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令和5年司法試験倒産法第2問の模範解答と評価項目―50項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和5年司法試験倒産法第2問を対象に,公式資料から独自に抽出した50の評価項目と模範解答を示す。
5段階の重みは本記事の分析であり,法務省の公式配点ではない。

第1 この記事の対象と結論

対象は,令和5年司法試験の倒産法第2問である。
出題の趣旨及び採点実感を踏まえ,電気料金の弁済可否,敷金返還請求権の扱いと弁済額を検討する。

9月分の電気料金は原則として約定期限に支払えず,10月分・11月分は共益債権として約定期限に支払える。
敷金について,枠内答案は当然充当と共益債権化を別に扱うα構成を採り,弁済額を304万円とする。
採点実感はβ構成の268万円及びγ構成の220万円も示しており,一つの結論だけを全答案へ要求するものではない。

評価項目は50項目,重み5は12項目である。
具体的な番号・本文・適用条件は第4の重みの分布に示す。
必須事項,高評価事項,負例及び許容分岐を区別し,選ばない構成の記述を累積的に要求しない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一つの項目につき一つの判定対象を置いた。
番号は記事全体で連続し,表の50行と対応する。
必須・高評価・負例・許容分岐は重みとは別の区分であり,項目欄で明示する。
負例は誤った記載を避ける項目であり,誤りそのものを書くことを求めない。

番号22は一種の取戻権による寄託額の返還構成,番号43はβ構成,番号44はγ構成を採る場合の項目である。
番号21は財団債権による返還構成,番号42はα構成に対応する。
いずれの構成を選ぶかと,選んだ構成の要件・理由・計算が一貫しているかは別の問題である。

根拠欄の頁はPDFの物理頁であり,資料に印字された頁と一致する。
「記載なし」は,本問及び関連する総論を実読した範囲に独立の具体的指摘がないことを意味する。
一般的な答案作法及び公式資料に個別評価として記載されていない補足は,重み付き集計へ含めない。

2 5段階の重み付けの基準

重み5=採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの。
重み4=出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項。
重み3=どちらか一方が明示する中核の理由付け。
重み2=一方が軽く触れた補強,又は典型的な誤り。
重み1=一方が控えめに触れた事項。

本問の重み4は,両資料が評価又は具体的な不十分答案の指摘を通じて取り上げたことを基準とする。
全てを「高く評価された」と言い換えるものではない。
重み5でも条件付きの事項を全答案の必須へ格上げせず,重みの合計を公式得点又は合格可能性と扱わない。

第3 本問の概要

衣服を製造販売するA社は,令和4年10月27日に再生手続開始を申し立て,同年11月4日に開始決定を受けた。
債権届出期間は12月2日までである。
Cは電気供給契約の継続を前提に,9月分・10月分・11月分について,11月10日・12月10日・翌年1月10日の各支払期限に支払えるかを回答する。

B社はA社からオフィスビルの4階を賃借し,月額賃料60万円の10か月分に当たる敷金600万円を交付していた。
賃料は前月末に翌月分を支払い,8月の空調修理費60万円を自働債権として11月30日に12月分賃料との相殺をした。
1月分から4月分までは各期限に支払ったが,5月分・6月分は未払であり,6月30日の明渡し時にB社負担の原状回復費80万円が生じた。

再生計画は再生債権の60%免除と残額弁済を定め,認可決定は6月26日に確定した。
設問2⑵は,敷金から未払賃料等を控除した残額の再生債権部分へ権利変更を行う考え方を指定する。
敷金600万円そのものに先に60%免除を適用する構成は,この指定に反する。

