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令和元年司法試験知的財産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した31項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は,令和元年司法試験知的財産法第2問について,法務省の出題の趣旨・採点実感から31の評価項目を整理し,試験当時の法令・裁判例を前提とする模範解答を示すものである。
仏像の著作物性,絵はがきの流通と著作権,著作者の死後にされた仏頭の交換という三つの場面を,客体・行為・権利・例外・救済の順に分けて検討する。

項目内容
対象令和元年司法試験・知的財産法第2問
評価項目31項目。正負の重複は統合し,排他的な立場を累積しない。
重み合計132。本記事独自の整理であり,公式配点ではない。
答案字数2307字。答案の見出し・句読点・空白・「以上」を含み,改行のみを除く。
法令基準時令和元年の試験当時。現行法の条番号を遡って用いない。

結論として,α及びβの著作物性を肯定する立場を採る。設問2⑴の無許諾のPについてはY2の販売差止めを認め,⑵の許諾されたPについては消尽を理由に否定する。
設問3では,著作者人格権の相続ではなく死後の人格的利益の保護として,X2による具体的な回復措置の請求を検討する。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一つの項目に一つの判定対象を置き,根拠を出題の趣旨と採点実感に分けて示した。頁は法務省PDFの実頁である。採点実感には採点方針の説明も含む。
採点実感が指摘する負例は,対応する正の項目へまとめた。応用美術についての二つの立場は,採用した規範の一貫した論証を評価し,両方を満たすことを要求していない。

2 5段階の重み付けの基準

重み5は答案の法律構成・規範の骨格,重み4は出題の趣旨の検討要求と採点実感の評価・不足指摘が対応する事項である。
重み3は一方の資料が明示する中核の理由付け,重み2は補強又は典型的な誤りの回避,重み1は控えめな言及にとどまる事項とする。本問には重み1の項目はない。
これらの重みは公式の採点基準や配点の復元ではなく,答案を点検するための独自の分析である。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

仏師X1が宗教法人Y1のために製作した高さ3メートルの青銅仏像Aには,仏教美術の仕来りに従いながらも独自の世界観・宗教観が反映されている。Y1はAの所有権を取得し,X1の許諾を得て屋外の境内に恒常展示する。公道からは見えないが,日中は誰でも立ち入れる。
設問1は,Aの外観αと,それと大きさ以外同じで家庭用仏壇向けに大量生産される20センチメートルのBの外観βの著作物性を問う。
設問2は,Aの写真を中央に大きく置いた絵はがきPの販売を扱う。⑴はY1の無許諾製作とY2の取得時の過失・警告後の販売,⑵は製作販売の許諾がある一方でライセンス料が不払で契約が未解除という独立の事案である。
設問3は,X1の死後すぐにY1が厳しい表情の頭部を穏やかなCへ交換した事案である。元の頭部は壊されず保管されており,配偶者X2による名誉回復等の措置請求が問われる。

2 設問が求めること

設問対象と仮定到達点
1α・βそれぞれの著作物性争点・規範・事実評価を示す。
2⑴αは美術の著作物。無許諾のPの販売X1からY2への販売差止めの可否。
2⑵αは美術の著作物。許諾あり・対価不払・未解除許諾の効力と消尽を順に判断する。
3αは美術の著作物。著作者死亡後の改変X2の請求根拠と具体的な回復措置。

