令和5年司法試験労働法第2問の模範解答と,公式資料から独自に抽出した30項目を掲載する。
評価項目は5段階で重み付けし,法務省の公式配点とは区別している。
第1 この記事の対象と結論
本記事は,令和5年司法試験・労働法第2問について,公式の出題の趣旨・採点実感から独自に抽出した30項目を示し,5段階で重み付けして模範解答を掲載する。
設問1では,A社の労働時間管理に関する使用者性と団交応諾義務を肯定する。
設問2では,令和3年12月分と翌年の11か月分を区別し,令和5年協約による放棄の効力を否定して元本と起算日の異なる遅延損害金を認める。
重み5は13項目であり,使用者性の一般基準と事項別の限定,両協約の区別,既発生債権の帰属・特別授権及び遅延損害金の起算が中心となる。
詳細は第4の現在の評価表番号で示す。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一項目に一つの法的判定対象を置き,必須・負例・許容分岐を重みとは独立させた。
これは法務省の公式採点基準・項目別配点ではない。
公開番号は記事全体で連続させ,内部追跡IDと区別する。
出題趣旨・採点実感の頁はPDFの物理頁を指す。
短い引用は根拠の所在を示すためのものである。
「記載なし」は第2問及び必要な共通範囲を読んだ結果であり,「間接」は当該記載からの独立推論を意味する。
起算日の具体的年月日は問題文と法源から導いた。
将来条件変更の個別同意,労組法16条の効果,発生と支払期の一般的区別等の補足は,独立確認した法源による説明へ分け,公式資料の明示評価として加重していない。
番号27の別構成は,その構成を採る答案に限る条件付き項目である。
2 5段階の重み付けの基準
①重み5:採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの。
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項。
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け。
④重み2:一方が軽く触れる補強,又は典型的な誤り。
⑤重み1:一方が控えめに触れる事項。
本問の重み4は「両資料が取り上げた事項」という基準を採用する。
「高く評価した」と明記されていない事項を,そのように記載されたものとして扱わない。
項目数・重み合計から公式得点や難易度を推計しない。
第3 本問の概要
旅客運送等を営むA社は,関連会社B社の雇用する添乗員を受け入れ,勤務計画書・日報・携帯電話で労働時間を管理する。
実労働が計画を超えることが多く,割増賃金の不払も生じている。
B社の添乗員の6割で組織されるC組合は,A社に時間管理の改善,B社に未払割増賃金の支払を議題とする団交を申し入れた。
A社は雇用主でないとして拒否した。
C組合員Dの賃金は毎月20日締め・月末払である。
令和3年12月20日の協約は,未払割増賃金を精算する一方,同月分から12か月の基本給1割を猶予し,令和4年12月分の支払時に一括払とした。
Dは生活への影響に不満を持ったが明示的に反対しなかった。
その期限にも不払となり,令和5年1月31日の協約で猶予債権の放棄が定められた。
Dは同年2月28日に元本と遅延損害金を請求した。
設問1は7条2号の救済申立て,設問2は賃金及び遅延損害金の請求を問う。
C組合の労組法2条該当性と5条1項の立証は前提として与えられる。
第4 評価項目と重み
1 設問1:派遣先の団体交渉義務
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | A社の雇用主外の労組法7条使用者性を検討し,組合員の3条労働者性で代用しない。(必須) | 5 | 出題趣旨31頁:添乗員の雇用主ではないA社が、派遣労働者たる添乗員との関係で、不当労 働行為を禁止される「使用者」 | 採点実感32頁:労働組合法第7条の「使用 者」に当たるか |
| 2 | 雇用主と同視できる程度の現実的・具体的支配決定という朝日放送判決の規範を示す。(必須) | 5 | 出題趣旨31頁:判例(朝日放送事件・最判平成7年2月28日民集49巻2号559頁) | 採点実感33頁:現実的かつ具体 的に支配、決定できる地位 |
| 3 | 使用者性を支配決定できる労働条件の限りに限定し,A社の計画・日報・指示を評価する。(必須) | 5 | 出題趣旨31頁:本件の具体的事実に的確に当てはめる | 採点実感33頁:その限りにおいて部分 的な「使用者」性 |
| 4 | 法定派遣の特別判断枠組みを示し,その採否と一般基準との関係を理由付きで検討する。(必須) | 4 | 出題趣旨31頁:特別な判断枠組み | 採点実感33頁:特別な判断枠組み |