第4 評価項目と重み

1 設問1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1【必須】電気供給を月ごとに債権額を算定する継続的給付契約と分類する4PDF20頁・設問1(一定期間ごとに債権額を算定すべき)PDF5頁・設問1(一定期間ごとに債権額を算定すべき)
2【必須】再生債権の定義を開始前原因の財産上の請求権として84条1項に即して示す4PDF20頁・設問1(再生債権の定義及び要件)PDF5頁・設問1(再生債権の定義)
3【必須】9月分の供給を開始前原因に当てはめ再生債権とする4PDF20頁・設問1(①の期間の請求権が再生債権)PDF5頁・設問1(開始決定前の原因)
4【必須】9月分を85条1項の弁済禁止につなぎ11月10日には支払えないと回答する5PDF20頁・設問1(支払期限までに支払うことはできない)PDF5頁・設問1(支払期限までに支払うことはできない)
5【負例】法人の工場の電気料金を日用品供給の一般優先債権と誤分類しない3記載なしPDF5頁・設問1(法人の電気料金であるにもかかわらず)
6【負例】根拠事実のない少額弁済許可を想定して9月分が支払えるとしない3記載なしPDF5頁・設問1(少額弁済の許可)
7【必須】10月分に50条2項括弧書きを適用し申立て日の属する月全額を共益債権とする5PDF20頁・設問1(同項括弧書き)PDF5頁・設問1(評価を分)
8【必須】10月中は申立てのみで開始決定に至っていないという時点を区別する5PDF20頁・設問1(申立て又は再生手続開始との前後)PDF5頁・設問1(再生手続開始決定には至っていない)
9【必須】10月分を121条1項の随時弁済から12月10日の支払可へつなぐ4PDF20頁・設問1(支払期限までに支払うことができる)PDF5頁・設問1(再生手続によらないで随時弁済)
10【負例】10月分を申立て日前後で再生債権と共益債権に日割りしない2記載なしPDF5頁・設問1(申立ての日の前後で)
11【必須】11月の開始前給付に50条2項を適用する4PDF20頁・設問1(開始前の分は)PDF5頁・設問1(再生手続開始前の分は)
12【必須】11月の開始後給付に119条2号又は履行選択に基づく49条4項を適用する5PDF20頁・設問1(同法第49条第4項)PDF5頁・設問1(条文の適用関係を的確に)
13【必須】11月分全額を共益債権として1月10日に支払うと回答する4PDF20頁・設問1(その全額が共益債権)PDF5頁・設問1(支払期限までに支払うことができる)
14【負例】119条2号を選ぶとき法人の工場費用を「生活」費用と当てはめない〔適用:119条2号を採る場合〕2記載なしPDF5頁・設問1(「生活」に当てはめている)
15【負例】開始後給付を開始後債権として計画弁済期間満了まで禁止されるとしない3記載なしPDF5頁・設問1(権に該当するから)
16【負例】再生債権ではないという消極的理由だけで弁済可とせず共益債権の根拠を示す2記載なしPDF5頁・設問1(再生債権に該当しないから)