第4 評価項目と重み

1 設問1――αとβの著作物性

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1創作性の一般基準を示す532頁・設問1α。創作性の一般基準を示す。28頁・設問1α。創作性の一般基準を示すを基本とする。
2仕来りによる制約と独自の世界観・宗教観を対比して個性を判断する432頁・設問1α。仕来りによる制約と独自の世界観・宗教観を対比して個性を判断する。25頁・設問1α。仕来りによる制約と独自の世界観・宗教観を対比して個性を判断するを検討・評価する。
3信仰目的を併有する作品の美術性を検討する432頁・設問1α。信仰目的を併有する作品の美術性を検討する。24頁・設問1α。信仰目的を併有する作品の美術性を検討するを検討・評価する。
4一品製作のαについて美術工芸品の規定も踏まえる232頁・設問1α。一品製作のαについて美術工芸品の規定も踏まえる。28頁・設問1α。一品製作のαについて美術工芸品の規定も踏まえるを検討・評価する。
5量産され実用に供されるβの応用美術としての判断規範を示す532頁・設問1β。量産され実用に供されるβの応用美術としての判断規範を示す。25頁・設問1β。量産され実用に供されるβの応用美術としての判断規範を示すを基本とする。
6採用した立場を一貫してβへ当てはめる432頁・設問1β。採用した立場を一貫してβへ当てはめる。25頁・設問1β。採用した立場を一貫してβへ当てはめるを検討・評価する。
7意匠法と著作権法の具体的な目的・保護方法の違いを説明する432頁・設問1β。意匠法と著作権法の具体的な目的・保護方法の違いを説明する。28頁・設問1β。意匠法と著作権法の具体的な目的・保護方法の違いを説明するを検討・評価する。
8αと大きさ以外同じことと量産・小型化の法的意味を処理する332頁・2。間接。αとβの対比。29頁・設問1β。αと大きさ以外同じことと量産・小型化の法的意味を処理するを検討・評価する。

2 設問2⑴――無許諾の絵はがきの販売

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
9許諾された屋外恒常設置と45条2項・46条柱書の適用関係を示す532頁・設問2⑴。許諾された屋外恒常設置と45条2項・46条柱書の適用関係を示す。29頁・設問2⑴。許諾された屋外恒常設置と45条2項・46条柱書の適用関係を示すを基本とする。
10公開美術の自由利用の趣旨から時間制限・境内立入りを評価する432頁・設問2⑴。公開美術の自由利用の趣旨から時間制限・境内立入りを評価する。29頁・設問2⑴。公開美術の自由利用の趣旨から時間制限・境内立入りを評価するを検討・評価する。
11写真中心の販売用絵はがきに46条4号を適用する532頁・設問2⑴。写真中心の販売用絵はがきに46条4号を適用する。25頁・設問2⑴。写真中心の販売用絵はがきに46条4号を適用するを基本とする。
12Y1の複製・販売が侵害となることをY2の検討の前提に置く332頁・設問2⑴。Y1の複製・販売が侵害となることをY2の検討の前提に置く。25頁・設問2⑴。Y1の複製・販売が侵害となることをY2の検討の前提に置くを検討・評価する。
13直接の譲渡権侵害とみなし侵害を別々の根拠として検討する532頁・設問2⑴。直接の譲渡権侵害とみなし侵害を別々の根拠として検討する。29頁・設問2⑴。直接の譲渡権侵害とみなし侵害を別々の根拠として検討するを基本とする。
14113条の2の取得時の善意無過失とY2の過失を当てはめる432頁・設問2⑴。113条の2の取得時の善意無過失とY2の過失を当てはめる。25頁・設問2⑴。113条の2の取得時の善意無過失とY2の過失を当てはめるを検討・評価する。
15警告後の知情を113条1項2号へ当てはめる533頁・設問2⑴。警告後の知情を113条1項2号へ当てはめる。29頁・設問2⑴。警告後の知情を113条1項2号へ当てはめるを基本とする。
16警告後の頒布に加え頒布目的所持も侵害となることを指摘する433頁・設問2⑴。警告後の頒布に加え頒布目的所持も侵害となることを指摘する。29頁・設問2⑴。警告後の頒布に加え頒布目的所持も侵害となることを指摘するを検討・評価する。

3 設問2⑵――許諾契約違反と消尽

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
17消尽に先立ちライセンス契約違反が著作権侵害となるか検討する533頁・設問2⑵。消尽に先立ちライセンス契約違反が著作権侵害となるか検討する。29頁・設問2⑵。消尽に先立ちライセンス契約違反が著作権侵害となるか検討するを基本とする。
18支払義務の法的性質・発生根拠と利用範囲の違反を区別する433頁・設問2⑵。支払義務の法的性質・発生根拠と利用範囲の違反を区別する。29頁・設問2⑵。支払義務の法的性質・発生根拠と利用範囲の違反を区別するを検討・評価する。
19許諾を得たY1から公衆であるY2への譲渡による消尽を示す533頁・設問2⑵。許諾を得たY1から公衆であるY2への譲渡による消尽を示す。29頁・設問2⑵。許諾を得たY1から公衆であるY2への譲渡による消尽を示すを基本とする。
20Y2が不払を知ることは消尽の成否を左右しないとする433頁・設問2⑵。Y2が不払を知ることは消尽の成否を左右しないとする。29頁・設問2⑵。Y2が不払を知ることは消尽の成否を左右しないとするを検討・評価する。