| 5 | 義務的団交事項を待遇・団体的労使関係運営・使用者の処分可能性から定義する。(必須) | 4 | 出題趣旨31頁:義務的団体交渉事項の範囲 | 採点実感32頁:義務的団体交渉事項の意義 |
| 6 | 勤務実態の資料提示と長時間労働解消策を,A社が処理できる義務的団交事項へ当てはめる。(必須) | 4 | 出題趣旨31頁:上記事項がいわゆる義務的団体交渉事項 | 採点実感32頁:本件の事実関係に照らした論述 |
| 7 | 雇用主ではないとの拒否理由が,事項別使用者性を踏まえると正当な理由にならないと説明する。(必須) | 4 | 出題趣旨31頁:「正当な理由」があるか | 採点実感32頁:「正当な理由」の有無 |
| 8 | 7条2号の成立から,当該議題の団交応諾救済へ結び付ける。(必須) | 4 | 出題趣旨31頁:労働委員会において救済 | 採点実感32頁:労働委員会による救済 |
| 9 | 法人格否認又は黙示の労働契約の成立を,雇用主外の使用者概念の代わりに主位化しない。(負例) | 2 | 記載なし | 採点実感33頁:法人格の否認 |
| 10 | 7条2号の救済申立てを7条3号の成否又は救済に取り違えない。(負例) | 2 | 記載なし | 採点実感34頁:同条第3号の不当労働行為 |
2 設問2:労働協約と賃金債権
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 11 | 令和3年協約と5年協約を別々の法的問題として分析する。(必須) | 5 | 出題趣旨31頁:その後さらに、当該支 払猶予分の賃金債権を放棄 | 採点実感33頁:別個にその法的問題を検討すべき |
| 12 | 令和3年協約の支払猶予を履行期の後退という労働条件の不利益変更と捉える。(必須) | 4 | 出題趣旨31頁:履行期を遅らせる | 採点実感33頁:履行期を遅らせる |
| 13 | 労働協約による不利益変更自体を当然に否定せず,集団的調整の役割を説明する。(必須) | 4 | 出題趣旨31頁:不利益に変更することそれ自体の可 否 | 採点実感34頁:不利益に変更するものであり |
| 14 | 石堂判決の組合目的逸脱という限界を,特定・一部組合員への殊更不利益等から示す。(必須) | 5 | 出題趣旨31頁:朝日火災海上保険(石堂) | 採点実感34頁:朝日火災海上保険(石堂) |
| 15 | 経営悪化・未払割増精算・1割12か月・規約手続・Dの不満を全体として評価する。(必須) | 4 | 出題趣旨31頁:関連する事実を的確に拾い上げ | 採点実感34頁:規範的効力の有無を検討 |
| 16 | 協約締結前の既発生債権と締結後に発生する将来分を区別する。(必須) | 5 | 出題趣旨31頁:同年12月分の賃金 | 採点実感34頁:同年12月分の賃金以外 |
| 17 | 具体的に発生した賃金債権が個々の労働者の処分領域に属する理由を述べる。(必須) | 5 | 出題趣旨31頁:具体的に発生した賃金請求権 | 採点実感33頁:そのそれぞれが決定すべき領域 |
| 18 | 特別の授権なく事後協約で既発生賃金を処分・変更できないという平尾判決の規範を示す。(必須) | 5 | 出題趣旨32頁:特別の授権がない限り | 採点実感33頁:特別の授権がない限り |
| 19 | 債権放棄だけでなく,既発生債権の支払猶予にも処分・変更制約が及ぶと示す。(必須) | 4 | 出題趣旨31頁:同年12月分の賃金 | 採点実感33頁:同年12月分の賃金の一部の支払を猶予 |
| 20 | 12月20日締めと同日の協約締結から,令和3年12月分が既発生であると当てはめる。(必須) | 5 | 出題趣旨31頁:同年12月分の賃金 | 採点実感33頁:同年12月分の賃金の一部の支払を猶予 |
| 21 | 令和5年協約締結時には猶予分全体が既発生の個人債権であると当てはめる。(必須) | 5 | 出題趣旨31頁:令和5年協約による放棄 | 採点実感33頁:令和5年協約による既発生の賃金債権の放棄 |
| 22 | Dの特別授権を認める事情がないため,5年協約による債権消滅を否定する。(必須) | 4 | 出題趣旨32頁:特別の授権があったとは認め難い | 採点実感33頁:個々の組合員による特別の授権 |
| 23 | 個別の元本請求を処理し,猶予分の賃金請求の可否を示す。(必須) | 4 | 出題趣旨32頁:支払猶予分の賃金の請求は認められる | 採点実感32頁:賃金及びその遅延損害金の支払請求 |
| 24 | 元本請求と別に,3年協約の効力によって遅延損害金の起算点が変わると検討する。(必須) | 5 | 出題趣旨32頁:その 起算点との関係 | 採点実感34頁:発生の起算点を左右 |
| 25 | 猶予が及ばない3年12月分は原支払期翌日(4年1月1日)から遅延とする。(必須) | 5 | 間接:出題趣旨32頁・起算点の検討 | 間接:採点実感34頁・正確な起算点 |