2 設問2⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
17【必須】破産で敷金返還請求権を開始前原因の破産債権として位置付ける4PDF20頁・設問2⑴(敷金返還請求権は破産債権)PDF6頁・設問2⑴(敷金返還請求権は破産債権)
18【必須】破産法70条後段の賃料弁済額の寄託請求を返還請求権額の限度で説明する4PDF21頁・設問2⑴(弁済額の寄託を請求)PDF6頁・設問2⑴(弁済額の寄託を請求)
19【高評価】寄託を伴う賃料弁済を明渡しを解除条件とする弁済として説明する4PDF21頁・設問2⑴(明渡しを解除条件)PDF6頁・設問2⑴(解除条件とする)
20【高評価】明渡しによる賃料弁済の失効から未払賃料と敷金との充当関係を説明する4PDF21頁・設問2⑴(明渡しによって賃)PDF6頁・設問2⑴(充当関係が生じる)
21【高評価】寄託した賃料相当額の返還を開始後不当利得の財団債権として説明する〔適用:財団債権による返還構成を採る場合(本答案)〕4PDF21頁・設問2⑴(同法第148条第1項第5号)PDF6頁・設問2⑴(財団債権となる)
22【許容分岐】寄託額の返還を一種の取戻権として説明する構成を排除しない〔適用:一種の取戻権による返還構成を採る場合のみ。本答案は不採用〕3記載なしPDF4頁・設問2⑴(取戻権の行使)
23【高評価】最後配当に関する除斥期間内に明渡しによって行使可能となる必要を示す3記載なしPDF6頁・設問2⑴(最後配当に関する除斥期間内)
24【必須】再生では敷金契約という開始前原因を示し共益部分を除く返還請求権を再生債権とする4PDF21頁・設問2⑴(再生債権(民事再生法第84条第1項))PDF6頁・設問2⑴(再生手続開始前の原因(敷金契約))
25【必須】敷金の再生債権部分は再生計画に従って弁済されると示す4PDF21頁・設問2⑴(の定めにより弁済される)PDF6頁・設問2⑴(再生債権となる部分は再生計画)
26【必須】92条3項の前提として開始時に賃料債務を負担していることを示す5PDF21頁・設問2⑴(適宜説明を加えつつ)PDF6頁・設問2⑴(①再生手続開始時に再生債務者に対して賃料債務を負担)
27【必須】開始後に期限が来る賃料をその期限に弁済したことを92条3項の要件とする5PDF21頁・設問2⑴(適宜説明を加えつつ)PDF6頁・設問2⑴(その弁済期に弁済したこと)
28【必須】現実の期限内弁済額が共益債権化の上限となることを示す5PDF21頁・設問2⑴(弁済した賃料債務の額)PDF6頁・設問2⑴(③上記②の弁済額が上)
29【必須】開始時の賃料6か月相当額が共益債権化の範囲となることを示す5PDF21頁・設問2⑴(賃料の6か)PDF6頁・設問2⑴(④賃料の6か月分に相当する額)
30【必須】92条2項の相殺免除額を6か月相当額から控除することを示す5PDF21頁・設問2⑴(相殺により免れる賃料債務の額が控除)PDF6頁・設問2⑴(⑤上記④の範囲から)
31【必須】共益化した敷金部分が再生手続外で再生債権に先立ち随時弁済されると示す4PDF21頁・設問2⑴(再生債権に先立って随時弁済)PDF6頁・設問2⑴(再生債権に先立って随時弁済)
32【負例】敷金の停止条件付性の説明だけで手続上の取扱いへの回答を終えない2記載なしPDF6頁・設問2⑴(この指摘のみでは)

3 設問2⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
33【必須】設問指定の当然充当先行説を守る5PDF21頁・設問2⑵(当然充当先行説)PDF6頁・設問2⑵(問題文の指示を無視する)
34【必須】5月分・6月分の未払賃料120万円を敷金から控除する4PDF21頁・設問2⑵(未払賃料及び原状回復費用)PDF6頁・設問2⑵(未払賃料)
35【必須】賃借人負担の原状回復費80万円を敷金から控除する4PDF21頁・設問2⑵(未払賃料及び原状回復費用)PDF6頁・設問2⑵(原状回復費用80万円)
36【必須】敷金600万円から200万円を当然充当して残額400万円を求める5PDF21頁・設問2⑵(残額が400万円)PDF6頁・設問2⑵(結果400万円)
37【負例】敷金の当然充当を92条1項の相殺と混同して排除しない3記載なしPDF7頁・設問2⑵(当然充当及び相殺)
38【必須】1月分から4月分までに現実に期限弁済した賃料が240万円と求める4PDF21頁・設問2⑵(弁済した賃料債務の額)PDF7頁・設問2⑵(賃料債務合計240万円)
39【必須】開始時賃料6か月相当額を360万円と求める4PDF21頁・設問2⑵(賃料の6か)PDF7頁・設問2⑵(額は360万円)
40【必須】修理費返還請求権と12月賃料との相殺は11月30日で届出期間内として92条2項で処理する4PDF21頁・設問2⑵(同法第9)PDF7頁・設問2⑵(債権届出期間内のものであるから)
41【必須】相殺で免れた60万円を360万円から引き上限300万円と求める4PDF21頁・設問2⑵(相殺により免れる賃料債務の額が控除)PDF7頁・設問2⑵(相殺により免れる賃料債務60万円)
42【必須】α構成では当然充当を共益化と別に扱い実弁済240万円と上限300万円の小さい方を採る〔適用:α構成を採る場合(本答案)〕4PDF21頁・設問2⑵(共益債権となる額を算出)PDF7頁・設問2⑵(240万円全額が共益債権)
43【許容分岐】β構成では未払賃料充当分も上限から控除し共益部分180万円とする〔適用:β構成を採る場合のみ。本答案は不採用〕3記載なしPDF7頁・設問2⑵(残額180万円が共益債権)
44【許容分岐】γ構成では未払賃料・原状回復費充当分も上限から控除し共益部分100万円とする〔適用:γ構成を採る場合のみ。本答案は不採用〕3記載なしPDF7頁・設問2⑵(残額100万円が共益債権)
45【必須】選択構成の共益部分を返還残額から除き再生債権額を算出する4PDF21頁・設問2⑵(再生債権となる部分)PDF7頁・設問2⑵(160万円、220万円、300万円)
46【必須】179条1項の権利変更によって再生債権部分の40%を弁済額とする4PDF21頁・設問2⑵(同法第179条第1)PDF7頁・設問2⑵(60%が免除)
47【必須】共益部分の全額と減額後再生部分を合計して構成に対応する弁済額を求める5PDF21頁・設問2⑵(合計が弁済額)PDF7頁・設問2⑵(304万円、268万円、220万円)
48【負例】600万円への免除を当然充当より先に行わない3記載なしPDF6頁・設問2⑵(充当前の600万円)
49【負例】実弁済額を無視して360万円又は300万円を共益部分としない3記載なしPDF7頁・設問2⑵(万円を共益債権とする答案)
50【負例】92条3項括弧書きの60万円を240万円から控除しない3記載なしPDF7頁・設問2⑵(240万円から控)