4 設問3――死後の改変と名誉回復等

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
21死後の人格的利益の保護を60条で構成する533頁・設問3。死後の人格的利益の保護を60条で構成する。29頁・設問3。死後の人格的利益の保護を60条で構成するを基本とする。
22存命なら侵害される権利として20条1項の同一性保持権を特定する533頁・設問3。存命なら侵害される権利として20条1項の同一性保持権を特定する。30頁・設問3。存命なら侵害される権利として20条1項の同一性保持権を特定するを基本とする。
23頭部保存と像全体の表現の改変を区別する433頁・設問3。頭部保存と像全体の表現の改変を区別する。26頁・設問3。頭部保存と像全体の表現の改変を区別するを検討・評価する。
2420条2項4号の判断基準を提示する533頁・設問3。20条2項4号の判断基準を提示する。30頁・設問3。20条2項4号の判断基準を提示するを基本とする。
25Y1内部の不評と像全体の新造の代替可能性を検討する433頁・設問3。Y1内部の不評と像全体の新造の代替可能性を検討する。26頁・設問3。Y1内部の不評と像全体の新造の代替可能性を検討するを検討・評価する。
2660条ただし書を20条の制限と別に検討する533頁・設問3。60条ただし書を20条の制限と別に検討する。30頁・設問3。60条ただし書を20条の制限と別に検討するを基本とする。
27死亡直後・改変の性質程度・社会的事情の変動を関連付ける433頁・設問3。死亡直後・改変の性質程度・社会的事情の変動を関連付ける。30頁・設問3。死亡直後・改変の性質程度・社会的事情の変動を関連付けるを検討・評価する。
28X2の請求根拠を116条1項・115条へ接続する533頁・設問3。X2の請求根拠を116条1項・115条へ接続する。30頁・設問3。X2の請求根拠を116条1項・115条へ接続するを基本とする。
29配偶者X2が最優先の遺族であることを示す333頁・設問3。配偶者X2が最優先の遺族であることを示す。26頁・設問3。配偶者X2が最優先の遺族であることを示すを検討・評価する。
30名誉回復等の措置の具体的内容を示す433頁・設問3。名誉回復等の措置の具体的内容を示す。26頁・設問3。名誉回復等の措置の具体的内容を示すを検討・評価する。
31原状回復・周知・謝罪広告等から事案に適当かつ相当な措置を論じる433頁・設問3。原状回復・周知・謝罪広告等から事案に適当かつ相当な措置を論じる。30頁・設問3。原状回復・周知・謝罪広告等から事案に適当かつ相当な措置を論じるを検討・評価する。

5 重みの分布

重み項目数小計
51365
41456
339
212
100
合計31132

正の評価項目31件に対応する負例16件は表の各項目へ統合した。許容される応用美術の立場2件は排他的な分岐であり,項目数・重み合計へ重ねて加算していない。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

以下は唯一の正解ではなく,公式資料の要求を踏まえた一つの答案例である。条文は試験当時の著作権法による。応用美術は純粋美術と同じ創作性で判断する立場を採り,別の立場による一貫した答案を排除しない。
答案部分は2307字であり,2500字上限内である。解説は字数に含めない。設問2・3では問題文の指示に従ってαの著作物性を前提とする。