| 26 | 将来11か月分の猶予が有効な構成では,約定一括支払期翌日(5年1月1日)から遅延とする。(必須) | 5 | 間接:出題趣旨32頁・起算点の検討 | 間接:採点実感34頁・正確な起算点 |
| 27 | 3年協約の効力を否定する別構成を採る場合は,各月の原期日から遅延を一貫して計算する。(許容分岐:3年協約の効力を否定する場合のみ) | 3 | 間接:出題趣旨32頁・起算点の検討 | 間接:採点実感34頁・正確な起算点 |
| 28 | 個人の自由な放棄意思だけを論じ,集団協約が個人債権を規律できるかという先行問題を飛ばさない。(負例) | 2 | 記載なし | 採点実感34頁:論理的に先に来るはずの検 討を懈怠あるいは等閑視 |
| 29 | 3年協約と5年協約の関係を有利原則の問題にすり替えない。(負例) | 2 | 記載なし | 採点実感34頁:本設問で論ずべきものではない |
| 30 | 5年放棄協約の結論を理由に3年協約の規範的効力・遅延損害金の検討を省かない。(負例) | 3 | 記載なし | 採点実感34頁:論述の必要性がなくなるわけではない |
3 重みの分布
重み1:0項目,重み2:4項目,重み3:2項目,重み4:11項目,重み5:13項目。
総項目数N=30,重み合計W=123。
負例は表の集計に含むが,その回避を内容網羅率の加点としない。
重み5は次の13項目である。
番号1:A社の雇用主外の労組法7条使用者性を検討し,組合員の3条労働者性で代用しない。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号2:雇用主と同視できる程度の現実的・具体的支配決定という朝日放送判決の規範を示す。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号3:使用者性を支配決定できる労働条件の限りに限定し,A社の計画・日報・指示を評価する。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号11:令和3年協約と5年協約を別々の法的問題として分析する。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号14:石堂判決の組合目的逸脱という限界を,特定・一部組合員への殊更不利益等から示す。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号16:協約締結前の既発生債権と締結後に発生する将来分を区別する。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号17:具体的に発生した賃金債権が個々の労働者の処分領域に属する理由を述べる。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号18:特別の授権なく事後協約で既発生賃金を処分・変更できないという平尾判決の規範を示す。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号20:12月20日締めと同日の協約締結から,令和3年12月分が既発生であると当てはめる。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号21:令和5年協約締結時には猶予分全体が既発生の個人債権であると当てはめる。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号24:元本請求と別に,3年協約の効力によって遅延損害金の起算点が変わると検討する。
適用条件:本問の与件・当該設問に適用
番号25:猶予が及ばない3年12月分は原支払期翌日(4年1月1日)から遅延とする。
適用条件:令和3年12月分の猶予効力を否定する構成を採る場合。
番号26:将来11か月分の猶予が有効な構成では,約定一括支払期翌日(5年1月1日)から遅延とする。
適用条件:将来11か月分の猶予を有効とする構成を採る場合。
各項目は本問の当該設問に適用する。
重み5という数字だけで別構成を排除したり,新しい必須事項を追加したりしない。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
令和5年7月12日当時の法令・判例に基づき,中立的に両設問へ答える。
答案は改行を除き2139字であり,1問2500字以内に収めた。
最高裁判決・下級審判決・労働委員会命令を区別し,本問への評価は自説として示す。
2 答案
1 設問1
(1) 労働組合法7条2号は,使用者が正当な理由なく団体交渉を拒むことを禁止する。
C組合の同法2条該当性及び5条1項の立証は設問上満たされる。
そこで,雇用主でないA社が7条の「使用者」に当たるかが問題となる。