4 重みの分布

重み1=0項目,重み2=4項目,重み3=11項目,重み4=23項目,重み5=12項目である。
総項目数は50,重みの単純合計は193である。
これは公開表の全行の集計であり,個々の答案が全ての許容分岐を満たすことを要求する数字ではない。

重み5の全項目は次のとおりである。
①番号4:9月分を85条1項の弁済禁止につなぎ11月10日には支払えないと回答する(全答案)。
②番号7:10月分に50条2項括弧書きを適用し申立て日の属する月全額を共益債権とする(全答案)。
③番号8:10月中は申立てのみで開始決定に至っていないという時点を区別する(全答案)。
④番号12:11月の開始後給付に119条2号又は履行選択に基づく49条4項を適用する(全答案)。
⑤番号26:92条3項の前提として開始時に賃料債務を負担していることを示す(全答案)。
⑥番号27:開始後に期限が来る賃料をその期限に弁済したことを92条3項の要件とする(全答案)。
⑦番号28:現実の期限内弁済額が共益債権化の上限となることを示す(全答案)。
⑧番号29:開始時の賃料6か月相当額が共益債権化の範囲となることを示す(全答案)。
⑨番号30:92条2項の相殺免除額を6か月相当額から控除することを示す(全答案)。
⑩番号33:設問指定の当然充当先行説を守る(全答案)。
⑪番号36:敷金600万円から200万円を当然充当して残額400万円を求める(全答案)。
⑫番号47:共益部分の全額と減額後再生部分を合計して構成に対応する弁済額を求める(全答案)。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

令和5年7月12日の試験実施時の法令を用い,設問の指定した当然充当先行説を前提とする。
敷金の共益部分はα構成を採り,破産の寄託額返還は財団債権構成による。
答案本文は見出し・「以上」を含み,改行を除いて1960字である。
裁判例の原文確認をしたとの表示を付けず,法令の規律と公式資料の求める説明を区別する。

2 答案

1 設問1

(1) 電気供給契約は,一定期間ごとに料金を算定する継続的給付を目的とする双務契約である。
9月分は再生手続開始前の供給を原因とする財産上の請求権であり,再生債権となる(民事再生法84条1項)。
再生債権は,開始後,原則として再生計画によらなければ弁済できない(85条1項)。
したがって,11月10日の支払期限には支払えないと回答する。
法人の工場の電気料金は日用品供給の一般先取特権の対象ではなく,一般優先債権ではない。
少額弁済の許可を基礎付ける事情もない。
D社はこの不払を理由に開始後の供給を拒めない(50条1項)。