2 答案

1 設問1
(1)著作物は思想又は感情を創作的に表現したもので,文芸等の範囲に属するものをいう(著作権法2条1項1号)。宗教思想自体でなく,像の姿態等に現れた具体的表現を検討する。
創作性は作者の個性の発現で足り,新規性や芸術的価値の高さを要しない。ただし,ありふれた表現や選択の余地がない表現には認められない。αは仏教美術の仕来りから表現の幅が制約されるが,姿態,表情,袈裟のデザインにX1独自の世界観・宗教観が反映され,その組合せに個性が現れる。したがって創作性が認められる。宗教的信仰の目的を併有しても,美術の著作物から排除されない。一品製作のAは美術工芸品を含む美術の著作物に当たり得る(2条2項,10条1項4号)。
(2)量産され家庭用仏壇に置かれるBでは,実用に供される応用美術の著作物性が加わる。機能的構成から分離できる美的特性に限る見解もある。しかし2条2項は例示規定であり,応用美術一般に特別に高い創作性を要求する根拠はない。純粋美術と同じ創作性で判断する。意匠法は登録により創作の奨励と産業の発達を図り,依拠しない独立創作にも及ぶ一方,著作権法は文化の発展を目的とし無方式で成立するが依拠を要する。保護の目的と方法が異なり,重複を一律に排除する必要はない。無方式の著作権による長期の保護が意匠制度を空洞化させるとの懸念にも,機能上の必然的形態は創作性を欠き,個性のある表現だけを保護することで対応できる。βはαと大きさ以外同じであり,家庭用仏壇に納める機能がポーズや表情,袈裟の組合せまで一義的に決めるものではない。小型化・量産だけでは個性は失われず,著作物性を肯定する。
2 設問2
(1)所有権の取得は著作権の取得を意味しない。AはX1の許諾で屋外に恒常設置されている。46条は公衆が景観の一部として作品に接し,撮影等する利益を確保しつつ,複製物の販売市場等は権利者に留保する趣旨と解する。公道から見える場所と公衆に開放された場所とは別の類型であり,前者に当たらなくても後者に当たり得る。毎日午前9時から午後5時まで誰でも境内に入れ,特定の信者だけの閉鎖的な空間ではない。夜間の制限もこの日常的な公開性を失わせず,45条2項の場所に当たり,46条柱書が適用される。しかしPはA正面写真を中央に大きく置いた販売用絵はがきである。背景への偶然の写込み等ではなく,像の表現そのものを商品化しているから,専ら美術の著作物の複製物の販売を目的とする複製等として同条4号に該当する。Y1の製作・販売は複製権・譲渡権を侵害する(21条,26条の2第1項)。
Y2の公衆への販売にも譲渡権が及ぶ。113条の2は譲受時に侵害物と知らず,かつ知らないことに過失がない者の譲渡を保護する。Y2は仕入時に善意でも有過失なので適用されない。また,警告後は侵害複製物であると知っており,以後の販売及び販売目的の在庫所持は113条1項2号のみなし侵害に当たる。これは直接の譲渡権侵害とは別の根拠である。新規仕入れの停止だけでは足りず,X1は販売の差止めを請求できる(112条1項)。
(2)利用許諾の方法・条件の範囲を超える利用は著作権侵害となる(63条2項)。これに対し,許諾された利用の対価を支払う義務の不履行は,当然には利用を無許諾にしない。本件の5%の支払義務は製作・販売の許諾に伴う契約上の対価債務であり,支払自体を許諾の効力発生条件とした事情はない。契約も未解除なのでY1の製作・販売は許諾範囲内である。
したがってY1から公衆であるY2への適法な譲渡により当該Pの譲渡権は消尽する(26条の2第2項1号)。消尽を生じさせるのは権利者の許諾を得た公衆譲渡であって,対価の現実の受領ではない。Y2が知るのも許諾の不存在ではなく対価債務の不履行である。その悪意は消尽の要件を左右せず,Pも侵害作成物ではないので113条1項2号は適用されない。X1はY2の販売を差し止められない。
3 設問3
著作者人格権は一身専属で相続されない(59条)。しかし60条は,著作者の死後も,存命なら人格権侵害となるべき行為を禁じる。配偶者X2は最優先の遺族として,116条1項・2項により115条の名誉・声望回復に適当な措置を請求し得る。
Aの表情は全身と一体のαを構成する。頭部を切り離し,厳しい怒りの表情を穏やかなCへ替える行為は,所有物の処分にとどまらずαを意に反して改変する。旧頭部を壊さず保存しても,展示される全体の表現は変わり,20条1項の同一性保持権侵害となるべき行為である。
20条2項4号のやむを得ない改変かは,性質,利用目的・態様に照らして必要性と改変の程度を判断する。不評なのは信者一般でなくY1内部であり,穏やかな像全体を新造する方法もあるから,頭部交換が不可避とはいえない。また,死後すぐに表情という重要部分を替えたのであり,社会的事情の変動も認められず,60条ただし書の意を害しない行為にも当たらない。
Y1は改変を認識して行い,少なくとも過失がある。X2は,保存された旧頭部を戻してαを回復する措置を求め得る。旧頭部が破壊されず現存するため,これは改変状態を解消する最も直接的な方法である。ただし工法や費用は与件から確定できず,技術的な復元可能性や展示による影響に応じ,改変の事実・経緯を周知する措置も検討される。周知はX1が表情の変更に関与していないと明らかにする意味を持つ。他方,広範な社会的評価の低下は与件にないから,大規模な謝罪広告を当然に命じるのではなく,回復への実効性と負担の相当性を具体的に判断すべきである。
以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 創作性の一般基準を示す(重み5)