同条は団結権侵害を排除・是正し正常な労使関係を回復する趣旨であるから,雇用主以外の事業主でも,労働者を自己の業務に従事させ,その基本的労働条件等を雇用主と部分的に同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあれば,その限りで使用者に当たる(最判平成7年2月28日)。
(2) 法定の派遣では,派遣元が労働条件を決定し,派遣先への要求は苦情処理で対応するため,派遣先は原則として使用者でないとし,派遣法上の責任を負う事項等に例外を認める枠組みがある(ショーワ中労委命令平成24年9月19日,阪急交通社東京地判平成25年12月5日参照)。
通常の指揮命令だけで使用者性を当然に認めず,派遣法の責任配分を踏まえ,議題に係る現実的・具体的支配を審査するこの考え方を採る。
A社とB社は同一企業グループに属するが,B社は他社にも添乗員を派遣しており,両社を当然に同一視できない。
しかしA社は,旅程を踏まえた勤務計画を作成し,日報を提出させ,携帯電話で指示するなど,添乗員の労働時間を直接管理している。
交通事情による予定超過があっても,計画や指示を改めて長時間労働を解消できる地位にある。
派遣法44条2項により労基法32条等の労働時間規制について責任を負い,適切な労働時間の把握・管理をすべき地位にある。
実労働が計画をしばしば超え,割増賃金の不払が生じているのに,実態に即した管理ができておらず,その改善はA社自身の法的責任に関わる。
したがって,A社は労働時間管理に関して7条の使用者に当たる。
義務的団交事項は,組合員の労働条件その他の待遇及び団体的労使関係の運営に関する事項で,使用者が処分可能なものである。
C組合の議題は,勤務実態資料の提示及び長時間労働解消策であり,組合員の労働条件に関する,A社が処理できる事項である。
未払割増賃金の支払を求めるB社への団交とは異なり,A社の賃金決定権の有無はこの議題の応諾義務を左右しない。
雇用主でないとの理由だけで拒否する正当な理由はない。
(3) よって7条2号の不当労働行為が成立する。
拒否から1年以内の申立てであり,C組合は労働委員会から,当該議題につきA社が誠実に団交に応じる旨の救済命令を受けられる(27条の12)。
特定内容の協約締結を強制するものではない。
2 設問2
(1) 労働協約に定める労働条件その他の待遇の基準は,これに違反する労働契約部分を無効とし,基準によって補充する(労組法16条)。
C組合員であるDに適用されるので,17条の一般的拘束力による必要はない。
不利益な変更であっても,組合が労働条件を集団的に調整する役割に照らし,協約締結の経緯,経営状態及び変更内容から,特定又は一部の組合員をことさら不利益に扱う目的など,組合の目的を逸脱する特段の事情がない限り,規範的効力が及ぶ(朝日火災海上保険・石堂事件,最判平成9年3月27日参照)。
Dの個別同意がないことだけで効力を否定できない。
令和3年協約は,経営悪化への対応として未払割増賃金を一括精算する一方,基本給の1割に限って12か月の猶予を認め,1年後に支払うものである。
規約上の手続も経ている。
Dは割増賃金が少なく生活への影響を懸念するが,Dらだけを狙った不利益ではない。
締結時の経営改善の見込みが後に外れたことだけで遡って特段の事情があるとはいえず,原則として効力が及ぶ。
(2) ただし,具体的に発生した賃金債権は個々の労働者に帰属するから,特別の授権なしに事後の協約で処分・変更できない。
支払期を延ばす処分にもこの制約がある(最判平成31年4月25日参照)。
令和3年協約は12月20日に締結され,賃金も毎月20日締めである。
したがって同年12月支払分は締結時に既に具体的に発生しており,同月末の支払期が未到来でも将来の労働条件とはいえない。
Dが明示的に反対しなかったというだけでは,特別授権又は個人としての猶予合意を認められない。
この分の1割について,Dに猶予の効力は及ばない。
これに対し令和4年1月から11月までの支払分は,締結後の労働により生じるから協約による猶予が及ぶが,令和4年12月分の賃金支払時に一括で支払う期限が到来している。
(3) 令和5年協約は,これらの既発生債権を放棄するものである。
将来の解雇や減額を回避する目的及び規約所定の手続があっても,組合の協約締結権限が個人債権の処分権限に変わるわけではない。
Dからの特別授権を基礎付ける事情はなく,Dの債権は消滅しない。
(4) よってDは,令和3年12月から翌年11月までの各基本給の1割全額を請求できる。
遅延損害金は,令和3年12月分について令和4年1月1日から,残る11か月分について令和5年1月1日から,それぞれ支払済みまで認められる。