(2) 10月27日に申立てがあり,開始決定は11月4日である。
申立て後開始前の給付に係る請求権は共益債権となり,月ごとに債権額を算定する本件では,申立て日の属する10月の給付全体がこれに含まれる(50条2項括弧書き)。
申立て日前後で分割しない。
10月分全額を再生手続によらず随時弁済できるから(121条1項),12月10日の支払期限に全額を支払うと回答する。

(3) 11月1日から3日までの給付は50条2項により,開始後の4日から30日までの給付は,工場の業務に関する費用として119条2号により,共益債権となる。
後者は供給契約の履行を選択する場合の49条4項によっても説明できる。
よって,11月分全額につき121条1項に従い,翌年1月10日の支払期限に支払うと回答する。

2 設問2⑴

(1) 敷金返還請求権は,賃貸借終了・明渡しの際に被担保債務を控除した残額について具体化する停止条件付債権である(民法622条の2第1項1号)。
しかし,敷金契約という開始前の原因に基づく財産上の請求権であり,破産では破産債権となる(破産法2条5項)。
賃料を弁済する際,後の相殺に備え,返還請求権額を限度に弁済額の寄託を請求できる(同法70条後段)。
この寄託を伴う賃料弁済は,明渡しを解除条件とする。
明渡しによってその弁済が効力を失い,復活した未払賃料と敷金返還請求権との間に充当関係が生じる。
他方,既払賃料相当額については,開始後の不当利得による破産財団への返還請求権として財団債権となる(同法148条1項5号)。
また,停止条件付の破産債権として配当を求めるには,最後配当に関する除斥期間内に明渡しにより行使可能となる必要がある(同法198条2項)。

(2) 再生でも開始前の敷金契約に基づく請求権であり,後述の共益債権部分を除き再生債権となる(84条1項)。
再生債権部分は再生計画により権利変更され,計画に従って弁済される(85条1項,179条1項)。
破産のように賃料弁済額を寄託する制度はなく,次の共益債権化により保護する。
①開始時に賃料債務を負担し,②開始後に期限が到来する賃料をその期限に弁済した場合,③その弁済額を上限に,④開始時の賃料6か月分から,⑤92条2項の相殺により免れる賃料額を控除した範囲内で,敷金返還請求権が共益債権となる(92条3項)。
この部分は再生手続によらず,再生債権に先立って随時弁済される(121条1項・2項)。
6か月分相当額だけでなく,現実の期限内弁済額も限度となることを要する。

3 設問2⑵

(1) 設問の指定に従い,未払賃料等の当然充当を先行させる。
5月分・6月分の未払賃料は120万円,B社負担の原状回復費は80万円であり,敷金600万円から合計200万円を控除した返還残額は400万円となる。
この当然充当は,相殺意思表示によるものではなく,92条1項の相殺制限により妨げられない。

(2) 8月の空調修理費60万円は必要費として直ちに償還請求でき(民法608条1項),開始前原因の再生債権となる。
12月分賃料60万円は開始前の賃貸借に基づき,開始後の11月30日に期限が到来する。
同日の相殺は12月2日までの債権届出期間内にあり,開始時の賃料6か月分360万円以内なので,92条2項により有効である。

(3) 1月分から4月分までの賃料合計240万円は,開始後に期限が到来し,各期限に弁済されている。
92条3項括弧書きは同条2項の相殺による免除額を控除すると定めるため,当然充当はこれとは別のものとして扱う。
共益債権化の範囲は360万円-60万円=300万円であり,現実の期限内弁済額240万円の方が小さいから,共益債権部分は240万円となる。
相殺額を控除する基礎は240万円ではなく360万円である。

(4) 再生債権部分は400万円-240万円=160万円である。
6月26日の認可決定の確定により,計画どおり60%免除されるから,その弁済額は160万円×40%=64万円となる(179条1項)。
共益債権部分は全額弁済され,合計は240万円+64万円=304万円となる。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

設問1の答案は番号1~16に対応する。
特に番号4の支払期限への回答,番号7・8の申立月と開始時点の区別,番号12の開始後給付の根拠を区別する。
再生債権と名付けるだけで照会への回答を終えず,弁済禁止又は随時弁済の効果までつなぐ。