創作性は新規性や美術上の高い評価と異なる。規範を先に示し,定型の存在だけから結論を出さない。
答案では「作者の個性の発現で足り」という部分が対応する。

(2) 仕来りによる制約と独自の世界観・宗教観を対比して個性を判断する(重み4)

仏像としての約束事は表現の選択幅を狭める。他方,問題文は全身のポーズ,顔,袈裟に作者の世界観等が表れたと明示する。制約のある部分を独占させず,残された選択と組合せに個性を認める。
答案では「その組合せに個性が現れる」という部分が対応する。

(3) 信仰目的を併有する作品の美術性を検討する(重み4)

宗教目的と美的鑑賞とは両立し得る。用途が宗教的であるという一事を,美術性を否定する理由にはしない。
答案では「宗教的信仰の目的を併有しても」という部分が対応する。

(4) 一品製作のαについて美術工芸品の規定も踏まえる(重み2)

αは一品制作された美術工芸品として処理できる。βの量産実用品としての問題を,αにまで同じ大きさで持ち込まない。
答案では「一品製作のAは美術工芸品」という部分が対応する。

(5) 量産され実用に供されるβの応用美術としての判断規範を示す(重み5)

試験当時,応用美術の判断枠組みは一つに決着していない。答案は通常の創作性で判断する立場を採った。分離可能性の立場も公式資料が許容するが,採用すればどの美的特性が機能的構成から分離できるかを具体化する必要がある。
答案では「純粋美術と同じ創作性で判断する」という部分が対応する。

(6) 採用した立場を一貫してβへ当てはめる(重み4)

自説を選ぶだけでは足りない。家庭用仏壇に置かれる目的と,その目的がポーズや表情まで決めるわけではないことを関係付け,実用性の存在を無視せずに結論を導く。
答案では「ポーズや表情,袈裟の組合せまで一義的に決めるものではない」という部分が対応する。

(7) 意匠法と著作権法の具体的な目的・保護方法の違いを説明する(重み4)

目的が異なるとの抽象句だけでは,なぜ二重の保護を認めてよいかが伝わらない。登録・独立創作にも及ぶ意匠保護と,無方式・依拠を要する著作権保護を比較し,機能的な必然形態を保護しないという調整も示した。
答案では「依拠しない独立創作にも及ぶ一方」という部分が対応する。

(8) αと大きさ以外同じことと量産・小型化の法的意味を処理する(重み3)

βは大きさ以外αと同じという指定である。小型化したというだけで創作性が消えるとするなら,その理由が必要となる。本答案は同じ個性が維持されるとした。
答案では「小型化・量産だけでは個性は失われず」という部分が対応する。

(9) 許諾された屋外恒常設置と45条2項・46条柱書の適用関係を示す(重み5)

46条だけを掲げず,その場所の範囲を定める45条2項へつなぐ。所有権の移転と著作権の帰属,恒常展示の許諾と絵はがき製作の許諾も別に扱う。
答案では「45条2項の場所に当たり」という部分が対応する。

(10) 公開美術の自由利用の趣旨から時間制限・境内立入りを評価する(重み4)

本件の中心は像が移動するかではなく,境内が一般公衆に開放されているかである。日中は誰でも入れるという事実を公開性へ結び付け,公道から見えないこととの関係を説明する。
答案では「夜間の制限もこの日常的な公開性を失わせず」という部分が対応する。

(11) 写真中心の販売用絵はがきに46条4号を適用する(重み5)

原則として利用できる公開美術でも,専ら複製物を販売する目的の利用は別である。写真が中央に大きく配置された商品という事実を,作品の表現そのものの販売という評価へ結び付ける。
答案では「像の表現そのものを商品化している」という部分が対応する。

(12) Y1の複製・販売が侵害となることをY2の検討の前提に置く(重み3)

