。
① 受任事件について,弁護士が所属弁護士会に対し,弁護士会から特定の公務所又は公私の団体(以下「公務所等」といいます。)に対して必要な事項の報告を求める照会を発すべきことを求める照会申出を行う。
② この照会申出を受けた弁護士会がその適否を判断する審査を行う。
③ 審査の結果,照会申出を適切と判断した弁護士会が特定の公務所等に対して報告を求める照会を行う。
④ 照会を受けた公務所等が弁護士会に対して所要の事項の報告を行う。
⑤ 弁護士会が公務所等からの報告事項を照会申出人である弁護士に通知する。
(2) 弁護士法23条の2に基づくことから,23条照会ともいいます。

2 弁護士会照会を受けた団体等の回答義務
(1) 弁護士会照会を受けた公務所又は公私の団体は,正当な理由がない限り,照会された事項について報告をすべきものと解されています(最高裁平成28年10月18日判決。なお,「弁護士会照会報告拒絶に対する損害賠償請求訴訟の最高裁判決に関する会長談話」(平成28年10月18日付の愛知県弁護士会会長談話)参照)。
(2) 弁護士会照会に対して自治体が前科及び犯罪経歴を回答した場合,国家賠償責任の問題となることがあります(最高裁昭和56年4月14日判決参照)。

3 日本郵便に対する弁護士会照会に関する判例
(1) 郵便法上の守秘義務を負う日本郵便が,弁護士法23条の2第2項に基づき照会された事項の報告を拒絶する正当な理由があるか否かは,照会事項ごとに,報告することによって生ずる不利益と報告を拒絶することによって犠牲となる利益を比較衡量することにより決せられるべきであるとし,照会事項のうち,①郵便物についての転居届の提出の有無,②転居届の届出年月日及び③転居届記載の新住所(居所)については,報告を拒絶する正当な理由がないが,転居届に記載された電話番号については正当な理由があるとされました(最高裁平成28年10月18日判決の差戻控訴審である名古屋高裁平成29年6月30日判決)。
    ただし,名古屋高裁平成29年6月30日判決の上告審判決である最高裁平成30年12月21日判決は,23条照会をした弁護士会が,その相手方に対し,当該照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものとして不適法であると判示しました。
(2) 最高裁平成28年10月18日判決及び最高裁平成30年12月21日判決には「弁護士法23条の2第2項に基づく照会(以下「23条照会」という。)」と書いてあります。


4 弁護士会照会で債務者の財産を調査する方法
(1) 弁護士会照会で債務者の財産を調査する方法としては以下のものがあります(二弁フロンティア2021年11月号「弁護士会照会ってどんな場面で使えるの?」参照)。
① 金融機関に対する全店照会
② 通信会社に対する引落し口座照会
③ クレジットカード会社に対する引落し口座情報照会
④ 運輸支局等に対する車両の所有者等情報の照会
⑤ 生命保険会社等に対する解約返戻金予定額等の照会
(2) 一般社団法人生命保険協会は弁護士会照会の取次を終了したものの,一般社団法人日本損害保険協会.一般社団法人外国損害保険協会.一般社団法人日本少額短期保険協会及び一般社団法人日本共済協会は弁護士会照会の取次を継続しています(「弁護士会照会ハンドブック」(2018年7月2日付)104頁)。


5 損害保険料率算出機構に対する弁護士会照会
(1) 相手方の自賠責保険金の請求歴に関して損害保険料率算出機構に対する弁護士会照会をした場合,平成30年4月当時,以下の事項の回答だけがありました。
自賠責保険会社の名前,自賠責証明書番号
事故発生日時,事故発生場所,事故態様,相手方の傷病名,後遺障害認定の有無,認定時の等級
損害調査認定額(傷害による損害及び後遺障害による損害)
(2) 弁護士会照会に対する回答文として,以下の決まり文句がありました。
    今般、弁護士法第23条の2に基づく照会がなされましたが、弊機構では自賠責保険会社からの依頼に基づき自賠責保険の損害調査を行っており、調査が終了した後には、調査結果と共に、請求書類を自賠責保険会社に返却しています。そのため弊機構にはご希望の調査を満足する資料は保管されていません。また、弊機構は調査機関に過ぎず、自賠責保険に対する請求に応じるか否か等の最終決定権及び具体的な支払いをする権限は自賠責保険会社にあり、自賠責保険金支払いの有無については回答することが困難です。したがって、弊機構にて保有するデータから判明する範囲で回答させていただきますので、詳細につきましては、各保険会社にお問い合わせいただきますようお願いいたします。
    なお、以下の回答内容は、被害者名:「◯◯◯◯」,生年月日:「平成◯年◯月◯日」により検索した結果を示したものであり、今回ご照会頂いている◯◯◯◯様と同一人物であるか否かについてはわかりかねます。
(3) 中村真弁護士ブログに「【役立つ!】保険金取得歴の調査」が載っています。