設問2⑴は番号17~32に対応する。
寄託後の解除条件付弁済・充当・財団債権化を番号19~21として説明し,92条3項の五つの要件を番号26~30に分けている。
番号31は共益債権の優先と随時弁済であり,分類名を挙げただけでは足りない。

設問2⑵は番号33~50に対応する。
番号33・36の当然充当先行,番号38~42の相殺と二つの上限の比較,番号45~47の再生部分の減額・合算を回収する。
負例は正しい論証の裏返しとして監査し,その誤りを書かなかったことだけで理解の深さを推定しない。

(2) 許容される三つの計算構成

α構成は,当然充当と92条3項の共益債権化を別に扱う。
6か月分360万円から同条2項の相殺額60万円だけを引き,300万円と実弁済240万円を比べ,共益部分を240万円とする。
条文の括弧書きが同条2項の相殺による免除額を挙げることを理由に,枠内答案はこの構成を採った。

β構成は,未払賃料の敷金充当分120万円も共益化の上限から控除する。
360万円-60万円-120万円=180万円が共益部分となり,再生部分220万円の40%である88万円を加えて,弁済額は268万円となる。

γ構成は,原状回復費の充当分80万円も上限から控除する。
360万円-60万円-120万円-80万円=100万円が共益部分となり,再生部分300万円の40%である120万円を加えて,弁済額は220万円となる。
採点実感7頁は三構成を示すため,結果の金額だけでβ又はγを誤答としない。

(3) 補足と扱わなかった事項

停止条件付債権としての届出,議決権の評価額,債権調査の効力は,敷金の手続上の扱いを補う事項である。
ただし,本問の公式資料で個別に要求された評価項目へ加えてはいない。
民法622条の2の説明だけでは手続上の扱いへの回答にならないことと,その説明が法的に誤っていることとは異なる。

破産で交付済みの敷金そのものが取戻しの対象となることと,寄託した弁済額を一種の取戻権により返還請求する構成は別である。
番号22は後者の許容分岐であり,本答案の財団債権構成と累積的に記載する必要はない。
一般的な答案作法として,条文・事実・効果を一貫した文章で結び,他人が判読できる条番号と法令用語を用いることが求められるが,これらは50項目の外の一般的な指摘とする。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の別の模範解答

①令和5年司法試験民事系第2問の模範解答・評価項目(AI作成)
②令和5年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
③令和5年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答(AI作成)

2 本問と関連する山中弁護士ブログの記事

①民事再生手続開始前後の電気料金と敷金(AI作成)
②令和6年司法試験倒産法第2問の模範解答・評価項目(AI作成)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省令和5年司法試験論文式試験問題・選択科目:倒産法第2問,PDF4頁~5頁。
②法務省令和5年司法試験論文式試験問題出題趣旨:倒産法第2問,PDF20頁の第2問見出しから21頁の租税法見出し直前。
③法務省令和5年司法試験の採点実感・選択科目:倒産法総論の関連部分,本問の4頁~7頁,関連末尾記載7頁~8頁。

2 法令

①e-Gov・民事再生法:49条・50条・84条・85条・92条・119条・121条・179条等。
②e-Gov・破産法:2条5項・70条後段・148条1項5号・198条2項等。
③e-Gov・民法:127条2項・306条4号・310条・608条1項・622条の2・703条。

法令はe-Gov公式APIの改正履歴から令和5年7月12日以前の適用版を選び,本則の該当条文を確認した。
上の法令検索リンクは現行表示に切り替わることがあるため,試験当時の版との区別を要する。

3 裁判例

本記事では,原文を確認できた裁判例を答案の独立の根拠として引用していない。
敷金の性質・控除は民法622条の2,寄託後の取扱いは破産法の条文と公式資料に基づいて説明している。

4 確認状態

問題文・両公式資料の本問部分及び法令の該当条文は実読した。
評価単位の切り方と重み,個々の事実への適用は本記事の独自分析である。
寄託を伴う弁済を解除条件付とする説明は公式資料の記述に基づく制度解釈であり,破産法70条の文言自体に解除条件との語があるという意味ではない。
本問の採点実感が示す複数の構成を,現在の個別事件で必ず採用される結論と一般化しない。