Y2に対する請求でも,Pが適法に流通したかを先に確定しなければならない。設問2⑴ではY1の無許諾の複製・譲渡を前提とし,設問2⑵の許諾されたPと混同しない。
答案では「Y1の製作・販売は複製権・譲渡権を侵害する」という部分が対応する。

(13) 直接の譲渡権侵害とみなし侵害を別々の根拠として検討する(重み5)

113条の2は26条の2第1項の譲渡権に対する特例である。113条1項2号は知情頒布等を独立に侵害とみなす。二つの根拠を別々に閉じる必要がある。
答案では「直接の譲渡権侵害とは別の根拠」という部分が対応する。

(14) 113条の2の取得時の善意無過失とY2の過失を当てはめる(重み4)

113条の2の認識・過失の基準時は譲受時である。警告後の知情を取得時へ遡らせるのではなく,もともと取得時に過失があることから特例を否定する。
答案では「Y2は仕入時に善意でも有過失」という部分が対応する。

(15) 警告後の知情を113条1項2号へ当てはめる(重み5)

警告により侵害事実を知ったという事実を,現在の販売行為の知情へつなぐ。新規仕入れを止めても,既存在庫の販売が続く以上,現在の侵害は解消しない。
答案では「警告後は侵害複製物であると知っており」という部分が対応する。

(16) 警告後の頒布に加え頒布目的所持も侵害となることを指摘する(重み4)

知情後の販売だけでなく,そのための所持も113条1項2号の対象である。完成答案は在庫の所持まで明示した。差止請求の直接の対象として問われているのは販売である。
答案では「販売目的の在庫所持」という部分が対応する。

(17) 消尽に先立ちライセンス契約違反が著作権侵害となるか検討する(重み5)

消尽を論じる前に,Y1の許諾がなお有効かを判断する。契約違反という言葉だけで著作権侵害へ飛ばないことが本問の分岐である。
答案では「対価を支払う義務の不履行は,当然には利用を無許諾にしない」という部分が対応する。

(18) 支払義務の法的性質・発生根拠と利用範囲の違反を区別する(重み4)

許諾された対象・方法・条件を超える利用と,許諾利用の対価債務を履行しないことを区別する。問題文は未解除を指定しており,支払を許諾の効力発生条件とする合意を補ってはならない。
答案では「契約上の対価債務」という部分が対応する。

(19) 許諾を得たY1から公衆であるY2への譲渡による消尽を示す(重み5)

Y1が権利者の許諾を得て公衆であるY2へ譲渡した時点で,当該Pについて消尽が生じる。ライセンス料の現実の受領を消尽の追加要件にしない。
答案では「公衆であるY2への適法な譲渡」という部分が対応する。

(20) Y2が不払を知ることは消尽の成否を左右しないとする(重み4)

Y2が知っているのは対価の不払であって,無許諾製作という事実ではない。悪意という語の有無だけで設問2⑴の知情頒布と同じ効果を導かない。
答案では「その悪意は消尽の要件を左右せず」という部分が対応する。

(21) 死後の人格的利益の保護を60条で構成する(重み5)

著作者人格権は相続されないが,死後の人格的利益は60条で保護される。相続権の行使という誤った出発点を避ける。
答案では「著作者人格権は一身専属で相続されない」という部分が対応する。

(22) 存命なら侵害される権利として20条1項の同一性保持権を特定する(重み5)

60条だけでは,存命なら何の権利が侵害されるのかが分からない。本件では20条1項の同一性保持権を特定し,表情を含む全体の表現が変わったことを論じる。
答案では「20条1項の同一性保持権侵害となるべき行為」という部分が対応する。

(23) 頭部保存と像全体の表現の改変を区別する(重み4)

旧頭部が保存されている事実は重要であるが,交換後の像全体が改変されていないことにはならない。完全な廃棄だけの事案とは分けて考える。
答案では「旧頭部を壊さず保存しても」という部分が対応する。

(24) 20条2項4号の判断基準を提示する(重み5)

やむを得ないという結論だけで済ませず,著作物の性質と利用目的・態様,必要性と改変程度を判断の基準にする。所有権や宗教目的の存在も当然の免責にはならない。
答案では「性質,利用目的・態様に照らして必要性と改変の程度」という部分が対応する。

(25) Y1内部の不評と像全体の新造の代替可能性を検討する(重み4)