6 自由と正義の特集
(1) 自由と正義2015年1月号の「特集1 弁護士会照会の今後」として以下の記事が載っています。
① 金融機関に対する照会について
② 弁護士会照会に対する報告拒否と不法行為責任
③ 弁護士会照会の審査体制,審査基準,審査の際の留意点
④ 制度を維持するために注意すべき点
⑤ 弁護士法第23条の2の改正について-弁護士法第23条の2の照会制度の実効性確保に向けて-
(2) 自由と正義2019年11月号の「特集 弁護士会照会に関する最高裁判決と今後の対応について」として以下の記事が載っています。
① 愛知県弁護士会と日本郵便との訴訟の経緯と意義
② 弁護士会照会最高裁判決と「それではどうしたらよいか」問題
③ 金融機関に対する全店照会の現状と最高裁判決が与える影響
④ 弁護士会照会制度の今後の改正に向けて


7 関連記事その他
(1) 弁護士会照会の回答書のコピーをシンポジウム参加者に配布して戒告の懲戒処分を受けた事例があります(自由と正義2009年6月号210頁)。
(2) 東弁リブラ2011年5月号に「第2回  通信会社に対する弁護士会照会の留意点」が載っていて,総務省HPに「電気通信番号指定状況 (電気通信番号計画(令和元年総務省告示第6号)第1第4項による公表)」が載っています。
(3) 大阪高裁平成30年9月6日判決(私が訴訟代理人として取得したものです。)は「訴訟係属中の23条照会と調査嘱託及び文書送付嘱託との間に法律上の優劣関係の定めはなく,またそのように解釈すべき理由もない」と判示しています。
(4) 企業法務のための民事訴訟の実務解説(第2版)182頁には,民事訴訟法186条に基づく調査嘱託に関して以下の記載があります。
    法文上、嘱託先は「団体」 とされており、個人に対する調査嘱託はできませんが、実務上、裁判所の判断によって、例えば、個人開業の医師や弁護士に対しても病院・医院宛や法律事務所宛として調査嘱託を行うこともありますので、裁判所と相談すると良いでしょう。
(5) 二弁フロンティア2022年12月号「弁護士会照会ってどんな場面で使えるの?離婚事件における弁護士会照会事例」によれば,離婚事件における照会事例として以下のものが紹介されています。
① 財産分与の対象となる対象財産等の調査
・ 預貯金・株式等
・ 給与・退職金
・ 保険
② 不貞行為の調査
・ 不貞行為の相手方の特定
→ 携帯電話番号やメールアドレスの情報から,当該通信会社に対する照会により,不貞行為の相手方の契約者氏名や住所を特定することが可能とのことです。
・ 車両
・ ホテル宿泊の有無
・ ETC記録や交通系ICカード乗車券の利用履歴
(6)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 外国人登録法の廃止に伴い回収された外国人登録原票に係る開示請求手続について(平成23年12月13日付の法務省入国管理局登録管理官の事務連絡)
・ 外国人登録法の廃止に伴い回収された外国人登録原票に係る開示請求手続について(平成24年3月21日付の日弁連事務総長の依頼)
・ 弁護士法23条の2の規定に基づく外国人登録原票の照会への対応について(平成24年7月30日付の法務省入国管理局出入国管理情報官付補佐官の事務連絡)
イ 以下の記事も参照して下さい。
・ 検番等の入手方法等
・ 厚生労働省労働基準局の,文書送付嘱託に対する対応(要旨)
・ 刑事記録の入手方法等に関する記事の一覧


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