確定期限の経過により履行遅滞となり,特別な約定利率の記載がないので,民法412条1項,419条1項及び404条により年3%である。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(49) 答案と評価項目の対応
答案1は番号1〜10,答案2は番号11〜30に対応する。
使用者性の一般基準,法定派遣の特別枠組み,義務的団交事項及び正当理由を分ける。
賃金については規範的効力の限界と既発生債権の処分権限を区別する。
番号27は,以下の別構成を採用する場合の条件を示す。
(50) 派遣先の使用者性をどの範囲で認めるか
朝日放送判決の一般基準を,法定の派遣という制度に即して適用する必要がある。
ショーワ命令は法定派遣の原則と例外を分け,阪急交通社判決は派遣法上の責任を負う労働時間管理と現実的支配を検討した。
通常の指揮命令の存在だけで全面的な使用者性を導かず,A社が責任を負い処理できる労働時間管理の議題に限定する。
B社への賃金支払請求と混同しない。
(51) 既発生債権と将来条件を分ける
令和3年12月分は20日締めの時点で発生している。
月末の支払期が未到来であることは,個人への債権帰属を否定しない。
これに対し,翌年1月から11月までの分には将来条件としての猶予が及ぶ。
その後の放棄協約は,既に個人に帰属した債権を処分するものであり,石堂の不利益変更法理だけで処理できない。
(52) 別構成と起算日の一貫性
Dの生活上の不利益等を重視して3年協約の将来分への規範的効力も否定する立場を採るなら,1月〜11月分もそれぞれの原支払期の翌日から遅延損害金を計算する。
単に不利益だから無効とせず,採用する判例の限界と事実評価から理由を示す必要がある。
本答案は,1割・12か月の猶予と割増賃金精算,経営事情及び規約手続を全体として評価し,将来分への効力を認めた。
(53) 答案の弱点と扱わなかった事項
使用者性の基準をめぐる評価では,派遣法上の義務があることと労組法上の使用者性を全面的に認めることを区別する。
Dの具体的賃金額や約定利率は与えられていないため,金額を作らず基本給1割の範囲を示した。
7条3号,法人格否認,黙示の雇用契約,有利原則の議論は本問の主ルートとして扱わない。
第6 関連記事
1 同じ年度の司法試験の別の模範解答
①令和5年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
②令和5年司法試験民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した80項目と5段階の重み付け(AIリライト)
③令和5年司法試験刑事系科目第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した53項目と5段階の重み付け(AI作成)
④令和5年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答(AI作成)
2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事
①令和6年司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目(AI作成)
②外回り営業は残業代が出ないのか―事業場外みなし労働時間制,日報・スマホ及び歩合給の確認点(AI作成)
後年の記事は比較・関連情報の紹介に限り,本問の試験実施日当時の法状態を改める根拠には用いない。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
令和5年司法試験論文式問題・選択科目(労働法第2問,29〜30頁)
令和5年司法試験論文式試験出題の趣旨(労働法第2問,30〜32頁)
令和5年司法試験採点実感・選択科目(労働法,30頁共通部分・32〜35頁第2問等)
2 法令
労働組合法7条・14条・16条・27条・27条の12,労働者派遣法44条2項,労働基準法32条,民法404条・412条・419条。
答案では試験日以前に施行された版を使用した。
リンク先の現行表示と試験時の版を区別する。
3 裁判例
朝日放送事件・最三小判平成7年2月28日(平成5年(行ツ)第17号,民集49巻2号559頁。全文)
ショーワ事件・中労委命令平成24年9月19日(35〜38頁)
阪急交通社事件・東京地判平成25年12月5日(平成24年(行ウ)第868号。28〜34頁)
朝日火災海上保険(石堂)事件・最一小判平成9年3月27日(平成7年(オ)第1299号。全文)
平尾事件・最一小判平成31年4月25日(平成29年(受)第1889号。全文)
4 確認状態
公式資料の上記関連範囲と各原典を実読した。
法令は令和5年7月12日以前の施行履歴から版を選択した。
公式資料の評価と,法源からの独立確認,問題文への当てはめを区別する。
表の重みと模範解答は本記事の分析であり,法務省が公表した模範答案又は項目別配点ではない。