不評の主体は信者一般ではなくY1内部である。また,別の穏やかな像全体を新造する方法が考えられる。既存作品の重要部分を切り替える必要性を弱める二つの事情として評価する。
答案では「穏やかな像全体を新造する方法もある」という部分が対応する。

(26) 60条ただし書を20条の制限と別に検討する(重み5)

20条2項4号は存命なら人格権侵害になるかという段階の制限であり,60条ただし書は死後の保護に固有の制限である。一方の検討で他方を省略しない。
答案では「60条ただし書の意を害しない行為にも当たらない」という部分が対応する。

(27) 死亡直後・改変の性質程度・社会的事情の変動を関連付ける(重み4)

死亡直後であるため,長年月の経過に伴う社会的事情の変動を想定しにくい。表情という作者の世界観に関わる部分の交換という程度も踏まえ,ただし書を否定する。
答案では「死後すぐに表情という重要部分を替えた」という部分が対応する。

(28) X2の請求根拠を116条1項・115条へ接続する(重み5)

X2自身の著作者人格権ではなく,遺族に認められた法定の請求として116条から115条へつなぐ。故意・過失も措置請求の要件として検討する。
答案では「116条1項・2項により115条」という部分が対応する。

(29) 配偶者X2が最優先の遺族であることを示す(重み3)

配偶者であるX2が最優先であることを示し,遺族なら誰でも同順位という説明にしない。本問に遺言による順位変更の事実はない。
答案では「最優先の遺族」という部分が対応する。

(30) 名誉回復等の措置の具体的内容を示す(重み4)

名誉回復等の措置という名称の反復だけでは,何を求めるかが残る。旧頭部が現存することを使い,再すげ替えによる原状回復を具体的候補とする。
答案では「保存された旧頭部を戻してαを回復する措置」という部分が対応する。

(31) 原状回復・周知・謝罪広告等から事案に適当かつ相当な措置を論じる(重み4)

復元の実効性,技術的可能性,展示の影響,公示の効果と負担を比較する。事実経緯の周知には改変が作者自身によるものではないと示す意味がある。他方,社会的評価低下の具体的な与件なく大規模な謝罪広告を当然に認めない。
答案では「回復への実効性と負担の相当性」という部分が対応する。

(32) 答案例の限界

2500字という制約のため,応用美術の学説対立や復元方法の詳細を網羅するものではない。別説を採る場合には,その規範と事案への当てはめを差し替える必要がある。
また,旧頭部があることから復元の具体的工法・費用まで確定することはできない。事実経緯の周知や謝罪広告等の適否も,展示の影響,回復の必要性及び負担の相当性によって具体的に判断される。

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第7 出典及び確認状態

1 公式資料

法務省「令和元年司法試験論文式試験問題集〔選択科目〕」19頁・知的財産法第2問。
https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf

法務省「令和元年司法試験論文式試験問題出題趣旨」32~33頁・知的財産法第2問。
https://www.moj.go.jp/content/001305186.pdf

法務省「令和元年司法試験の採点実感〔選択科目〕」24~26頁の第2問採点方針及び28~30頁の第2問採点実感。
https://www.moj.go.jp/content/001308864.pdf

2 法令

著作権法2条,10条,20条,21条,26条の2,45条,46条,59条,60条,63条,112条,113条,113条の2,115条,116条。試験当時の履歴版を用いた。
https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048/20190401_430AC0000000039?occasion_date=20190401

3 裁判例

知財高裁平成27年4月14日判決・平成26年(ネ)第10063号〔TRIPPTRAPP事件〕。判時2267号91頁。裁判所公表PDF28~29頁,32~36頁の応用美術の判断部分を参照した。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-85044.pdf

別の立場の例として,公式の出題趣旨・採点実感は知財高裁平成26年8月28日判決〔激安ファストファッション事件〕・判時2238号91頁も挙げている。本記事ではこの裁判例の内容を公式資料の紹介の範囲で扱い,判決全文を実読したものとしては引用していない。

4 確認状態

問題文及び公式資料は本問に対応する範囲を確認した。公式資料の他の科目・他の問題は本問の答案や評価項目に用いていない。評価項目の抽出・重み付け,答案例とその対応の判断は独自の分析であり,公式得点や合格可能性を示すものではない。
応用美術について試験後の法改正・裁判例を遡って前提とせず,当時の複数の立場を踏まえた。確認日は令和8年10月19日である。